今現在のD’ERLANGERで勝負をする。再結成10周年イヤーを経て、新章開幕を告げるニューアルバム。

 

2017年から2018年にかけての再結成10周年イヤーを盛大に終えたD’ERLANGERが、9枚目のオリジナル・アルバム『roneve』(読み:ロネウェ)を完成させた。2007年の再結成後はほぼ2年に1枚のペースで新作を発表し、ツアーも精力的に行うなど、コンスタントに活動を続けてきた彼らは常に“今”を生きているバンドだ。2017年5月にリリースした『J’aime La Vie』以来、約2年ぶりのニューアルバムとなる今作でもアップデートされた最新のD’ERLANGERを感じることができるだろう。新作についてはもちろん、創作やバンドへの想いにも迫るkyo(Vo.)への単独インタビュー。

「“その瞬間”をパッケージする。だからこそ、今のD’ERLANGERが持つ“年輪”が見える」

 

2017年4月から翌2018年にかけて再結成10周年イヤーを過ごされたわけですが、今振り返ってどんな1年でしたか?

kyo:僕たちの場合は一度解散してから(再結成までの)間に17年空いているので、たとえば“デビュー●●周年”といったアニバーサリー的なことを何となく胸を張って言いづらいところがあって。そういった意味で“再結成10周年”というのは本当にしっかりとやってきた10年なので、ちゃんと胸を張って言えるアニバーサリーを迎えられたということがバンドにとってもすごく大きかったと思います。

なるほど。

kyo:あとはやっぱり、そういう冠的なものがあるほうが盛り上がりますからね。周りがみんな再結成10周年をお祝いしてくれるということだったので、自分たちとしてはそこに乗っかろうという感じだったんです。その中でトリビュート盤(※『D’ERLANGER TRIBUTE ALBUM ~Stairway to Heaven~)』を出したり、しばらく寝かせていた主催イベント(※“D’ERLANGER presents ABSTINENCE'S DOOR”)を改めてやったりもして。そういったものも含めて、すごく“愛”を感じるアニバーサリーでした。

アニバーサリーで過去を振り返る部分もありつつ、2017年5月にはオリジナルアルバム『J’aime La Vie』もリリースされたわけですが。

kyo:僕たちって、作品を作る時は短期集中というか。グッと(制作に)入っていって、その瞬間をパッケージする感じなんです。もちろんライブでやっていく中で色んな側面が見えてきたり、変わったり、育ったりしていくという印象も強いですけどね。そういう意味でも『J’aime La Vie』を中心に動いていた1年でもあったので、やっぱりそこにグッと入っていたところはあったんじゃないかなと思います。

『J’aime La Vie』という作品自体にも、何か特別な意味合いを持たせていたんでしょうか?

kyo:そういうことはあまり考えないというか。“今回はこういったアルバムを作ろう”というミーティングも特になくて、本当に“その瞬間”なんですよね。作曲者のCIPHER(G.)の中ではイメージがきっとあると思うんですけど、(メンバーとしては)どういう曲が出てくるのかなとワクワクしながら待っている感じなんです。弾き語りに近い状態のデモをスタジオでみんなで聴いてから、プリプロで音を合わせて曲を作っていくというやり方は昔から変わらないですね。

制作にあたって、何か明確なテーマやヴィジョンを共有しているわけではない。

kyo:たとえば“アルバムの曲が全部出来たから(制作に)入るというよりは、1曲できたから入るという感じで進んでいくんですよね。だから、今のD’ERLANGERが持っている経験や想いだったり、年齢が出ているというか。何というか…、“年輪”みたいなものなのかもしれないですね。

その時点までに積み重ねてきたものが形になる。

kyo:僕らはだいたい2年に1枚くらいのペースでアルバムを出していますけど、決して2年間のダイジェストではなくて、その向き合った時の瞬間を切り取ったものという感じなんです。ただ、そこに至るまでの間で何か1つでも欠けていれば、また違った色や絵になるのかなとは思いますけどね。

 

「表に出しづらい感情や隠してしまいがちな感情を“ちょっとくすぐってやりたい”」

 

実際、今作『roneve』も短期集中で作ったんでしょうか?

kyo:そうですね。プリプロも今年2月末くらいから始まったし、そのちょっと手前くらいからCIPHERは曲作りを始めていたと思うんです。だから、本当に短期集中で作りました。

CIPHERさんの中にあるイメージを伝えられたりはしますか?

kyo:僕は歌詩を書くのでそういうやりとりをするんですけど、わりと具体的なイメージがある時もあれば、“いや、特に”という時もあって。今回は“いや、特に”というものが多かったです(笑)。

悪魔の名前を冠した『roneve』というタイトルからは、コンセプチュアルな作品を想像していたのですが…。

kyo:(イメージが)あったほうが良いというのはメンバーもわかっているんですけど、作ろうとなった段階ではそこまで具体的なイメージがないことも多いんですよ。“正式に近い(仮)”みたいなところから、今回の『roneve』は始まっていて。でも新曲を作り始める前にプライベートで一緒にお酒を飲んでいた時、(CIPHERから)このアルバムタイトルのイメージについて話をちらっとされたことはあります。だから“roneve”という言葉と、それが悪魔の名前だということしか(イメージは)なかったですけど、自分が歌詩を書いていく上でそこを意識した部分はありますね。

作品全体の世界観をCIPHERさんから語られることはない?

kyo:ないですね。お酒を飲みながら世間話をするような感じで、本当にちょっとしたことだけなんです。たとえば“今回、キーは優しくいきたい”とか“そんなにイケイケな感じではないんだよね”とか、はっきりと言うわけではないんですけど、そういった会話はあって。漠然としたイメージというか…、“想い”に近いものだと思います。そこで出てきたものに対してメンバーそれぞれが解釈して、血や肉を付けていく感じですね。

kyoさん自身は歌詩を書くにあたって、1曲1曲単体で考えるのか、それとも全体で統一した世界観をイメージしているんでしょうか?

kyo:基本は、1曲1曲です。ただ、(全体が)まとまってきた時に何となく“こういう場面があったほうが良いかな”と思ったりはしますけどね。僕の中ではその曲をプリプロでやる初日に一番、熱を感じるんですよ。(その段階では)全然まとまっていないんですけど、その熱があるうちに言葉を乗せたいという気持ちがあって。自分の中で何となく描いている色を寄せ集めて、形にしたいっていう想いがあるから。

プリプロで最初に聴いた時に自分の中で湧いてきた熱を大事にしている。

kyo:そうですね。今回は“悪魔の名前”というイメージがあったので、たとえば“尻尾”や“羽根”というイメージはざっくりとあって。そういう熱を逃さないようにバーッと書いていきます。でも途中で1回振り返らないと、“これって他の曲でも書いたことに似ているな”ということがよくあるんですよね。そこでいったん冷静になって、完全にエンジンが掛かった時にちょっとずつ形を整えて、色を塗り替えていくような作業はしています。

どの曲も“悪魔”に関連する歌詞というわけではない?

kyo:そうではないですね。アルバムによって“今回はこういうものを書こう”という感じではないし、自分の中で人生の主軸になるような言葉を歌おうというわけでもなくて。みんなも持っているけれど、表に出しづらい感情や隠してしまいがちな感情を“ちょっとくすぐってやりたいな”という気持ちがあるんです。基本的にそのテーマがあって、あとは楽曲の持っているムードに引っ張られることが多いですね。

 

kyo

 

「メンバー全員が50代になって初めてのアルバム。“今を生きる”という暗黙の了解が強みになる」

 

長く活動されてきた中で、ご自身の歌詩も徐々に変化しているという意識はありますか?

kyo:今まで自分のやってきたことやキャリアを振り返ると、幅広くなったり、逆に狭くなったこともあって。やっぱり僕の中での“ロック”のイメージとして、アンダーグラウンドであれ、スキャンダラスであれ、“ちょっと危険なもの”というイメージがすごくあるんです。でもたとえば昔やっていたバンドの時は、もうちょっと健康的だったというか。

健康的?

kyo:もう少しオーバーグラウンドを意識していた時期だったので、そういった意味で言葉のチョイスや歌詞の世界観は明るかった気がするんです。でもやっぱり今、D’ERLANGERでやっている音やライブ…この4人で出す音というのが一番の武器だなと思っています。

今この4人で出す音に自信を持てている。

kyo:それに勝るものはなくて。みんな歳を重ねてきて、今回はメンバー全員が50代になって初めてのアルバムなんですよ。それ(※年齢やキャリアを重ねたこと)による“深み”や“太さ”みたいなものって、すごい武器だなと思っていて。そういったところでさっきも話した“隠している感情をくすぐってあげたい”ということや、自分の持っている“ロック”のカッコ良いイメージというところにどんどん原点回帰しているというか。自分が憧れた時に(ロックに対して)思っていたような像に向かっていっているのかなという気がします。

それぞれがキャリアを重ねてきた中で吸収・消化してきたものを、今は自然とバンドに還元できているのかなと思います。

kyo:そうだと思います。“こうだからこうじゃないといけない”というところが、若い頃はあったと思うんですよ。でも今は自分たちの中で解釈されたものが合わさった時に、もしそれがトゥーマッチなものでも、“バンド”という器でやると上手く1つの塊になっているというか。みんなが好きで“良い”と思うものが自然と出てきているのが、今のD’ERLANGERの強さなのかなと思いますね。

その強さがあるから、再結成後もコンスタントに活動を続けられているんでしょうね。

kyo:暗黙の了解として、“今を生きる”というのがきっとあると思うんですよ。新しい作品を作って、新しいツアーをやって、今現在のD’ERLANGERで勝負をするっていう。やっぱり、そういうところが“強み”として自分たちの中にあって。だから新曲を作ってツアーをやる中でも、いまだに新しい発見があるわけで。

5/25の梅田CLUB QUATTROから始まる、今回のツアーも楽しみですね。

kyo:まだ僕たちもリスナーと同じ位置にいて、音源を聴いているに過ぎないから。実際にライブでプレイした時に、(楽曲が)より立体的になるというか。やっぱりアルバムのリリースツアーって初日とファイナルでは、色んなものが変わっていると思うんですよ。僕たちもそれを楽しみに、向き合っていきたいですね。

 


 

【プロフィール】
1983年の結成、88年にkyoが加入し、現在の4人となる。
1989年に発表した1stアルバム『LA VIE EN ROSE』がインディーズとしては驚異的な3万枚のセールスを記録。鳴り物入りで1990年1月24日にシングル「DARLIN'」でメジャーデビュー。続いて1990年3月にリリースしたメジャー第1弾アルバムにして2ndアルバム『BASILISK』は10万枚を突破。だがその年の12月24日に突然解散。
しかし、17年の時を経て、2007年に復活を果たす。2008年5月には日本武道館公演を成功させ、再結成10周年イヤーとなった2017年にはオリジナルアルバム『J’aime La Vie』、そしてトリュビートアルバム『D’ERLANGER TRIBUTE ALBUM ~Stairway to Heaven~』を発表。
2018年には再結成10周年のキックオフとなった2017/4/22、ファイナルの2018/4/22の豊洲PIT公演両日収録した映像作品「D'ERLANGER REUNION 10TH ANNIVERSARY LIVE 2017-2018」を発表。
そして2019年5月に約2年振りとなる9枚目のオリジナル・アルバム『roneve』をリリース!

Official Site
http://www.derlanger.jp/

Warner Music Japan Site
https://wmg.jp/derlanger/


【New Release】
New Album『roneve』
2019.05.22 Release

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mysoundで試聴


【CD情報】
『roneve』
2019年5⽉22⽇(⽔)発売
オリジナル9thアルバム!再結成10周年イヤーを盛⼤に終えた彼らの“新章”となるアルバム!

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【初回限定盤デラックス・エディション】(CD+DVD)
WPZL-31613/4 ¥5,556(本体)+税
全11曲収録

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【通常盤】(CD)
WPCL-13050 ¥3,000(本体)+税
全12曲収録
通常盤のみのボーナス・トラック「哀」収録


【ライブ】
“D’ERLANGER roneve TOUR 2019”
2019/5/25(土) 梅田CLUB QUATTRO
2019/5/26(日) 梅田CLUB QUATTRO
2019/6/01(土) 福岡DRUM Be-1
2019/6/02(日) 福岡DRUM Be-1
2019/6/08(土) 金沢EIGHT HALL
2019/6/09(日) 金沢EIGHT HALL
2019/6/15(土) 名古屋ReNY limited
2019/6/16(日) 名古屋ReNY limited
2019/6/22(土) 札幌cube garden
2019/6/23(日) 札幌cube garden
2019/6/29(土) 岡山YEBISU YA PRO
2019/6/30(日) 岡山YEBISU YA PRO
2019/7/06(土) 仙台darwin
2019/7/07(日) 仙台darwin
2019/7/15(月祝) 東京マイナビBLITZ赤坂

 


 

Text:大浦 実千