モデル、小谷実由がセレクト。色褪せない“今も昔もこれからも、ずっと聴くと思う曲”


mysoundが注目するさまざまな分野の人物に、テーマに合わせた楽曲をピックアップしてもらい、その曲にまつわるエピソードや思い入れを語ってもらうプレイリスト企画。今回はモデルであり、数々のミュージック・ビデオ出演やコラムの執筆など、多方面で活躍する小谷実由さんが「今も昔もこれからも、ずっと聴くと思う曲」というテーマでプレイリストを作成してくれました。そこから見えてくる彼女と音楽の分かち難い関係性と本質が伺える内容です。

 

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INTERVIEW

─さまざまなミュージックビデオに出演されていますが、どういう心持ちで臨んでいますか?

ミュージックビデオは楽曲の表現方法の一つだと思っていて、そういうところに携われることはすごく光栄だと思っています。楽曲を事前にいただける時は歌詞も読み込んで、ミュージックビデオのストーリーだったり、自分がどういう役柄なのかなど、イメージしていくことが多いですね。

─また、モデルの仕事ではテイストもいろいろだと思うのですが、その切り替えをするときに音楽が助けになることとかありますか?

すごくあります。オーディションを受けに行く時は、どういう気分でいきたいかによって曲を選んで聴いたりすることがあります。ちょっと緊張する仕事はめちゃくちゃ爆音で現場に向かったり(笑)。オーディションってやっぱり受かるか落ちるかどちらかの結果しかないので、結構メンタルが弱っていた時期もあって。音楽を聴いて立て直すことはよくしていました。

─今回のプレイリストについてお聞きしていくんですけど、まずこの「今も昔も、これからもずっと聴くと思う曲」というテーマにしたのは?

好きな曲はいっぱいあるけど、カテゴリーにすることが難しくて。共通することってなんだろう?と思った時に、テーマそのままなんですけど、ずっと聴くんだろうなって気持ちがある曲を選びました。その時の自分の気持ちが入るというか、その時々で聴こえ方が変わってくるんですけど、自分の中で心掛けているものや、自分の気持ちに根付いているものが絶対にある曲たちです。

─ではまず、DEVOの何がこのテーマに即していたのでしょう。

まずヴィジュアルが最高にかっこいいなと思って。ちょっと前衛的で変わっているんですけど、歌ってる内容は社会的で、こういうアプローチの仕方があるんだなと思いましたね。歌詞を見直したらちょっと闇っぽさがあったりして、全然That’s Goodじゃないじゃん!みたいな(笑)。歌詞やミュージックビデオなどを深掘りしていくとわかる何かがあるような、宝探しをしているような気持ちとか、ハッとさせるものがあったことも好きな理由です。

 

That's Good
Devo

 

─ニュー・オーダーの「Blue Monday」は小谷さんのタンブラーのタイトルにもなってますね。

はい。Blue Mondayという言葉が元々すごく好きだったんです。子供の頃から月曜日が苦手で、学校行くの嫌だなーとか、そういうブルーでちょっと切ない気持ちを表しているような。それって表面的に見たら嫌なことしかないと思ってたんですけど、そこもまた深く考えていくと、そういう気分って意外と悪いものではなかったりするのかなと思えたんです。

─YMOの「手掛かり」は?

YMOのアルバム『テクノデリック』がすごく好きなんです。その中でもこの曲がずば抜けてかっこいいなと思います。かっこいいトラックとは裏腹に歌詞が実は暗いんですけど、暗い気持ちの時は、無理に元気にならなくていいと思ってます(笑)。

 

手掛かり
YELLOW MAGIC ORCHESTRA​​​​​​​

 

─むしろそういう気持ちに寄り添ってくれる音楽を聴きたい?

そうですね。暗い映画を見てしまうとイメージが鮮明すぎてちょっとダメージが大きい。音楽だと耳で聴いて情景を自分でイメージできてちょうどいいところまで落ち込めるので、そういう面では一番自分の気持ちを左右しやすい行動が音楽を聴くことかもしれないです。

─そして電気グルーヴの「N.O.」も歌詞の内容は「何もかもがない」っていう内容です。

でもそれをこんな明るく言ってしまっているのが好きで。カラオケでもよく歌うんですけど、いい意味でどうでもよくなっちゃうという感じ。電気グルーヴのライブを見てすごくこういう音楽にハマったんです。テクノポップとかニューウェーヴ系を「あ、こういう音楽」みたいな感じで何ていう名前のジャンルなのかとかあんまり突き詰めずにそれまでは聴いていたんですけど、電気グルーヴのライブを見て自分の中で何かがパン!と弾けた気がして、詳しく知りたい!と思いました。すごくターニングポイントでしたね。

 

N.O.
電気グルーヴ​​​​​​​

 

─続いて中森明菜さんの「少女A」は?

これはただ純粋にこうなりたい!という憧れの気持ちからですね。かっこいい!ファッションとかヘアメイクも好きだし、あの若さであの色気は、なんだか落ち込みますね。私の十代と全然違うじゃん!って。過去を遠い目で顧みるじゃないけど、こうだったらよかったのになと思って、そこで切ない気持ちになるのがいい。

 

少女A
中森明菜​​​​​​​

 

─荒井由実さんの「翳りゆく部屋」は大名曲ですね。

カラオケで歌っているときにいつも泣きそうになる曲です。これは大事な人に歌いたい、もしくは大事な人に歌われるのもいいかもしれないですね。荒井由実時代の曲たちはリアリティがあって切なくて、聴いていて情景が想像しやすかったりするので楽しいです。

 

翳りゆく部屋
荒井由実​​​​​​​

 

─そして打って変わってでんぱ組inc.は?

夢眠ねむさんのことが最初に気になって知ったのがきっかけです。アイドル業以外にもマルチに活躍しているところからとっても興味を持ちました。全身全霊な彼女たちのライブを見ると、毎回泣いてしまいます。これこそ、オーディションに行く前や仕事に行く前によく聴いていました。「夢で終わらんよ」っていう歌詞があって、本当にその通り!と思います!

 

Future Diver (アルバムVer)
でんぱ組.inc​​​​​​​

 

─次はきのこ帝国です。

「青い花柄のワンピース」「黄色いサンダル」、そういう憧れるモチーフが入っているところがグッときます。この曲は海の中みたいな音にどっぷり浸かってしまう。どこかに連れていってくれる音楽が好きで、聴いて自分の感情を揺さぶられて泣くよりも、きのこ帝国の音楽は意識がどこかへ行っちゃう。そして、ハッとする。そんなところが好きです。

 

パラノイドパレード
きのこ帝国​​​​​​​

 

─黒猫チェルシーは今となっては初期と言える曲ですね。

多分この10曲の中で一番長く聴いてる曲です。これも「ブルー」が入っていて最初は気になった一曲。歌詞が甘酸っぱいというよりかは青臭いところが好きで、気付いたら明け方まで起きていた時や、悔しいことがあったりした時によく聴いていました。

 

YOUNG BLUE
黒猫チェルシー​​​​​​​

 

─悔しかった時に聴くというのは?

悔しい時って、悔しさを募らせて爆発させてスッキリしたいっていう気持ちがあって。そういう時に、大知くんのがむしゃらな歌い方とか、このスピード感が気持ちよくさせてくれる気がします。

─じゃあ次のGRIM SPANKYも割と近い感じですか?

そうですね。これは「レイバンとレコードを買ったあの店は消えてしまって コンビニが眩しく光るだけ」という歌詞があって。それが実体験に重なって好きな曲です。27歳になった今でも「大人になったらああしよう」とかまだ言ってて、「一体大人っていつなんだ?」って思うことはよくあるんですけど、ずっとあると思っていたものが急になくなった現実を受け入れる時の自分は、大人になったのかな?と感じさせる曲ですね。

 

大人になったら
GLIM SPANKY​​​​​​​

 

─小谷さんの処方箋みたいなプレイリストになったのかなと(笑)。

そうですね。なんだか暗い曲ばっかりですけど!でもこういうところが自分の作るものだったりに全部繋がってるんだなって、改めてこれを作ってわかりました。

─では最後に小谷さんがこれからやってみたいことを聞かせてください。

モデルの仕事を通じていろんな人に出会ったおかげで今の自分が形成されています。こうやって自分の好きなものを発信していける機会が増えているのはありがたいことだなと思っていて、それが誰かの力になればいいなと思います。例えばこういうプレイリストを作ることで、また誰かの大事な曲になったりしたら嬉しいし、いろんな人の何かのきっかけを作れる人になりたいなと思います。

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ORIGINAL PLAYLIST

今も昔もこれからも、ずっと聴くと思う曲

 

That's Good
Devo​​​​​​​

手掛かり
YELLOW MAGIC ORCHESTRA​​​​​​​

N.O.
電気グルーヴ​​​​​​​

少女A
中森明菜​​​​​​​

翳りゆく部屋
荒井由実​​​​​​​

Future Diver (アルバムVer)
でんぱ組.inc​​​​​​​

パラノイドパレード
きのこ帝国​​​​​​​​​​​​​​

YOUNG BLUE
黒猫チェルシー​​​​​​​

大人になったら
GLIM SPANKY​​​​​​​​​​​​​​

 

PROFILE

ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、様々な作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。昭和と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。

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Interview&Text:石角友香
Photo:shintaro nakamura

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