mysound SPECIAL INTERVIEW!! HIROSHI WATANABE

mysound SPECIAL INTERVIEW!! HIROSHI WATANABE

新宿に帰還した<Re:animation>の大トリを飾ったHIROSHI WATANABE。同イベントの発端でもある『交響詩篇 エウレカセブン』のアンセム“GET IT BY YOUR HANDS”の作者として、また今春、デリック・メイが主宰するデトロイトテクノの名門〈Transmat〉から本人名義のニューアルバム『MULTIVERSE』もリリースしたばかり。つまりアニメとクラブミュージックをまたぐ<Re:animation>が→から心底出演を待望されていたキーマン、それがHIROSHI WATANABEというわけなのです。ちなみに新宿生まれの彼にとっては歌舞伎町での開催はまさにジャストなタイミングだったそう。イベント出演の感想や新作についてお話をお聞きしました。






NEW RELEASE

INTERVIEW



  • "日本人じゃないと絶対作れないものじゃなきゃいけない"


    --<Re:animation>に出演された感想はいかがですか?

    自分が想定してた以上のことが起きたっていうのはありますよね。僕自身、そこまでアニソンのシーンに深く触れてなかったもので。とはいえ<Re:animation>っていうイベント自体が基本的にはクラブミュージックも有るということで僕自身もそれを信じて出演したんですね。でも予想以上の勢いと湧き上がり感を実感して、ジャンルってそもそももう関係ないなと思わされた部分がイベント中、多々ありましたね。

    --1曲目に"GET IT BY YOUR HANDS"を持ってこられましたね。

    確信犯的な、頭でドーン!てやって、そのまま違う世界へと誘う戦術で今回はやっちゃいましたけど、もう一つはゆっくりジワッと僕の世界に十分引き込んでから、知らぬ間に違う空気になりきったところであの曲を入れるのも全然アリだったと思ってるんです。だから2回できたら2パターンやりたかったっていうところはありますね。

    --改めて今回の出演の経緯を教えてください。

    DJ AKiくんが以前に出演されてるのをたまたま伺って。その上で<Re:animation>というイベントの主旨を知って、僕からちへくんに会わせてもらって話を聞いた時、ちょうどリアニが新宿に戻っての開催、これは完璧なタイミングなんじゃないかというところから膨らんでいったんですね。

    --しかも今回のために新曲"Dignity of Life"まで制作されたという。

    この折角のタイミングで参加するだけだといち出演者に過ぎなくなってしまうので、そうじゃなくてやっぱりそもそものエウレカからの繋がりや意味、流れを考え、曲を作るところからのドラマが今回もっとも重要だったと思っています。この新曲はそういう意味ではとても深いメッセージがあって、Get It By Your Handsからの進化や未来へ繋ぐ新たなテーマでもあったと思っています。

    --最新アルバム『MULTIVERSE』についても聞かせてください。

    本当の意味で満足して作品と謳って発表できるのかの境界線はキャリアの最初の頃はすごい速度で上がって行って。今、僕が40半ばになったところ今度はハードルがゆっくり上がっていってる段階に入ってて。ゆっくりでもこれが止まることはないわけで、このハードルがちょっとずつ上がってってる中で、それを飛び越えてくってレベルが多分今なんだと思うんです。

    --デトロイトテクノに通じるある種の郷愁を感じました。

    日本に生まれ育った僕たちは、デトロイトがリアルにどんな街なのかはなかなか触れられないし、わかってもいないわけじゃないですか。ただ日本人が共通できる哀愁感だったり、メロディの部分だったり、違った意味ですごく共感できるものがあるからデトロイトテクノだったりデトロイトミュージックって日本人から愛されてるんですよね。僕は本来そういう意味ではデトロイトオタクでもなかったし、音でそれを常に打ち出してきたわけじゃないんです。だけど、デリック・メイとの交流が深まる中で彼から見えた僕の音楽の中にある世界観やポイントが、彼らが音楽で何を表現したいのか?っていう部分とベクトルが近かったんだと分かったんです。「おまえの音楽の中に自分たちが感じようとしたものがもうそのまんま宿されてる」と、「だからおまえの音楽が好きなんだ」とデリックに以前言われたんですね。それを聞いた時に境界線とか人種というところも飛び越えて完全に音楽でシンクロしてるんだなって感じ取れたんです。だから僕が一番やりたくなかったのは、"〈Transmat〉から出せる、これはチャンスだ"と思った時に所謂王道デトロイトテクノな作りには絶対しちゃいけないと思ったし、やはり意識しすぎてしまうと結局それは求められていない事になると思ったんですよね。だから〈Transmat〉の世界観やマナーっていうものがありながらも日本人じゃないと絶対作れないものじゃなきゃいけないと思っていました。

    --では最後に今後の活動の展望を聞かせていただけますか。

    重要なミッションというと大げさかもしれないけど、僕の音楽をフォローしてきてくれている人達の中で、例えばリアルにテクノしか聴いてこなかった人がこっち側にいて、反対側には遡って『ビートマニア』から入って来てくれた人たちがいて、そして更にエウレカセブンから入ってきた人たちがいて、それぞれすごく大きなエリアがある。今までは自分自身が直接触れ合えて来れなかったエリアへと、今回のようなきっかけで近づいて行け、〈Transmat〉から僕の新作を出せた同じ年に<Re:animation>に出させて貰い、更には、<Re:animation>の会場へと足を運ぶであろう人達へ向けて新しく楽曲を作れたってことが最大のシナリオだし、今回この3点を繋ぐことこそが新たにここから大きなものが続いていくことがあると思っています。




    text&interview by Yuka Ishizumi

PROFILE

  • ドイツ最大のエレクトロニック・レーベルKompakt唯一の日本人アーティストとしてKaito名義で4枚のオリジナルアルバム、更にそれぞれ対になるビートレス・アルバムをリリースし、繊細かつ美しい旋律により幅広い音楽ファンに受け入れられている。ギリシャのKlik Recordsからは本名のHIROSHI WATANABE名義でも2枚のアルバムを残している。2016年にはテクノ史に偉大な軌跡を刻んできたデトロイトのレーベルTransmatより『Multiverse』を発表。主宰Derrick Mayの審美眼により極端に純度の高い楽曲のみがナンバリングされるため、近年はリリースそのものが限定的になっている中での出来事。さながら宇宙に燦然と煌めく銀河のようなサウンドが躍動する作品となっている。日本人として前人未到の地へ歩みを進める稀代の音楽家と言えるだろう。

LIVE

  • ■HIROSHI WATANABE TRANSMAT "MULTIVERSE" RELEASE TOUR FINAL
    テクノの歴史に偉大な軌跡を刻んできたTransmatより日本人として
    初めて作品を発表したHIROSHI WATANABEの
    全国30カ所以上を巡ったリリースツアー・ファイナルが開催

    2016年、デトロイトテクノ創世記より珠玉の名曲を発表してきた伝説的レーベルTransmatより、
    HIROSHI WATANABEが日本人として初めて『MULTIVERSE』を発表。レーベル主宰Derrick
    Mayの審美眼により極端に純度の高い楽曲のみがナンバリングされるため、近年はリリースそのものが限定的になっている中での出来事となった。そして作品の発表を記念して全国30カ所以上で敢行してきたツアーのファイナルが代官山のSankeys TYOで開催される。『MULTIVERSE』というタイトルが示す通り銀河に煌めく抒情詩を編むべく、ツアーの集大成となる90分にも及ぶ荘厳なライヴを披露。楽曲の制作段階から各地でのギグを経て生成したクリエイションの結晶を昇華させ、この場でしか体験できない特別なライヴセットで約半年に渡った巡礼を締めくくる。共演にはTransmatのレーベルメイトであり、HIROSHI WATANABEとの共作もリリースしているKarim Sahraouiが登場。メロディアスで有機的なエレクトロニックサウンドを表現する両者の音楽性が交差し、美しい響きが空間を包み込むだろう。

    ■日時: 2016年8月6日 (土) OPEN 22:00
    ■会場: Sankeys TYO www.sankeystokyo.info
    ■料金: DOOR ¥3500、ADV ¥3000、Under23 ¥2500、Before11:30 ¥2000
    ■LIVE: HIROSHI WATANABE aka KAITO (Transmat/Kompakt)
    ■DJ: KARIM SAHRAOUI (Transmat/Mirakles Music), NAOKI SHIRAKAWA
    ■LOUNGE: shiba & haraguchic (FreedomSunset), JAVA (Yu-Zen/JTT), MASANORI NOZAWA (medium), TUNE aka FUKUI (INTEGRATION), Yonenaga (R406/Select Kashiwa), Masa Kaaos (PYROMANIA/PHONOPHOBiA)


    HIROSHI WATANABE 公式サイト

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