嘘とカメレオン 過去の自分たちを常に更新しながら、既成概念を超えた進化を遂げていく。


現時点(2019年6月)までに500万回以上の再生回数を記録しているミュージックビデオ「されど奇術師は賽を振る」を皮切りに大きな注目を集め、昨年9月のメジャー1stフルアルバム『ヲトシアナ』リリース以降も旋風を巻き起こし続けている5人組バンド、嘘とカメレオン。そんな彼らが新たなレコーディング環境とスタイルを経て、ニューミニアルバム『ポストヒューマンNo.5』を完成させた。2020年1月から放送開始予定のアニメ『虚構推理』のオープニングアーティストにも決定するなど、大いなる飛躍への道を歩み続ける5人の“現在”を真空パックしたような新作についてVo.チャム(.△)とG./Cho.渡辺壮亮に迫るインタビュー。

「パッと聞いた感じはポップでキャッチーだけど、よくよく聴いていけば底が見えない多角性がある」

 

—昨年9月にメジャー初のフルアルバム『ヲトシアナ』をリリースされたわけですが、その反響や広がりを感じていますか?

渡辺:
毎日誰かに知ってもらえているような感覚はあって。そういう人たちをちゃんとライブにも呼び込むというところでは、まだまだ頑張らなきゃいけないんですけどね。でもやっぱり知名度が上がってきている実感はあります。

—より広い層の人たちにも届いているのでは?

渡辺:
最近では、新たに『虚構推理』というアニメのオープニングアーティストにも決まったんです。それについて、ネット上では“好きなアニメを好きなアーティストが担当してくれるのが嬉しい”みたいな声を見かけて。そういう人たちがいるんだなということを再認識して、嬉しさと同時に気の引き締まる想いもありました。

—今作『ポストヒューマンNo.5』のM-2「ルイユの螺旋」も、ドラマ『絶対正義』の主題歌として書き下ろした曲なんですよね。

チャム(.△)[以下チャム]:「ルイユの螺旋」で初めて、書き下ろしをして。(ドラマの)台本を読んでから、曲も歌詞も書きましたね。

—だから、ちゃんとドラマの世界観に沿ったものにもなっている。

チャム:
『絶対正義』では“正義”という概念に対して、メンバーそれぞれが噛み砕いて考えたんです。(“正義”には)多角的な側面があって、誰にとっても“正解”と言えるものがないから。そのことも踏まえた上で作品に何%寄り添って、自分たちを何%出していくのかということを考えました。初めての書き下ろしだったので、その塩梅が難しくもあり、面白味でもあったなと思います。

—そういう試行錯誤も、良い経験になったのでは?

渡辺:
そうですね。やっぱり毎日1人で家で作曲していると、凝り固まってきちゃうんですよ。曲を作っても代わり映えがしなかったり、自分が本当は何を書きたいのかもわからなくなったりするところがあって。でもそこに思っても見なかった方向から“物語”が入ってくると、今まで凝り固まっていたものがほぐれていくような感覚になるんです。ドラマの原作を読んでみて“こういうことだったんだ”という感覚になるのがすごく新鮮だったし、そのおかげでスキルアップできたと思います。

—何回も聴くことで新たな発見があるといった多面性は、嘘とカメレオンの音楽性にも通じる気がします。

渡辺:
特に「ルイユの螺旋」は、ドラマのテーマ自体が多角的に捉えることで見え方が変わってくるような概念だったということもありますね。“正義”というものは、生き方や国とか環境でどうにでも変わってしまうものだから。それも踏まえて、パッと聞いた感じはポップでキャッチーだけど、よくよく聴いていけば底が見えないような二面性や多角性を意識して曲に落とし込んでいきました。

 

「“ルールは自分で作っていくものだ”みたいなものが思想として、自分の中にずっとあって」

嘘とカメレオン(1)

 

—「ルイユの螺旋」のMVからも感じたのですが、今回のミニアルバム全体に漂うSFチックな雰囲気は最初から意識されていたんでしょうか?

チャム:
いや、意識はしていないですね。歌詞を書いたのも、曲名を付けたのも、アルバムタイトルを付けたのも、全部の曲が出揃ってからなんですよ。まず壮さん(※渡辺)が自分の好きなように曲を作ってきて、その中から収録する曲を選んで、そこに共通する要素を私がいつも掬っていく形というか。自然と出てきた曲から汲み上げたものが、そういうSFチックで近未来的なものだったという感じです。

—M-1「パプリカはポストヒューマンの夢を見るか」は、フィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のオマージュですよね?

チャム:
そうですね。そこは意識して付けています。

—この曲名とアルバムタイトルは、どちらを先に付けたんですか?

チャム:
『ポストヒューマンNo.5』のほうが先です。歌詞→アルバムタイトル→曲名の順番で付けました。

—アルバムタイトルには、どんな由来が?

チャム:
最近は“自分たちを脱却していく“とか“人間の限界を突破していく”ということについて、よく考えていて。今年に入ってからは特に、“ちょっと違う軸のほうに進化していきたい”という気持ちがすごく強かったんです。そこに私が(今作に収録している)7曲から感じたこと混ぜ合わせて、まず“ポストヒューマン”と付けました。

—その後に続く“No.5”は、どこから?

チャム:
元々“ポストヒューマン”の後に数字を付けたいなとは思っていたんですけど、意味のないものや語感(が良い)だけのものにはしたくなくて。そこで“5”という数字の持つ意味を調べてみたら“五大陸”や“五感”だったり、世界を形作る“五大元素”というものも出てきたんです。宇宙的なものや万物の素にもなっている“5”という数字が持つ意味の大きさを知って、“良いな”と思って。

—そこで“5”を使おうというアイデアが湧いた。

チャム:
“4”という数字は四角形を見てもわかるように、“安定”を意味するらしいんですよ。逆にその次に来る数字の“5”は、“反逆”や“革命”という意味を持つらしくて。それを知った時に、正統派のヒーローじゃなくて“アンチ・ヒーロー”的な道を歩いてきた私たちにはピッタリな数字だなと思って“No.5”と付けたんです。でも後になって考えてみたら、メンバーが5人だったり、今年で結成から5周年だったりと色んなところでつながっているなと感じました。

渡辺:(“5”は)“森羅万象とアナーキー”という感じなんですよね。

チャム:そうそう! 本当にそんな感じ。

—“反逆”や“革命”という言葉も出ましたが、M-5「パラダイム4210」もそういうものに通じる言葉ですよね。

チャム:
そうですね。“既成概念を壊していきたい”みたいなところがすごくあるから。“当たり前”に当てはめられたくないとか、“ルールは自分で作っていくものだ”みたいなものが思想として、自分の中にずっとあって。既存曲では前作収録の「モームはアトリエにて」がその思想に一番近いものなんですけど、今作の中でそれがより濃く出ているのは「パラダイム4210」だなと思います。

—物語的な側面もありつつ、歌詞の中にはチャムさんの本心や意志が表れている気がして。

チャム:
これまで出してきた3作ではそれぞれに色んなヴェールで包んだり、色んな枠の中でパッケージングした上で作品として出しているんですけど、その中にも必ず私の本音を入れるようにしていて。“普通に聴いたらこう聞こえるけど、じっくり聴いてみたらすごくトゲのあることを言っているぞ”みたいなところが二面性として出てきたら面白いなと思って、いつも書いています。

 

「“フロアの変化”みたいなところを、今回のツアーでは見ていきたい」

嘘とカメレオン(2)

 

—特に今回は“トゲ”の部分が強く出ている?

チャム:
そうですね。元々それくらい不満があったというか、当てはめられることに対して中指を立てていきたいという気持ちはずっとあったんです。今作ではわりと表面的に、それが出てきたのかなという感じがします。

渡辺:“ポストヒューマン”という言葉自体が“次の人類”や“新しい人類”という意味で、“進化”的な意味合いが強いじゃないですか。それって、現状に対する不満がすごく強いということでもあって。“次に行くために、今はどうなの?”というところに対しての問題提起みたいな部分が全体的にあって、それがアルバムタイトルにもリンクしているのかなと。そんな中で今回、唯一の自分で書いた歌詞がまさにそういう感じというか…。

—M-7「societal sanity」ですね。

渡辺:
最近のSNS上での小競り合いとかを見かけた時に、それに対して“マジか?”と思うことが個人的には多くて。“もう少し一歩引いて考えたほうが良いな”と思うんですけど、SNSでそれを言っても結局あまり変わらないというか。そう言ったところで有象無象の一部にしかならない…といったことを曲にしてみようという感じで、純粋に怒りを巻き散らしただけの曲になっています(笑)。

—とはいえ、歌詞中の“人間モドキ”あたりはSFチックな世界観に通じている気がします。

渡辺:
その時は全然意識せずに書いたんですけど、意外とアルバムタイトルに合っているんですよね。結局、みんな共通しているんだなと。

チャム:やっぱり5人で同じことを経験し続けているから。“今は良い時期だな”とか“現状に不満がある”とか“進化していきたい”とか、程度の違いはあれど、思っていることの方向性は一緒なんですよね。だからこそ、この曲の歌詞も、同じ方向を向いている部分があるのかなと思います。

—サウンド的にも、ライブで盛り上がりそうな曲ですよね。

渡辺:
「当て振りインストアライブツアー」ではやったんですけど、今のところ反応は二分していますね。すごく盛り上がる人と、ポカンとしている人で二分している感じが面白いなと思っています。

チャム:ブチ上がっている人もいれば、ポカ~ンとしている人もいる状況って、すごく“正解”だと思うんですよ。それぞれが自由に感じてもらえるのが一番の正解だと私は思っているので、その様を見ているのがすごく面白いんです。

—6/22から始まる初の全国ワンマンツアーで、どういう反応があるかも楽しみでは?

渡辺:
楽しみですね。今までの曲と比べて、“フロアの変化”みたいなところも今作の曲をツアーでやる中で浮き彫りになるんじゃないかなと思っていて。そこも今回のツアーでは、見ていきたいなと思っています。

 

嘘とカメレオン(3)


—ツアー後には夏フェス出演も控えていますが、そこへの意気込みを最後にお願いします!

渡辺:
個人的には、“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”にすごく思い入れがあって。生まれて初めて夏フェスに行ったのが“ROCK IN JAPAN FESTIVAL”で、それがちょうど10年前なんですよ。あの17歳の時からちょうど10年経って、27歳にして初めてあのステージに立てるというのはちょっと“楽しみ”だけでは済まないというか…武者震いしています。でもそれと同じくらい、出演が決まっている他のフェスも楽しみなので、もう全力で楽しんでいこうと思っています!

 


 

【プロフィール】
Member
Vo.チャム(.△)
G.菅野悠太
G./Cho.渡辺壮亮
Ba.渋江アサヒ
Dr.青山拓心

【リリース情報】
New Mini Album
『ポストヒューマンNo.5』
KING RECORDS

嘘とカメレオン(4)

【初回限定盤】
CD + CONTENTS CARD
スリーブケース仕様
KICS93794 ¥2,778+税

【通常盤】
CD ONLY
KICS3794 ¥2,037+税
2019/5/29 Release

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【ライブ情報】
嘘とカメレオン 初の全国ワンマンツアー
「はじめてのおつかいツアー ~ひとりでできるもん!~」
2019/06/22(土) 広島BACK BEAT
2019/06/23(日) 福岡Queblick
2019/06/28(金) 愛知 名古屋ElectricLadyLand
2019/06/29(土) 大阪 梅田CLUB QUATTRO
2019/07/05(金) 東京LIQUIDROOM ebisu

【Event Info.】
2019/07/13(土) 東京“JAPAN'S NEXT 渋谷JACK 2019 SUMMER”
2019/07/19(金) 大阪 心斎橋BIGCAT
2019/07/20(土) 大阪OSAKA MUSE
2019/08/10(土) 名古屋“TREASURE 05X 2019”
2019/08/12(月) 茨城“ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019”
2019/09/14(土) 神奈川“BAYCAMP 2019”
2019/09/14(土)~9/16(月) 東京“TOKYO CALLING 2019”
2019/10/12(土) 愛知“第59回愛工大祭「狂夜祭」”

【WEB】
Official Site
https://usokame.com/

Official Twitter
https://twitter.com/chameleon_1123

 


 

Interview:大浦実千