PARADE PARADE ×クニモンド瀧口 ~昭和歌謡、Jポップ、シティポップ…良質なポップスを求めて~


北海道・札幌出身のバンド、PARADE PARADE が新作『Dawn In Blue』をリリース。「ニューミュージック」と「ブラックコンテンポラリー」のハイブリットを試み、80~90年代を独自の解釈で再構築した、シティポップ感覚溢れるミニアルバムだ。
リリースを記念し、流線形の活動でも知られるミュージシャン/プロデューサーであるクニモンド瀧口と対談を行った。クニモンド瀧口といえば、現在のシティポップブームの立役者。様々な音楽のエッセンスを現代風のサウンドに洗練して仕上げる達人だ。今回は音楽的な背景から、時代を超えて聴かれるシティポップの魅力までを語り合ってもらった。

「上を向いて歩こう」は日本のポップスの理想形

「上を向いて歩こう」は日本のポップスの理想形(1)

L→R:松本晃貴(Gt)、大松沢ショージ(Vo & Key)、クニモンド瀧口 ※PARADE PARADEメンバーの三浦光義(Ba)は欠席


─クニモンドさんは今回、PARADE PARADEの楽曲を初めて聴いたそうですけど、いかがでしたか。

クニモンド:編集部の人に勧められたんだけど、よかったです。気の利いたギターのリフがたくさん入っていたり、打ち込みのビートを上手に使っていたり。メロディもいいし、すごく洗練されたバンドサウンドだなと思いましたね。気に入りました。
 


─おーっ!

大松沢ショージ(Vo & Key):ありがとうございます!

クニモンド:皆さんは今、26歳でしたっけ。もともとどんな音楽を聴いていたんですか?

大松沢:僕たちは、地元・札幌の飲み仲間で集まったバンドなんでもともと音楽的なルーツはバラバラなんです。僕はいわゆる流行りモノ──ORANGE RANGEさん、aikoさんなどを聴きつつ、ブラックミュージックをよく聴いてましたね。モータウンからR&B、特にD’Angeloにはまりました。最近はヒップホップも好きですね。

松本晃貴(Gt):僕はヴィジュアル系が好きだったんです。だからGLAYさんとかLUNA SEAさんとか。じつは早弾き小僧でBon JoviとかJourneyなどを聴くうち、80sつながりで、TOTOを好きになって。最近はBoz ScaggsのようなAORも聴きますね。あと、アイドルも好きでした。

大松沢:今日はいないですけど、もうひとりのメンバー(三浦)はおしゃれボーイで、星野源さんとか早い時期からよく聴いてましたね。

クニモンド:驚くほどバラバラですね(笑)。それだけ違う音楽性だとバンドとしてまとめるのは大変だったんじゃないですか?

大松沢:最初の頃は楽しければいいかなって感じだけで作ってました。そんな中でもちょっとずつ音楽性が絞られてきて。今回、4枚目のアルバムなんですけど、改めてみんながやりたいことって何かを考えた時、結局、「Jポップの歌物」なんじゃないかなと行き着いたんです。そこで日本のポップスシーンに脈々とつながる美しいメロディラインと今っぽいブラックミュージックのリズムを組み合わせたらどうかと思ってつくったんですよね。

クニモンド:なるほど、Jポップか。最近はAWESOME CITY CLUBやceroなど、ヒップホップをベースにしたバンドが多いけど、PARADE PARADEは、サビがちゃんと耳に残るし、メロディで聴かせようとしてるんだなとは思いましたね。

「上を向いて歩こう」は日本のポップスの理想形(2)

大松沢:ひとくちにJポップといっても、フォークやニューミュージックのようなものから、最近のものまで……音楽性自体は幅広いですから、まだ勉強中みたいな感じですけど。クニモンドさんがプロデュースされた一十三十一さんのアルバム『CITY DIVE』も聴かせて頂きましたが、そちらも打ち込みなどの洗練されたビートにどこか和的なメロディが混ざっていますよね。
 


クニモンド:そうですね。僕も筒美京平さんをはじめ、百恵ちゃんや(西城)秀樹とか往年の歌謡曲が好きだし、日本の情緒は大事にしたいといつも思っているんです。だから似た感じはあるかもしれませんね。

─PARADE PARADEとクニモンドさんが影響されている、日本のポップスって具体的にはどんなものなんですか?

大松沢:すごくありすぎるんだけど……、中でも自分の中で特別に思っているのはaikoさん。「初恋」とか、メロディが際立って美しいし、好きですね。あとは安全地帯さんも好き。井上陽水さんが作詞した「ワインレッドの心」とか歌謡曲っぽい感じがして好きですし、その後で「田園」とか、ソロ以降の曲も気に入っています。

松本:僕の原点といえばやはりGLAYさんですね。先輩に教えてもらったんですけど、「BELOVED」なんてたまらんって感じ(笑)。あとはGLAYさんのルーツの、BOOWYさん、REBECCAさんとかPERSONZさんあたりも。REBECCAさんだと「プライベートヒロイン」とかいいな。

クニモンド:僕は、そうだなぁ。いずみたくさんとか。キャンディーズの「帰らざる日のために」って、昔のドラマ『われら青春』のテーマソングなんて……世代的に知らないよね(笑)。あとは中村八大さんの「上を向いて歩こう」とか。日本のスタンダードポップスが好きなんです。

─「上を向いて歩こう」は、RCサクセションから、トータス松本さん、SEKAI NO OWARIまで世代を超えていろんな人がカバーしてますね。

大松沢:この曲は、展開がすごくキレイですよね。

クニモンド:メロディがキレイな上に、コード進行も簡単。誰もが耳にした次の瞬間から口ずさみたくなる。音楽を作る人にとっては理想だと思いますね。

 

シティポップの「シティ」ってどこのこと?


─クニモンドさんは、最近、Natsu Summerさんという女性シンガーのアルバムをプロデュースされてますよね。

クニモンド:歌もののレゲエです。スティールパンを入れたり、おしゃれなレゲエサウンド(笑)をバンドで鳴らしています。

松本:スティールパン! すごく興味ありますね。

─PARADE PARADEの音もそうですけど、ともに夏の季節に似合いそうな爽快感がありますね。

クニモンド:うん。そうかもしれませんね。PARADE PARADEの曲って、どういうシーンで聴いて欲しいと思います?

松本:部屋で聴くよりは、クルマの中とか、出かける時に聴いてもらえたらいいですね。僕、最近、ストリーミングサービスをよく利用するんで、音楽も移動の時に聴くことが増えたんですよ。それで自然とサウンドイメージも変わったのはあると思いますね。

─大松沢さんは、音楽は家で聴く派? 外で聴く派?

大松沢:僕は断然、家ですね。でも前作と違うのはお酒飲んで、楽しい気分で作ったこと(笑)。作業的にやるのが嫌になって、気分転換に好きな曲をかけて、飲んでたら「あ、このノリ、いいな」って閃くことがあって。今回は、体も自然と動かしながら、自分自身気持ちよく作っています。

クニモンド:お酒かー。次、やってみようかな(笑)。

─クニモンドさんは?

クニモンド:僕の場合は、どこでってのはないかな。ただ僕は40歳になるまで飛行機に乗ったことがなかったし、運転免許も持ってなかった。でも自分のユニットの流線形のファーストアルバムは飛行機や運転の曲が多くて、ひたすら想像力で書いてました(笑)。いまはどちらも経験してるから、想像力は働かないんだけど、どこかへ出かけたいみたいな気持ちはいつもありますよね。

シティポップの「シティ」ってどこのこと?(1)


─PARADE PARADEの曲もクニモンドさんの曲も、洗練された華やかさから「シティポップ」と言われることが多いですよね。その辺りは意識しています?

大松沢:僕は自宅にいるのが大好きで、用事がない限り外へ出たくないくらいだから、実はシティ感ってないんですけどね(笑)。

松本:僕は外へ出るのが好きです。でもおしゃれなところより下町の大衆酒場みたいなところへ行くことが多いから……。

─「シティ」ポップって感じとは、ちょっと違いますね(笑)。

松本:でも僕、北海道の寿都(すっつ)って人口2千900人くらいの小さな町出身で、15歳で札幌、20歳で東京と2度都会に引っ越したんです。寿都からしたらどこもすごいシティだし、自分の中では常に都会への強い意識がある。だから、憧れも込めて音楽がシティポップに寄っていくのかもしれないです。

─あー、なるほど!

松本:例えば「はっぴいえんど」というバンド名は、メンバーの大半が東京の人ですよね。だから平仮名でつけたと思うんです。もし僕らなら頑張って「Happy End」ってつけるし、なんなら「's」をつけて「Happy End's」にしちゃう(笑)。平仮名でいいじゃんって、そういう余裕は田舎者にはないと思うんです。やっぱり都会に挑んでやろうみたいな気持ちが強いですからね。

クニモンド:分かるな。僕は埼玉出身で、東京の隣ではあるけど、やはり東京の余裕みたいなものには憧れましたね。一時期は憧れからくる反発でシティポップと呼ばれるのがイヤで、自分の音をシティミュージックなんて言ってたし。でも、憧れがあるからこそ、シティポップって夢があっていろんな人が惹かれるんだと思います。

─夢ですか。確かにキラキラとしたイメージがありますよね。

クニモンド:シティといっても思い描く風景は人それぞれですしね。心の中でイメージを膨らませられる。想像力で楽しめる自由な音楽なんですよ。

松本:確かにそうですね。あとせっかくなんでいいですか? PARADE PARADEでこれからどんな作品を聴いてみたいと思います?

クニモンド:うーん(笑)。しばらくはいまのスタイルの曲をもっと聴いてみたいですね。時代性を感じさせる、いまっぽいトラックとしっかりとしたメロディ。それって、どの時代でも聴きたい音楽の本質だから。

大松沢:ありがとうございます。今までいろんな音楽を試してきて、今回、ようやくPARADE PARADEらしさが出せたとも思うのでさらにもっともっといい曲を作り上げていきたいと思います!

シティポップの「シティ」ってどこのこと?(2)
 

 


PARADE PARADE
大松沢ショージ(Vo&Key)、松本晃貴(Gt&Cho)、三浦光義(Ba&Cho)
90’s ボーカルグループやニュージャックスウィングなどブラックコンテンポラリーに影響を受け、日本のニューミュージックと絶妙にブレンドさせたGroovy なシティ・ポップを奏でる3人組。
2012年大松沢と松本を中心に結成。札幌のライブハウスを中心に活動開始。2013年
3月には札幌mole にて初のワンマンライブを実施。8月には「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 」の“RISING★STAR”に出演する機会を経て、翌年2014 年1月にヤマハ主催のコンテスト「The 7th Music Revolution」にてグランプリを獲得。その後活動拠点を東京へと移し、インディーズでアルバムをリリース後に全国30ヶ所でツアーを敢行。全国区のアーティストへとステップアップを本格化させている。

▽PARADE PARADE オフィシャルサイト
http://paradeparade.jp/

▽PARADE PARADE オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCTQaddppw6RASHVVk5d0CZA

■Release
『Dawn In Blue』
2018.6.27 Release
https://mysound.jp/album/224100/
 

■Live
PARADE PARADE oneman live 『DAWN IN BLUE』 in Tokyo
日時:2018年6月29日(金) 19:00開場/19:30開演 
会場:代官山LOOP (渋谷区鉢山町13-12 B1)
http://www.live-loop.com/access_daikanyama.html
チケット:前売1,500 円(+1drink)/ 当日2,000 円(+1drink)
お問合せ:ディスクガレージ 050-5533-0888
 


 

撮影協力:
BLUE BOOKS cafe自由が丘店
東京都目黒区自由が丘2-9-15 ユレカビル B1F 
TEL:03-6825-8686
http://www.bluebookscafe.jp/jiyugaoka/

Text:大野智己
Photo:Great The Kabukicho
Edit:仲田舞衣