mysound SPECIAL INTERVIEW!! パスピエ

mysound SPECIAL INTERVIEW!! パスピエ

15年9月にリリースした『娑婆ラバ』ではダンス・ミュージックとロックとの融合により接近し、12月にはついに武道館での単独公演を行なうなど、ますます勢いに乗る5人組バンド、パスピエ。彼らは今年に入ってこれまでの集大成とも言える武道館公演の模様を収めたDVD作品『Live at 日本武道館 "GOKURAKU"』を発表すると、16年の第一弾シングルとして"ヨアケマエ"をリリース。ここではよりスケール感を増した楽曲の中で、まるで徐々にパスピエの第二章が明けていくかのような、新鮮なサウンドを手に入れています。

そこで今回は、中心人物の成田ハネダと大胡田なつきの2人に、「2人にとってのルーツ」をテーマに5枚ずつ選んでもらうプレイリストの作成を依頼。バンドがまた新たな場所へと向かおうとしているこのタイミングで、一度自分たちの過去に向き合ってもらいました。6月には会場ごとに違う3組のゲストを迎えたライヴ・シリーズ<印象E>の開催も決定。そのラインナップにもかかわってくる、パスピエの2人のルーツとは?!









NEW RELEASE

INTERVIEW


  • 成田"ダンス・ビートとバンド・サウンドの融合に加えて、オリエンタルな要素をつねに意識して加えていきたい、というのが今年のテーマ"



    ――4月の頭にDVD作品『Live at 日本武道館 "GOKURAKU"』がリリースされました。アンコールのラスト"最終電車"は、「ライヴが終わってほしくない」という意味にも取れる歌詞が印象的ですが、あの曲を武道館でやっていた時はどんなことを考えていましたか?

    大胡田:「私、パスピエでよかったな。」って思いました。あとは"最終電車"をお客さんも同じ気持ちで聴いてくれているかな、とか。

    成田:僕は終わってしまうというよりも、「ここからが第2歩目だな」という感じでした。武道館公演をしたことでハードルがまた上がっていくとも思うので、"最終電車"をやっている時は、すでに来年の心配をしいて(笑)。でも、僕らが信じてきた音楽に対して、「ついてきてくれた人がこれだけいる」という実感が持てたのは、これからも財産になるんじゃないかと思いますね。

    ――そして今回、16年の第一弾シングル"ヨアケマエ"がリリースされました。この曲はどんな風に作りはじめたものだったんでしょう。

    成田:15年の12月頃、ちょうど武道館公演と重なるぐらいに第1弾のデモを作り始めたんです。数年音楽シーンでやらせてもらって、もう新人の時代はとっくに終わったと思うので、今自分たちがやって面白いことは何かな、ということを考えました。ダンス・ビートとバンド・サウンドの融合に加えて、オリエンタルな要素をつねに意識して加えていきたい、というのが今年のテーマではあって。それぞれのキャラクターや、何となく「こういう風に来るだろうな」というのはある程度分かっているので、そこに対して「パスピエ、今回は新しいことをしてきたな。」と思ってもらうにはどうすればいいかを考えていったんです。

    ――《革命は食事のあとで/誰よりスマートに済ませたら》という歌詞が印象的ですね。

    大胡田"パスピエに入る前はナンバーガールに憧れて、そういうバンドのヴォーカルになりたいと思っていました"


    大胡田:歌詞はその一行から書いていったので、そこが1番印象に残ると言ってもらえるのは嬉しいですね。16年の1枚目なので、「今年私たちがどんなことをやっていきたいか」ということを予感してもらえる内容にしたいということは決まっていて。それに興味を惹ける言葉で表したらどうなるかな、と考えたのがこの1行だったんです。

    ――さて、今回は「パスピエのルーツが分かる曲」というテーマでプレイリストを作ってもらいました。まずは大胡田さんが選んだ小川美潮さんの"おかしな午後"ですが、これは大胡田さんの有名なルーツのひとつですね。

    大胡田:私は小川美潮さんが大好きで、初めて聴いた時から、今も"おかしな午後"の世界に憧れて生きているんです。音も歌詞も歌い方も「ひとつの世界を作っているな」と思ったのを覚えていますね。私も頭の中に自分の世界があるタイプだったんですけど、当時はそれって外に説明しづらいもので。なので、こんなに形に出来てすごいな、羨ましいなと思っていたんです。

  • おかしな午後/小川美潮
    おかしな午後
    小川美潮

    • シングル
    • アルバム

  • ――確か、映画『TSUGUMI』の主題歌に使われていたのをきっかけにこの曲を知ったそうですが、映画を観に行ったんですか?

    大胡田:いえ、私が病院にいた時に、借りてきてくれたか、ビデオをダビングしてきてくれたかで、母親が持ってきてくれたんですよね。私もこの曲のように自分の世界を出して、そこにみなさんを引き込みたいとずっと思っていて、私の人間形成にもかかわってくるような曲なんです。次のナンバーガールは、私がバンドに憧れるようになったきっかけですね。当時中学生ぐらいで、レンタル屋さんで「何この黄色いジャケット・・・?」という感じで見つけたら、「今まで聴いたことのない音楽だな」という衝撃が凄くて。パスピエに入る前はナンバーガールに憧れて、そういうバンドのヴォーカルになりたいと思っていました。

  • 鉄風 鋭くなって (LAST LIVE AT SAPPORO)/NUMBER GIRL

  • 成田:昔は吠えていたもんね。メンバーでもその頃の大胡田を知っているのは俺ぐらいなんですけど、当時は「ヤバいな」と思ってて。

    大胡田:(笑)。ジャケットの絵にも影響を受けていますし(パスピエのアートワークは大胡田が担当)、ナンバーガールはオリエンタルではないですけど、「和」と「ロック」という感覚もありますよね。私、セーラー服が好きなんですけど、1番最初、(『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』の)セーラー服で銃を持っているようなジャケットを見たりもして・・・。今まで気づいてなかったですけど、そこも影響を受けているかもしれないです。

    ――次はスティーリー・ダンの"彩(Aja)"です。

    大胡田:最初にやっていたバンドでは、鍵盤を弾きながら作詞作曲とヴォーカルをやっていたので、その時のスタイルからの1枚です。私は演奏の上手い方が好きなんですよ。


  • ――まさにその最高峰という感じで。

    大胡田:それに、"彩(Aja)"には謎のアジア感がありますよね。私は海外から見た「ヤバい日本」みたいなものがすごく好きなので。純粋な日本というよりもオリエンタルな感じが好きなのは、"彩(エイジャ)"とか、次のエールの"日本海(原題:Mer du Japon)からの影響が大きいかもしれないです。エールの曲は、たまたま知りました。海外のMVで和っぽいものを探している時に見つけて、「こんなにいい映像の人の曲は全部いいに決まっている」と思って(笑)。デフォルメされていて、「これ違うんだけど分かる」みたいな感覚というか。


  • ――ケイト・ブッシュの"Babooshka"はいつ頃知ったんですか?

    大胡田:中学生か・・・高校生ぐらいですね。

    ――リアルタイムの音楽ではないと考えると、結構早かったのかもしれませんね。

    「変わったものを探すのがアイデンティティ」みたいな時期だったので(笑)。もともとビョークが好きで、そこから辿りついたんです。今自分がステージで動いたりしているのも、ケイト・ブッシュから影響を受けているんですよ。女性なのに美しくまとめていなかったり、ちょっと本能的な表現の仕方をしていたりするのが好きで、今も聴いてますね。


  • ――なるほど。ここからは成田さんの選曲ですが、まずはフジファブリックの"虹"です。

    成田:これは僕がバンドを始めたきっかけです。僕は小さい頃からクラシック・ピアニストになりたくてずっと頑張っていたんですけど、音大に入ってから友達に連れられて行ったロックフェスで彼らを観た時に、すごく「かっこいいな」と思って。鍵盤がいるバンドでここまでかっこいいと思えたのは彼らが初めてだったんです。バンドというとギターとベースとドラムというイメージで、キーボーディストがいたとしても、一歩二歩引いている印象だったというか。でもちょうど僕が観に行った時に、彼らや100sの池ちゃん(池田貴史)、東京事変、YOUR SONG IS GOODのようなバンドを観れたことが、自分の転機になったんです。"虹"はひねくれたポップが進んだうえでの最上級ですよね。


  • ――ユニークな音が色々と入っているのに、結果出来たものはポップというか。続く矢野顕子さんはどうですか?

    成田:フジファブリックを観て、バンドを始めて・・・。でも最初はどうすればいいのかも全然分からない状態で。自分のルーツ(=クラシック)をずっと切り離して考えていたんですよ。そこから「ピアノ」と「ポップス」を繋げてくれたのが矢野顕子さんでした。80年代前半ぐらいまでは、(日本の音楽シーンでは)今みたいにAメロ、Bメロ、サビという構図が全然出来上がってなくて、頭にサビやテーマがあって展開するものが多かったと思うんです。荒井由美さんや、80年代のアイドルの曲もそうですよね。でも"電話線"はそこからうねりのある曲が出てきた時代の、中でも一番うねりのある曲というか。僕自身、形式に捉われない曲が作りたいなと思っていて、パスピエの曲で言うと、"気象予報士の憂鬱"や"デ・ジャヴ"はそういうテーマを持って作った曲かもしれないですね。

  • 電話線/矢野 顕子
    電話線
    矢野 顕子

    • シングル
    • アルバム

  • ――YMOの"東風"は、矢野顕子さんを経て知った曲ですよね。

    成田:そうですね。僕はそれまでバンドを全然知らなくて、レッド・ツェッペリンすら知らなかったんです(笑)。それでTSUTAYAやタワー・レコードのCDを端から端まで聴き漁っていたら、まず矢野顕子さんに当たって、調べていくうちに(矢野顕子が共同作業をしたりワールドツアーに参加していた)YMOを知って。この曲はクラシカルでありつつ、僕らがやろうとしているオリエンタルな雰囲気もありますよね。日本人が世界に誇る音楽を考えた時に、過去もこれからもずっとそのひとつだろうなと思うんです。

  • 東風/YELLOW MAGIC ORCHESTRA
    東風
    YELLOW MAGIC ORCHESTRA

    • シングル
    • アルバム
    • 着うた®

  • 成田"「どうしようかな?」と考えている時に、今のパスピエの指針になったバンドがフェニックス"


    ――フェニックスの"1901"はどうでしょう?

    成田:僕は特に80年代ニュー・ウェーヴを好きで聴いていたんですけど、それを今の音楽シーンで出すとなった時に、昔のものをただリバイバルするようなバンドになってはいけないなと思っていて。「どうしようかな?」と考えている時に、今のパスピエの指針になったバンドがフェニックスでした。「ニュー・ウェーヴをスタイリッシュに聴かせる」ということをやっていて、今は見事にフェニックス・フォロワーが沢山いますよね。


  • ――そしていよいよ、ニュー・オーダーの"Bizarre Love Triangle"で最後です。これを知ったのはいつ頃だったんですか?

    成田:ジョイ・ディヴィジョンもそうですけど、音楽を掘り始めて割と早い段階で、「自分はニュー・ウェーヴが好きなんだな」と認識し始めてからですね。ニュー・ウェーヴらしさってキーボードで出したりする人が多いと思うんですけど、このバンドの場合は、何故かそれがベースっていう(笑)。あの独特のコーラスがかかった音も好きで、ひとつの楽器に対する固定観念を壊してくれたバンドなのかな、と思うんですよ。


  • ――今回挙げてもらった曲の中で、新曲"ヨアケマエ"にも影響を与えた曲はありますか?

    成田:"ヨアケマエ"は、サウンド面ではフェニックス辺りを意識的に参考にしているんですよ。今のニュー・ウェーヴってDTMと生音とを融合させていて、それがクラブ・ミュージックとの融合に繋がっていると思うんですけど、パスピエがやろうとしているのは、「同期ものを使ったりしない」ということで。ドラムの素材を切り貼りするわけじゃないけど、そういうテイストも醸し出したい。そんな音作りについて影響を受けていると思いますね。

    ――そして6月には、各会場にUNISON SQUARE GARDEN、フジファブリック、andropの3組を迎えたライヴ・シリーズ『印象E』が開催されます。今楽しみにしていることを教えてください。

    大胡田:また全部男性ヴォーカルですよね(笑)。なので、圧がすごいんですけど、私はバンドが違うだけじゃなくて、性別も違うという楽しみも感じてもらえればいいかな、みたいな。

    成田:全アーティスト、素晴らしい音楽性で、人としても素晴らしい人たちだからこそ一緒にやりたいなと思ったので、リスナーの人たちにも楽しんでもらえたら嬉しいですね。それに、個人的にフジファブリックは自分のルーツなので。昔、フジファブリックと四人囃子のツーマンを観に行った時、最後に全員で四人囃子の"カーニバルがやってくるぞ"をカヴァーしていて、それが本当にすごいライヴだったんです。今回はパスピエとフジファブリックのツーマンなので、やりながらその時の映像が蘇ってくるのかな、と思ったりしていますね。


ORIGINAL PLAYLIST

DISCOGRAPHY

PROFILE

2009年に成田ハネダ(key)を中心に結成。バンド名はフランスの音楽家ドビュッシーの楽曲が由来。卓越した音楽理論とテクニック、70s~00sまであらゆる時代の音楽を同時に咀嚼するポップセンス、ヴォーカルの大胡田なつきによるMusic Clipやアートワークが話題に。11年に1st ミニアルバム「わたし開花したわ」、12年に2nd ミニアルバム『ONOMIMONO』をリリース、3年3月に初のシングル「フィーバー」、6月にメジャー1stフル・アルバム『演出家出演』を発表しロングセールスを記録中。その後数々の大型ロックフェスに出演、好評を博し、また東阪で行われたパスピエ主催による自主イベント<印象A>、 <印象B>もソールドアウト。10月に初のワンマンツアー <印象・日の出>、追加公演<印象・日の出外伝>を開催、全箇所ソールドアウトし成功を収める。14年、3月に両A面シングル"MATATABISTEP/あの青と青と青"をリリース、4月に自主イベント第3弾 <印象C>に9mm Parabellum Bullet/clammbon/髭を招いて開催、即日ソールドアウト。6月に2ndフル・アルバム『幕の内ISM』をリリース。10月に最新アルバム『幕の内ISM』の収録曲を英語詞にして再録した4曲とトラックメーカー・Seihoによる『MATATABISTEP』のRemixを収録した『MAKUNOUCHI-ISM e.p』をiTunes Storeにて海外に向けて配信リリース。11月から年末にかけて全国14都市15公演の全国ツアー、<幕の外ISM>を行う。11月15日に新曲"贅沢ないいわけ"を配信限定でリリース。そして2015年、4月4日からNHK Eテレにて放送されるアニメ『境界のRINNE』(原作:高橋留美子)エンディングテーマとなるシングル"トキノワ"を4月29日にリリース。5月に海外流通盤『OZASHIKI MUSIQUE』、フランスのSpecificレーベルより『幕の内ISM』のアナログ盤がリリースされ、欧州にて初の海外イベント<GREAT ESCAPE>への出演を果たした。6月に自主企画対バンイベント第4弾<印象D>をレキシ(東京)、Base Ball Bear(大阪)、YOUR SONG IS GOOD(名古屋)らを迎え開催、全箇所ソールドアウト。7月29日にNHK Eテレ アニメ『境界のRINNE』の7月からのオープニングテーマであるシングル"裏の裏"を発表し、きたる9月9日にメジャー3rdフル・アルバム『娑婆ラバ』のリリースが決定。そして、12月22日の日本武道館をファイナルに据えた、2015年秋に開催する全国ツアーでも大成功を収めた。


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