2017年、海外の音楽シーンでブレイクしたアーティスト 10選

2017年、海外の音楽シーンでブレイクしたアーティスト 10選

2017年が終わりに近づき、多くの人々が今年1年の自分の音楽ライフを改めて振り返っていることでしょう。ここではある程度データや人々の評判に基づいた形で、今年海外の音楽シーンで目覚ましい活躍を見せた「ブレイク・アーティスト」を10組選出してみました。選出の基準は新人に限ったものではなく、これまで活躍してきたアーティストのさらなるブレイク作品も対象に。人によって様々な形があるはずの2017年を振り返る参考のひとつになれば幸いです。
 

#1. Ed Sheeran - Shape of You

今年は3作目『シェイプ・オブ・ユー』が全米/全英チャートで初登場1位を獲得すると、以降も地元UKで41週間6位以下に落ちることがない驚異的なセールスを記録したのがエド・シーラン。この作品の余波を受けUKでは同一アーティストのシングル・チャート・ランクイン数制限が設けられたり、12月に再び1位に返り咲いたりと大きな話題になりました。ポップスからヒップホップまでこなす器用さを生かし、ソングライター&客演としてもテイラー・スウィフト、N.E.R.D.、エミネムなどの楽曲に参加。今年世界のポップの中心にいたのは、間違いなく彼でした。

Shape of You

Ed Sheeran

 

#2. Calvin Harris feat. Frank Ocean & Migos – Slide

2017年はEDM界の人気アクトが次々と新たな音楽性に乗り出していった年。16年にライブを引退したアヴィーチーがアコースティックなEPを発表すると、トロピカル・ハウスのカイゴも2作目でより音楽性を拡大。中でも大きな話題を呼んだのは、カルヴィン・ハリスが生音を加えてファンク路線に舵を切った『ファンク・ウェーヴ・バウンシズ Vol.1』でした。「slide」はフランク・オーシャンとミーゴスを迎えたオープニング曲で、“I might”が“アマイ”に聞こえると話題に。<SUMMER SONIC 2017>でのEDMセットが賛否を呼んだのも2017年の印象的な出来事でした。

Slide

Calvin Harris feat. Frank Ocean & Migos

 

#3. Migos - Bad and Boujee (feat. Lil Uzi Vert)

今年アメリカで全米1位を多数記録して一大ブームを巻き起こしたのが、トラップを基調にしたヒップホップ作品の数々。そして、フューチャーらとともにそのアイコンの一組となったのが、アトランタのラップトリオ、ミーゴスでした。「Bad and Boujee」は彼らの代表曲。海を越えたイギリスでデビュー・アルバムが英国産ヒップホップ=グライム勢として初の全英1位を獲得したストームジーらの作品とともに、新世代のヒップホップ・アーティストの活躍を象徴する楽曲として人気を集めた他、プロデュースを担当したメトロ・ブーミンも今年屈指の人気者に。

Bad and Boujee (feat. Lil Uzi Vert)

Migos

 

#4. Kehlani - Distraction

そのトラップを90年代R&Bの魅力と融合させた2枚のミックステープで注目を集めてきた歌姫ケラーニも、2017年はデビュー作『スウィートセクシーサヴェージ』を発表。彼女以外にもSZAやモーゼス・サムニーが注目を集めたオルタナティヴなR&Bシーンを代表する存在として、現代のR&Bディーバの理想像とも言える活躍を見せてくれました。サマーソニックでの初来日に加えて、昔ながらのジェンダー観が残るR&B/ヒップホップシーンで同性愛をカミングアウトしたことも話題に。そういう意味でも、現代的なディーバと言えるのかもしれません。

Distraction

Kehlani

 

#5. Luis Fonsi/Daddy Yankee – Despacito(featuring Justin Bieber/Remix)

日本にはあまり熱が伝わっていなかったものの、実はシングルとして今年世界で最も売れていたのがこの曲。もともとプエルトリコ出身のルイス・フォンシとダディ・ヤンキーがコラボレートした楽曲として全米ラテン・チャートで話題を呼んでいた原曲に、さらにジャスティン・ビーバーが加わる形でセルフ・リミックス/リメイク。発売されるなり全米チャートの歴代トップタイとなる16週連続1位を記録しました。トロピカル・ハウス~ダンスホール再評価の波にも乗りながら、アメリカで定期的に生まれるラテン/ヒスパニック系のヒット曲として話題に。

Despacito (featuring Justin Bieber/Remix)

Luis Fonsi/Daddy Yankee

 

#6. Austin Mahone - Dirty Work

一方、日本で今年最も聴かれた洋楽と言えばブルゾンちえみのネタでもお馴染みの「Dirty Work」。本国では15年にリリースされたこの曲は、インシンクやバックストリート・ボーイズのような90年代風ポップスを歌っていた彼が、マーク・ロンソン feat. ブルーノ・マーズ“アップタウン・ファンク”を影響源にデジタル・ビートとファンクを融合させた楽曲。日本で大きな注目を集めた結果、本国より一足早く日本でアルバムを発表し、お茶の間でもたびたび歌声を披露。それは生粋の音楽好きでもあるブルゾンちえみとの理想的なコラボレーションが生んだ結果でした。

Dirty Work

オースティン・マホーン

 

#7. LCD Soundsystem - tonite

再結成組で話題を呼んだのは、2011年の解散以降実に約7年振りの最新作『アメリカン・ドリーム』をリリースして見事復活を果たしたLCDサウンドシステム。このアルバムは彼がもともと憧れを公言していたデヴィッド・ボウイから生前に説得を受けたことでバンドを再結成&制作されたもので、その収録曲“tonite”は、まるで延々と続いていくような終わりなきミニマル・ディスコ/ファンクを手に、中年の冴えない男ジェイムズ・マーフィーがミラーボール輝くフロアにふたたび降り立つ姿が感動的。アルバムはキャリア初の全米チャート1位を記録しました。

 

#8. Royal Blood – Lights Out

ザ・エックス・エックスが3作目で遂にアメリカでもブレイクし、ウルフ・アリスが2作目でふたたび全英2位を記録。インディ・シーンでもキング・クルールやザ・ビッグ・ムーンらが話題を集めるなど、長年続いた冬の時代を抜けて新たな才能が躍動したUKロック・シーン。中でも新作『ハウ・ディド・ウィ・ゲット・ソー・ダーク?』で2作連続の全英1位を獲得したのが、ブライトンのベース&ドラム・デュオ、ロイヤル・ブラッドでした。ベース/ギター・アンプを両方鳴らすことでギターレスながら圧倒的な音圧を実現するマイク・カーのベースを中心に、ハード・ロック、ガレージ、オルタナを全部抱えて突っ込む怒涛のグルーヴで人気を確かなものに。

Lights Out

Royal Blood

 

#9. Khalid - Location

類稀な声を持つテキサス出身のシンガーは、今年2月のデビュー作『アメリカン・ティーン』が全米4位を記録。トラップ勢とは異なるメロウでスムースなサウンドに中毒者が続出し、同じく2月にリリースされたこの楽曲もプラチナ認定されるヒット曲になりました。自身の楽曲以外にも、今年はカルヴィン・ハリスやロジック、ロード、マシュメロの楽曲にジャンルを越えてゲスト参加。英BBCが2018年に向けて注目の新人アーティストを選出する恒例の<BBC Sound of 2018>にも選ばれていて、来年以降各国でさらなる人気を獲得していきそうな雰囲気です。

Location

Khalid

 

#10. Billie Eilish - bellyache

最後は今年話題を呼んだ人の中で、来年の活躍がますます楽しみな若手アクトをもう一組。弱冠15歳ながらトラップ以降の感覚も取り込んだ複雑な音楽性とユニークなリリックでアリアナ・グランデとロードとラナ・デル・レイの溝を埋めるビリー・アイリッシュは、音楽性の高さに加えVOGUEのようなメディアからもラブコールを受けるルックスでも注目の的に。彼女も<BBC Sound of 2018>に選出されていて、『88rising』などを拠点に人気を広げた韓国系シンガーソングライター、イエジとともに、来年以降さらなるブレイクが期待される女性アーティストです。

bellyache

Billie Eilish

 

 

2017年も様々なアーティストが活躍の場を広げた音楽シーン。2018年はどんな年になるのか、今から楽しみで仕方ありません。