mysound SPECIAL INTERVIEW!! Awesome City Club

今年6月にリリースされた3作目『Awesome City Tracks 3』では、atagiさんとPORINさんのツインヴォーカリスト体制をより強調するなど楽曲におけるメンバーの役割や音像を突き詰めて、よりカラフルでバラエティ豊かな音楽性を手にしたACC。リード曲"Don't ,Think,Feel"はもちろん、スムースな"Into The Sound"や"Moonlight"、80'sニューウェイヴ風シンセがキラキラ夜を彩る"Vampire"、スロウな"エンドロール"や"Around The World"を筆頭に、全編にはより魅力を増した不思議な街の風景が広がっています。
今回は「Awesome City Clubのルーツがわかる楽曲」を選んでもらうことで、 2人の音楽体験を振り返ってもらいました。
NEW RELEASE
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『Awesome City Tracks 3』
Awesome City Club
2016.06.22 Release
VICL-64572 / CONNECTONE / ¥2,000(tax incl.)
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- Awesome City Tracks 3
- Awesome City Club
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男女混成5人組ポップ・バンドAwesome City Club(通称ACC)の3rdアルバム。
- アルバム
- 7曲収録
INTERVIEW
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PORIN"「これがやりたかったんだ」って気づいたのがその時ですね。"
――atagiさんとPORINさんは小さい頃、プレイリストを作るのは好きでしたか?
PORIN:中学生の頃とかにオススメのバンドをMDに入れて友達と交換することはありましたね。もらったものは覚えていて、エミネムとか2パックとか、そういうものが多かった気がする。私はたぶん、GO!GO!7188みたいな、当時のガールズ・バンドを入れてましたね。
atagi:僕もちょうど中学から高校になるときにMDになって、聴く音楽の幅が広がったんです。ブルースの名盤やファンクを聴いていて、音楽好きの友達に教えてもらったヘビメタやグラインドコアも聴いてました。人に教えてもらって音楽を好きになることも多いですよね。
PORIN:みんな本気で選んでくれるしね。以前、スタイリストの人にミックスCDをもらったんですけど、1曲ずつ「この人のファッションはこうで~」という解説を付けてくれたんですよ。
――へええ、楽しそうですね。ACCはメンバー間でも好きな音楽を共有しますか?
PORIN:最近だと、モリシーが(スミス・ウエスタンズとアンノウン・モータル・オーケストラの元メンバーが集まって結成した)ホイットニーを教えてくれたりとか。
atagi:楽曲制作時に、制作チームのディレクターに「ACCのこんな音楽を聴いてみたい」というリストをもらうこともあるんです。それで「キンブラいいなぁ」って思ったりして。でも、マッツン(マツザカタクミ)はメロウ過ぎるものは聴かないし、音楽って人柄が表われますよね。音楽を共有する中で、人のパーソナルな部分を知れるというか。
――さて、今回は「自分のルーツが分かる楽曲」というテーマで5曲ずつ選んでもらいました。曲を知ったきっかけや思い出など、曲との個人的な体験をそれぞれ教えてください。
PORIN:じゃあ、まずは私から!今回選んだのは小~中学校時代の、音楽体験自体のルーツです。私は小さい頃ピアノを習っていて、1曲目のリチャード・クレイダーマンは、その時に弾いていた曲です。私は人にピアノを習うのは好きじゃなかったんですけど・・・この曲は今でも唯一弾けますね。初めて行ったコンサートもこの人で、終演後に花束を渡して手の甲にキスしてもらいました。それから、当時は母親も一緒にピアノを習っていて、母が好きだったのが次のチューリップの"青春の影"です。母に連れられて、バンドもののコンサートで初めて行ったのもチューリップでした。幼稚園の頃ですね。次のレベッカは叔母の影響。当時バンドでヴォーカリストをしていた叔母がカラオケで歌っていて、私自身、一番好きなヴォーカリストもNOKKOさんです。あんなに体全部を使って歌うような人っていないと思うんですよ。
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- シングル
- アルバム
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――そして次が、LUNA SEAですか?
PORIN:中性的な雰囲気がお父さんに似ているのか、私、河村隆一さんが好きなんです(笑)。それで小さい頃はこの曲を流しつつリカちゃん人形で遊んだり、リカちゃんと彼氏役の男の子の人形でベッドシーンを作って、"Unlikelihood"の《天使と悪魔がKISをした》という歌詞でキスさせたりしてました(笑)。最後のチャットモンチーの"サラバ青春"は、中学の頃に初めてバンドを組んで演奏した曲。軽音部でもなく陸上部だったのに、器械体操部の子とソフトバレー部の子と一緒に先輩の送別会で全校生徒の前で演奏したんです。
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――だいぶ緊張したんじゃないですか?
PORIN:むしろ、「これがやりたかったんだ」って気づいたのがその時ですね。目立ちたがり屋だったんで、「自分かっこいい!」みたいな感覚でした。
――そしてこの曲は、何と言っても『Awesome City Tracks 3』にも作詞で参加した(元チャットモンチーの)高橋久美子さんの歌詞が素晴らしいです。
PORIN:高橋さんの歌詞って、人間性が出ているんですよね。この間高橋さんのラジオに出させてもらった時に、さっきのエピソードや、私がたまにやっている(ソロでの)ライヴの時にもチャットモンチーの曲をやっていることを伝えました。
――こうして見てみると、PORINさんのリストは誰かとの思い出があるような曲が多い気がしますね。自分ひとりで音楽を聴く、という感じではないというか。
PORIN:ああ、確かに。私はそういう聴き方はあまりしないかもしれないです。
atagi"それ以来ずっと虜です。「僕が最終的にやりたいと思う音楽をやっている人だな」と思います。"
――では、続いてatagiさんの5曲に行きましょう。
atagi:僕のリストは、出会った時系列順に並べました。宇多田ヒカルさんは小学校の頃衝撃を受けた人。それ以前も親が好きなフォークやビートルズは聴いてましたけど、カミナリに打たれたような衝撃を受けたんです。あと、女性的にも超好きなので、結婚したかったんですよ・・・。一応まだ諦めてないですけどね(笑)。"COLORS"には日本人がなかなか出せない旋律や和声があるし、この頃エレクトロニカやブラック・ミュージックに新しい音像が多くて、当時の僕には新鮮でした。次は初めて組んだコピー・バンドでやっていたレッチリの"Suck My Kiss"。「バンドかっこいいぜ!」って、キッズ心に刺さる曲だったんです。
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- COLORS (2004 Remastered)
- 宇多田ヒカル
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TOYOTA WiSH CFソング
- シングル
- アルバム
- 着メロ
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- シングル
- アルバム
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――次のソウル・コフィンは、グランジの後に、ルーツ・ミュージックやヒップホップも取り入れるバンドが出てくる中で登場したUSオルタナ・バンドです。
atagi:アシッド・ジャズな感じもありますよね。高校1~2年の頃に、ジャケ買いで出会ったんです。最初はよく分からなかったんですけど、ブラインド・メロンやケイクを知ってから聴き返すとめちゃくちゃかっこよくて、音楽を作るうえで目標にするバンドになりました。
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――PORINさんは、この辺りの音楽も聴きますか?
PORIN:"COLORS"は私も宇多田さんの中で一番好きな曲ですね。これを最初に挙げる人って珍しいと思うし、ちょっとビックリしました。
atagi:次の平沢進さんは、今敏さんの映画『パプリカ』の"白虎野の娘"で興味を持ったんです。ライヴ映像を観ると、気が狂ってますよね(笑)。洋楽的な表現やライヴの見せ方をしているのに、すごく日本語を綺麗に使う人でもあって、音使いも東洋の風を感じさせてくれる。この人じゃないと満たされない情景があると思うんですよ。
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- シングル
- アルバム
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――そして最後は、ジェスカ・フープとアイアン&ワインことサム・ビームの曲です。
atagi:5年ほど前、仲のいいBabiちゃんと好きな音楽を交換し合った時に、アイスランドのキラ・キラやXTCと一緒にジェスカ・フープが2曲入っていて、それ以来ずっと虜です。「僕が最終的にやりたいと思う音楽をやっている人だな」と思います。音楽の聴き方って色々あって、こうしてプレイリストを作ることで、「聴き方論」みたいなものが見えるのが面白いですよね。PORINのリストも、やっぱり人柄が見えるものになっているし。
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- シングル
- アルバム
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PORIN:でも私のリスト、子供っぽいなぁ(笑)。
――小さい頃の雰囲気がよく分かる、すごくいいリストだと思いましたよ。
atagi:ねえ、いいリストですよね。
――今回選んでもらった曲の中に、3作目『Awesome City Tracks 3』に特に影響を与えたものはあると思いますか?もしくは、制作中に影響を受けた曲があれば教えてください。
atagi:当時よく聴いていたのはベブ・シルヴェッティの"Spring Rain"ですね。電気グルーヴの"Shangri-La"の元ネタですけど、あれをサンプリングしたかったんです。"Don't Think,Feel"に使って許諾を待つだけだったんですけど、NGが出たので急きょ自作しました(笑)。
PORIN:あとは、1994とか。音作りのアイディアとしてみんなで聴いていましたね。
atagi:今回はかなり緻密に、音像にコントラストを付けたんです。他に気を付けたのは、情報過多になりすぎず、それぞれの場面で「ここは誰が主役かはっきりさせる」ことですね。曲の中に主役を立ててあげると、芯の強いものに聞こえると思うので。
――そういえば、最近のライヴでもマツザカさんとモリシーさんがステージ後方に下がるなど、メンバーの立ち位置が変化していますね。
PORIN:そうなんです。あれもフロントマン2人の存在感を出すためにやったことなんですよ。
――ACCは毎回、アルバムに『Awesome City Tracks』というタイトルを付けていますが、これまでの3作で描いた架空の街は、どう変化していると思いますか?
atagi:僕の解釈では、1枚目は3人称的な視点で、2枚目は「僕とあなた」という主観で捉えたもの。3枚目はそこからさらにもぐって、心の中に入っているようなイメージですかね。だから今回は、心象風景を歌った曲が多いと思うんです。
PORIN:私は、最初は架空の街だったものが、今はベッドルームになったようなイメージ。ファーストは架空の街=「ないもの」を歌っていたのが、セカンドでどんどん街の話になって、今は自分の話や愛の話になっていて。ひとりの心の中の風景になったと思います。
――だからなのか、『Awesome City Tracks 3』は、聴きながらその街の景色を想像するのがすごく楽しいアルバムになっているように感じますね。人によって街の風景が変わってくるというか。
atagi:本当ですか?そうやって聴いてもらえるなら、すごく嬉しいですね。
ORIGINAL PLAYLIST
Aweceme City Clubのルーツがわかるプレイリスト
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PORIN(Vo,Syn)
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- シングル
- アルバム
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atagi(Vo,Gt)
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- COLORS (2004 Remastered)
- 宇多田ヒカル
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TOYOTA WiSH CFソング
- シングル
- アルバム
- 着メロ
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- シングル
- アルバム
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- シングル
- アルバム
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- シングル
- アルバム
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text&interview by Jin Sugiyama
photo by Mayuko Yamaguchi
DISCOGRAPHY
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- Awesome City Tracks 3
- Awesome City Club
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男女混成5人組ポップ・バンドAwesome City Club(通称ACC)の3rdアルバム。
- アルバム
- 7曲収録
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- アルバム
- 7曲収録
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- アルバム
- 7曲収録
PROFILE
2013年春、それぞれ別のバンドで活動していたatagi、モリシー、マツザカタクミ、ユキエにより結成。2014年4月、サポートメンバーだった PORINが正式加入して現在のメンバーとなる。「架空の街 Awesome City のサウンドトラック」をテーマに、テン年代のシティ・ポップをRISOKYO から TOKYOに向けて発信する男女混成5人組。2015年、ビクターエンタテインメント内に設立された新レーベル〈CONNECTONE〉より、第一弾新人としてデビュー。4月8日にファーストアルバム『Awesome City Tracks』をリリースし、iTunesロックチャートで1位を獲得するなど話題を呼んだ。9月16日には早くもセカンドアルバム『Awesome City Tracks 2』をリリース。11月に開催されたバンド史上初となる全国ワンマンツアーも大盛況のうちに幕を閉じ、2016年3月には配信シングル"Vampire"をリリース。6月22日に3rdアルバム『Awesome City Tracks 3』をリリースし、この夏の大型野外フェスにも多数出演が決まっている。
LIVE
■Awesome Talks -Vol.5
日程:2016年11月17日(木)
会場:大阪・umeda AKASO
時間:OPEN 18:00/START 19:00
料金:ADV ¥3,500 DOOR 未定
■Awesome Talks -Vol.6
日程:2016年11月24日(木)
会場:東京・TSUTAYA O-EAST
時間:OPEN 18:00/START 19:00
料金:ADV ¥3,500 DOOR 未定
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