mysound SPECIAL INTERVIEW!! SALU
そして、その大きなヒントになったのが、彼自身がラップや音楽を始めた頃の記憶。実際、《なんでそういやここにいるんだっけ/誰の人生を生きているんだっけ》という"All I Want"のリリックには、ふたたび原点を見つめた瞬間の彼の気持ちが、鮮やかに描写されています。そこで今回は、SALUさんに「自分のルーツが分かる10曲」の選曲を依頼。彼の思い出の原風景から、最新作『Good Morning』の魅力を紐解いてもらいました!
NEW RELEASE
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New Album
『Good Morning』
SALU
2016.04.20 Release
TFCC-86548 / ¥2,700 (税抜)
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- 12曲収録
INTERVIEW
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"今回のアルバムは、今までで一番ラップだけじゃないことをやっている作品"
――新作『Good Morning』は初めてSALUさん自身がプロデュースした作品で、様々なゲストの方を迎えていますね。これはどんな風に考えていったものだったんですか?
14年に前作『COMEDY』を出した後、そろそろ「色んな人とやってみたいな」と思っていたところに、これまでプロデューサーを務めてくれたBACHLOGICさんが「次は自分自身でやったり、OHLDくんとやったらいいんじゃない?」と言ってくれて踏み切った感じです。今回新たに参加してくれた方は、みなさん「いつか出来たらいいなぁ」と思っていた人ばかりです。MACKA-CHINさんは、それこそ自分がヒップホップを聴き始めた頃からそう思っていたし、中島美嘉さんも彼女のデビュー当時からずっと聴いていて、トラックにラップが乗ったものを渡したら、ご自身で作詞もしていただきました。mabanuaさんとはメールでかなり密にやりとりしたし、ケンモチ(ヒデフミ:水曜日のカンパネラ)さんも、僕が伝えたことにすごく付き合ってくれて。tofubeatsくんとの作業も、最初に作ってくれたトラックに歌っぽいブリッジを入れたら、それに合わせて裏にtofuくんの声でコーラスを入れてくれたりして楽しかったです。今回のアルバムは、今までで一番ラップだけじゃないことをやっている作品だと思いますね。昔は「これってアリかな?」「セルアウトとか言われんのかな?」って色々考えていたのですが、今はもう「自分が感じたことを自分の口から出す」ことが大事だと思うようになったんです。
――タイトルを『Good Morning』にしたのはなぜだったんですか?Salyuさんが参加した"All I Want"のリリックにも、朝のモチーフが出てきますね。
それこそ、Salyuさんとの"All I Want"が一番最初に出来た曲だったんです。それまでも色々曲は作っていたんですけど、「次のアルバムはこれだ」と思える曲が1年ぐらいずっと出来なくて。でもこの曲が去年の6月に出来た時、やっとそう思えたんですよ。それまで色々悩んで、迷って……その時期が、自分の中ではずっと「夜」みたいな感じで。そんな自分に対して「やっと起きたな」という意味もあるし、周りの人やまだ出会ってない人に対する、「おはようございます。起きたんで僕はもう大丈夫です」という意味も込められているし。だから今回は、自分にとって「いい朝」という意味と「おはよう」という挨拶で「Good Morning」というタイトルにしたんです。
――さて、今回は「SALUさんのルーツが分かる曲」をテーマに10曲選んでいただきました。中でもKICK THE CAN CREWの"カンケリ01"は、SALUさんがヒップホップを始めた頃に出会ったものですね。
そうですね。それが札幌に住んでいた中学1~2年の頃で。父親がブラック・ミュージックを好きだったのでラップ自体は知っていたんですけど、日本語のラップを聴いたのはこの曲が初めてでした。僕は当時から音楽をやりたいとは思っていたけど、楽器が出来るわけでもないし、カラオケでもみんなの反応がよくないから「歌は無理だな」とも思っていて。でも、この曲はくだけた口語で、しかも歌っていることがカンケリで……。「何を歌ってもいいんだ」「これなら出来るかもしれない」と思わせてくれたというか。その時はカンケリがダブル・ミーニングで、含みのある言葉になっているとは全然気づいていなかったんですよ。 -
――エミネムも同じ時期に知ったという感じですか?
そうです。同じ中学の洋楽を聴いているような友達が「これ知ってる?」って聴かせてくれて。僕はのちに日本語を砕いて英語っぽくしていく作業をやっていくんですけど、その時にかなり参考にしました。エミネムが英語を砕いてラップしているのを参考にして、僕は日本語を英語っぽく砕いていったというか。
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――ああ、なるほど。
次のドクター・ドレーは、自分の原風景と言える曲ですね。僕は小さい頃、これが流れているキャデラックで幼稚園に行くという謎の幼少期を過ごしていて(笑)。それから高校になってクラブに行くようになるんですけど、その時にDJをしていた先輩の家でかかっていたのがこの曲だったんです。で、「なんか聴いたことあるな」と思ったら、小さい頃から家にあったアルバムと同じジャケだったという(笑)。
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SEEDAさんは、19歳の頃、ラップを一回やめて、1年ぐらいシンガポールでラーメン屋をやっていた時に毎日クルマの中で聴いていました。「日本にもこんな人がいるんだ」って思ったし、しかもそれが、僕がやりたいと思っていたことに近いことだったんです。
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――「もう一度ラップをやりたい」と思わせてくれた曲だったそうですね。
そうですね。SEEDAさんがきっかけでシンガポールから帰ってきた部分もあるんですよ。
――その後、SALUさんがSEEDAさんにフックアップしてもらうことを考えると、すごい話だと思います。
ほんとですよね。僕はSEEDAさんのおかげでラッパーとしてデビューまでたどり着いたと言っても過言ではないし、そのプロデュースをしていたのが、それからずっとお世話になるBLさん(BACHLOGIC)だったという。
サラ・コナーの曲は歌詞もメロディも素晴らしいんですけど(パッヘルベルの"カノン"を使った楽曲)、TQがラップで参加していますよね。この曲は、ラップと歌の融合をやりたいと思った最初の頃の曲なんです。札幌でギャングスタラップを主にかけてた先輩が、プレイの最後の方にかけていた曲なんですよ。
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"ルーツとなった曲は今でもいちファンとして純粋に聴くし、
僕はまったく何も考えずに音楽を聴く時間もすごく大事だと思っている"
――AIさんの"最終宣告"はどうですか?
中学校2~3年の頃、でっかいスクリーンでMTVが見られる家に住んでいる友達がいて、当時はそこにみんなで集まって洋楽アーティストばっかり見ていたんです。でもAIさんの曲を聴いて、「やべえ、こんなにクロい、濃い歌を歌える人が日本にもいるのか」と思って。実際にお会いした時にも言ったんですけど、当時札幌のHMVでサイン会にも行ったんですよ。〈Def Jam Japan〉の一発目のシングルだったというのも、自分にとっては大きいですね。
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次に選んだNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの曲は、「ザ・アンダーグランド」な雰囲気のラップを聴いた最初の頃の曲。キングギドラやZEEBRAさんの曲で「日本にもドクター・ドレーみたいなギャングスタっぽいものがあるんだ」と思っていた時に、(小学校の頃から同級生だった)MC松島が「これ知ってるか?」って休み時間に聴かせてくれたのが最初でした。僕はNMUからフロウを学び始めたんです。新作ではMACKA-CHINさんと一緒にスタジオで作業が出来たし、一緒にご飯を食べに行ったりもしてもらえて。大先輩なのにすごく気さくな方で、音楽の話というより面白い話しかしなかったかもしれないですね(笑)。
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――(笑)。次はノラ・ジョーンズの"Don't Know Why"ですが、これをルーツとして選ぶのは少し意外でした。
この曲がヒットしていた中学時代にクルマのラジオでかかっていたので、これを聴くと札幌を思い出すんです。去年の3月、MC松島の結婚式で札幌に帰った時に初めて自分で北海道の街を運転したんですけど、その時、たまたまカバンの中に一枚だけ入っていたCDがノラ・ジョーンズの『Come Away with Me』で。"Don't Know Why"が入っていることすら忘れていたのですが、そこから2日間ずっとリピートしながら札幌を運転したんですよ。雪がまだ残っていて、それが色んな原風景に触れるきっかけになって……。
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――これは〈ブルーノート〉から出た作品ですが、今回の『Good Morning』には本国の〈ブルーノート〉に所属する黒田卓也さんも参加していますね。
そうですね。僕はホセ・ジェイムズがすごく好きなので、(その作品やライヴなどに参加している黒田さんを知って)「この人、日本人だよな? すげえ」って。それで黒田さんの作品も聴くようになったんですよ。黒田さんはスタジオに来て生で演奏してくださって、アドリブも入れてくれたんで、それらも使わせていただきました。
――スティーヴィー・ワンダーの"Part Time Lover"はどうでしょう?
これは6~7歳ぐらいの頃、夏に海に行く時には父親がハワイのラジオを録音したテープをクルマでずっとかけていて、その中でも特に印象に残っていた曲ですね。子供だったので"Part Time Lover"がどういう意味かも知らなかったけど、「怪しい曲だな」と思っていて(笑)。2パックもカヴァーしていましたよね。
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そして最後のグリーン・デイは、ノラ・ジョーンズやエミネムと同じで中学時代に聴いていた曲。僕は洋楽の入口ってメストやSR71、ブリンク182、SUM41みたいなメロディック・パンクだったんです。たとえばウィズ・カリファとかも、結構そういうノリを持っている気がします。そこからエミネムの方に広がっていった感じだったんですよ。
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――今回選んだ楽曲は、今聴くと印象が変わったりもしますか?
基本は全然変わらないですね。今でもいちファンとして純粋に聴くし、僕はまったく何も考えずに音楽を聴く時間もすごく大事だと思っているので。今回このプレイリストを選ばせて頂いて、改めて「そういう自分に戻れるなぁ」と思いましたね。
――では最後に、今回選んでいただいた10曲の中で特に新作に影響を与えた曲があれば教えてください。
今回で言うと、"Don't Know Why"が一番大きいかもしれないですね。去年の3月に札幌に帰った時に昔の記憶に触れて、そこで色んなことを思い出したのが、3か月後に出来た"All I Want"に繋がっていくんです。あの時「昔はこんなこと思ってたな」「だからラップを始めたんだよな」「でもラップを始める前はこんな音楽も好きだったよな」って、改めて自分の過去の記憶に触れることが出来たんですよ。
――なるほど、それが"All I Want"のリリックや音に繋がっていったんですね。
そうなんです。だから、当時から考えても一周しているというか。今回のアルバムでやっとまた"朝になった"。そういう意味でも、『Good Morning』なんですよ。
ORIGINAL PLAYLIST
SALUセレクト!“自身のルーツとなる曲”プレイリスト!!
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text&interview by Jin Sugiyama
photo by Kohichi Ogasawara
DISCOGRAPHY
PROFILE
1988年札幌生まれ、神奈川育ち。14歳で日本語でラップを書き始めた噂のニュータイプ、SALU (サル)。札幌、神奈川藤沢、厚木、シンガポールなど、プライベートな事情もあって"根無し草"のように都市を渡り歩いてきたSALUだからこその観察力と洞察力で綴る情景豊かなリリックには独特の呼吸とライミングがあり、それによって生み出される浮遊感からその言葉は私達の心に素直に入ってくる。
HIP HOP / R&B 界の新進気鋭のプロデューサーとして辣腕をふるい、KREVA、EXILE、西野カナ、少女時代などジャンルレスにヒット曲を提供するあのBACHLOGICとの宿命的な出会いによって彼の運命が動き始める。この時、BACHLOGICがSALUの才能に刺激され、レーベル "ONE YEAR WAR MUSIC"をつくってしまったという逸話は、同業者(アーティスト)の嫉妬も拍車をかけるかたちでシーンで話題になった。
そのBACHLOGIC総指揮のもと、2012年3月にリリースされたファーストアルバム『In My Shoes』は、23歳にして得た濃厚な人生経験と、初期騒動に裏付けされたSALUが"In My Shoes(= 僕の立場から)"から見た世界について歌った作品で、J-HIP HOPのフィールドでは異例のスマッシュヒットとなり、iTunes 総合チャートでも上位を記録。また第5回CDショッブ大賞やVMAJ、スペースシャワーMVAにノミネートされる等、SALU旋風は目利きの関係者の間で語り草に。KREVAや木村カエラなど様々な方面から絶賛され、ヘッズは勿論、2013年にはARABAKI ROCK FEST.13、ROCK IN JAPAN FESTIVAL2013、MTV ZUSHI FES 13、SWEET LOVE SHOWER 2013、Sunset Live 2013等は夏フェスに出演し、これまでラップに興味がなかったロックリスナーをも熱狂させた。
さらに2014年5月に自身2枚、メジャーでは初のフルアルバムをリリース。リリース後は初のワンマンツアー"TOUR OF COMEDY ?喜劇の旅?"を地元の札幌を皮切りに名古屋、福岡、大阪、東京で開催。また、SMAPや若旦那(湘南の風)へ楽曲提供するなどソングライターとしても活躍している。
LIVE
■SALU LIVE TOUR 2016 "Good Morning"
日程:6月17日(金)
会場:Fan J Twice
時間:OPEN 19:00/START 19:30
料金:4,500円
日程:6月18日(土)
会場:渋谷WWW
時間:OPEN 18:30/START 19:30
料金:4,500円
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