mysound SPECIAL INTERVIEW!! ササノマリイ
テーマに沿ってアーティストのお気に入りの楽曲を選んでもらうことで、その人のパーソナルな音楽体験を紐解いていくプレイリスト企画。今回は11月30日にメジャー・デビュー・シングル『タカラバコ』をリリースしたササノマリイのご登場です。最新作『タカラバコ』は、これまでの彼の音楽性を踏襲しつつも、よりポップスとしての強度が増した傑作に。TVアニメ『夏目友人帳 伍』のOP曲としても話題の表題曲はこれまでのササノマリイの作品になかったタイプの真っすぐで清々しいポップチューン。カップリングの2曲も必聴の名曲です。邦楽洋楽年代を問わず、さらにはアニメやゲーム音楽にまで通じている彼の音楽性の秘密を探るべく、「音作りで影響を受けた楽曲」というテーマで10曲を選んでいただきました。
NEW RELEASE
INTERVIEW
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ササノマリイ"こういう音はどうやったら出せるのかと研究しました"
――今回は「音作りで影響を受けた楽曲」というテーマで選んでいただきました。いかがでしたか?
絞って絞っての10曲。かなり厳選しました。小さな頃から家のテレビのイヤホンにステレオケーブルを刺して、気に入ったアニメの曲をカセットにダビングしていたくらいなので、プレイリストを作るのは大好きです。今回も楽しかったです。
――さっそくですが、1曲目はbermei.inazawaさんとAnnabelさんによるユニット、anNinaの"Transcript Lover"ですね。この曲を選んだ理由は?
bermeiさんは『ビートマニア』で彼の存在を知って以来、ずっと尊敬して、目標にしている存在です。この曲は展開がめまぐるしく変わったり、管楽器、弦楽器、パーカッション等、様々な楽器や音が詰め込まれているにも関わらず、お互いがまったく邪魔し合っていないんです。職人技ですね。 -
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――次はMassive Attackの"Teardrop"。Cocteau Twins のElizabeth Fraserによるヴォーカルも美しい『Mezzanine』収録の名曲です。
真っ暗な絶望の中にある一筋の光のような曲。靄がかかったようなダークで退廃的なサウンドだけど、神々しさというか、ある種の崇高さがある。この曲に出会ったときはまだサンプリングの概念も知らず、こういう音はどうやったら出せるのかと研究しました。 -
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――次は新居昭乃さんの"覚醒都市"。"Teardrop"から続けて聴くと、何か通じるものも感じました。
はい(笑)。はじめて聴いたのは小4くらい。テレビを付けたら、TVアニメ『東京アンダーグラウンド』のエンディングでこの曲が流れていて、強烈に惹き込まれました。新居さんの歌詞も好き。素朴な言葉で、しかしとても繊細で純真であって、音と溶け合っていつも素敵な風景を見せてくれる。ひとりで聴きたい曲ですね。 -
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――次はDaft Punk。ヒット曲をたくさん持つ彼らの作品の中からこの曲を選んだ理由は?
僕が知ってるDaft Punkの曲の中で最もメロディが美しい曲。彼らってフロア向けのトラックとかそういうことを全く無視して、純粋に綺麗なメロディのポップ・ソングを作る時があって。そういうときのDaft Punkの曲がたまらなく好きです。この曲はその代表。Daft Punk流の王道ポップ・ソングです。 -
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――次はCAPSULE の"テレポテーション"です。
中田ヤスタカさん、つまり男性が作っているのに、不思議と音やリズムの節々に「女の子」を感じるんです。この曲は女の子が何かを求めて手を伸ばしながら歌っている感じがして。それを歌詞だけが説明するのではなく、サウンドでも表現しているところがすごいと思います。 -
――そしてサカナクションの"グッドバイ"ですね。
彼らはバンドだけどバンドではないと思っていて(笑)。世の多くのバンドがこだわる部分ではない部分にこだわっていて、そこが独創的だし、面白いです。この曲は他の代表曲と比べ、音の隙間が多く、異質な感じの曲。でも実は彼らの根底はこういう感じなのかなとも思います。全力で泣かせにきてますよね。大好きなので、影響受けているとか本当はあまり言いたくないんですけれど(笑)。 -
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ササノマリイ"生活にそっと寄り添うようなサウンドと歌詞が好きです。
――声優、歌手として活躍されている悠木碧さんによる"ビジュメニア"。これは1曲目に登場したbermei.inazawaさんによる作曲なんですね。
はい。こういう3拍子に目がないんです(笑)。8/6とか大好きなので。悠木碧さんという強烈なキャラクターの世界観を表現するために、3拍子を効果的に持ってくるあたりが、bermeiさんのセンスの非凡なところだと思います。この曲もまたすごい展開や情報を盛り込みながら、悠木碧さんの歌やキャラクターを邪魔していなくて。本当に職人技だと思います。 -
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――次はテレビアニメ『アルドノア・ゼロ』の後期OP曲としても知られるSawanoHiroyuki[nZk]:mizukiによる"&Z"です。澤野弘之さんは劇伴をはじめ、作曲家、編曲家として多方面で活躍されている方ですね。
この曲はサビの爆発力が圧巻です。澤野さんは展開のワクワクする感じだったり、音に緊迫感を持たせるのが、非常に巧み。また澤野さんはこういうタイプの曲を作る時、いつも薄っすらとエレキ・ギターの壁を作るんですが、これが絶妙なんです。主張過ぎず、でもそれがなくなったら成立しない。「そこにその音がある意味」について非常に勉強させられる曲です。 -
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――『TEAM ROCK』(2001年)に収録の名曲"ばらの花"ですね。
くるりを知ったのは、この曲のリミックスを手掛けているレイ・ハラカミさんがきっかけ。もともともレイ・ハラカミさんが大好きで。くるりは名曲がたくさんありますが、僕はこの"ばらの花"が一番好き。ここまで淡々としていながら、こんなにも美しい曲は他にないんじゃないかと。こういう生活にそっと寄り添うようなサウンドと歌詞が好きです。 -
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――最後はsigur rosの『Takk…』(2005年)に収録された名曲"Hoppipolla"ですね。
sigur rosで最初に聴いた曲であり、一番好きな曲ですね。『Takk…』の"Hoppipolla"から"Med Blodnasir"の流れはもう最強。音から愛を感じます。後から『Heima』のライヴ映像を観て、自分が音から感じていたものが映っていて感動しました。僕は人の曲を聴くとき、つい分析的に聴いてしまうんですが、この曲だけは無心に聴ける。辛くなったらこの曲を聴きます(笑)。 -
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――ここからは新作についてのお話を聞かせてください。メジャー・デビュー・シングルとなる『タカラバコ』ですが、表題曲は人気TVアニメ『夏目友人帳 伍』のOP曲として書き下ろした曲なんですよね?
はい。もともと大好きなアニメだったので、お話を戴いたときは興奮しました。で、一気に5曲くらい作り、選んでいただいたのが今回の曲。現在シリーズ5作目なんですが、初回から現在に至るまでの主人公や物語を見続けてきて、主人公の「現在」というものを想像しながら作りました。自分の思う『夏目友人帳 伍』ってこんな感じ、という曲です。
――非常に清々しくポジティヴなサウンドと歌詞が印象に残りました。
これまで静かな曲が多かったというか、少なくともオープニング曲っぽいタイプの曲は作ってこなかったので、ある意味、新しい挑戦でした。思いっきりアニメに寄せて作ったので、いい意味で自分のエゴを抑制して、新しいものを作れたのかなと思います。自分の好きな作品だけに、間違ったものを提示できないというか、決して作品を邪魔してはいけないというか、ファンがどのような反応をするかということもそれなりに想定できるし、実はかなりのプレッシャーでした(笑)。
――最後に今後のご予定を。来年あたり、新しいアルバムが?
まだ具体的な予定はないですが、出したいですよ。春ころには(笑)。
ORIGINAL PLAYLIST
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text&interview by Naohiro Kato
DISCOGRAPHY
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- 8曲収録
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PROFILE
エレクトロニカを基調としてロック、ポップス、クラブサウンドなどを独自に昇華したサウンドと、温かいメロディーの中に辛辣な言葉を載せたリリックで数々の楽曲を発表。「ねこぼーろ」名義でネット上に発表した楽曲“戯言スピーカー”は、女性ラッパー DAOKO や高校生ラッパーとして話題の ぼくのりりっくのぼうよみなどにカバーされネットを中心に支持を集める。2014年にリリースした1st EP『シノニムとヒポクリト』では、収録曲“戯言スピーカー”のミュージックビデオが100個のマッチ箱を使ったストップモーションによるアニメーションと、本人もロトスコープにより出演し話題となりロングセールスに。2015 年には、2nd EP『おばけとおもちゃ箱』をリリース。紙人形やソーマトロープを駆使したアナログな中の抜群の表現力を持った“共感覚おばけ”のミュージックビデオは動画サイトvimeoのstaff picks、<アヌシー国際アニメーション映画祭 2016>委託作品部門(フランス)、<Anifilm>(チェコ)、Golden Kuker-Sofia(ブルガリア)など数々の映像、アニメーション festivalにて入賞している。
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