【吹部必読!】吹奏楽作家・オザワ部長が選ぶ!原曲とセットで聴きたい人気吹奏楽曲6選


吹奏楽作家・オザワ部長です。『吹部ノート』など吹奏楽関係の書籍の執筆やラジオ番組「OTTAVA Bravo Brass ~ブラバンピープル集まれ!オザワ部長のLet's吹奏楽部~」への出演など、日々吹奏楽を盛り上げる活動をしています。さて、吹奏楽というと、どんなジャンルの音楽でも取り入れてしまう幅の広さが特徴です。とはいえ、ただもらった楽譜をそのとおりに演奏しているだけではMOTTAINAI! ぜひ原曲も聴いてみましょう。それによって表現の幅が広がったり、演奏方法が変わったり、曲への理解が深まったり…とプラスの要素がたくさん。何よりも「音楽」がより好きになれます。
それでは、オザワ部長と一緒にいざ「原曲の世界」へ!

「原曲は軽快だった!?」 フュージョン編


(1)宝島
では、さっそく1曲目からまいりましょう。
オザワ部長が出演しているラジオ「Bravo Brass ~ブラバンピープル集まれ!オザワ部長のLet's吹奏楽部~」(http://ottava.jp/)でも、もっとも多くかけている曲のひとつ。今や吹奏楽界の「共通言語」と言ってもいいほど頻繁に演奏されている《宝島》です。

あまりにも吹奏楽でよく取り上げられるため、《宝島》が吹奏楽オリジナル曲だと思いこんでいる人、編曲者の真島俊夫が作った曲だと思っている人も多いのですが、実は原曲はフュージョン(インストゥルメンタル)です。
THE SQUARE(のちのT-SQUARE)が1986年にリリースしたアルバム「S・P・O・R・T・S」に収録された曲で、作曲は同バンドでキーボードを担当していた和泉宏隆。主にメロディを担当する楽器はウインドシンセサイザー(管楽器のように演奏する電子楽器)とキーボードでした。これを翌年1987年の「ニュー・サウンズ・イン・ブラス第15集」で真島俊夫が吹奏楽に編曲。以来、吹奏楽界で人気ナンバーワンのポップス曲になりました。

●原曲
THE SQUAREの原曲はこちらで聴けます。吹奏楽版のような熱いサンバ調というよりは、軽快で爽やかな曲です。

宝島
T-SQUARE
 

●吹奏楽
映画「青空エール」にサントラに収録されたバージョン。演奏を担当しているのは野球応援で有名な拓大紅陵高校吹奏楽部です。

宝島
ヴァリアス​​​​​​​

 

(2)オーメンズ・オブ・ラブ
これまたポップスの定番曲《オーメンズ・オブ・ラブ》です。この曲は《宝島》と同じく、和泉宏隆作曲・真島俊夫編曲です。
原曲はTHE SQUAREが1985年にリリースしたアルバム「R・E・S・O・R・T」に収録されています。そして、吹奏楽に編曲され、《宝島》の前年、1986年の「ニュー・サウンズ・イン・ブラス第14集」に収録されています。
ちなみに、この曲は小泉今日子や野村宏伸が歌付きでカバーしていますが、作曲者の和泉宏隆は「(ウインドシンセサイザー用の広い音域で書いた曲だから)キョンキョンも野村さんも歌うのは相当大変だったと思いますよ」と語っています(オザワ部長著『あるある吹奏楽部の逆襲!』にインタビュー掲載)。

●原曲
《宝島》と同じくTHE SQUAREの演奏。疾走感が心地いいです。

OMENS OF LOVE
T-SQUARE​​​​​​​


●吹奏楽
若手プロ吹奏楽団のブリッツフィルハーモニックウィンズが演奏しているこちらをお聴きください。

オーメンズ・オブ・ラブ
ブリッツフィルハーモニックウインズ​​​​​​​

 

「これって吹奏楽曲じゃなかったの!?」 管弦楽曲編


(3)ローマの祭り
ここからはクラシックの編曲ものです。
レスピーギ作曲の「ローマ三部作」(ローマの噴水、ローマの松、ローマの祭り)はどれも吹奏楽でよく演奏されますが、中でも《交響詩「ローマの祭り」》が一番人気。全日本吹奏楽コンクールでもっとも多く演奏されている自由曲としても知られています。この曲もあまりに取り上げられる回数が多いため、管弦楽の原曲があることを知らない人もいるほどです。

●原曲
冒頭の「チルチェンセス」を聴いてみてください。東京交響楽団の演奏で、指揮は飯森範親です。

ローマの祭りチルチェンセス
飯森範親(指揮)/東京交響楽団​​​​​​​


●吹奏楽
埼玉県の強豪校である春日部共栄高校吹奏楽部の演奏。同校を全国レベルにまでお仕上げた名指導者・都賀城太郎先生の指揮です。

交響詩「ローマの祭り」
埼玉県/春日部共栄高等学校吹奏楽部/指揮:都賀 城太郎

 

(4)エルザの大聖堂への入場
タイトルは《エルザの大聖堂への行列》、あるいは《エルザの大聖堂への行進》とも訳されることがあります。原題では「入場」の部分は「procession」という単語が使われています。もともとはワーグナー作曲の《歌劇「ローエングリン」》で使われている音楽です。この曲も吹奏楽で取り上げられることが非常に多いです。さすがにこれが吹奏楽オリジナル曲だと思っている人は少ないと思いますが、「管弦楽の原曲を聴いたことがない」という人は必聴です。

●原曲
クリスティアン・アルミンク指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏による《エルザ》。ハイレゾ音源。アルバム限定曲なので、ぜひアルバムまるごと購入して《エルザ》をはじめとするワーグナーの名曲に触れてみてください。

歌劇《ローエングリン》(エルザの大聖堂への入場)
クリスティアン・アルミンク/新日本フィルハーモニー交響楽団


●吹奏楽
《エルザ》を得意としているシエナ・ウインド・オーケストラ。もちろん、指揮者は佐渡裕です。徐々にエネルギーがみなぎってくるような熱演!

エルザの大聖堂への入場(シエナ20周年LIVE音源)
佐渡 裕/シエナ・ウインド・オーケストラ​​​​​​​

 

「原曲がカッコよすぎる!」 ロック・ファンク編


(5)ディープ・パープル・メドレー
この曲は吹奏楽のポップス曲として大人気ですが、原曲もバンドのこともよく知らないという人がかなり多いようです。ディープ・パープルは1960年代に結成されたイギリスのハードロックバンド。イアン・ギランの鋭いボーカル、リッチー・ブラックモアの駆け抜けるギターなど、とんがっていてクールなバンドです(後にメンバーの入れ替わりもありました)。エレキギターの経験がある人は、一度は《スモーク・オン・ザ・ウォーター》のリフを練習したことがあるのではないでしょうか? もちろん、オザワ部長もその一人です。
吹奏楽で演奏する前に、ぜひ原曲を聴いてみてください。さらに、できれば歌詞の日本語訳も読んでみてください。きっと演奏する際の「ノリ」が違ってくると思いますよ!

●原曲(3曲)
《ディープ・パープル・メドレー》での登場順に、《バーン》《ハイウェイ・スター》《スモーク・オン・ザ・ウォーター》を並べてみました。個人的には、テンションが上がる《ハイウェイ・スター》が一番好きです。

Burn (Remastered Version)
Deep Purple​​​​​​​

Highway Star
Deep Purple​​​​​​​

Smoke On the Water
Deep Purple​​​​​​​
 

●吹奏楽
《ディープ・パープル・メドレー》をおはこにしているのはここ! 愛知県の強豪校、愛知工業大学名電高校吹奏楽部です。メジャーレーベルでの1stアルバム「ブラバン!名電」に収録された演奏をどうぞ。

ディープ・パープル・メドレー
愛知工業大学名電高等学校吹奏楽部​​​​​​​

 

(6)セプテンバー
《セプテンバー》の吹奏楽版は複数存在しますが、アルトサックスソロをフィーチャーしたバージョンがもっとも多く演奏されます。これはラテン・ジャズ・ビッグバンドである「熱帯JAZZ楽団」が演奏していた楽譜を吹奏楽アレンジしたものです。とはいえ、もとは熱帯JAZZ楽団の曲ではありません。
大人世代の皆さんならご存知の、アース・ウインド&ファイアーの曲です。アメリカのファンクバンドですが、ファンク、ソウル、ジャズなどをキャッチーなメロディとアレンジで演奏し、世界中で大ヒットを連発しました。オザワ部長は《セプテンバー》のほか、《サンデー・モーニング》《スペンド・ザ・ナイト》も大好きです。

●原曲
アース・ウインド&ファイアーの《セプテンバー》。ホーンセクションが入っているので、吹奏楽な皆さんにもとっつきやすいと思います。

September
Earth, Wind & Fire​​​​​​​


●吹奏楽
シエナ・ウインド・オーケストラによる《セプテンバー》ショートバージョン。サックスソロはオリタノボッタ。

September -熱帯JAZZ楽団Short Ver.-
オリタ ノボッタ&シエナ​​​​​​​


●おまけ
熱帯JAZZ楽団の演奏する《セプテンバー》もぜひ聴いてみてください!

セプテンバー
熱帯JAZZ楽団​​​​​​​


いかがだったでしょうか?
原曲を聴いてみたことがきっかけになり、オーケストラやロック、ファンクに目覚めてしまう人がいるかもしれませんね。それこそが音楽の素晴らしさ! どんどん好きな音楽を増やし、感性を広げれば、吹奏楽もより楽しめるようになることでしょう。
吹奏楽よ永遠なれ~!