101年目のジャズ vol.10 ~秋の夜長はジャズがお似合い~

101年目のジャズ vol.10 ~秋の夜長はジャズがお似合い~
木の葉の彩りに目を奪われる瞬間が増えました。冬に向かう前の儚くも美しいワン・シーン。すっかり秋ですね。さて、ラジオ番組のナビゲーター気分でお届けしている「101年目のジャズ」。今回で10回目、じつはラストです。最終回ということで、何か特別なテーマで締め括ろうかと思ったのですが、秋真っ盛りということで、これはもう、季節感あふれるジャズのライブ音源を聴いていただこうとセレクトしました。題して「秋の夜長はジャズがお似合い」。どうぞ、ごゆっくりお楽しみください。

#1. Ahmad Jamal Trio - Autumn Leaves

1945年生まれ、ハンガリー出身、フランスに帰化した作曲家のジョゼフ・コズマが、「Les Feuilles Mortes(レ・フイユ・モルト)」という曲を書きました。その後、フランスを代表する詩人 / 脚本家 / 作家として活躍したジャック・プレヴェールが母国語で歌詞を付け、多くの歌手が歌うようになります。世界最高峰のシャンソン歌手、ジュリエット・グレコのバージョンはとくに有名で、もしまだ一度も聴いたことがないという方はぜひ、彼女の歌声をチェックしてみてくださいね。その「レ・フイユ・モルト」のメロディにアメリカの作詞家、ジョニー・マーサーが英語詞を付け、タイトルも「オータム・リーブス(枯葉)」として発表したところ、アメリカのシンガー及びジャズ・プレイヤーたちがこぞって取り上げるようになります。今となっては、全世界でいったいどれだけのミュージシャンがカバーしているのか。その中から選ぶのは至難の業ですが、今回は1958年9月、ワシントンD.C.の“スポットライト・クラブ”で行なわれたアーマッド・ジャマル・トリオのライブ演奏をお聴きいただきましょう。“これが「枯葉」?”と思う人もいるんじゃないかな。

#2. Cannonball Adderley - Autumn Leaves

アーマッド・ジャマルは、ジャズ界の帝王でトランペット奏者のマイルス・デイビスにも影響を与えた1930年生まれのジャズ・ピアニストです。マイルスの自叙伝にも、たびたび彼の名前が登場し、たとえば“値すべき評価を受けたことがない偉大なピアニストだと、今でも思っている”と絶賛しています。そのアーマッドが「枯葉」をライブ演奏した同じ年の3月にアルト・サックス奏者、キャノンボール・アダレイ名義のアルバム『サムシン・エルス』が録音されました。メンバーはハンク・ジョーンズ(p)、サム・ジョーンズ(b)、アート・ブレイキー(ds)、そしてマイルス・デイビスです。ジャズ好きなら誰もが知っていると言っても過言ではない超名盤。ちなみに、アルバムの名義こそキャノンボールですが、このグループの実質的なリーダーはマイルスだと言われています。とにかく、ここに収録されている「枯葉」は、ジャズ・ファンのマスト・トラック! ということで、スタジオ録音ではありますが、ぜひ、お聴きください。
    • Autumn Leaves/キャノンボール・アダレイ

      シングル

      555

      Autumn Leaves
      キャノンボール・アダレイ

#3. Bill Charlap Trio ‐ Autumn in New York

先日、トニー・ベネットとダイアナ・クラールのデュエット・アルバム『ラブ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ』がリリースされました。今年生誕120周年の作曲家、ジョージ・ガーシュウィンのナンバーで綴る粋な作品は発売前から大注目され、聴いてみればやっぱり良くて、すでに愛聴盤となっています。ふたりのボーカルはもちろんのこと、彼等をサポートしているビル・チャーラップ・トリオもツボを心得た演奏で魅了されまくり。そのトリオが、2003年にニューヨークの老舗ジャズクラブ“ヴィレッジ・バンガード”でヴァーノン・デュークが書いた「ニューヨークの秋」を演奏しています。しっとりとしたムードに浸ってください。

#4. Sonny Stitt - Autumn in New York

「ニューヨークの秋」を書いたヴァーノン・デュークはジョージ・ガーシュウィンに見出され、ブロードウェイ・ミュージカルの楽曲も手掛けるようになりました。「アイ・キャント・ゲット・スターティッド(言い出しかねて)」や「テイキン・チャンス・オン・ラブ」「ホワット・イズ・ゼア・トゥ・セイ」、そして「エイプリル・イン・パリ」等々。どうしてこんなにも美しいメロディが浮かぶのでしょう。そして、そのメロディを古今東西のジャズ・ミュージシャンたちは、独自のカラーで演奏し、私たちに新たな景色を見せてくれます。続いては、1924年生まれ、ボストン出身のアルト・サックス奏者、ソニー・スティットのライブ演奏で「ニューヨークの秋」です。

#5. Kurt Elling - Autumn Serenade

1967年生まれ、シカゴ出身のカート・エリングをご存じですか。彼は名実ともにトップ・クラスの男性ジャズ・ボーカリストで、そのスタイルはクレバー&クリエイティブ! 来日公演のステージを体感し、ノックアウトされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回、ご紹介するナンバーは2009年にリリースし、第52回グラミー賞最優秀ジャズ・ボーカル・アルバム賞を獲得したライブ・アルバム『デディケイテッド・トゥ・ユー』から「オータム・セレナーデ」です。サックス奏者は幅広いフィールドで大活躍、ローリング・ストーンズのツアーにも参加したことがあるアーニー・ワッツです。

#6. John Coltrane & Jonny Hartman ‐ Autumn Serenade

さて、カート・エリングのアルバム『デディケイテッド・トゥ・ユー』は、サックス奏者、ジョン・コルトレーンとジャズ・ボーカリスト、ジョニー・ハートマンが生んだ1963年録音の名盤に捧げた内容でした。1曲目に収められたロマンティックなナンバー「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」を聴くとメロメロ、フニャフニャになってしまう可能性大なので要注意、いえ、夜、こっそり聴いてみてください。とにかく、名盤『ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン』が世に出なければ、カートのアルバム『デディケイテッド・トゥ・ユー』は生まれなかったわけです。となれば、元となったトラックも聴きたくなりますよね。ピアノはマッコイ・タイナー、ベースはジミー・ギャリソン、そして、ドラムスはエルヴィン・ジョーンズです。

#7. Sonny Rollins - Autumn Nocturne

続いてもテナー・サックス奏者の演奏です。1930年生まれ、ニューヨーク出身のソニー・ロリンズは1940年代から活躍している大御所中の大御所。初めてライブをナマで観たのはいつだったか、とにかくステージに登場した途端、あまりの存在感に圧倒され、彼にしか出せない音の豪快さに涙が出るほどでした。今回、お聴きいただきたいのは1978年にリリースされたアルバム『ドント・ストップ・ザ・カーニバル』から「オータム・ノクターン」です。サンフランシスコの“ザ・グレイト・アメリカン・ミュージック・ホール”でのライブ演奏で、サックス一本による凄まじいインプロビゼーション、それを受けてバンド・メンバーと共に繰り広げるテーマ、その時にあがる観客の歓声、さらに盛り上がるプレイ! ブラボーです!

#8. Carol Sloane - Autumn Nocturne(feat.Phill Woods)

ラスト・ナンバーも「オータム・ノクターン」ですが、一転してしっとりと歌うキャロル・スローンのボーカルで締め括りたいと思います。1937年生まれの彼女は、この曲をジャズ歌手、カーメン・マクレエに捧げたアルバム『Songs Carmen Sang』に収めています。ここでフィーチャーしている1931年生まれ、2015年に他界した親日家のフィル・ウッズは、ビリー・ジョエルの「素顔のままで」で演奏していた、あのサックス奏者です。

  • 今年1月から毎回テーマを決めてジャズのライブ音源をご紹介してきた「101年目のジャズ」は10回目の今回でエンディングとなりました。これまで読んで聴いてくださったアナタ、本当にありがとうございます。今後は、どうぞご自身でお気に入りのジャズ音源を見つけていってくださいね。そして、ぜひライブ会場にも足を運んでみてください。
    そういえば、フィル・ウッズにインタビューをした時、彼はこんなことを言っていました。“長い間、活動してきたけれど、ターニング・ポイントはいつだってトゥモロウ! だと思っているんだ。僕たち、ミュージシャンにとって大切なのは“明日”。もちろんこれまでにも重要な出来事はたくさんあったけれどね”
    明日もジャズはそこにある。アナタが求めれば、心を潤す演奏や歌にもっともっと出逢えるはず。私も聴き続けます。明日はもちろん、102年目もその先も。

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