ハイレゾで味わうクラシック vol.12 ~梅雨を楽しむしっとりサウンド~

ハイレゾで味わうクラシック vol.12 ~梅雨を楽しむしっとりサウンド~
寒かったり暑かったり、落ち着かない気候が続きますね。洋服選びに悩んでいるかたも多いのではないでしょうか。そうこうしているうちに湿度はどんどん高くなり、梅雨に突入してしまいます。それだけでなんとなく気分が落ち込んでしまいますよね。雨が降って空はなんとなく暗くて、空気もなんとなく重い……。でも、それをただ“うっとうしい”と思うのではなく、むしろこれからやってくる夏をはじめ、1年の後半をどう過ごすかをじっくり考えるのはいかがでしょうか? 今回は、みなさまが楽しい計画をゆったりとした気持ちで考えることのできる素敵な楽曲をご紹介いたします。

雨音が聴こえるようなショパンとドビュッシーの作品

♪ショパン: 24の前奏曲 作品28より第15番変ニ長調「雨だれ」

ショパンの名曲から2曲をご紹介します。まずは“雨だれ”と呼ばれている第15番です。このタイトルはショパンがつけたものではありませんが、終始奏でられる連打音はやはり雨音のしずくを思わせます。短調になる中間部は音が厚くなって重々しい雰囲気に変わりますが、ここでもやはり雨音が鳴り続けます。夕方から夜の情景に変わったかのようです。優しく語り掛けるような主題の旋律もとても甘く魅力的で、うっとうしい梅雨の時期も笑顔で乗りきれそうな気がしてきます。雨の一日、何もする気分になれないときにこの曲はそっと寄り添ってくれるはずです。
  • ※試聴音源はAAL-LC 320kbps(圧縮音源)となります

  • ♪ショパン: 24の前奏曲 作品28より第6番ロ短調

    第6番は“雨だれ”という通称ではありませんが、この曲についてショパンの恋人であるジョルジュ・サンドが「僧院の屋根に音を立てて落ちていた雨のしずくは彼のイメージと音楽の中で、天から彼の胸に落ちる涙に変わっていたのです」 という言葉を残しており、やはり雨の雰囲気を感じさせます。第15番よりも暗く、心の痛みが伝わってくる曲想です。“今日は泣いて心のデトックスをするぞ!”という時にピッタリではないでしょうか。
  • 上記の2曲とも、演奏は世界的ピアニストである河村尚子さん。高貴さすら感じる艶のある音色で演奏されるショパンは、心の奥底にまで響いてくるようで、ハイレゾ・サウンドで聴くとあらためてそれを感じることができます。

  • ♪ドビュッシー: 『版画』より第3曲「雨の庭」

    今回はゆったりとした曲が多いので、ここで少し勢いのある曲をご紹介しましょう。ドビュッシーがオリエント、スペイン、フランスという3つの国の情景を描いたピアノ曲集『版画』の第3曲です。「雨の庭」はフランスの庭の木立に降る雨の情景を音楽化したもので、終始素早い動きで指が鍵盤を駆け巡っていきます。ヨーロッパの雨は霧のように細かいこともあり、ジメジメした日本の雨とは異なり、サッとシャワーを浴びるかのような爽やかさがあります。ドビュッシーのこの作品からは、フランスの空気感を存分に感じていただけるはずです。ハイレゾ・サウンドが福間洸太郎さんの美しいタッチをより輝かせ、あなたにほんのひとときフランスへの旅行気分を味わわせてくれるはずです。

夏に想いを馳せて

♪ブラームス: ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調 作品78「雨の歌」

今度はオーストリアへの小旅行気分を味わっていただきましょう。オーストリア南部のヴェルター湖畔の避暑地、ペルチャッハで作曲されたブラームスによるこのヴァイオリン・ソナタは、ブラームスの歌曲「雨の歌」の旋律が使われていることから、このような通称になっています。雨を描いた作品というわけではなく、幸福感と美しい景色が目の前に広がっているような雄大さを感じる曲です。気分が落ち込みがちな梅雨ですが、どこまでも爽やかなこの作品を聴いて、夏に想いを馳せてはいかがでしょうか? 千住真理子さんの演奏はこの曲の清らかな雰囲気をいっそう引き立てていて、ハイレゾ・サウンドがそれをクリアに届けてくれます。

優雅さに満ちた伴奏音型に雨粒を感じて

♪フォーレ: パヴァーヌ

“パヴァーヌ”とは、16世紀前半にヨーロッパで流行したスペインを起源とする舞曲です。ゆったりとしたテンポの曲で、“孔雀舞”とも訳されますが、本当に孔雀が羽を広げて歩くような優雅さに満ちています。もちろん雨を描いた曲ではないのですが、ステップを表す、軽やかな伴奏音型の反復は、聴いていると雨粒が静かに落ちていく様子が目に浮かぶようです。なお、この曲はさまざまな編曲が行なわれており、愛を歌う合唱を伴った編曲もあります。中世の貴族になってお城から雨を眺めているような気分になれば、憂鬱さも和らぐかもしれません。ハイレゾ・サウンドによってさらに美しく響く、奥村愛さんの華麗でのびやかな演奏が、それをさらに後押ししてくれるはずです。

  • ♪ラヴェル: 亡き王女のためのパヴァーヌ

    この曲は上でご紹介したフォーレのパヴァーヌから影響を受けた作品です。作曲の経緯には諸説ありますが、作曲者であるラヴェルがルーヴル美術館を訪れた際、17世紀スペインの宮廷画家ディエゴ・ベラスケスが描いたマルガリータ王女の肖像画を見て着想を得たといわれています。いずれにしても、この曲は“亡くなった王女をしのぶもの”ではなく、“昔、スペインの宮廷で小さな王女が踊ったような曲”として書かれています。フォーレの作品と同様、ステップを表す伴奏音型が雨音のようにも聞こえてくる優雅な作品で、より透明感のある響きが特徴的です。奥行きのあるハイレゾ・サウンドで、オーケストラのさまざまな楽器が創り出す音色の美しさと重なりをぜひ味わってみてください。

  • いかがでしたでしょうか? なんだか気分が落ち込みがちな梅雨を、素敵な音源とともに乗りきっていただけたらうれしいです。
    さて、1年間連載させていただきました“ハイレゾで味わうクラシック”は今回が最終回となり、8月からはクラシック音楽の新連載がスタートします。さらに幅広い音源や情報をご紹介しつつ、楽しみながらクラシックの知識も自然と学べてしまうような内容を予定しておりますので、ぜひご期待くださいね。1年間、本当にありがとうございました!


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