DEZOLVE 6thアルバム『CoMOVE』について、キーボード友田ジュンが解説

 

国内最強の若手インストゥルメンタルバンドと評されるDEZOLVE(ディゾルブ)が、待望の6thアルバム『CoMOVE』をリリース。J-フュージョンの伝統を継承しつつ、さらなる進化を遂げた唯一無二のサウンドについて、キーボード担当の友田ジュンに話を聞いた。

2020年にリリースされた5thアルバム『Frontiers』が、テレビ朝日系『関ジャム 完全燃SHOW』にてヒャダイン(前山田健一)氏の「アルバムを通して聴きたいJ-POP」として紹介されるなど、幅広い音楽ファンから注目を集めているDEZOLVE(ディゾルブ)。この約3年間は、コロナ禍でツアーの中止・延期などに見舞われる中、メンバーそれぞれがプレイヤーおよびコンポーザーとして第一線で活躍。そして、山本真央樹(Dr)の初ソロアルバム『In My World』のリリースや新メンバー兼子拓真(Ba)の加入を経て、待望の6thアルバム(メジャー第4作)『CoMOVE』がリリースされた。さらにパワーアップしたDEZOLVE再始動の決意と、より深みを増した世界観を表現する12曲を収録。J-フュージョンの魅力を継承しつつ、さらなる進化を遂げた唯一無二のサウンドについて、キーボード担当の友田ジュンに話を聞いた。

 

DEZOLVEインタビュー(1)

 

いろいろなジャンルを混ぜたDEZOLVEだけのサウンドがあるということで、フュージョンバンドではなくインストゥルメンタルバンドと言っています

 

――メジャーでは2018・19・20年とアルバムをリリースしていましたが、今回は約3年ぶりとなりました。そのあたりの経緯をお願いします。

 そうですね。今までは1年に1枚のペースで来ていて、リリースライブを終えて一区切りという感じだったのですが、前作『Frontiers』の時はコロナ禍でライブがなかなかできなくて、間が空いてしまいました。DEZOLVEとしての活動が少し足踏み状態になったので、それを機に自分のアルバム(2021年『Daybreak』)を作ってみようとか、メンバー各々が個人の活動をしつつ、そこで得たものを新しいエッセンスとしてDEZOLVEに持って帰ってきた感じです。各々の充電パワーというか、結果的にそういう作品になりました。

――その間、心境の変化などありましたか?

 自分たちの活動や世界中が一旦ストップした時に、今までの当たり前が当たり前ではなくなって、やっぱり“やれることは今のうちにやっておかないと”という気持ちが強くなりました。だから、その時やりたいことをすぐにやって、どんどん発信していこうと思いましたね。“いつか”じゃなくて、すぐにやろうって感じるようになりました。

――今作の制作に入る際、どんなアルバムにしようという話になりましたか?

 アルバムを作るにあたって、まず最初に何となくの方向性をメンバーで話し合うのですが、やっぱり「明るいアルバムにしたい」というのは一同でありました。DEZOLVEはテクニカルな面を武器の一つにしていますが、キャッチーな面やメロディアスな面を大事にしたいというところもあって、そこをなるべく打ち出そうと。明るくて、これからまた新しいスタートというか、そういうアルバムにしたいなっていうのがコンセプトの一つとしてありましたね。

――その頃には新メンバーの兼子拓真さん(Ba)も加入されていたわけですね?

 はい。彼は、しばらくサポートメンバーとしてライブに参加してもらっていたのですが、プレイが素晴らしいというのはもちろん、僕らと年代も近いし話も合うし、4人で一緒にいるのがとてもマッチしていたので。できればメンバーになってくれないかという話をして、ぜひお願いしますということで入ってもらいました。彼が入ってくれたおかげで、DEZOLVEのサウンドが新しくなっていると感じます。

――今作では、フュージョンバンドからインストゥルメンタルバンドという打ち出しに変わっています。

 フュージョンという言葉で連想されるサウンド感は、もちろん僕らも好きで今回も取り入れていますが、メンバーそれぞれ好きな音楽がいろいろあって、それをDEZOLVEという一つのバンドの音として落とし込んでいます。なので、フュージョンという枠に収まらないようなサウンドになっている…そうなっていきたいという思いもあって。いろいろなジャンルを混ぜたDEZOLVEだけのサウンドがあるということで、インストゥルメンタルバンドと言っています。

――全12曲のうち、北川翔也さん(Gt)、友田さん、山本真央樹さん(Dr)できっちり4曲ずつになっているのは?

 今回は、均等に4曲ずつ持ち寄ろうって決めました。メンバーそれぞれがアルバム全体のバランスを見合っていて、「こんな曲ができたよ」って早い段階で聴いていた曲もあるので、誰かがバラードを書いてきたら、じゃあ自分は激しい系にしてみようとか、ちょっと違う雰囲気のものにしてみようとか。なので、もう早出しです(笑)。で、徐々に「こういう枠があったら面白いよね」とか「ちょっとチャレンジングな内容で担当してみよう」とか。そこで最後にうまく帳尻が合って、アルバムができたという感じになりますね。
 これは、もちろん作り手側だからわかることだと思うのですが、今作は各々のやりたいことや好きなものが分かれている印象があるんです。一聴して誰が書いた曲かというのが、だんだんわかりやすくなってきた。それぞれのサウンド感が、よりはっきりしてきたと思いますね。ある種、違う方向を向いていつつも、DEZOLVEという一つの枠組みに収まっていることによって、バンドの幅がさらに広がっていくのを感じています。

――では、1曲ずつお伺いしていきたいのですが、1曲目「Heart of the World」(作曲:北川翔也)はミュージックビデオも公開されているリード曲ですね。勢いと熱さもあって、ベースが凄まじい。そして終盤のハンドクラップがトリッキーで譜割りが理解できません。

 曲全体が6・6・6・7拍子になっていて、合わせると25拍。それに対して、クラップは16分音符で5つ割りにしています。すると、(16分の1ずつずれる分)ちょうど25拍とクラップ20回でぴったり合うので、また頭に戻れる、という仕組みです。

――ミュージックビデオでもやられているし、でもライブでお客さんができるのかという。

 それが、DEZOLVEのライブに来てくださるファンの方は、やっぱり素晴らしくて。できるんですよ、クラップが。僕らも撮影の時に「これ、ライブの時にやってもらえるのかな」って言ってたんですけど、きちんと予習してくださっていて(笑)。感動しましたね。

――キーボード視点での推しポイントは?

 すごくエネルギーがある曲なので、特にシンセリードでのプレイを聴いてもらえたら嬉しいです。ピアノソロもありますけど、「シンセソロは熱い感じで」と作曲者の北川くんにも言われたので。

 

DEZOLVEインタビュー(2)


――2曲目「Vantablack」(作曲:山本真央樹)については? この曲もベースが凄いです(笑)。

 今までやっていなかったジャンルをどんどんやっていこうというのも今回のコンセプトの一つで、この曲ではEDMサウンドを打ち出しています。そして、ベースの兼子くんをフィーチャーしたり。激しいところと落ち着くところの振り幅がある曲で、僕のプレイはチルアウト感…ダウナーな雰囲気になるところや、エレピソロも気に入っています。

――3曲目「Landscape」(作曲:北川翔也)は、イントロのピアノが印象的で打ち込みっぽくも聴こえますが、ライブでも映えそうですね。

 北川くんのデモに寄せる感じで弾いていて、打ち込みに近づけるというよりは、なるべくスクエアにタイトに。生演奏ならではの絶妙な揺らぎ具合だったりが、そのフレーズをワンプッシュ良くしてくれるので、そこは大切にしていきたいと思っています。ちなみにライブでは、一番最後のところで皆さんが手を振ってくださったりするので、一体感もあって盛り上がりますね。

 

「Coruscate」はコンセプトとして4人それぞれのプレイングが光るような曲にしたいという思いもありました

 

――4曲目「Coruscate」(作曲:友田ジュン)のタイトルは、きらめきとかピカピカという意味?

 僕は曲を作る時に、曲名を先に決めることが多いんです。書きたい世界観や何となくこういう内容の曲が作りたいというのが決まったら、何かしらのメロディーの欠片がある状態で、じゃあ何ていうタイトルを付けよう…というのが、まず最初の作業。で、「コーラスケイト」は“才能が光り輝く”という意味もある言葉なので、他の輝くという意味のBright(ブライト)ではなく、このタイトルにしました。コンセプトとして、4人それぞれのプレイングが光るような曲にしたいという思いもあったので。結果、メンバーそれぞれが、そこに向かっていってくれたので、タイトルに合ったサウンド感になっていると思います。

――5曲目「The Room of Serendip」(作曲:友田ジュン)のSerendipは、偶然の出会いという意味ですね?

 これは、最初の緊急事態宣言の時に、自宅で湯船に浸かるというのにハマった時期があって。お風呂に入るのって楽しいなって。それで、やっぱりお風呂の中ってリラックスしているので、いろいろなメロディーやアイディアが浮かびやすいんですよね。だから、お風呂の中で浮かんだメロディーを元に作った曲なんです。僕にとって、お風呂が幸運を呼び寄せてくれる場所だなっていう気持ちで、このタイトルを付けました。

――個人的には今作で一番好きな曲で、入り込めるというか浸れます。ライブでどっぶりと浸かりたい曲です。

 ありがとうございます(笑)。僕の中のイメージでは、最終的にはお風呂の中にいるのではなく想像の世界というか、もっと大きい空間に飛んでいくみたいなところがあるので、とても嬉しいです。

――6曲目「Tiny Vision」(作曲:山本真央樹)はタイトル通り可愛らしい曲ですが、J-フュージョン的なサウンドですね。

 真央樹くんが特に、CASIOPEAさんやT-SQUAREさんのJ-フュージョンが好きで、そういったサウンドを継承しつつアップデートしていきたいという思いがあるので。あと。ちょうど彼の子どもが産まれるというタイミングだったので、その子に向けて書いているというところもあります。なので、ちょっとポップな可愛いテイストになっています。

――使用機材にDX7(80年代を代表するヤマハの名機)とありますが、実機を演奏されているのですか?

 真央樹くんが実機を持っているので、まず僕がDX7をエミュレートしたソフト音源で弾いた後、そのデータを彼に渡してDX7に流し込む…というような作業です。

――7曲目「Atlantis」(作曲:山本真央樹)もDX7がクレジットされています。

 
はい。ピアノの音もそうですし、メロディー部分の音でも使っています。

 

個人的には「Beyond the Sunset」が一番、打ち込みのデモから生になった時のマジックが起きた曲だと思っています

 

――8曲目「Migration」(作曲:北川翔也)はパット・メセニー的な?

 はい、その通りです。北川くんがパット・メセニーのサウンド感がとても好きで、特にこの曲はそのエッセンスを取り入れているのがわかりますね。僕はピアノしか弾いていないのですが、「自由に弾いていいよ」と言われたので、自分の好きなようにやれたかなと思っています。

――9曲目「Uchronia」(作曲:友田ジュン)は“時間のない国”?

 僕が緊急事態宣言の時に感じた心象だったりとか、そういうのをテーマにした曲です。人がいなくなった時の異様な雰囲気、張り詰めた空気感というか異世界のような。せっかくだから、そういう未体験の感じを曲にしたいなって。

――寂しい感じから明るくなったりと、ストーリーを感じます。

 そうですね。時間が止まったような空気感から、“また元のような生活に戻れたらいいよね”というような思いを馳せているところへ行きつつ、また今の時間に戻ってくるみたいな。何となく、そういうストーリーになればいいなと思って作ったので。

――ブラスサウンドや最後のフィンガーシンバルも印象的です。

 エレクトリックよりもアコースティックな成分が多い曲にしたいというのもあって、他の曲でも使っているシンセブラスよりも、ブラスのほうが合うんじゃないかなと思いました。フィンガーシンバルは、メンバーそれぞれ劇伴やゲーム音楽のお仕事もしているので、そこからのフィードバックとして、効果音を取り入れて曲の情景を想起させたいというのはあるかもしれないです。

――10曲目「Starting Point」(作曲:山本真央樹)は、タイトル通りというかリード曲になってもいいような曲ですが、鍵盤はエレピのみ。

 そうですね。エレピだけをしっかりプレイしています。

――そして、11曲目「Beyond the Sunset」(作曲:北川翔也)の鍵盤は、唯一のアコースティックピアノで、しかも一発録り?

 はい。スタジオのグランドピアノで、ベーゼンドルファーです。個人的には一番、打ち込みのデモから生になった時のマジックが起きた曲だと思っています。もともと「いい曲だな」と思っていたのですが、実際に4人で演奏して出来上がった時との振り幅が一番大きいというか。本当の生の良さというか、そういうのを特に感じた曲です。

 

DEZOLVEインタビュー(3)


――12曲目「Fleeting」(作曲:友田ジュン)は“儚い”というような意味?

 この曲は、一口で言うと“ハッピーでエモーショナルな曲にしたい”というのが、まずありました。今日、最初のほうでお話しした“今やりたいことをやろう”と強く思ったこと、それをまさに曲にしたというか。自分が今やりたいことをやったり、友達や家族とか一緒にいる人を大事にして、一瞬一瞬を過ごしていけたらいいねって。そういうことをテーマに作りたいなと思って、できた曲です。

――ブラックミュージック的なテイストもあって、自然と手拍子が起こりそうな楽しい曲ですが、すごいキメフレーズも入ったりするところがDEZOLVEらしいというか。

 そうかもしれないです(笑)。

――こういったスタイルのピアノは誰の影響なんでしょうか?

 どなたでしょう…。曲によって、もちろんそれぞれあると思います。例えば「Migration」だったら、大好きなライル・メイズ(パット・メセニー・グループの音楽監督も務めたジャズピアニスト)のエッセンスを取り入れたりはありますけど、この曲は特に思い浮かばないですね。その時その時で好きなピアニストは常にいますが、僕はもともとジャズピアノがやりたかったので、トミー・フラナガンがカッコいいなというところから始まって。でも、一人のアーティストに傾倒するというよりは、多くのアーティストを聴いて、なるべくいろんな人のエッセンスを取り入れたいというのがあります。誰々っぽいねというのではなく、やっぱり“友田ジュンのサウンド”にできたらいいなって。

 

エレクトーンをやっていたことによって、打ち込みだったり音色のことだったり、今の活動の基礎となるようなところを作ってもらいました

 

――エレクトーン経験者ということで、そのあたりもお伺いしておきたいです。

 熊本県天草市のヤマハ音楽教室で、3歳の頃からピアノを習い始めて、その後エレクトーンも高校時代まで習っていました。ピアノとエレクトーンはグレード4級で、指導者グレードも取得しました。自宅にあったのはEL-700です。エレクトーンをやっていたことによって、打ち込みだったり音色のことだったり、今の活動の基礎となるようなところを作ってもらいました。

――特に好きだった曲は?

 父の影響なのか、小さい頃からなぜか熱帯ジャズ楽団が好きで、すごく聴いてたんです。エレクトーン用に出ていた熱帯ジャズ楽団の楽譜は、すごく弾いていたイメージがあります。あと印象に残っているのは、小学生の頃に聴いた鈴木一浩さんの「ピン・ストライプ」ですね。ジャズオルガンのカッコ良さを教えてもらいました。

――では、ミュージシャン/アーティストとして普段の生活で心がけていることは?

 鍵盤を触らない日がないようにはしていますが、(意識しなくても)ほぼほぼ触ってますね。あとは逆に、音楽以外のことをやるというか。本を読んだり、映画を観たり、行ったことのないところに行くとか。そこから最終的に、音楽に還元したいなって思っています。

――最後に、DEZOLVEの今後の展望や目標を教えてください。海外での活躍にも期待できそうです。

 そうですね。以前、SNSのコメント欄がポルトガル語ばっかりになったことがあったんですけど、こういう音楽に関しては言語の壁がないので、対象は日本だけじゃなくて、もっと世界的に発信していきたいと思っています。このメンバーだったら、きっとできるんじゃないかなって思います。

 

DEZOLVEインタビュー(4)

(左から:兼子拓真、友田ジュン、山本真央樹、北川翔也)

 


 

【プロフィール】

DEZOLVE(ディゾルブ)

2014年に結成された北川翔也(gt)、友田ジュン(key)、山本真央樹(dr)、そして新加入メンバー・兼子拓真(ba)による4人組インストゥルメンタルフュージョンバンド。硬派かつ正統派なフュージョンサウンド/テクニックを基礎としながらも、若い感性との化学反応により様々なジャンルを取り入れ、これまでのジャズ・フュージョンの枠にとどまらないオリジナルな表現を追求。老若男女を問わず高い評価を受け、幅広い層のファンから支持されている。

Official Web Site:https://www.dezolve.net/

 

【リリース情報】


DEZOLVEインタビュー(5)


 

DEZOLVE 6thアルバム『CoMOVE』

2023年2月15日 Release
KICJ-862 3,300円(税込)

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キングレコード

商品詳細:https://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKICJ-862/

 

DEZOLVEインタビュー(6)

 

友田ジュン ソロアルバムDaybreak

2021年4月4日 Release

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Live Information

<DEZOLVE 6th Album『CoMOVE』Release Live 2023>

2023年4月2日(日)@丸の内コットンクラブ

1st SHOW:15:00 OPEN / 16:00 START
2nd SHOW : 17:45 OPEN / 18:30 START

コットンクラブ DEZOLVE公演:

http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/dezolve/

 


 

Interview & Text:森泰一(FAMiLIES)