【前編】LUCKY TAPES高橋健介×DATS早川知輝のプレイヤー対談 ~“旬のギタリスト”はどのように生まれた?~

旬のギタリストが“ギター”を始めたきっかけとは?


LUCKY TAPESの高橋健介とDATSの早川知輝は、東京のインディー・シーンが誇る人気バンドに所属し、〈Rallye Label〉のレーベルメイトでもあるギタリスト同士。LUCKY TAPESが取り入れてきたブラック・ミュージックや、現在のDATSが標榜しているエレクトロなバンド・サウンドはここ数年のトレンドにもなっているが(さらに早川は、2016年からギター・バンドのodolにも加入している)、旬のバンドで活躍する彼らは、どんなことを考えながら音楽に取り組んでいるのか。

 

LUCKY TAPES高橋健介×DATS早川知輝のプレイヤー対談(1)

 

そこで今回は、「お気に入りのお店」だと2人が語る、JR新大久保駅から徒歩30秒の老舗・TC楽器にてトーク・セッションを実施。店内のギターを試奏してもらいながら、対照的なプレイヤー観を語ってもらった。各々がバンドで意識しているポイントに加えて、ギターを手に取るまでのエピソードから、現在使っているギター/機材についても明かされており、一般のリスナーはもちろん、楽器ビギナーから現役ミュージシャンまで収穫のありそうな対談になったと思う。

当日の取材は、撮影用のギターと自身が弾いてみたいギターを選ぶところからスタート。店内を歩き回りながらギター談義に花を咲かせ、実機をアンプに繋いで楽しそうに試奏する光景からも、ピュアな音楽愛が伝わってくる。さて、2人はどんなギターを手に取ったのだろうか?

 

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─今回選んだギターは、それぞれどういう理由で手に取ったのでしょう?

早川:撮影用のギター(Gibson 1991年製 Firebird V Celebrity Series)は、これのベース型を高校生の時にずっと使っていたんですよ。だから、形状的にも思い入れがあって。それにちょうど、マホガニー・ボディのギターが欲しいと思っていたところなんです。P-90のレスポール(試奏したギター/Gibson 1997年製 Limited Edition Les Paul Standard w/P-90)は初期にDATSで使ってて。

─早川さんはもともとベーシストだったんですよね。高橋さんは?

高橋:もともと最初に憧れたギタリストがCharさんで、そのCharさんがこのギター(Fender 1968年製 Mustang)を弾いていたんですよ。あと、試奏したギターは(Gretsch 1961年製 6196 Country Club )LUCKY TAPESで使うには音がいなたすぎるので、この機会に弾いてみようと。

─やっぱり人間はこういうとき、もともと好きだったものを選ぶんですね。

早川・高橋:そうですね(笑)

 

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▲高橋(左):Fender 1968年製 Mustang/早川(右)Gibson 1991年製 Firebird V Celebrity Series

 

─試奏するときに意識することは?

高橋:自分の好きな音かどうか。例えば、抜けの良さだったり、音が埋もれないかどうか。今回弾いたギターは、バンドのときというよりも一人で弾きたいですね(笑)。

早川:僕も好きな音かどうか。自分たちの曲を弾いてみて、しっくりくるかどうか試してみますね。アンプの設定も全部フラット(真ん中)にして、このギターはこういう音なんだなって確かめるような感じ。

 

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─初めてギターで弾いた曲はなんでした?

早川:ベースだったらELLEGARDEN。ギターはTHE BACK HORNですね。

高橋:僕も、バンドで最初にやったのはELLEGARDEN。初めて弾いたのははGLAYだったかな。

─なるほど。お2人はもともと接点はあったんですか?

早川:DATSが〈Rallye Label〉に移籍する前から、対バンは何度かしていましたね。最近も一緒にライブする機会があったし。

高橋:以前より会う回数は増えたよね。でも、しっかり話すのは今日が初めてかも。

─お互いのバンドには、どんな印象を抱いています?

早川:LUCKY TAPESは……エロいっす(笑)。新しいMV(Gravity)もそうだし。
 


高橋:それを言うなら、DATSはエモいですね。熱いライブをするし、メンバー全員が(ステージ上で)よく動くなーって。それに僕らとは、音も真逆かもしれない。ラッキーはすべて生音でやっているけど……。

早川:DATSはシーケンスをリアルタイムで操りながら、そのうえにバンドの音を足し算していく感じですからね。
 


─なるほど。ギタリストとしてはどうでしょう?

高橋:最近のDATSのライブだと、むしろパッドを叩いている姿が印象的ですね。ギタリストなんだけど、ギターを捨てる度胸があるというか。自分には難しいことだと思う。

早川:とにかく格好良いギタリストだなって。何年か前に新宿MARZで対バンしたとき、ギターを持っているときの色気や佇まいが(ザ・スミスの)ジョニー・マーっぽいと思ったんですよね。

 

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─言われてみればそうかも! そんな2人がギターを弾き始めたのはいつ頃でしたか?

高橋:まずは中2でアコギを弾き始めて。その頃は「Go!Go! GUITAR」を読みながらJ-POPの曲を弾いたりしていました。そこからGLAYが好きになって、高校の入学祝いでエレキ・ギターを買ってもらったんです。それで軽音楽部に入って、エレキも弾くようになった感じですね。

早川:僕はもともとELLEGARDENがきっかけで、高1の夏からベースを弾くようになったんです。DATSのメンバーともその頃からの知り合いで。ただDATSが立ち上がったとき、すでにベーシストはいたんですよ※。それでもカッコイイから一緒にやりたくて、「ギターの練習やるから入れてよ」って(笑)。
※結成時のベーシストはのちに脱退し、現在は大学時代に加入した伊原卓哉がベースを担当

高橋:すごいね。いつからギターを弾き始めたの?

早川:中3ぐらいからアコギは弾いていたんですけど、全然ダメでしたね。エレキを弾くようになったのは高2からです。

―そこからは猛練習の日々ですか。

早川:そうですね(笑)。DATSに入った当初は、インディー的な音色というか、とにかく単音のミュートを弾く練習をしました。ベースだとそんなに使わない技術だし、弾き方も違うので。

 

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―そもそも、ベースとギターを弾くのって全然違いますよね?

早川:頭の使い方がまったく違いますね。それにギターを弾いていても、ベースっぽいアプローチだとよく言われます。運指のフォームもそうだし、ベースを弾くときはスライドを多用していたので、それが演奏に出たりして。

―お2人にとって、憧れのギタリストは?

高橋:やっぱりCharさん。僕がハットを被っているのも影響されていますね。初めて買ったギター教則本にCharさんの“SMOKY”が載っていて。(難しくて)初心者の頃の自分には弾けるわけがないんだけど(笑)、気になってYouTubeで調べたら一気に魅了されました。そこから、ブルース寄りに音楽観が広がっていきました。

早川:ART-SCHOOLのメンバーで、現在はMONOEYESとしても活躍している戸高賢史さん。演奏はもちろんとして、機材も自作されているんですよね。そのエフェクターを僕も持っていて、音がすごくいい。あとは人柄も素晴らしいし、いろんなバンドに携わっていたりと、いろんな面で尊敬しています。

―逆に、最近の気になるギタリストは?

高橋:去年からずっと気になっているのが、ビッグD(Derwin "Big D" Perkins)。ジョン・クリアリーというシンガー兼ピアニストのバンドや、ニューオリンズ系のブークー・グルーヴに参加していて、その人が本当にヤバイ。大柄すぎて、立ってギターが弾けないんですよ(笑)。

早川:それは確かにヤバイ(笑)。

高橋:でもフレーズはグルーヴィーだし、とにかく上手い。スナーキー・パピーの『Family Dinner Volume Two』でも1曲弾いていて(Brother, I'm Hungry)、ライブ動画がYouTubeにあるんですけど、それもいいんですよ。

早川:共演することの多い身近なバンドに、いいギタリストがたくさんいて。特にDYGLのShimonaka君。ギターを泣かせるのが上手いし、音色や佇まいも含めてカッコイイ。ステージ袖じゃなくて、客席から観たくなるギタリストですね。

 

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★次回、ギターを弾くコツやお互いのバンドで使っているエフェクターなど、バンドマン/ギター初心者必見のトークで大盛り上がり!ぜひチェックしてくださいね。後編は10/24(火)掲載予定!

Interview&Text:小熊 俊哉
Photo:大石 隼土