mysound SPECIAL INTERVIEW!! 空気公団

mysound SPECIAL INTERVIEW!! 空気公団

様々なミュージシャンや著名人の方々に選曲をお願いして、その楽曲にまつわる思い出を語ってもらうプレイリスト企画。今回は7月初旬に通算9作目となる最新アルバム『ダブル』をリリースしたばかりの3人組ポップス/ロック・バンド、空気公団の登場です。

まるで日常の風景や曲の中に暮らす様々な人々の感情をすくいあげる山崎さんのヴォーカルと、それに寄り添う戸川さん、窪田さんの演奏――。それらが豊かなストーリーを紡いでいく空気公団の楽曲は、音楽というよりもむしろ映画的。そこに描かれる普遍的な日本の風景は、人によって様々な映画や景色のようなものを連想させるはずです。

では、果たして音楽的にはどうなのか?今回は普段制作中に音楽の影響源を一切持ち寄らないという3人に、「最新作に影響を与えたかもしれない楽曲」を3曲ずつ選んでもらうことで、新しい挑戦が詰まった『ダブル』制作の舞台裏を音楽面から紐解いてもらいました。









NEW RELEASE

  • 『ダブル』
    空気公団

    2016.07.06 Release
    DDCZ-2095 / fuwari studio / ¥3,056(+tax)


  • アルバム/ダブル/空気公団
    ダブル
    空気公団

    • アルバム
    • 10曲収録

INTERVIEW



  • 窪田"曲の主人公やその曲が持っている景色を共有して作るんです"


    ――今回の新作『ダブル』の制作は、そもそもどんな風にはじまったものだったのですか?

    山崎:いつも私がタイトルを決めて、「こんなアルバムにしたい」ということを漠然と伝えるんですが、今回は「私が8曲作るので、1曲ずつお願いね」という話をしましたね。

    戸川:最初に、「『ダブル』というコンセプトがある」という話がゆかりさんからありまして。

    山崎:街の写真屋さんに飾られている写真の中に外国人の方が鏡越しにカメラ目線で写っているものがあって、本人の後ろ姿とカメラ目線の顔が両方写っていたんです。それを見て、「『ダブル』っていいかもしれない」と漠然と思ったのがきっかけでした。

    ――なるほど。そのアイディアが今回のアーティスト写真にも反映されているんですね。

    山崎:そうなんです。人の中に「2つある」という感じ。「表と裏」とか、「感情の隣り合っているもの」とか、そういうものを表現するのにいいテーマだと思ったんですよ。

    ――今回は中村一義さんも3曲目"つながっている"にヴォーカルを提供しています。これはどんなきっかけで実現したものだったんですか?

    山崎:曲を作った時に中村さんに歌ってほしいと思って熱い思いをメールしたら、快くお引き受けしていただきました。「ここに何かほしいです」ということだけお伝えして、あとは好きに歌ってもらいましたね。中村さんが思いもよらぬフレーズを入れてくれました。

    ――今回はそんな新作『ダブル』に「影響を与えたかもしれない曲」というテーマでプレイリストを作っていただきました。みなさんは小さい頃や学生時代、プレイリストを作るのは好きでしたか?

    山崎:私は小学生の時に、友達と3人でインチキラジオ番組を作っていたんですよ。そこに音楽のコーナーもあって、当時流行っていた光GENJIをかけたりしていましたね。その後、中学になると当時使っていたラジカセを窓に向けて、毎朝の車の音や鳥の鳴き声を録っていましたね。「この日ってもうないんだな」「それを残さないといけないんじゃないか」と思って。当時はかなり心配されました。「趣味があぶない」と。

    ――(笑)。戸川さんと窪田さんはどうですか?

    戸川:僕はあまり記憶にないですね……。何かあればいいんだけど(笑)。

    山崎:でも、今回私が選んだ空気公団の"たまに笑ってみたり"は、最初に聴いたのは戸川さんのプレイリストだったんです。初めて会った時に、「こういう曲を作ってるんです」と渡された曲で。

    ――ああ、なるほど。

    窪田:僕の場合はTVのオープニング・タイトルがすごく好きで、小さい頃夕方に色んなアニメやドラマの再放送などをよく録っていましたね。『新オバケのQ太郎』とか、『ジャングル黒べえ』とか、『マイティ・ハーキュリー』や『あしたのジョー』もそうでした。今はYouTubeでも観れますが、その頃の主題歌って音楽的にも高度だったりするんですよ。

    ――メンバー間でプレイリストを渡して、情報交換をすることもありますか?

    一同:(口々に)全然ないです(笑)。

    窪田:僕らはサウンドのお手本をトレースするような作り方ではなくて、曲の主人公やその曲が持っている景色を共有して作るんです。元ネタ史上主義のようなものって、どうなのかな?と思う部分もあるんですよ。

    ――だからこそ今回のテーマも「新作に影響を与えた"かもしれない"曲」ということなんですね。では実際に楽曲について聞きたいのですが、山崎さんの1曲目は空気公団のはじまりの曲、"たまに笑ってみたり"。山崎さんのリストはすべて空気公団の楽曲です。

    山崎:曲を作る時は、まず自分たちの既存曲に注意して作ります。それもあって「この曲がなければ(新作も)なかったな」と思って選びました。私は曲も人みたいだと思っていて、生まれたら言葉を覚えさせて、服を着せて外に出す、という風にしたい。最初に聴かされたものは、戸川さんのヴォーカル入りでした。戸川さんが歌詞もつけていて。

  • たまに笑ってみたり/空気公団
    たまに笑ってみたり
    空気公団

    スタジオライブ

    • シングル
    • 着うた®

  • 戸川:そうだったっけ?!(笑)。

    山崎:でも、「この歌詞じゃない方がいいのかな」と思って、私が歌詞とタイトルを変えたんです。

    ―― 一方、戸川さんが選んだのはベン・フォールズ・ファイヴ。ファーストの曲ですね。

    戸川:あえて言えばですが、この曲は全体的にひずんでいる雰囲気が"ベン・フォールズ・ファイヴ"に似ていると思うんです。ロバート・スレッジのまるで歌っているようなベースが好きで聴いていましたね。

  • ジャクソン・カナリー/ベン・フォールズ・ファイヴ

  • ――なるほど。続く窪田さんのダリル・ホール&ジョン・オーツは、新作で言うとインスト曲"不思議だね"に似ているように思えました。

    窪田:そうなんです。"不思議だね"は英語が乗りやすい歌メロがあるものをインスト化してみようと作ってみたら、結果的にダリル・ホール&ジョン・オーツやトッド・ラングレンのようになりました。

  • One On One (12” Version)/Daryl Hall & John Oates

  • ――山崎さんの2曲目、"ビニール傘"はどうでしょう?

    山崎:この季節(梅雨)にCDを出すのは初めてなんですが、「それならビニール傘が必要だ」という理由で選びました(笑)。過ぎていく日々に色々なことを思うのは今でも変わらなくて、2~3階建ての喫茶店の窓から外を見ていて、ぽつぽつと雨が降り始めた時に傘が広がっていくような風景とかを、自分の中に取っておくんです。

  • ビニール傘/空気公団
    ビニール傘
    空気公団

    • シングル
    • 着うた®

  • 戸川"どんな曲でもゆかりさんが歌うと空気公団になるんだな"


    ――続いて、戸川さんの2曲目はアイズレー・ブラザーズですが、これは"失ってしまった何ものか"に影響を与えたかもしれないということですね?

    戸川:『ダブル』では、ゆかりさんがこれまでやっていなかったような種類の楽曲を色々と書いていると思うんですよ。そういう新しいドアを開けた感じの曲を、僕も作ってみたんです。


  • ――原曲のロナルド・アイズレーのヴォーカルと、山崎さんのヴォーカルは全然タイプが違うのが面白いです。

    戸川:どんな曲でもゆかりさんが歌うと空気公団になるんだな、と改めて感じました。(曲の)語り部的な位置は崩さない人なんだな、と。この曲はGREAT3のファースト・アルバムに入っていて、そこから好きになったんですよ。

    ――窪田さんの2曲目はバリー・ホワイト。これも意外なチョイスです。

    窪田:今回"僕にとって君は"のアレンジをしている時に、「バリー・ホワイトみたいだ」と思ったんです。弦楽器の感じもそうだし、リズムがタイトで、エモい感じがあるところもそうですね。70年代のバート・バカラックのライヴ盤を聴いたりもしていたので、そういうものもふいに顔を出したのかもしれません。作ってみてそう思いました。

  • Never, Never Gonna Give Ya Up/バリー・ホワイト

  • ――山崎さんの3曲目は、空気公団の"それはまるで"ですね。

    山崎:この曲は歌詞がすごく好きなんです。誰かと一緒にいて別れがつらい時に、明日(が来るの)を憎むというか。その気持ちを80%ぐらい描写することで表現できたと思っている曲ですね。『ダブル』は色んな要素があるアルバムですが、それが全体としてはうまく収まっているという意味でも、この曲に似ているのかなと思ったんですよ。

  • それはまるで/空気公団
    それはまるで
    空気公団

    • シングル
    • 着うた®

  • ――なるほど。続いて戸川さんが選んだRCサクセションは、「"あなたの朝"を聴いた時の感覚と似ている」とのことですが、特にどんなところに共通点を感じるでしょう?

    戸川:楽しいと悲しいの間のように、一言では言い表せない感覚が似ていると思うんです。RCサクセションは、大人になってから本当のよさが分かったような気がします。歌のすごさもバンドをはじめてから分かるようになったし、今聴くとギターも絵のようで芸術的ですね。

  • 君が僕を知ってる (Live at 日比谷野外音楽堂 / 1986)/RCサクセション

  • ――そして最後は窪田さんのヴェルヴェット・アンダーグラウンド“Candy Says”です。

    窪田:この曲は前作の『ホワイトライト/ホワイトヒート』でめちゃくちゃした後の3作目で、
    おとなしい雰囲気ですよね。でも刃物を持っているような感じが曲から感じられる。それは空気
    公団にも通じるものだと思っているんです。『ダブル』だと特に、1曲目の“変化する毎日”。世間
    的に“癒し”があると言われる曲でも、自分にはそんな風には思えないんですよ


  • ――今回それぞれが選んだリストを見て、どんな風に感じましたか?

    山崎:戸川さんや窪田さんがどんな音楽を聴いているかを、普段あまり知る機会がないんですよ。だから、「ふーん」という感じで。

    戸川:負の感情なしに、それは僕も本当にそうです(笑)。

    窪田:(笑)。こうして喋ると自分で納得する部分もありますし、2人が選んだものを聴いても「なるほどな」と思うところがありました。喋ることで腑に落ちたというか。

    山崎:空気公団って、結成してから今まで「こんな感じにしたいんだよね」と音楽を持ち寄って曲を作ったことが本当に一回もないんです。「これを見て」と言って持ってくるものは、映像とか「この色にしてほしい」とか、そういうものしかないので。

    ――音楽でないものを共有して、音楽が生まれていくんですね。

    戸川:たとえば、最近自分が好きで聴いている音楽を2人に言っても、まったく反応がないという経験を、もう何年もしてきているんですよ(笑)。

    ――今も、みなさんまったく否定していないですし…。

    一同:はははは。

    山﨑"これからもずっと変わらずに、大切にしていくことだと思いますね"


    ――空気公団は窪田さんが加入してから今年で10年、来年にはバンド結成から20周年を迎えます。初期の頃と比べて変わったところ/変わらないところはあると思いますか?

    山崎:当時は手がかかる子供という感じでしたね。今は19歳なので、そろそろ立派な大人です。

    戸川:レコーディングも昔に比べて早く進むようになりましたね。

    窪田:自分が途中で加入して、その後ライヴをするようになって、現場で曲が変化していくのを感じました。最近でも花澤香菜さんのプロデュースをしたりと("透明な女の子"を山崎さんがトータル・プロデュース。ジョイント公演も実現)、活動していく中で色んな人との出会いも広がってきましたね。

    山崎:でも、空気公団にとって大事なのは音楽で、私たちメンバーはその後ろにいる人でいい。それはこれまでも、これからもずっと変わらずに、大切にしていくことだと思いますね。






ORIGINAL PLAYLIST

DISCOGRAPHY

PROFILE

1997年結成。メンバー交代を経て現在は3人で活動しています。音源制作を中心に活動しながら、スクリーンの裏側で演奏するライブイベントや、音楽を聴きながら作品を楽しむ展覧会「音の展示」等、様々な公演をしている。

アーティストページ

LIVE

■空気公団『ダブル』LIVE TOUR
日程:2016.10.9(日)
会場:京都・磔磔
時間:OPEN 17:00/START 18:00
料金: ADV ¥4,500/DOOR ¥5,000

日程:2016.10.22(土)
会場:台北・月見ル君想フ(台湾)
時間:OPEN 19:00/START 20:00
料金: ADV 1,500NTD/DOOR 1,700NTD

日程:2016.11.26 (土)
会場:渋谷WWW
時間:OPEN 18:00/START 19:00
料金: ADV ¥5,000/DOOR ¥5,500 ※SOLD OUT


詳細はオフィシャルサイトで

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