「色物だけどポップ」鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)×featuring16(Jin-Machine)が語るヴィジュアル系の未来


昨年末リリースした初のセルフカバーアルバム『個人資産』が話題の鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)と、仙台が生み出した“家族で楽しめるヴィジュアル系バンド” Jin-Machineのfeaturing16。“笑い×ヴィジュアル系”を追求するバンドのフロントマンとして長年切磋琢磨してきた両者が、1月22日福岡からスタートする「クズ野郎達の傷の舐め合い思い出作りツアー」で対バン決定! 出会いから売れる法則、これからのヴィジュアル系まで、大いに語り尽くす。

「面白いバンドがいると知ってネットで見たら、鬼龍院が竹の棒で叩かれていました」(featuring16)

仮トリミング_1_DSC7691.jpg

 

—『個人資産』は初めてのセルフカバーですが、ゴールデンボンバーの楽曲とは制作手法やマインドに違いはありますか?

鬼龍院:
分かりやすく言えば、ゴールデンボンバーの曲はライブでやることをイメージして作りますけど、他の人の曲は音源、CD、PVを意識する方が強い。基本的には提供するアーティストさんに歌詞を寄せたいのですが、今回のアルバムだと大竹しのぶさんの「Miren」は、ちょっとウジウジした男性が主人公になってしまった。「しのぶさん、すみません!」と、送ってしまったのですが、しのぶさんは見事に演じてくれました。さすが大女優!!

—DVDに収録されている「Love Days」のPVは、恋愛シミュレーションゲームのオマージュが秀逸です。​​​​​​​
 


鬼龍院: Jポップもそうですが、90年代が好きなんですよね。あの頃はメディアも分散していなかったから、誰もが知っている共通の話題が数多くあった。ゲームもそうでしょう。最新の恋愛ゲームがどんなにすごくなっていても、知らない人は知らない。でも、『ときめきメモリアル』なら知ってる。パロディをやるなら、やはりあの辺の時代のものが共通項になりますよね。
ちなみに僕は最近、VRで女のコの家庭教師になれるプレステ4の『サマーレッスン』をやっていますね。

—では、featuring16(以下、イチロー)さんはニューミニアルバム『Re≒BorN』にどんな思いを?

featuring16:
いやね、まず鬼龍院ってインタビューをすごく真面目に受けるんだなと。人のインタビューなんて滅多に見られないから、驚いてます。作品についてとか文化とか、すごいじゃん! ボケは一切なかったですよね。

鬼龍院:インタビューをする人も聞かないといけないマストなことがあるんだから、まずはそれを処理しないと。そこでボケていると進まないの!

featuring16:なるほど。伝えることは伝えてね。俺、どこでチャチャ入れたら良いのか分からず……すごく静かにしていました。そういう思いを「昆虫すごいぜ」という曲に込めて……。

鬼龍院:だから、そういう(笑)。​​​​​​​

featuring16:つい。タイトルの通り「原点に戻ろう」と思ったんです。制作では自分の衝動をそのままに作りたくて、その頃「昆虫すごいぜ」という番組にハマっていたので、その素晴らしさについて書いた曲を作りました。昆虫がすごいということを言いたいのではなく、番組がすごい。香川照之さんがすごい!​​​​​​​

 

「面白いバンドがいると知ってネットで見たら、鬼龍院が竹の棒で叩かれていました」(featuring16)(2)

 

—よくインタビューなどで「戦友」や「同士」といった表現をされていますが、そもそもお二人の出会いは?

featuring16:
最初は、ネットを通してですね。10年くらい前に面白いバンドがいると知ってライブチアーズを見たら、鬼龍院が竹の棒で叩かれていました。​​​​​​​

鬼龍院:叩かれてたね。​​​​​​​

featuring16:あと、掃除機で吸われてもいました。​​​​​​​

鬼龍院:僕が透明の大きなビニール袋に入って、真空パックになってたね。​​​​​​​

featuring16:今はバンドがメインですが、その頃は、私も半芸人、半バンドのどっち付かずのスタンスで。自分の中ではお笑いの比率が高かったので、それを見て「すげぇことをやるな」と思った半面、「もっとこうすれば面白くなるのに」とか一方的に思っていました。​​​​​​​

鬼龍院:僕は動画より、ずっと出ていたライブハウスのスタッフさんから「Jin-Machineってすごいバンドがいたぞ!」と言われたことの方が印象深いですね。「とにかく最高に面白かった。音もしっかりしているし、すごかった。言うなれば、めちゃめちゃ面白いセックスマシンガンズみたいなのがいた!」って。
ビビるじゃないですか。それは売れろよ、と(笑)。よっぽど感激したんだろうね。サイバー(池袋)のPAさんだよ。

featuring16:初耳。嬉しいです。でも、実際一部に大人気。一部に衝撃を与えたバンドってのはよく言われて(笑)。その後、目黒のライブハウス鹿鳴館で初めて対バンしたんだよね。​​​​​​​

鬼龍院:まだゴールデンボンバーはドラムが樽美酒研二になる前ですね。

featuring16:初めてライブを見た時、この人たちは客席に女性の人形を投げ込んでモッシュさせていました。

鬼龍院:当時はギリ新しかった。

—Jin-Machineも「マグロに賭けた男たち」でマグロの人形を客席に……。

featuring16:
投げ込みます。​​​​​​​

鬼龍院:いや、でもJin-Machineもその時から最先端のことをやっていましたよ。​​​​​​​

featuring16:あの頃は、「めくり」(※寄席などで見られる出演者を書いた紙製の札)じゃないですかね。めくりながら変な曲……って、今ほどは変じゃないけど。まだ面白いことを言えば伝わると思っていた時期。それを音楽にのせると意味合いが変わってくるということを理解できていなかった(笑)。​​​​​​​

 

「Jin-Machineはいつでもブレイク寸前!という雰囲気が漂っている」(鬼龍院)


—それから10年ほど経った現在、お互いに対して?

featuring16:
金爆のライブはもう何回も見に行っていますが、これを毎年よくやっているなと。一から十まで鬼龍院が中心となって、普通のライブではなく途中で芝居がかったこともあるのに、ステージ演出、セットリスト、ボケ、小道具も考えて、作って。自分がアイデアの元だから、そこが枯れたら終わりじゃないですか。それを一丸となってやり続けているのが羨ましいなと思います。そういうメンバーがいることも。​​​​​​​

鬼龍院:Jin-Machineさんは、本当にメンバーに恵まれないんですよ……。今のメンバーがどうこうではなくて、遍歴として。本当に首の皮一枚でなんとか、でも今もこうしてちゃんとやっているのがすごい!​​​​​​​

featuring16:今のメンバーが一番長いんですが、それまではクソみたいな奴らしか集まらなくて。客に手を出すわ、最低でしたね(笑)。​​​​​​​

鬼龍院:バンドを続けていくにあたって、メンバーが抜けないとかが一番難しいところ。Jin-Machineはいつでもブレイク寸前!という雰囲気が漂っているのに、いつもメンバー問題が起きる。​​​​​​​

featuring16:それで失ったチャンスはいっぱいあるのかもしれない。​​​​​​​

鬼龍院:底力はすごくあるはずなので、そろそろ何か起きてほしいなと思います。でもJin-Machineの歴史を語る上で、メンバーがやばかったというのは避けては通れない話。​​​​​​​

featuring16:こちらも隠すつもりはないので。一つのバンドでいろんな人に会ったなぁ……。​​​​​​​

鬼龍院:だからこそ、上手くいってもらいたいと言ったら偉そうかもしれないけど、このバンドが花開くのを一番願っているのは僕なんじゃないかと。​​​​​​​

 

「Jin-Machineはいつでもブレイク寸前!という雰囲気が漂っている」(鬼龍院)(1)

 

—まさに「戦友」。

鬼龍院:
いや、僕は傷ついていませんが(笑)、イチローさんだけが傷ついているのをずっと見てきたので。​​​​​​​

featuring16:ネタにできるものは全部ネタにしていますからね。でも、最近はそれもやりすぎは良くないと分かって。ライブのMCで元カノの話を10年ぐらいしているんですが、お客さんが「またその話か」と飽きてる……。引っ張りすぎはよくないですね。それもありネガティブなことを言い続けてはいけないなと。もっとポジティブな気持ちで!​​​​​​​

—『Re≒BorN』には明るくて普通に良い曲が何曲もありますね。小さき者への温かい眼差しだとか。​​​​​​​

featuring16:
言われてみれば、犬も好きですし、小さいものが気になるお年頃なのかも。鬼龍院はお笑いから音楽、バンドの知識があってやり始めたけど、私は芸人としてバンドも音楽も知らないところから始まっているので、最近になってようやく曲に正しく向き合えるようになったのかもしれません。向き合って、昆虫の曲を書いていますけれど。​​​​​​​

—鬼龍院さんは、いつも驚くほど戦略的に音楽と向き合っていますよね?​​​​​​​

鬼龍院:
そうですね。僕は、他の人のライブをよく見るのですが、気づくことがたくさんあります。例えば全身タイツを着ただけで面白いと思っているような人たちが出ていると寒いとかスベっているとか、客席の空気が分かるじゃないですか。でもライブハウスに来ているバンドの熱狂的ファンは気付きづらい。なんの偏りも感情もないからこそ、冷静に見られる部分って大事だと思います。ちなみに、ライブハウスでは一番後ろで聴きたい。席を一番前に用意されると、お客さんのリアクションが見られず勉強にならないので困りますね。​​​​​​​

 

鬼龍院流売れる色物の法則=「色物だけどポップ!」


featuring16:でもライブハウスの演者って、本当にヤベー奴がいるよね……。そういうのを見るのも好き?

鬼龍院:本当にヤベー奴は大好きです。山梨のTakano Junyaさんとか。あまりに闇が深すぎて……。

featuring16:3日間ご飯食べないで歌って、ゲロ吐く人知ってる?

鬼龍院:病気マンさん?ブリーフ一丁でスイカの後に天ぷらを食べて、食い合わせが悪いことを表現しているのですが、初めて見た人はそこまで辿り着かない。言えば良いのに言わない(笑)。スイカ食べて、天ぷら食べて、バケツに吐く。そしてバケツを持って客席に降りて、バケツを振り回して、遠心力で溢れないというのをやっていました。

 

鬼龍院流売れる色物の法則=「色物だけどポップ!」(1)

 

featuring16:そういう人たちの中で育っているから、いまの自分がある。

鬼龍院:そうです。でも今回「クズ野郎達の傷の舐め合い思い出作りツアー」で声をかけたのは、そんな中でもギリギリ会話が通じる人たちです。

featuring16:まぁ、私なんかは呼べばすぐ来る都合の良い女みたいなものです。一昨年、鬼龍院が仙台で突然ライブをやった日があって、大体今回のツアーと同じような面々でね。なにこの面白そうなの!? なんで誘ってくれないのさ?って。その時、自分たちもたまたま仙台にいたからほんと寂しくて……。今回は呼んでもらえて良かったです。

鬼龍院:謝ったんだよね。ごめん、仙台でやるのにJin-Machineに声かけなくてって。だから、またやるなら呼ぶのは当然。あともうひとつ、ツアーに呼んだ皆さんは色物だけどどこかポップさがある。

—ポップさが大事。

鬼龍院:
大事。ゴールデンボンバーもそうですが、僕はそれを昔から言っていたんです。メンバー内でもずっと、ハードな白塗りなどのアングラ臭を持っていても、売れ線に片足を突っ込んでいないとダメ。アングラを極めてしまったら、当たり前ですけど売れない!と。​​​​​​​

featuring16:ふむ。こういう話し合いがあったからには、ツアーにはバケツを用意しないとだね。もしくは、俺らがみんなで回す?

鬼龍院:大惨事だよ!​​​​​​​
​​​​​​​


市場縮小するヴィジュアル系業界で生き残るには!?


—お互いがライブでやって欲しい曲は?

featuring16:
「アメリカ」か「まさし」。『個人資産』聴いて、「アメリカ」だけ、ん!ってなった。この曲パワーあるなと、あれは良い。

鬼龍院:推し曲「Love Days」にしてたんだけど、間違えたかな? 手をかけずに退屈な曲をと思って作ったんですが、それが結果引っ掛かるんですよね。子供にウケてるというのも聞きます。
ライブではやりづらいだろうけど、僕はイチローさんにボケなしの曲をやって欲しいんですよね。3曲目の「グリーンデイズ」とか。あと「Dancing on the fire」のパラパラっぽい曲はよくできているんだよな。そう考えると、Jin-Machineは、ヴィジュアル系で一番曲のバリエーションがあるんじゃないですか。

featuring16:音楽のジャンルを超えるというか、よその人が他の畑行ってやる方が、思想を知らないからこそ面白おかしくなるってのは意識してます。そこ、岡崎体育さんがうまいことやったね。

鬼龍院:それをバンドサウンドでやれるのは、強みですよ。

featuring16:でも、肝心のヴィジュアル系の曲が2、3曲しかないから、カッコ良い時間が10分しか持たない。それが弱みです。
でも、自分は「すげえヴィジュアル系じゃん」って言われたくて。今回、まずは見た目から固めていこうと、こういう衣装になりました。一番コテコテでお願いしますと。

鬼龍院:いいですよ。若くて上手い上に顔も綺麗なバンドがゴロゴロ出てきて、もうおじさんの腕では絶対に勝てません。整形技術の向上により化粧しないですむ時代ですし。ヴィジュアル系業界は市場が減ったことでテンションも下がり気味だと思いますが、過去の栄光にすがっていないで、もっと堂々としてれば良いのにと思います。ライブに来る人はたくさんいるから、その人たちをきちんと楽しませることをしていけば、食っていける。笑いの入ったライブをやってきた僕は、お客さんに伝わらないことが一番のスベりだって気がつきました。お客さんの立場になって考えるホスピタリティが重要。

featuring16:この前、ライブで用意した小道具が客席に見えてなくて、「お客さんの目線を大切にしろ」って鬼龍院にダメ出しされたんです。最初ちょっとムッとしたけど、腑に落ちた。同じ演者で、しかも年下でこんなこと言ってくれる人いないですよ。言ってくれてありがとう。

鬼龍院:いや、イチローさんに僕が感じた事を言って、僕もそのことについてより理解を深めることができたんで。

—素敵な関係ですね。って、イチローさんの方が年上?

鬼龍院:
あ、年齢明かしていないんだっけ。​​​​​​​

featuring16:公式には1万31歳だから、どっちにしろ年上です! とにかく、ツアーにバケツとか用意していきます。

鬼龍院:会場でお待ちしています!

 

市場縮小するヴィジュアル系業界で生き残るには!?(1)

 

 


Jin-Machine

■Profile
featuring 16(MC)、あっつtheデストロイ(破壊)、マジョリカ・マジョルカ・マジカル☆ひもり(G)、レジデンス涼羽-178(B)、ルーベラ・木村・カエレ(Dr)の5人からなるヴィジュアル系バンド。仙台出身。2005年結成。

http://www.jin-machine.net


■Release
Jin-Machine『Re≒BorN【SPECIAL EDITION】』
2019年1月16日(水)配信開始

Re≒BorN【SPECIAL EDITION】

2019年4月15日(月)までの3ヶ月限定販売。
アルバムまとめ購入限定LIVE音源3曲を含む全10曲収録。
価格:1,600円(税込)
※2019年4月16日(火)以降は限定LIVE音源を除く全7曲の配信となります。

さらに、『Re≒BorN【SPECIAL EDITION】』アルバム購入者が応募できるJin-Machineチェキプレゼントキャンペーンも実施中!
(2019年1月16日(水)0:00~2019年2月20日(水)23:59まで)
アルバム詳細やプレゼントキャンペーンについて詳しくは、mysound特設ページをチェック!



鬼龍院翔

■Profile
ゴールデンボンバー は鬼龍院翔、喜矢武豊、歌広場淳、樽美酒研二の4人からなるヴィジュアル系エアーバンド。略称は金爆(きんばく)。
曲の作詞・作曲はヴォーカルの鬼龍院翔が手掛け、編曲は鬼龍院翔と事務所の先輩でありバンドeversetギタリスト・tatsuoと共同作業である。
2019年1月18日より放送開始するNHKドラマ10「トクサツガガガ」の主題歌「ガガガガガガガ」を2019年2月20日にリリースする。

http://pc.goldenbomber.jp/


■Release
初のセルフカバーアルバム
『個人資産』
2018年12月5日(水)リリース

個人資産.jpg

https://mysound.jp/album/258494/

 

<Live>

「クズ野郎達の傷の舐め合い思い出作りツアー」
 
1月22日(火)福岡DRUM Be-1
開場18:00 開演18:30
出演:鬼龍院翔/SHIN/Jin-Machine/JESTIVAL
[チケット]
SOLD OUT
問:BEA 092-712-4221
 
1月24日(木)広島SECOND CRUTCH
開場18:00 開演18:30
出演:鬼龍院翔/SHIN/Jin-Machine/JESTIVAL
[チケット]
SOLD OUT
問:夢番地広島 082-249-3571
  
1月29日(火)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
開場18:00 開演18:30
出演:鬼龍院翔/SHIN/Jin-Machine/ノビタ
[チケット]
SOLD OUT
問:キョードー北陸チケットセンター 025-245-5100
 
1月31日(木)仙台darwin
開場18:00 開演18:30
出演:鬼龍院翔/SHIN/Jin-Machine/ノビタ
[チケット]
SOLD OUT
問:キョードー東北 022-217-7788
 
2月4日(月)名古屋Electric LadyLand
開場17:45 開演18:30
出演:鬼龍院翔/SHIN/Jin-Machine/mynch./ノビタ
[チケット]
SOLD OUT
問:キョードー東海 052-972-7466
 
2月5日(火)梅田CLUB QUATTRO
開場17:45 開演18:30
出演:鬼龍院翔/SHIN/Jin-Machine/JESTIVAL/遺伝子組換こども会
[チケット]
SOLD OUT
問:夢番地大阪 06-6341-3525


Text:仲田 舞衣
Photo:井上 満嘉