mysound SPECIAL INTERVIEW!! ART-SCHOOL
ART-SCHOOL初のB SIDES BEST『B SIDE BEST Cemetery Gates』は、ファン投票とメンバーが強いこだわりを持つ、いわゆるシングルやアルバムの推し曲以外からなるベストアルバム。驚くのはレア楽曲でも、ソングライターの木下理樹が書くメロディの美しさや、失ってしまったものへの憧憬や、儚雲美しいものへの慈しみが溢れる曲の本質がファンに長く共有され、オリジナル・アルバムでないにも関わらず、バンドの本質が浮き彫りになっているところでしょう。今回は木下理樹さんに本作を編んだ今の心境とともに、彼の音楽的な思考が伺える「最近のお気に入り」のプレイリストを作成してもらいました。ART-SCHOOLが持っているイノセンスや美意識に通じるアーティストや楽曲から、意表を突く選曲まで、ジャンルレスで「いい音楽の情報は自然と入ってくる」、その理由も今の時代だからこそむしろ新鮮に響くものになっています。
NEW RELEASE
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B SIDES BEST 『Cemetery Gates』
ART-SCHOOL
2017.1.25(水)Release
WARS-0003/ Warszawa-Labe l/UK.PROJECT inc.,/ ¥2,500(+tax)
INTERVIEW
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"インディー時代の全然食えなかった時代に書いた曲っていうのは思い入れ深いです"
――今回、B SIDE BESTをリリースすることになったきっかけというと?
きっかけは僕が弾き語りする機会が多くなっていて、その時にリクエストを尋ねたら結構マニアックな曲が多かったんですね。あとは一回ここでちょっと自分のキャリアを見直してみようかなというのはあります。
――リクエストの結果に対する木下さんの感想は?
単純にメロがいい曲が人気が高いのかな?とは思いましたけどね。なんか詞の力が勝っちゃったりとか、逆に曲の力の方が勝っちゃったりじゃなく、ちょうどバランスがいい。メロディがいいものって基本的には普遍的じゃないですか、そんな凝った音作りをしない限りは。
――どうしても収録したかった曲と言えば?
自分としてはもちろん、ほんとにインディー時代の全然食えなかった時代に書いた曲っていうのは思い入れ深いです。でもどの曲も自分の時間削って作ったもんですから、まぁ・・・言葉で言ったら軽くなっちゃいますけど子供みたいなもんで、そこに自分の中で優劣はそんなにないですね。
――B SIDE集がバンドの本質を表しているのがART-SCHOOLらしいなと。
最近のアルバムから入った人にとっては新鮮なものになるんじゃないのかなと思うし、昔から聴いてきてる人でも、なんか思い返してくれたりね。「あ、こういう歴史あったよね」っていう、自分の人生と重ね合わせてくれれば。それができるのって音楽の素晴らしいところですよね。
――今回は木下さんの「最近のお気に入り」というテーマでプレイリストを作成していただきました。まずOGRE YOU ASSHOLE(以下、OGRE)の"ハンドルを放す前に"はどういうところが?
最近はこういう方向に行っているっていうのは知ってたんですけど、そんなに深くは聴き込んでなくて。で、「ん?ちょっとこれすごいぞ」っていうのは、不思議なんですけど口コミで広がるんですよね、どの音楽も。それで聴いたら、これをセルフプロデュースできるなんてすごいなと思って。 -
- シングル
- アルバム
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――極端に音数が少ないプロダクションも独特です。
ベースも「ベッ、べベッ」くらいしかなくて遠くで鳴ってるなみたいな。歌はちゃんとあるんだけど、なんなのかがわかんないまま終わって、「ああ、気持ちいい」みたいな。でも妙に緊張感はあるんですよね。このアルバムはこの先もっと評価されるアルバムだと思うし、その1曲目ってことで選びました。
――続いてレディオヘッドの新作『Moon Shaped Pool』から。
僕の去年のベストはレディオヘッドだったんで。正直『The King of Limbs』を聴いたとき、僕にはもうあんま関係ないかなって思ってたんですけど、ここにきてまたグッとなんていうかな?全てがバランスはいいし、これが進化かぁと思って。 -
――先日亡くなったトム・ヨークのパートナーであるレイチェル・オーウェンと別れた悲しさが如実に出た部分もありますね。
悲しいんだけど、要は一言で片付けられない感情がOGREにしてもレディオヘッドにしてもありますよね。だからそこの部分ですごく揺さぶられます。
――小林うてなさんは何がきっかけで?
まぁ、D.A.N.です。小林さんもOGREと同じ長野の村出身ということで、なんか影響あるのかな?と。小林さんはずば抜けてセンスいいなぁと思いましたね。キーパーソン的になっていきそうな気がするし、彼女の存在自体がすごく珍しい例というか。存在自体が作品みたいな人ってなかなかいないですよね。 -
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"失ってしまった光景や景色、それがやっぱり一番心に響きますね。"
――次はレディオヘッドのジョニーが手がけたサントラからの曲で、原曲は有名なショパンの"別れの曲"です。
『The Master』きっかけですね。フィリップ・シーモア・ホフマンが亡くなって考えたんですよ、なんで人はアディクトになるのかな?って。だって彼らは成功もしてるし、家族もいるし、なのになんで腕にヘロインぶっさして死ぬんだろう?とか。だからそういうこと考えてた時に人間はそこまで強くないなっていうことなのかなって。悲しいけど、名曲ですね。 -
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――そしてプリンスの中では割と愛らしくて、軽めのファンクです。
プリンスがきっかけで僕は洋楽が好きになったんで、やっぱり考えましたね、死んだ時は。この曲は可愛らしいと言ってもいいし、こういうテイストは僕自身も影響受けてますし、単純に聴いてて気持ちいいですよね。
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- シングル
- アルバム
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――そしてシャウラ。声がいいですね。
たまたまどっかのサイトで知って聴いて「ああ、いいなぁ」と思って。単純に声と曲が聴いてて「気持ちいいな」って。ほんとに最近のお気に入りって感じですね。 -
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――次はローラ・ニーロ。この選曲は意外でした。
この辺の時代の人たちの音を探してみようと思って。はっぴいえんどか山下達郎さんか、シュガーベイブのマネージャーだった人が出した本があって、その中に名前が載ってて。それで色々そこら辺の音楽聴いてて。寂しいというか、その寂しいとこが好きかな。ノスタルジックなものっていうのはどうしても寂しいじゃないですか。失ってしまった光景や景色、それがやっぱり一番心に響きますね。 -
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――そして時代が現代に戻ってThe1975のさらにポップになった2ndアルバムからです。
なんかもうロックスターですよね、完璧に。恥ずかしげもなく裸体を「見ろ見ろ!」って。それはすごいと思って、その開き直り方は。で、実際、曲もいいですしね。曲よくなかったらクソ野郎ですけど(笑)。 -
- シングル
- アルバム
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――そしてハインズ。無邪気な感じしますね。
こういう曲は一番泣けるんですよね。単純に楽しくてやってんだろうなみたいな。根本には自分たちが楽しいからやるんだみたいなところで、それって本当に美しいと思う。生き方の問題ですからね。その生き方って本当に美しいなと思いますね。 -
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――最後はクランアイリーン(以下、クラン)の中でもなかなか徹底的にクールな曲です。
まぁ・・・カッコいい~と思って聴いてますけど(笑)。どうにかこれ日本でヒットしねえのかなと思ってますけどね。THE NOVEMBERSとかよく引っ張ってるとは思うんだけど、Lillies and RemainsとかPLASTICZOOMSとかね。クランはさらにイっちゃってるというか、そこがかっこいいと思うんで、ぜひね?音楽誌の表紙にこういうバンドこそなってほしいですけどね。 -
- シングル
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――今回のプレイリストは木下さんのなんらか最近のムードは反映してますか?
お気に入りじゃない曲はないですからね。まぁ最近、OGREとか小林うてなさんとか、クランとかほんとよく聴いてますね。
――こうした独立した存在のアーティストがいることが嬉しいことというか?
そうですね。ほんとにシティポップが終わった暁には(笑)、彼らのような存在がピックアップされていくといいですね。
――木下さんの新しい音楽の掘り方ってどういう感じなんですか?
いいものって割と口コミで広がっていくというか、もうバズらせるとかそういう時代じゃないと思うんですよね。若い方がどうやって探してるのかわかんないけれど、でもちゃんとセンスのある若い人って絶対にいるから、そういう人はどんな仕掛けをしても見抜いてるはずで。僕も周りから聞こえてくる、「あのアルバムいいよ」っていうのを信用してます。しかも音楽をやってない人とかの方が単純に音楽ファンだからいいものを探してるっていうので、作家の方とか、洋服作ってる方が聴いてる音楽はセンスいいなぁと思いますけどね、僕が知ってる限りでは。
MESSAGE
ORIGINAL PLAYLIST
ART-SCHOOLの最近のお気に入り楽曲プレイリスト
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- シングル
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- シングル
- アルバム
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- シングル
- アルバム
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- シングル
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text&interview by Yuka Ishizumi
Photo by Kohichi Ogasahara
DISCOGRAPHY
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- アルバム
- 12曲収録
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- アルバム
- 6曲収録
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- アルバム
- 11曲収録
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- アルバム
- 11曲収録
PROFILE
日本のオルタナティヴ・ロック・バンド。愛称は“アート”。木下理樹(vo,g)を中心に2000年3月に結成。同年9月に1stミニ・アルバム『SONIC DEAD KIDS』を発表。全国各地でライヴ活動を展開し、狂気なヴォーカルと轟音ギター、純度の高いポップネスによる“内省型シューゲイザー・ギター・ロックの代表格”と評されて話題に。2002年10月にシングル『DIVA』でメジャー・デビュー。以降、メンバーチェンジを重ねながら斬新な現在進行形のロックを追求。2015年に一時活動休止を発表、同年5月木下理樹が代表として発足した、クリエイティブで柔軟な発想を持った人たちが集まったチーム〈Warszawa-Label〉を設立。2016年2月に新木場にてワンマンライヴにて活動を再開。5月に〈Warszawa-Label〉よりフルアルバム『Hello darkness, my dear friend』を発表。2017年1月B SIDES BEST『Cemetery Gates』を発表。
LIVE
■B SIDES BEST<Cemetery Gates>
日程:2017年3月25日(土)
会場:梅田 Noon+Cafe
時間:OPEN 17:30/START 18:00
料金: DOOR ¥3,800(+1D)
日程:2017年3月30日(木)
会場 : Shibuya WWW X
時間 : OPEN18:15/START 19:00
料金 : DOOR ¥3,800(+1D)
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