■「警告」
その日、大地の王妃・彩希妃は崩壊した世界を前に涙を零していた。
かつてそこには文明があり、愛し合う人々には笑顔と希望があった。
彩希妃の叫びは悲しい歌となり、乾いた大地に沁み渡っていく。
時を同じくして、海の王妃・香純妃は憤りを隠せずにいた。
生命の始まりである大海原は、今やこんなにも濁り、
命という命を飲み込む怪物になってしまった。
香純妃が呼びかけると、波はうねり、激しく轟いた。
空の王妃・英鈴蘭妃は人知れず怯えていた。
自由そのものであった風が止み、澄み渡る空は汚染され、
視界を遮るほどに澱んでいる。
英鈴蘭妃が風に乗せて奏でた旋律は、行き場を失くしたまま留まっている。
其々が、少しずつ辺りを覆い尽くす死のにおいを感じていた。
3人の王妃の苦しみと慈しみが呼応し、“絶望”が全てを支配したその時、
新たな音が生まれた。
溢れる悲しみと憤りは、時空を越えて“現在”に舞い降りる。
これは未来への警告なのか・・・
過去を懐かしむ記憶なのか・・・
最果てを見据えた王妃たちは、今日も希望を求めて悲しみを歌う。
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