【ハイレゾ配信スタート】「『コードギアス 反逆のルルーシュ』ピアノソロコンサート」イベントレポート&ピアニート公爵インタビュー


6月1日より「『コードギアス 反逆のルルーシュ』ピアノソロコンサート」の模様を収録したハイレゾ音源がmysoundにて配信開始となった。このコンサートは、同アニメのピアノソロアレンジ楽譜集とCDの発売を記念して、銀座・ヤマハホールにて開催されたものである。
今回、一夜限りの特別な体験となったそのライブの模様と、演奏を担当したピアニート公爵へのインタビューを掲載。当日の感動を改めて振り返り、配信となった音源をより楽しむきっかけにしていただきたい。また、アニメ監督谷口悟朗、編曲担当タカノユウヤを交えた貴重なトークコーナーのレポートも必見。

NEW RELEASE

ハイレゾアルバム
コードギアス 反逆のルルーシュ ピアノソロコンサート(Live) / ピアニート公爵
 

mysoundで試聴

 

LIVE REPORT


2006年にTVアニメの放送がスタート、昨年からはコードギアス劇場3部作の公開がスタートし、5月26日には『コードギアス 反逆のルルーシュⅢ 皇道』が上映された、今なお絶大な人気を誇る『コードギアス』シリーズ。その『コードギアス 反逆のルルーシュ』のピアノアレンジ楽譜集とCDの発売を記念したコンサートが銀座のヤマハホールにて行われた。

演奏はカバーアルバムでもピアノ演奏を担当しているピアニート公爵。ニコニコ動画などでアニメやゲームなどの楽曲をクラシック風にアレンジして演奏するなど、ネットを中心に活躍中のピアニストだ。

コンサートは『コードギアス 反逆のルルーシュ』のOP主題歌である、FLOW「COLORS」からスタート。アニメのストーリーをなぞるように主題歌と劇伴の名曲たちがピアノから紡ぎ出されていく。曲によりアニメのシーンがステージ上に投影される演出がされ、これで観客もより音楽と作品の世界に入り込むことができたのではなかろうか。そのストーリー、またはその時の自分自身を思い出して感慨を覚えるーー実に素晴らしい感動が生み出されていたと思う。

 

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原曲の良さを失うことなくアレンジされた楽曲と、作品への愛情が伺えるピアニート公爵の演奏を聴き、ラストの「僕は、鳥になる。」や「Continued Story」は目に涙が浮かび、アンコールで演奏された「The Moon」では落ちる涙を抑えられない。そんな光景を目のあたりにすることができた。『コードギアス 反逆のルルーシュⅡ 叛道』の主題歌として大きな感動を生んだ「The Moon」はカバーアルバムには収録されておらず、観客の心に深く刻まれるサプライズになったはずだ。

 

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そんな感動的なピアノ演奏のほか、トークコーナーが前半と後半の曲間に設けられ、前半はアニメーション監督の谷口悟朗さんがゲストとして登場。作品と音楽について深い話が語られていく。

 

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今回のピアノ楽譜の制作とコンサートの打診があったことに関しては「テレビをやっていた時からコンサートを開けないかと思っていたので、こういう音を中心としたところで皆さんに聴いていただけるというのはありがたいなと思っていました」と快諾だったことを語る。

さらにこのカバーアルバム&楽譜の表紙に描き下ろされたルルーシュのイラストについては「楽器経験がある人を探したら、チーフの千羽(由利子)が一番長かったので、描いちゃってくれとお願いしました。想定としては近くに誰かがいて、その人のために弾いている。その人が誰なのかというのは、みなさんの心の中にそれぞれいると思います。そこは明確な答えを出さないほうが絵も深みが出るんです」と答えていた。

また、ピアノでも演奏されたOPとED主題歌については「片方が光ならば片方が影であるというコンセプトで作りたいというのは伝えていました。FLOWさんは、分かりやすいメロディでアップテンポなので、より多くの人が入りやすい入口になってくれるだろうと。でも出口に関しては、この作品だけのクセみたいなものも必要だったので、ALI PROJECTさんにお願いしました」と発言。
BGMを担当した中川幸太郎さんと黒石ひとみさんに関しても、作品のいろんな側面を出すために、いろんなところを複数担当制にしていたので、音楽もふたりにお願いしたと前置きをして「中川幸太郎の持っている音楽は面白いし、彼は勉強家で、クラシカルなところから自由なところまで幅広くやれるんですけど、それは男性的な部分でもあって。それに比べて女性的な部分を表現するために誰にお願いしようと考えたとき、黒石さんだと思った」と企画段階での話も惜しみなく披露してくれた。これに関してはピアニート公爵も「作品の多面的なところが楽曲にも表れていて、楽曲を弾くことで、それをあらためて実感しました」と感心していた。

そこからさらに、ふたりの作曲家の特徴的なところから発注時のエピソードまで、興味深い話が飛び出していく。「『Continued Story』はケルティックな笛の音から、アフリカなビートがあったりするのでアレンジに苦労しました」とピアニート公爵が言うと、「それ、私がいい加減なことを言った記憶があるんですよ。『コンドルは飛んでいく』みたいなイメージと言ったら、曲の頭がそんな感じになっちゃった(笑)」と笑いながら当時のエピソードを話していた。

後半はアレンジを担当したタカノユウヤさんが登壇。ピアノに関して、よりマニアックな話がふたりの間でされていた。今回の楽譜の難易度は上の上というくらい難しいとした上で、「対旋律。大事なメロディ以外のメロディがたくさん隠れていますので、それを聴きながら、どこに隠れているのかを意識しながら弾いていただけると良いかなと思います」とタカノさんが演奏上のアドバイスを語ると、ピアニート公爵はタカノさんの楽譜について「タカノさんの譜面はピアニストのことをよくわかっていて、コントロールされている気がするんです。でもタカノさんにならコントロールされてもいいかなと思う(笑)」とコメントしていた。

グリッサンドが多く、爪を痛めてしまったというレコーディングエピソードや「ルルーシュが気持ちの強い部分と臆病になる部分があるので、それを1曲の中で表現したいと思って書いたのが『Elegant Force』です」とアレンジ時のエピソードなども語られた。

 

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演奏だけでなく、アニメや音楽の制作者による貴重なエピソードも聞くことができ、作品への愛に溢れた素晴らしいコンサートだった。

INTERVIEW ~ピアニート公爵~


―コンサートを終えて、いかがでしたか? 

力がある作品のコンサートを何度かさせていただいているんですけど、どれもファンの温かさや力がひしひしと感じられて、クラシックを弾いているのとは違った体験ができます。今日もみなさんが作品への愛を持って音楽に接してくれているのがわかったので、とても助けられましたし、ちゃんと届いているんだなと思いました。

―ハイレゾの音源の収録も入っていましたが、緊張はありましたか?

そういう意味での緊張はなかったんですけど、単純に今回は、曲の難易度に対して準備期間がなかなか取れなかったので、普通に緊張していました(笑)。自分としては、ここをこうしたかったなどあるんですけど、それなりに落ち着いてできたかなと思います。

―トークコーナーはいかがでしたか?

コンサートとトークを一緒にやるのって難しいんです。ただ今日はトークが弾んで、ほぐしてもらった面もあったので、トークのあとの曲は逆に入りやすかったです。監督の話も面白くて、『コードギアス 反逆のルルーシュ』のような異常な面白さのある作品を作れる人はやはり常人ではないなと思いました(笑)。自分が好きな作品の監督とトークができるという貴重な体験をさせてもらって嬉しかったです。

―『コードギアス 反逆のルルーシュ』の曲の印象を教えていただけますか?

どれもすごく良い曲ですよね。監督がおっしゃっていたようにおふたりそれぞれの良さがあって。中川幸太郎さんは血筋としてはラテンジャズから来て、クラシックを大学で学んでいる。骨太なラテンの熱い血が滾っているけど知的な面も備えている技巧派、みたいなところがあるんですけど、黒石ひとみさんの楽曲は感性というか。定型的なモチーフはあるんですけど、それが模倣に落ちていかない。自分の表現したいものがまずあって、そこに向かっている感じがあるので、編曲作業をしていても、ここはどうしようかと考えるのが楽しかったです。

―ピアノだからこそ、曲の良さが伝わりやすいというのもありますよね。

色を削ぎ落とすことで情報がより純粋に伝わるところがあるんですよね。そういうピアノの良さを活かして、これからも伝えていけたらいいなと思います。

―このような企画はいかがでしたか?

企画がどう生まれたかが実は大事なんじゃないかと思います。今回はヤマハの担当の方が『コードギアス』のファンで、成立からして愛に溢れた企画だったので、そこが重要なんじゃないかなと。とりあえずゲームやアニメの曲をウケるからやってみようというのとは、一線を画していたと思うんです。僕はそれを最初から感じていたし、作品自体を追いかけて見ていたので、これは僕がやるしかないだろうと思いました。なので、すごく巡りあわせ、成り立ちが良かったからこそ、すごくしっかりとしたコンサートができたんだと思います。

 

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Text&Photo:塚越 淳一