小袋成彬、King Gnu、Attractionsなど…2018年下半期に国内で注目したいアーティスト10選

小袋成彬、King Gnu、Attractionsなど…2018年下半期に国内で注目したいアーティスト10選
2017年までのアーバンでブラックミュージックのグルーヴを持つスキルも高いバンド/アーティストのインフレがおさまった感もある2018年上半期。メジャー・インディー、洋楽・邦楽、トレンドと普遍性などの壁を一気に飛び越え、日本のポップシーンにパラダイムシフトを起こした小袋成彬の登場は刺激的でした。他にも海外での評価が日本より先行しているバンドや、20代前半ならではの過去の音楽ヒストリーをフラットに吸収・消化するバンドなど、日本独自の進化を遂げた「ガラパゴス化」は、新たなタームに突入したのかもしれません。また、彼らニューカマーが続々とフジロックに初出演するなど、今夏のフェスで出会える機会も多いので、ぜひ生で現在進行形のムードを体感していただければ!

#1.小袋成彬 - Daydreaming in Guam

宇多田ヒカルがプロデュースを手がける初のアーティストという広いリスナーに訴求するインフォメーション、〈Tokyo Recordings〉代表として裏方として既に名の知れた存在である彼が、シンガーソングライターに大きく舵を切ったインパクト。でもそれは作品自体のクオリティと彼の歌があっという間に凌駕しました。音数が少なくダウンテンポ気味のトラックは世界の潮流とも共振。また最も驚くべきことは、その作品性のとことんパーソナルな部分でしょう。彼と彼があてた相手にしか真実は分からないと思われる個人的な歌詞は、表現とは何か?を聴くものに問いかけます。今夏はフェスへの出演も多く、“ライブ”でのあり方も新鮮に映るでしょう。

#2. 踊FootWorks - NDW

RIP SLYMEが放っていたような実は深いのに、パッと聴きは人懐こいヒップホップを2018年の今、アップデートしたかのような軽妙洒脱な4人組。ニューアルバム『odd foot works』では、より洗練されたミックス、ファンク、ソウルを基調としつつ、どこか白昼夢的なサウンドメイクや、誰しもがデジャヴを起こすようなワード・チョイスとその構築センスで、サウンドやジャンル感とは一味違うヴェイパー・ウェイヴ感を漂わせています。それが人恋しさや切なさに繋がり、鋭くてセンス抜群な若者、だけではない妙味を醸し出すというバンドの構造。そして、音楽に情熱を注ぎつつ、どこか肩の力の抜けた愛すべきキャラクターも頭抜けた存在です。
    • NDW/踊Foot Works

      シングル

      257

      NDW
      踊Foot Works

#3. King Gnu – McDonald Romance

ファンク、ヒップホップなどブラックミュージック要素が強めでありつつ、しっかりサビがあり、しかも思わず歌いたくなるような歌謡曲的な妖艶なキャッチーさも併せ持つ4人。ジャンルとしてのミクスチャーロックではなく、“トーキョー・ニュー・ミクスチャースタイル”を自称するのも納得です。ミドルテンポでノれる曲が多い中、ダウンテンポでジャジーなピアノとピアノのフレーズ的な歌メロが独特な「McDonald Romance」は、King Gnuの音楽的なレンジの深さが実感できる1曲としてピックアップしてみました。フジロックの本ステージに初出演する今年、彼らを未見のクロい音楽好き、新しい音楽好きにかなり刺さるのでは。

#4. odol – 大人になって

ソングライターの森山公稀(P / Syn)が作る、彼が敬愛する坂本龍一の影響を感じさせるコード進行やメロディ。ポストロックやシューゲイザーを内包するバンドのアンサンブル、そして日本語の表現をある種、朴訥でもある歌で届けるフロントマン・ミゾベリョウ(Vo / Gt)の存在感。多くのレディオヘッドに影響されたバンドの中でも構造としては近いものがありつつ、J-ポップ・リスナーにも垣根を感じさせない親近感も併せ持つあたりが新鮮なバンドです。今夏はフジロックへの出演も決定。親和性の高さを証明してくれるのではないでしょうか。

#5. Attractions - Leilah

福岡拠点で活動し、その洋楽インディポップ志向なサウンドも相まって、東京よりむしろアジアなど海外での活躍が先行しているAttractions。昨年リリースのセルフネームのEP以上に、シンセのきらびやかさ、ギターリフに伺える80s感など、よりポップになった「Leilah」。バンドの正体を知らないリスナー層にもサブスクリプション・サービスなどを通じて確実に浸透しているナンバーです。洗練されたグルーヴ、英語圏の表現力の高いボーカリストと肩を並べられるURO(Vo)の声の存在感など、洋楽・邦楽というカテゴリーを無意識に超えていく現代の王道感を既に兼ね備えているバンドとして、注目して損はないでしょう。
    • Leilah/Attractions

      シングル

      257

      Leilah
      Attractions

#6. STEPHENSMITH – 微温湯の雨

シティポップやインディーR&Bといえばそうでもあるけれど、超絶にBPMを落としたメロウなグルーヴ、ライブでは想像以上にブルージィーなソロも弾くCAKE(Vo / Gt)を始めとする堂々としたミュージシャンシップには、トレンドとは一線を画す強い意志も感じさせます。平均年齢23歳。渋い音楽を我流で消化しようとする若い感性も、熟していないからこそ、結果としてユニークな音像を生んでいる印象。ヒップホップもはっぴいえんど界隈も通過し、消化する生音バンドは数あれど、なぜそのリファレンスからこの音になるのか?ある意味、真面目なバンドとして、幅広い年齢層の音楽好きの気持ちを掴みそうなバンドです。

#7. TENDRE - RIDE

マルチ・プレイヤーである河原太朗のソロ・プロジェクト、TENDRE。昨年末にリリースした初のリーダー作『Red Focus』収録曲が各地のFM局でパワープレイを獲得。スキルフルでありつつ、今のスタンダードなポップ・ミュージックに落とし込むさりげないセンス、ニュートラルな気持ちにさせてくれる河原の声質も相まって、誰にでもおすすめしたくなるというなかなかレアな存在になってきています。ライブでのユーモアを交えたフランクなスタイルも心地よく、誰も置いてきぼりにされない空間のファンも増えてきた印象。ダンサブルで低音が効いたこの新曲など、まだまだ音楽的なレンジの広さを体現してくれるはず。
    • RIDE/TENDRE

      シングル

      257

      RIDE
      TENDRE

#8. カネコアヤノ – エメラルド

既に活動歴はある程度ある彼女ですが、今春リリースした『祝祭』で、他に替えの効かない歌や、みずみずしい感性をテンプレにはめ込むことのない言葉のセンスが解像度高く定着されたのではないでしょうか。バンド・バージョンは林宏敏(Gt / ex:踊ってばかりの国)、本村琢磨(Ba /Gateballers)、Bob(Dr / HAPPY)という布陣であることも納得の、ルーツから今に至るアメリカンロックの手触りで、弾き語り曲も収録されています。ちなみに「祝祭」の弾き語り再録音版が8月にリリースされるのも楽しみ。日常の様々に心を揺さぶられ、その気持ちを自ら言い当てるように音楽にする強さとあやうさを同時に体験できる逸材です。

#9. バレーボウイズ – 卒業

京都精華大学はくるりの岸田繁が授業を持っていたりすることでも音楽ファンに知られますが、この大学で組まれたバンドや京都のシーンは相変わらず面白いことを証明する一つの例が彼らではないでしょうか。男女混成の7人組という大所帯で、全員がフォークや青春歌謡的なナンバーを熱唱するなんて、自発的にしか考えられないスタイルです。自ら「合唱系ノスタルジック青春歌謡オーケストラ」と銘打つだけあって、その要素は全てインクルード。いなたさや、一生懸命なパフォーマンスに思わず応援したくなりますが、トレンドやバンドの定石にはまらない気骨にむしろこちらが押される、そんなバンドなのかも。
    • 卒業/バレーボウイズ

      シングル

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      卒業
      バレーボウイズ

#10. KID FRESINO – Slave feat. JJJ

既にキャリアのあるトラックメイキングも行うラッパーの彼ですが、6月のツアーにはこの「Slave」にも参加した三浦淳悟(Ba /ペトロールズ)、佐藤優介(Key / カメラ=万年筆)、斎藤拓郎(Gt / Yasei Collective)、石若駿(Dr)、小林うてな(Steelpan)とのバンドセットで開催するなど、存在と音が一致したリスナーも多いはず。ある意味、今の東京的なサウンドを実感させてくれる存在と言えそうです。3月に公開した「Coincidence」、ゆるふわギャングのNENEが参加した「Arcades(ft.NENE)」など、生音×エレクトロ・バンドに通じるセンスと、ラッパーならではのワードセンスの飛翔は、胸がすくレベルです。

  • 新しい世代のキーマンが明確になってきた今、アーティストのセンスやフィロソフィがジャンルを超えている印象。その成果が下半期に現れるのではないでしょうか。


    Text:石角 友香

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