多彩な音楽家、河原太朗。ソロプロジェクト・TENDREとして「冬に聴きたくなる音楽」を語る

多彩な音楽家、河原太朗。ソロプロジェクト・TENDREとして「冬に聴きたくなる音楽」を語る
mysoundイチ押しのアーティストにテーマに合わせた楽曲をピックアップしてもらい、その曲にまつわるエピソードから本質を掘り下げていくプレイリスト企画。今回はデビューEP『Red Focus』がすでに話題になっているマルチプレイヤーで、ampelのボーカル&ベースである河原太朗のソロ・プロジェクト、TENDRE。彼が「冬に聴きたくなる音楽」をテーマにしたプレイリストを作成してくれました。音数を厳選した中に豊かなグルーヴを宿し、新世代ジャズやミニマルメロウ、ブラックフィールを河原太朗という今の日本の音楽家として消化する彼の嗜好とルーツに迫ります。

多彩な音楽家、河原太朗。ソロプロジェクト・TENDREとして「冬に聴きたくなる音楽」を語る(2)

河原太朗“今の僕のルーツといえばルーツとも言える選曲だと思います。”

―今回ソロ・プロジェクトを始動した理由というのは?

今年に入ってからいろんな縁が繋がって来たというか、いろんな現場で知り合ったり、そこで広がって行ったものが今回のレーベルとの出会いであったり。バンドだけで生涯終わらせたくはないというか、自分がどこまで音楽っていうもので勝負ができるか?とは思っていて、今年そのタイミングが来たかなというか。

―一つのバンドにこだわらないことによっていろんな反応や実際の作品が生まれてて面白いなと思うんです。

仲のいい友達と作って来たものが、自然に広がってるって、今、肌で感じてることが多くて、面白いなと思いますね。海外の人が普通にやってること、例えばロバート・グラスパーもそうですけど、個人単位で面白い人間っていうのがいろんなところに動ける環境っていうのがあっちでは自然とできてるかなと思って。日本もこれからは一人のミュージシャン自体がどれだけ面白いことできるか?っていうのが結構大切になってくるかなっていう気がしてますね。

―TENDREは歌の部分が活動に比べて大きい印象があります。

そうですね。元々リリック書くのがすごく苦手だったんです。でも難しいこと言わなくてもいいなと思って、TENDREって言葉自体も柔らかいとか、割とシンプルな言葉で。そういう自分がシンプルにいいなと思えることを一つずつ形にしていけばいいかなっていう気持ちではありますね。

―ではプレイリストのお話に移るんですが、今回「冬に聴きたくなる音楽」ということで選んでいただきました。河原さんの音楽にも繋がっていくと思うので、選んでいただいた理由と曲の河原さん流の聴きどころなどをお願いします。まずpupaはいかがでしょう。
  • 多分初めて聴いたのが冬で。ホント原田知世さんの声が、こんなにもしみてくるかっていう。しみる声と転調の感じとか、冬の空気に馴染む曲だなと思いましたね。この『pupa』っていうアルバムは全曲いいです。ライブを見てみたい。

    ―続いてカニエ・ウエストの中でも結構初期の曲。

    僕がヒップホップを聴くようになったのは呂布くんの影響が大きくて、この曲も数年前に教えてもらいました。この曲はピアノの転がるような旋律ですね。冬だとピアノの音が合うなと個人的には思ってて。ピアノの一音一音が、冷たさの中にちょっと雫が一つ落ちるような、そういうイメージにすごく合うんだろうな、と。

    ヒップホップなんでビート自体はずっとあるんですけど、その中で佇むように静かに鳴るピアノというそのバランスが好きですね。
  • ―続いてゴールドリンクはどういうところが?

    たまたま今期に聴いた曲だったから、「あ、結構合うな」と思って。マセーゴってアーティストがいるんですけど、ちょっと前から気になっていて。この人の声自体がホントに特異なものというか、声自体が枯れた感じ、冬のちょっと枯れた空気感、そことのマッチ感もあったりして選びました。
  • ―次の曲もリミックスでオリジナルはリアン・ラ・ハヴァスですね。

    リアン・ラ・ハヴァスも好きだったんですけど、マセーゴと同様にトム・ミッシュが最近のフェイバリットアーティストで。これは外というよりは家の中の暖かいところでこういう心地いい音楽を流したいときに、ビートの主張自体もちょうどいいポイントにあって、ギターの音自体も生活の中に馴染むと思いますね。
  • ―そして御大グラスパー。この曲はちょっと異色というかメッセージ性が強いですけど。

    僕はメッセージ性というよりは音が織りなす、そのシビア感というか、あえてものすごい寒い時に聴くと、ある種自分の士気を高めるような(笑)、なんかそういうイメージを持って聴いてましたね。

    冬自体、感覚が研ぎ澄まされる時期でもあるかなと思って。そういうときにこそ聴いたうえで、自分の中で何かを燃やすという聴き方もできる曲かなと思うし。何か向かっていくときに聴くといいかもしれない。
  • ―そしてサイモン&ガーファンクルの名曲のセルジオ・メンデス・バージョンです。

    これは家でずっと流れてたというのもあるんですけど、これはもう完全にあったかい部屋でのびのび聴いてたいみたいな。この盤に関してはすごいスモーキーさがあるというか、当時のレコーディングの感じだったりもそうなんでしょうけど。小さい頃に冬のあったかい部屋で聴いてた記憶として、戻した上で、「あ、これは最近になっても聴きたくなるな」と思ってこの曲を選びました。
    • Scarborough Fair/セルジオ・メンデス&ブラジル '66

      シングル

      257

      Scarborough Fair
      セルジオ・メンデス&ブラジル '66
  • ―そしてジャズの名曲が続きます。まずはチャーリー・パーカー。

    僕、姉がいて、姉が先にサックスを始めたんですよね。その時、両親が姉に向けてサックスやるんだったら絶対、チャーリー・パーカー聴いた方がいいよって言って、渡してたのがこの盤なんです。

    後ろにいるストリングスとかオケ自体はある意味、クラシカルではあるんですけど、そこにチャーリー・パーカーが力強くも優しく、サックスをぶっこんでくる感じが好きで。そこのアンバランスさがいいですね。
  • ―続くビル・エヴァンスはいかがでしょう。

    ビル・エヴァンスは最近になって、レコードをちょいちょい探すようになって、やっぱ一番好きなのはこの曲かなと思って。イントロから静かに入ってく感じで、この曲は冬の朝に聴きたいなと思って。タッチの一つ一つ、一滴雫が落ちていくようなそういう心地よい冷たさがあるというか。

    最近、この人たちの年代の音楽を調べて聴いてみてはいるんですけど、その時にしかできないことってあるじゃないですか?その時代の人がどうやって音を厳選して音楽をやっていくか、どういう音を調整していくか?って姿勢を見ていくと、今はいろんなことが再現はできると思うんですけど、タッチ一つ一つにどんなイメージを持たすか?というところを聴いてると、大切だなと思わされることが多いですね。
  • ―そして今回初めて北園みなみさんの存在を知ったんですが。こんな面白いアーティストがいるんですね。

    僕も実際聞いたのは、去年、クリスマスシーズンにJ-WAVEから流れてるのを聴いて、「なんじゃこの曲は?」と思って。声の感じはノスタルジックで、とにかくひねくれてるなと思って。

    冬になると普通の楽しいクリスマスソングも聴きたくもなるんですけど、これぐらい斜に構えた考えで、かつサウンド自体すごい遊んでるし(笑)。それは聴いてて面白いなというか。まだお会いしたことはないんですけど、いつか会ってみたいミュージシャンの一人ではありますね。
  • ―そして最後は語られ尽くした名曲の登場です。

    邦楽をあんま聴いてなくて、ちょっと疎い所もあったんで、友人が教えてくれるものを聴いてたんですけど。ビルボードでやってる映像があって、「エイリアンズ」は。そのシチュエーションと曲のマッチ感がすごくてそこから聴き込み始めたみたいな感じでしたね。

    歌詞自体もすごく変わってるじゃないですか。「エイリアンズ」って言葉自体も別に馴染みというか、隣にエイリアンがいるわけではないので、ないし(笑)。だけど愛らしく思えてしまったりする。僕の勝手なイメージでは、エイリアンズは何か思いを馳せてしまうような愛おしさなんですね。それにメロディが素敵だし、日本人でいわゆるAORを嗜んでこういう音楽を作る人って、僕はやっぱキリンジがすば抜けていると思うし、この曲がずば抜けてかっこいいなと思います。

    色褪せない曲って限られると思うんですけど、この曲は数十年色褪せない曲になるんだろうなと思うと、自分自身そういう曲を書いていかないとなと、掻き立てられるという面も含めて、今回この曲をあえて選びました。
  • ―暖かい部屋で聴きたい曲もあれば、寒風に吹かれながら聴くことで意義を感じる曲もあればというところで、どの曲も河原さんに影響している曲なんでしょうか。

    そうですね。プレイリスト自体は新しいものから古いものまで、ずっと聴いてきたものから最近の感覚で聴いてる曲まで広めに選んでみようかなと思って入れましたね。ま、10曲では足りないんですけど(笑)、冬に絞ったので、そういう意味では、今の僕のルーツといえばルーツとも言える選曲だと思います。

    河原太朗“今の僕のルーツといえばルーツとも言える選曲だと思います。”(2)

ORIGINAL PLAYLIST

冬に聴きたくなる曲

NEW RELEASE

PROFILE

1988年生まれ ベーシスト/歌手/音楽家/プロデューサーベーシストとしての活動の他、鍵盤やサックスなども自在に演奏し、マルチプレイヤーとしての独特の存在感を様々な現場で発揮する。2017年よりソロ・プロジェクト「TENDRE」(テンダー)を始動。同年12月6日にソロでの初EP『Red Focus』をリリースする。「ampel」のベースボーカル、作詞作曲を担当。

LIVE

■9m88[九頭身日奈] 7inch release party
日程:2018年1月9日(火)
会場:青山 月見ル君想フ
時間:OPEN 19:00/START 19:30
料金:ADV ¥3,300/DOOR ¥3,800

■京音-KYOTO- 2018
日程:2018年2月3日(土)、4日(日)
会場:京都 磔磔 / KYOTO MUSE / METRO
時間:OPEN 13:00/START 13:30
料金:
3日(土) 昼の部 磔磔/MUSE前売券 ¥5,000
3日(土) 夜の部 METRO前売券 ¥2,500
4日(日) 昼の部 磔磔/MUSE前売券 ¥5,000
※TENDREは2月4日 昼の部の出演となります。

詳細はオフィシャルサイトで
http://kawaharataro.com/


Text&Interview:石角 友香
Photo:小笠原 幸一

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