mysound SPECIAL INTERVIEW!! Sugar’s Campaign
作品や楽曲ごとに世界観やコンセプトを話し合い、その雰囲気を古今東西の様々な音楽を通過した“ポップス”に仕上げていくSugar’s Campaign(以下、Sugar’s)。akioやmomo、IZUMIといったお馴染みの面々に加えて、注目のSSW・井上苑子もヴォーカル参加した今回の『ママゴト』では、家族が引き受ける「運命的な役割」をテーマにして、彼ら自身もポップスとしての役割を正面から受け止めた、よりカラフルなサウンドを手に入れています。
果たして彼らのポップ観を作った名曲の数々とは?今回は「理想のポップ・ソング」をテーマに、それぞれ5曲ずつプレイリストを作ってもらいました。
NEW RELEASE
-
『ママゴト』
Sugar’s Campaing
2016.08.10 Release
VICL-64603 / SPEEDSTAR RECORDS / ¥2,500(+tax)
-
- ママゴト
- Sugar's Campaign
-
「井上苑子」が参加!スーパーポップユニット「Sugar’s Campaign」が放つ2ndアルバム
- アルバム
- 11曲収録
INTERVIEW
-
――Avec AvecさんとSeihoさんはもともと音楽好きの家で育っていると思いますが、小さい頃、2人にとって音楽はどんな存在でしたか。
Seih:音楽って中学ぐらいになると友達とのコミュニケーション・ツールになると思うんですけど、僕は親とのコミュニケーションのツールでしかなかったんですよ。高校に入るまでは、友達と音楽の話をする機会は全然なくて。
Avec Avec:僕も一緒ですね。僕の場合はひとりで親が持っている音楽をこっそり聴いているような感じだったんで、一人で楽しむことが多かったです。
――プレイリストを作ったりするのは、小さい頃から好きでしたか?
Avec Avec:めちゃくちゃ好きでした。テープでマイベストを200とか、300とか作っていて、それが自分の趣味だったんです。当時電車に乗って隣町の塾に通っていたんですけど、その時に自分が聴くためのマイベストを自分で作っていたんですよ。
Seiho:僕は小学校2~3年生ぐらいの頃に初めてポータブルCDプレイヤーを買ってもらってプレイリストを作っていましたけど、どっちかというと「今日友達の家に行くときにアルバムを2枚持っていく」みたいな聴き方が好きでしたね。あと、うちは親父と弟と3人でCDショップに行って音楽を買うのが恒例行事になっていたんですけど、車で遠出をするときは僕が助手席でCDを入れ替えてました。その場でDJっぽく変えていく感じで。
――プレイリストに好きな曲をどんどん入れていく人もいれば、全体の雰囲気を重視してバランスを取る人もいると思います。2人はどっちのタイプでしたか?
Avec Avec:どっちもですね。僕は変で、分析とかが好きだったんで、小学校の頃から「Pファンク」「ハードロック」みたいにジャンルで分けたり、普通に好きな「ベスト」というテーマで作ったり、そのときによって色々でした。テープで作っていたので、曲順を飛ばせない分、順番はとても大事で行き帰りの風景とマッチするかどうかを想像で考えたり、車で親と聴いた時に楽しんでもらえたり驚かせたりできるかとか、色々工夫してました。
Seiho:自分にとっては「親が聴いたことない」というのがめちゃくちゃ重要で。ただし、攻めればいいという話ではなくて、「ギリギリ興味を持ってくれるようなもので、内容もよくて、新しい」という、このバランスを重視してました。たとえば「この演奏陣は有名なフュージョン・プレイヤーだから親も好き。でも実は90年代に入ってからR&Bのバックバンドもやっていて、音は新しい」みたいな感じで(笑)。
――2人が出会った大学時代、お互いに好きな音楽を交換することもありましたか。
Avec Avec:ありましたね。これが唯一だと思うんですけど、Seihoから借りたジョン・ゾーンを僕が借りパクしました。
Seiho:あれマジで返せって(笑)。大学に入りたての時期に、僕が『Naked City』を買ってから大学に向かったんです。そしたらTakuma(Avec Avec)に「貸して」って言われたんですけど、普通すぐに返ってくると思うじゃないですか?
Avec Avec:まだ返してないんですよ(笑)。
Seiho:で、僕はまだ一回も聴いてないんです。
――ははははは。最初はどんな音楽の興味が共通して仲良くなったんですか?
Avec Avec:スティーリー・ダンとか、スタッフ(アメリカのフュージョン・バンド)とかですね。僕はウエストコースト・ロックが好きで、Seihoはジャズが好きで、その中間としてその辺りの音楽が共通していたんです。Plus-Tech Squeeze Boxみたいな新しい渋谷系もそうでしたね。
――今回は、そんな2人に「理想のポップ・ソング」というテーマでプレイリストを選んでもらいました。順番に選んだ理由や楽曲に感じる魅力、思い出を教えてください。まず、Avec Avecさんの1曲目はバート・バカラック。これは超クラシックですね。
Avec Avec:選び方が色々あるので、今回は自分のルーツや、好きなメロディーとハーモニーの曲を選びました。僕の中ではポール・マッカートニーとバカラックがポップスの中心なんです。今回の"ポテサラ"にはブラジル音楽の要素も入れていますけど、バカラックはティン・パン・アレイ後のアメリカンポップス本流の中でブラジル音楽を独特な形で消化してて。それに、メロディーが美しくて、曲がスタイルになっているのがすごい。中学生のときに家にあったものを聴いて「わぁ・・・」と思って、その後バカラック風ポップスを集めでプレイリストを作ったりもしたんです。 -
――2曲目のXTCはどうですか?
Avec Avec:XTCは大好きなんですけど、この曲はたぶん、初めてこの人たちが曲の中で「ポップ」について語った曲。「俺がポップと言えばそれがポップ」みたいな歌詞ですけど、インタビューでも「イギー・ポップもビー・ジーズも俺にとってはポップだ」って言ってて、それにすごく共感するんです。僕はその後、自分のルーツにもなるビートルズをちゃんと聴くことになるんで、XTCの方が先だったんですよ。次の熊谷幸子さんは、実は最近知った人です。この人は南アフリカのイーストロンドンで生まれて、横浜で育っていて、メロディーに独特の民族音楽の雰囲気がある。『世界ウルルン滞在記』のエンディングテーマ("Bahia?バイーア?")もやっていますけど、これはその前のもっとポップな曲ですね。 -
- シングル
- アルバム
-
-
――元ネタがロジャー・ニコルスの"Don't Take Your Time"なんですよね。
Avec Avec:そういう確信犯的なところもあって、すごい転調もするのに、でも「ポップ」。あと、歌詞に荒井由実さん的な女の人独特の視点があって、これは僕には書けないと思います。一方、アンドリュー・ゴールドは中学生の頃に親が好きで聴いていた曲。当時は米西海岸~AORの人として聴いていましたけど、XTCを聴いた後に改めて聴くと、どこかイギリスっぽさがある。そこが「本来は存在しないはずの音楽」という感じで好きなんです。最後のギルバート・オサリバンは、みんな知ってる曲なのに「サビ」がなくて、本当にすごい。実は一回、『めぞん一刻』のOP曲にもなっているんですよ(24話)。僕にとってはジェフ・リンやトッド・ラングレンとともに好きなメロディーメイカーの一人ですね。 -
-
- シングル
- アルバム
-
――じゃあ続いてSeihoさんのリストを見ていきましょう。1曲目はロジャー・トラウトマン(ザップ)の"Computer Love"。
Seiho:僕にとっては電子楽器に目覚めたきっかけでもある曲。もともとザップの作品も家にあったんですけど、小2か小3ぐらいの頃、父親が2パックのレコードを買ってきたときにロジャーのサンプリングが使われていることを教えてくれたんです。2曲目のモニカ・ゼタールンドは、「時代性を背負っている」という意味で好きな曲。この人は「スウェーデン人が黒人音楽を黒人っぽく歌うのは意味がない」と言われて、その後ビル・エヴァンスと"Waltz for Debby"(にスウェーデン語詞を自作した"モニカのワルツ")を作るんですよね。この曲には、子供ながらに切なさを感じました。ドラッグとお酒と、名誉とお金と――。そういうものが静かな曲の中からちょっとだけ漏れてて、聴くといまだに泣きそうになる。 -
- シングル
- アルバム
-
-
――ブラウンストーンの"If You Love Me"はどうですか?
Seiho:最近もトーリー・レインズが"Say It"でサンプリングしていましたけど、僕も一時期ライヴで"If You Love Me"をかけて、そこに当て振りしていた時期があって。SWVみたいな女性ヴォーカル・グループの中でも、あの3人の感じと・・・曲に切なさがあるのが好きです。次のホール・アンド・オーツは、ワム!もそうですけど、アメリカ映画とかではバカにされてしまう対象で。でも、だからこそ僕はSugar'sでは重要視しているんです。 -
- シングル
- アルバム
-
- シングル
- アルバム
-
Avec Avec:僕らのデビュー作のときは、バード・アンド・ザ・ビーがホール・アンド・オーツをカヴァーしたアルバム『Interpreting the Masters Volume 1: A Tribute to Daryl Hall and John Oates(邦題は『プライベート・アイズ』)』を聴いて、「このアレンジいいな」って思ったりもして。Sugar'sにとって重要なアーティストですね。
Seiho:男2人であの感じ、というのもポイントです(笑)。
――そして最後はアース・ウィンド・アンド・ファイアー。その中でも"After The Love Is Gone"なんですね。
Seiho:これは単純に母親が聴いてたものなんです。父親はどジャズのリスナーなんで、今回挙げたものはだいたい、どっちかというと母親のセンスです。この曲は何とも言えないコード進行をするし、広がり方がすごい。「細い道を進んでたら・・・めっちゃ広いところに出た!」みたいな感じがあるじゃないですか? -
- シングル
- アルバム
-
Avec Avec:ちっちゃい宝石みたいなところから・・・。
Seiho:「宇宙!!」みたいな(笑)。黒人のバラードって、個人から直結して宇宙まで行ってしまえるのがすごいですよね。
――さて、今回「家族」をテーマにした最新アルバム『ママゴト』が完成しました。Sugar's Campaignはコンセプトを先に考えて、音は後でついてくるタイプの人たちではありますが、今回選んでもらった曲の中で、今思うと新作に影響を与えたかもしれない曲はあると思いますか?
Seiho:たとえば、 "HAPPY END"はロジャー・トラウトマンの影響があると思いますね。
Avec Avec:あとは、"ポテサラ"でブラジル音楽の要素を見つめ直したのはバカラックの影響が大きかったし、熊谷幸子さんの女性目線の歌詞は"ママゴト"に影響を与えていると思います。他もずっと好きで、自分のメロディーに影響を与え続けているものですけどね。
――じゃあ、今回挙げた以外にも新作に近い要素を感じる曲を挙げるなら?
Seiho:たとえば、結婚式の定番ソングにもなっているaikoさんの"瞳"。あの曲って、生まれてくる子供のことを歌っていますよね。そして女性って、生まれた段階で、自分が子供を産むことや、自分が産んだ子供がいつかお母さんになることまでを知っている。だからこの曲は、結婚をしてない女の子が聴いても娘の視点として泣けるし、お母さんが聴いても泣けますよね。その構造に「こんなにすごい曲があるのか」と思って。『ママゴト』は家族がテーマの作品なんで、この感覚はどうにかして抽出したいと思っていましたね。
Avec Avec:他にも家族をテーマにした歌は沢山聴いたし、映画やアニメも色々観ました。麻枝准さん(『CLANNAD』の脚本など)が書く話とか、手塚治虫の『火の鳥』とか、連鎖する運命を描いたものに影響を受けたんです。音楽的には改めて振り返ってみると、"ママゴト"はアラン・パーソンズ・プロジェクトやトレイシー・ウルマンっぽさを感じるし、"いたみどめ"にはオブ・モントリオールみたいな雰囲気があるかな、とも思います。
――リリース後には<あしたの食卓>と銘打ったリリース・パーティーも開催されます。デビュー作のリリース・パーティーは「デビュー20周年」を模して進んでいく面白いものになっていましたが、今回はどんなことがテーマになりそうですか?
Avec Avec:まずは"レストラン-熱帯猿-"のテーマにもなっている「猿」や"HAPPY END"のテーマになっている「AI(人工知能)」ですね(笑)。
Seiho:(笑)。あと、やっぱり「家族」というテーマは大切にしたいんです。僕らが今回、アルバムを作るときに考えたのは、父親や母親、おばあちゃんも、もともと「父親」「母親」「おばあちゃん」として生まれてきたわけではないということで。
Avec Avec:じゃあ親はどうやって親になるのかというと、子供を産んだからではないと思うんですよ。子供がその人を親だと思って、初めて親になるというか。たとえ血がつながっていなくても、その人が親と思えば親子関係を築けることだってあるわけですし。
Seiho:そうやって「役割が与えられる」ということが、今回のリリパのテーマとしては重要だと思いますね。交換できない役を与えていく、というか。そして、僕らにとって一番大事なのは、当日が終わって現実に帰ったときに(自分たちや来場してくれた人々の)「あしたからの食卓がどう変わるか」ということなんです。
ORIGINAL PLAYLIST
-
Avec Avec
-
- シングル
- アルバム
-
-
-
- シングル
- アルバム
-
Seiho
-
- シングル
- アルバム
-
-
- シングル
- アルバム
-
- シングル
- アルバム
-
- シングル
- アルバム
-
text&interview by Jin Sugiyama
photo by Kohichi Ogasahara
DISCOGRAPHY
-
- ママゴト
- Sugar's Campaign
-
「井上苑子」が参加!スーパーポップユニット「Sugar’s Campaign」が放つ2ndアルバム
- アルバム
- 11曲収録
PROFILE
AvecAveとSeihoにより2011年に結成されたスーパーポップユニット。 「Avec Avec」ことTakuma Hosokawaと「seiho」ことSeiho Hayakawaの2人による2011年結成に結成した新世代都市型ポップユニット。ゲストボーカルを招く形でポップ・ソングを制作している。岡村靖幸、久保田利伸、トッド・ラングレンや、ポンキッキーズ、90年代アニメなどに強い影響を受け、上質なポップ・ソングを制作している。待望の新作アルバム『ママゴト』をいよいよこの夏リリースする。
LIVE
■Sugar's Campaign単独公演『あしたの食卓』
日程:2016年8月25日(木)
会場:心斎橋SUNHALL
時間:OPEN 18:30/START 19:30
料金:ADV ¥3,000/DOOR ¥3,500
日程:2016年8月26日(金)
会場:代官山ユニット
時間:OPEN 18:30/START 19:30
料金:ADV ¥3,000/DOOR ¥3,500
関連タグ