新・改造してギターを良くする研Q所 【改ギ研Q】 第3話


研究所の朝……もとい、研Q所の朝は早い。もちろん挨拶はいつだって「オハヨーゴザイマス」だ。私たち研Q員は今日もまた、どこかに埋もれた“磨けば光るギター”を探しだし、そして……「改造」をする。すなわち当コンテンツは、DIY心満載の「ギター改造コーナー」なのでR!

第3話 「顔はやめな。ボディにしなボディに」の巻

 

改ギ研Q、心得

1、安いギターを手に入れるべし
1、お金かけずに手間かけるべし
1、ギターを知り、ギターを愛すべし
1、ダメ、ゼッタイ、不良改造
1、安全第一、改造大好きなのじゃ



皆さん、オハヨーゴザイマス。あらためまして「改造してギターをよくする研Q所」、略して「改ギ研Q」であります。

本日のQは
「初号機Q-2 ボディを探せ」


さてわれらは集まった。今日も今日とて、早朝の浅草。
研Q員たちの、人情味豊かな朝のあいさつが響く……。

 

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オハヨーゴザイマス! 本日も安全第一で研Qにとりかかるぞー!
 

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オハヨーゴザイマス!

 

改ギ研究3(1)

 

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ということで来たぞ、ここ! 浅草にある「かっぱ橋道具街」は日本一の道具街! どんなものでも手に入る、夢の道具街じゃ! 
ここならば、ワシらぴったりのギターのボディが見つかるはずじゃ!
なあ、M本! ……あれ? M本がいない! M本? どこ? M本!!

 

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いやいや、だから。
M本研究員は、「栃木県で改造してギターを良くする研Q所」略して「栃ギ研Q所」にいるんじゃないですか! そこに僕ら、ギターのボディに代わるものを持って行って、ジャンクギターにつけてもらうんでしょ?(前回リンク参照)しっかりしてくださいよ!

 

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そ、そうだった。

 

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いやー、でも、かっぱ橋。さすがにいろんなお店があるなあ。
ここならきっと、ボディにぴったりのものが見つかりますよ。
さっそくお店に行って見ましょう!

 

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おお! そうだな。ところで、かっぱ橋の由来って、そもそも知ってる?

 

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もちろんですよ。ここは浅草からすぐの場所。
食器具・包材・調理器具・食品サンプル・食材・調理衣装などを一括に扱う道具専門の問屋街なんですよね。
江戸時代、湿地帯だったこの土地の住民達のために私財を費やして掘割整備を行った「合羽屋喜八」って人がかっぱ橋の名前の由来の一つとされているんです。
整備を行った合羽屋喜八の良心に心を打たれた「かっぱ達」が、夜ごとに工事をして喜八を助けたという言い伝えが残っているんですよ!

 

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うむ。素晴らしいな。お前のウィキペディア丸写しの説明。
そういうの………ワシは好きじゃぞ。

 

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ありがとうございます!

 

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しかし、やっぱり夢が広がるな! この店の数々! 食品サンプルでギター作るのもいいな!

 

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いいねいいね! うふふふ! 超ミニギター! お箸ギターとかな!

 

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ギターでお寿司食べましょう!! うふふ!

 

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プルルルプルルルル……あっ、M本から電話だ。もしもーし

 

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《すいません。言い忘れました。33センチ以上あるものにしてください》

 

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《できたら木とか、加工しやすいもので、くれぐれもお願いしますね》

 

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しかしK井よ。なんで33センチなんだよなあ。ったく、偉そうに指定しやがって! M本の野郎!

 

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いやいや。それなりの理由があるんでしょ? とにかく33センチ以上のものを探しますよ!

 

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この巨大ヘラはどうじゃ? なんだ、これ? パエリアつくるやつかの?

 

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こんなのとか? こんな感じでシャウトとか?

 

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だから……それ、金属でしょ! もはやマイクだし!

 

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うーーーーーむ。どれもイマイチじゃ。

 

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おお! 所長! これなんてどうですか! まな板

 

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おお、まな板。確かに33センチある! すごくいいな! 
……しかし、まな板って言わないと、ただの木の板だな。こんなのだったら、M本の工房にもありそうだがな。

 

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所長! これはどうですか? 寿司桶

 

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こ、こ、これは!

 

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寿司桶です! 33センチありそうだし、何と言っても、安いじゃないっすか! 他に比べて!

 

改ギ研究3(8)

 

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本当じゃ! ギリギリ33センチあるぞ。素晴らしい。素晴らしいぞ、K井!
まさにジャパニーズなソウルの詰まった逸品!
エブリバディ・サムライ・スシ・ゲイシャ! これと、一応まな板も押さえで買っておくか。

よし! M本! 待っていろよ! まな板に、寿司桶! よーし。帰りにちょっと豊洲にも寄って行くからな。新鮮なイキの良い魚仕入れてくるぞ!
栃木っ子だってねえ! 食いねえ 食いねえ 寿司食いねえ!

 

改ギ研究3(9)

 

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(ってか白衣今着たし、この人完全に寿司、作る気になってる……)


つづく


【今回の豆Q知識 by M本研究員】

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所長とK井研究員が一生懸命探してくれました、今回。でも、どうなることやら……(笑)。

さて、基本的にはどんなものでもエレキギターのボディになります。
エレキギターはピックアップで音(弦振動)を拾うわけです。ピックアップには「電磁誘導」とか、色々理屈はありますが、要するに、マイクが付いていると考えてください。
弦の音をマイクで拾えれば、一応どんなものでもギターになるんです!

が、じつはボディサイズが大切なんですよ。
ネックとブリッジを取り付ける関係で、今回の場合、ボディの長辺が33センチ以上でないと付けられないのです。
その理由をすこし説明いたしましょう。

そもそも、今回の「なんでもギター化」において、一番難しいポイント。
それが、ナットのブリッジ側の面(0フレット)から12フレットまでの長さ、
12フレットからブリッジまでの長さを正確に同じにすることです。

まず、基本的に、指板の長さと言うものは、メーカーによって違います。
たとえば、ギブソン・レスポールはナットからブリッジまで、約62.8センチ。
フェンダー・ストラト/テレキャスの場合は約64.8センチで、今回のネックはこちらになります。

次に、ネックをボディにどの様に付けるか。
今回、ネックとボディを固定する方法は「4本の木ネジ」。
つまり、ボディ側に4本の木ネジが収まるスペースが必要です。そうしてボディにネックを付けた状態で、指板の12フレットからブリッジまでの長さ、ブリッジを取り付ける場所を計算します。

もはや、ちょっとした製図が必要なレベルですね。
実はV山所長に「33センチ以上!」と伝えたのはネックの固定スペース~ブリッジの大きさを考慮しての事でした。

 

改ギ研究3(10)

 

ちなみにオリジナルデザインのギターを考える(製図する)とき、この事に加えて、ボディのウェスト(座りでひざに乗せる凹部分)形状や1弦側のカッタウェイの形状、ネックのジョイント位置やフレット数、ネック側のストラップピンの位置(吊り下げた時のバランス・弾きやすさ)、採用するパーツによる制約、シルエットのカッコ良さなどなど、様々な思想の「せめぎ合い」があって……
ものすごく楽しいのです!

私はギターに関する全ての中で、製図が一番楽しいです。皆さんがいつか、どこかの工房にオリジナルをオーダーする時も、こういった知識は役にたちますし、そういう目線でギターを見ると、違うモノも見えてきます。皆さんも、ご自身のオリジナルギターを深く妄想してみてはいかがですか?

それではいよいよ次回からは実践です。お楽しみに!
みなさんも楽しい改造ライフを!


第2話を見る 第4話を見る

 


 

【研Q所メンバー紹介】

V山

V山所長
ギターの知識はあやふやだが、ギター改造へのあくなき探究心は誰にも負けない中年。

 

M本 

M本研Q員(助手)
栃木県在住。ギターへの異常な愛情と、マニアックすぎる知識を持つ中年。

 

K井

K井事務員
ギターへの興味は人並みだが、絵を描くこととお芝居が得意。昨年は朝ドラに出演していたことでも話題の中年。

 

【栃ギ研Q支部】

田園風景広がるのどかな場所に、それはある。普段は、ギター工房として使われている木材加工、塗装、電気関係、すべてが揃っている完璧なラボである。佐野ラーメンの美味しいお店も近所にあるっぺよ!

 


 

Text:ヴィンセント秋山
Illustration:河井克夫 (https://twitter.com/osuwari
監修:ギター工房「ビータギタラーズ」(http://vita-guitala-s.com/
取材協力:株式会社カジワラ キッチンサプライ(https://www.kajiwara.gr.jp/)

 

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