■「銀河夜行」
いつも夢を見ていた。
僕はここではないどこかを旅することを。
想像の世界ではどんな冒険にも恐れずに船出する。
海の上では月が優しく船を照らし
その光に包まれて体がすっかり
休まるまで眠りにつく。
時に古い時代の誰かになって
もう綴られたであろうストーリーを
思い出すように眺める。
時に北極の最果ての地の
おおかみになって孤独に胸をかきむしられながら
雪原をどこまでも走る。
ぼくは誰を探しているのだろう。
繰り返すこの想像の旅はどこに続いているのだろう。
ぼくは誰なのだろう。
本当の自分は丘の上に立ちすくんで
空と木と遠い海を見ている。
ポケットの中には確かに切符があるに違いないのに。