日本の音楽シーンを牽引するmabanua(Ovall)とハマ・オカモト(OKAMOTO'S)が語る「リズム隊」の魅力

日本の音楽シーンを牽引するmabanua(Ovall)とハマ・オカモト(OKAMOTO'S)が語る「リズム隊」の魅力
これまで藤原さくらやさかいゆう、SKY-HIら数多くのアーティストのプロデュースを手掛け、ソロ名義で通算3枚目となるアルバム『Blurred』を2018年8月29日(水)にリリースするmabanuaと昨年8月に通算7枚目のアルバム『NO MORE MUSIC』をリリースしたOKAMOTO'Sのベーシスト、ハマ・オカモト。先日、森山直太朗のレコーディングで初対面したという2人にお互いの印象やお互いの共通点、「リズム隊」の魅力を語っていただいた。

mabanua(Ovall)×ハマ・オカモト(OKAMOTO'S) お互いのミュージシャンとしての共通点とは?

藤原さくらやさかいゆう、SKY-HIら数多くのアーティストのプロデュースを手掛け、自身もバンドOvallのメンバーとして活躍するmabanuaが、ソロ名義では通算3枚目となるアルバム『Blurred』を2018年8月29日(水)にリリースする。

CharaやAchicoをフィーチャーしつつ、あらゆる楽器を全て1人で演奏し、自身初となる日本語詞のボーカルや、ミックスダウンまで自ら手掛けた本作は、太くタイトなビートと浮遊感たっぷりのシンセが融合する、ソウルフルかつサイケデリックな音世界。日本人の琴線に触れる、懐かしくも哀愁漂うメロディラインも印象的だ。

今回は、そんなmabanuaと、昨年8月に通算7枚目のアルバム『NO MORE MUSIC』をリリースしたOKAMOTO'Sのベーシストであるハマ・オカモトとの対談を行なった。先日、森山直太朗のレコーディングで初対面したという2人。日本の音楽シーンを牽引するドラマー、ベーシストとして普段どのようなことを考えているのか。「リズム隊」の魅力とはどこにあるのか、たっぷりと語り合ってもらった。

mabanua(Ovall)×ハマ・オカモト(OKAMOTO'S) お互いのミュージシャンとしての共通点とは?(1)

─お二人は先日、森山直太朗さんのレコーディングで初対面したと聞きました。それまではどんな印象をお互いに持っていましたか?

ハマ・オカモト(以下、ハマ):
僕は、自分がバンド以外のところでも演奏仕事をするようになってから、mabanuaさんのお仕事をより意識するようになりましたね。色々な人から、「まだ一緒に仕事したことがないなんて意外!」とよく言われていましたし、いつかご一緒する日は来るだろうなと勝手に思っていました。そうそう、今朝もmabanuaさんがプロデュースした藤原さくらさんの新作『green』を聴いてきたのですが、これ本当に凄い作品ですね。

mabanua:あ、本当ですか?ありがとうございます。

ハマ:藤原さんのようなアコースティックな作品に、打ち込みを混ぜるその塩梅や、1音1音の磨かれ方が尋常じゃないというか。しかも、全然小難しい感じがしなくて。楽器も藤原さんのアコギ以外は、ほとんどmabanuaさんが演奏しているんですか?

mabanua:そうですね、ゲスト・ミュージシャンはターンテーブルとトランペットくらいで。

ハマ:本当にいい作品だと思います。サイズ感も含めてとても気に入っています。

mabanua:嬉しいな。僕もハマくんのことは、OKAMOTO'Sが出てきた時から注目していました。ていうか、メディアから友人からみんな騒いでましたよね、「すげえバンドが出てきた」って。ベースのスキルと音楽的知識に、みんなが圧倒された。自分たちの見せ方も心得ているし、羨ましいなって単純に思いましたよ(笑)。

ハマ:ありがとうございます。

mabanua:ベースのアプローチもすごく好きです。ベーシストとドラマーって、バンドの中で重心を支える存在っていうイメージがあるじゃないですか。でもハマくんのプレイは、ベースの役割を充分果たした上で、ちゃんと主張もしてる。「あ、これハマくんの音だね」って分かるのは凄いことだなと。

─実際にスタジオで一緒に音を合わせてみてどう思いました?

ハマ:
1曲だけでしたし、あっという間に終わってしまいました。3、4テイクくらいだったかな。面白い楽曲でしたよね?

mabanua:そうそう、不思議な歌詞の世界で。

ハマ:曲の途中からmabanuaさんのドラムが入ってくるのですが、その時のフィルインが毎回変わるんです。仮ミックスしてもらったデータを改めて聴いたら、OKテイクになったフィルがとにかくヤバい(笑)!今まで聴いたことのないフレーズでした。

mabanua:どんなんだったか忘れちゃった(笑)。ハマくんはね、ベースプレイに安定感があるんですよ。僕のドラミングって、ベースプレイに意外と影響されやすくて。ちょっとしたミュートの音とか、ニュアンスをすごく細かく聴いているので、相手によっては「これはちょっと、頑張って合わせないとな」って思うベーシストもいるんです。あるいは、何にも考えずにパッと合わせられる人もいて、そういうのは最初の8小節くらいで分かるんですね。ハマくんの場合はもう、最初から気持ち良いくらいストレスがなくて。

ハマ:光栄です!

mabanua:ただただ一緒に叩いてて気持ちいいだけなんですよ。「どこが?」って言われると、マニアックな話になっちゃうと思うんですけど(笑)。

ハマ:僕も、例えば自分のプレイの中で音数が多いところなんかは、意識しないと1人で突っ走ってしまったり、少し不安になったりすることもありますが、mabanuaさんとはそういうストレスが全くありませんでした。とにかくテイクを重ねるごとに、どんどんドラミングがカッコ良くなっていくので、「どうしよう、俺もなんかやらないと!」という気持ちになっていったのは覚えています(笑)。

mabanua(Ovall)×ハマ・オカモト(OKAMOTO'S) お互いのミュージシャンとしての共通点とは?(2)

─ところで、お二人はどんなキッカケで楽器を始めたのですか?

mabanua:
僕は最初、鍵盤だったんですよ。親にクラシックピアノを習わされるパターン。小学校低学年くらいまでやったかな。で、中学生くらいからギターをやり始めて。でも学校の中で、ギターとボーカルって人口が多いから、主張の強いやつだけが残る。俺みたいな人間は、段々後ろに追いやられていくんですよ(笑)。ドラムもなまじっか叩けたもんだから、気がついたらドラマー固定になっちゃって。

ハマ:なるほど。ギターの座も明け渡してしまったんですか?

mabanua:ギターの場合、ソロとかメチャメチャ上手い奴いるじゃないですか。スケールで攻めてくみたいなのは、俺も練習したけどどうも上手くならなくて。どちらかというと、バッキングの方が好きだったんですよ。パワーコードでガシガシ弾くような(笑)。その辺から、自分は裏方が向いてると気づいたんですよね。

ハマ:当時はどんな音楽を聴いてたんですか?

mabanua:聴いてたのはビートルズやレッド・ツェッペリン。でも、そんなの学祭とかでやるやつ他にいないじゃないですか、渋すぎて。だから、バンドでカバーしてたのは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズやHi-STANDARD。主にミクスチャーやハードコア、パンク系のバンドでした。ハマくんは?

ハマ:中学に軽音楽部があって、当時から友だちだった(オカモト)コウキ(G)と(オカモト)ショウ(Vo)が、僕より先に入部してたんです。その2人がどんどん音楽を探求していくようになって、僕の知らない音楽の話や、用語が会話の中に飛び交うようになってきて。それについていくために僕も軽音に入りました。ちなみに、当時はエミネムなどが流行っていて、音楽をやりたい奴はみんなヒップホップへいきました。僕らみたいに楽器を演奏しているやつらは「オタク」扱いというか。

mabanua:そうだったんだ。なぜベースを選んだの?

ハマ:当時ショウはドラマーで、コウキはギターだったのでそれ以外の楽器を探すことになって。ボーカルは恥ずかしいし、鍵盤は「ロックじゃねえ」と当時は思っていて(笑)、それで消去法で選んだのがベースでした。うちの部はmabanuaさんのところと違って、ボーカリストが1人もいなかったんです。文化祭ではビートルズや(レッド・)ツェッペリン、クリームなんかをバリバリ演奏していましたが、肝心のボーカリストがいない。全てインストでした(笑)。

mabanua:なにそれ!新しい(笑)。

ハマ:でも今考えると、歌なしでも聴かせる演奏にするために練習はかなりしていた気がします。その過程で楽器への執着心も芽生えたし、演奏力も鍛えられたんだと思います。今考えるとものすごく勉強になった。そこから、中学卒業のタイミングで(オカモト)レイジ(D)がバンドに入ってきて、英語が話せるショウに歌わせるようになり(笑)、それで今のOKAMOTO'Sの原型が作られました。

mabanua:なるほどねえ。

─ところで、ミュージシャンとしてお互い「似てるな」と思うところはありますか?

mabanua:
うーん、楽器や機材よりもまず、音楽を大切にしているところですかね。例えば同じドラマーの中には、「シンバルをなに使っているか?」とか「どんな種類の皮を張ってるの?」とか、そういう話ばかりする人がいて。それはそれで良いんですけど、あくまでもツールは手段であり、どんな音楽がやりたいのかがまずあった上でこだわる人の方が、個人的には話が合うんですよね。だから、いわゆる「ドラマー談義」みたいなところに僕、うまく馴染めないんですよ(笑)。

ハマ:ものすごく分かります。僕もベース談義とか交われる自信がないです(笑)。

mabanua:そう、ハマくんもきっと僕と同じで、楽器とか機材へのこだわりよりも先に、音楽的なセンスみたいなものを大事にしてくるのが伝わってくるというか。実はそういう人って少ないから、貴重だなって思うんですよね。

mabanua(Ovall)×ハマ・オカモト(OKAMOTO'S) お互いのミュージシャンとしての共通点とは?(3)

─プレイヤー気質とリスナー気質のバランスが、お二人は似ているのかもしれないですね。ちなみに、最近気になっている音楽はありますか?

mabanua:
パッと思いつくのはニック・ハキムやアンノウン・モータル・オーケストラ。どちらもちょっとイカレてるんですよ。アンノウン・モータル・オーケストラとか、ハマくん絶対好きだと思う。サイケデリックなバンドだけど、ベーシックな部分にブラックミュージックがあるんです。あと、ちょっとローファイだったり、歪だったりするサウンドが好きですね。フランク・オーシャンとか、普通に歌ったらメチャメチャ上手いはずなのに、わざと声のピッチを変えたりするところがいいなと(笑)。

ハマ:アンノウン・モータル・オーケストラ、聴いてみます。僕は結構、同じものをずっと聴いているタイプなので、最近あまり新譜は追っていないかもしれません。聴く音楽の年代が、だんだん現代に近づいてきていて。もともと60年代の音楽が好きで、そればかり聴いていた時期が長らくあったのですが、最近は1972年から1983年くらいまでのレコードをよく聴いています(笑)。

mabanua:へえ!1984年になると違うの?

ハマ:これが全然違うんです(笑)。やっぱり、あの時期のブラックミュージックでまだまだ聴いていないものが無限にあって、それを掘っているのが今は楽しい。

mabanua:そういえば、OKAMOTO'Sの『NO MORE MUSIC』を聴かせてもらったんだけど、今までとテンポ感が変わった?前のアルバムも良かったけど、今度のやつすごく好きだなと思って。よりブラックミュージック寄りになったよね?

ハマ:そうなんです。でも、どこか「なんちゃって感」が残ってるというか(笑)。白人が無理矢理ブラックミュージックに挑戦してブルー・アイド・ソウルが生まれたように、いくら僕らがブラックミュージックに寄せても寄せきれないところ、そこがOKAMOTO'Sらしさということなのかなと。

─「日本人っぽさ」みたいなことを意識することはありますか?

ハマ:
今まであまり考えたことはありませんでしたが、先日レゲエ調の楽曲をレコーディングしてみたときに、どうやったってジャマイカのあの感じ・・・で完全にキマった状態で出してる様に聴こえる音は(笑)、僕らには出せない。「僕ららしい音」になってしまうというか。でも、それが「日本人っぽさ」ということでもあるのかなと。そこを楽しめるようになってきているので、「日本人っぽさ」も自然と意識してるのかもしれません。

─mabanuaさんは、いかがですか?

mabanua:
僕は、18歳くらいの頃は「日本人であること」をすごく残念に思ってたんです。「なんで俺は黒人に生まれなかったんだろう」って。見た目もカッコいいし、生まれ持ったリズム感も凄いし。例えばクエストラブのドラミングとか見るたび、アジア人であることに対して強いコンプレックスを感じていたんですよね。でも、色々考え抜いて、結局はビートルズから音楽に入って、ブラックミュージックに没頭するっていう、自分自身が積み重ねてきた歴史の中で音楽が形成されるわけじゃないですか。そう考えると、人種や国籍なんて、ある意味どうでもよくなるというか。パーソナルな音楽性が、国境とか人種を超えられるんじゃないかと思えるようになったんですよね。

ハマ:なるほど。

mabanua:昔はもっと様式美みたいなことが重視されていて、ちょっとでもブラックミュージックのマナーから外れると受け入れられなかったりしたこともあったんですけど、さっき話したアーティストたちみたいに、ちょっとジャンルを逸脱していても許されるし、ちょっと面白がってもらえる世の中になってきたと思うんです。今回のアルバム『Blurred』は、そういう意味ではジャンルとか国籍とか、そういう枠組みを全く考えずに作ったらこうなったという作品なんです。

ハマ:そうか、『Blurred』をすごくパーソナルな作品だなと感じたのは、そうやって作られたからなんですね。

mabanua:ハマくんも、ソロアルバムとか出さないんですか?

ハマ:全く考えたことないです。自分一人で曲を作れないですし。そもそもジャッジを自分がすると全部ボツにしてしまうと思うんです。歌詞にしても歌にしても全て。人に聴かせるハードルもものすごく高いので、おそらく世に出せない(笑)。「ベースラインを考えてるんだから、それを“作曲”と呼んで許してくれよ」と思います。

─(笑)。mabanuaさんプロデュースでソロデビューとかどうですか?

mabanua:
ハマ・オカモトを俺がプロデュースするんですか!?ええ、マジすか、そんなことしていいのかな・・・(笑)。

ハマ:あははは。今は演奏するのが一番楽しいですが、いつか機会があったら是非!

mabanua(Ovall)×ハマ・オカモト(OKAMOTO'S) お互いのミュージシャンとしての共通点とは?(4)


Text:黒田 隆憲
Photo:Shintaro Nakamura

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