Californian Grave Digger 〜極私的ロックドキュメンタリー映画5選(ヘヴィーメタル編)〜


ポップカルチャーの世界は常にファッションやアート、そして映画と有機的にリンクし、温故知新を繰り返しながら変化し続ける。そして、その変化と進化が最も顕著に表現される大衆娯楽通=ポップカルチャーから見えてくる新たな価値観とは何かを探るべく、日本とアメリカ西海岸、時に東南アジアやヨーロッパも交えつつ、太平洋を挟んだEAST MEETS WESTの視点から広く深く考察する大人向けカルチャー分析コラム! 橋のない河に橋をかける行為こそ、文化のクロスオーバーなのである!

メタルとは何でしょうか? 「それは、親に嫌われることだ」byレミー・キルミスター

「バンドとは、音楽の実演販売である」と言ってのけたのは怒髪天のヴォーカル増子直純その人(※元・秋葉原駅前の便利グッズ実演セールスマン)だったが、聴くだけではなく観る、踊る、暴れる楽しみこそがロックの真髄ではないだろうか? さらに一歩突っ込んでみれば、様々なバンドやミュージシャンたちのポリシーや過去の経歴、音楽に託した思いを知るなら、ロックを取り扱ったドキュメンタリー映画を観るのが最適である。というわけで、前回に引き続き「極私的ロックドキュメンタリー映画5選」シリーズの2回目は、パンクと双璧をなす現代のゴシックオーケストラ、"ヘヴィーメタル"を取り扱ったドキュメンタリー映画についてレビューを試みたい。

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  • 第1回目にパンクを取り上げたのは、パンクが音楽としてもバンドとしても、まったくの素人が挑戦、参入する垣根が低く、さらにセンスさえあれば攻撃的な技巧派にもなれる柔軟性があったからだ。翻ってメタルはというと、パンクと違い最初からテクニックが要求され、容姿やファッションもイケメン水準が高く、全国ツアーどころかワールドツアーをこなしてナンボ。そのステージも非常に大掛かりで大仕掛けの連発! 反逆的ロックというより極めて大衆迎合型の、いうなればポップスに近いメジャー性を帯びたジャンルである。とは言え、元々妖艶かつワイルドなグラムロック〜ハードロックが素地なので、それは当然ともいえるが……。とにかく、発展型の演奏で、ギターソロやドラムソロなど、楽器も自在に使いこなす熟練したスキルが不可欠……というのが、筆者が抱くメタルの基本的なイメージなのだが、ひとことでメタルといっても現在は細分化されまくり、いわゆる一般的イメージに近いロン毛の“ボン・ジョヴィ系”に始まり、秒速ブラストビートの“グラインドメタル”、死体写真ジャケの“デスメタル”、教会に放火するアンチクライストな“ブラックメタル”……と、実に多様なサブジャンルが存在し、最近では我が国から産まれた変形亜種のBABYMETALも世界規模で大人気! など、パンクと違い懐が異様に深いところも、メタルの重要なエッセンスといえる。こういった事例、現象を頭の片隅にキープしつつ、これから紹介する5本のメタルドキュメンタリー作品について解説したい。なお、5本はベスト順的な序列ではなく、『美味しんぼ』に例えるなら“至高の五大鍋”のような、オールタイム・ベストな5本と解釈いただければ幸いであります!

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『極悪レミー』(2010年)

© 2010 Lemmy Movie LLC

2015年クリスマス。惜しまれつつも天国に旅立ってしまった、MOTORHEADのバンマスにしてロックの生き字引きとしてメタル/ロックンロール界の頂点に仁王立ちしていた男レミー・キルミスター。その半生を追うべく、約3年に及ぶ密着取材のうえに完成した、ロック・ドキュメンタリー映画の傑作が、この『極悪レミー』である。

レミーのヒストリーは、MOTORHEAD結成前夜どころか、ロックンロールが産声を上げた瞬間に立ち会ったところからスタートする。デビュー前のビートルズのライブに衝撃を受け、ジミ・ヘンドリックスのローディー(兼ドラッグ調達係)を経て、サイケデリック・ロックバンド・HAWKWINDからMOTORHEADへと続く、もう破天荒なんて言葉じゃ全く届かない豪放磊落な半生は、まさにロック! ジャンルとしてはヘヴィーメタルに分類されているが、そもそもMOTORHEAD (とBLACK SABBATH)がヘビメタの元祖という説があり、その激しい音圧はパンクの始祖とも言えれば、ハードロックの発展型でもある。そして、この映画を見れば、実はそのどれでもないモーターヘッドのサウンドは、レミーという漢(オトコ)の生き様そのものであることが理解できるだろう。

ちなみに日本語版タイトルは『極悪レミー』(原題は『Lemmy 49% Motherfucker 51% Son Of A Bitch』これはこれで、スゴい笑)となっているが、レミー本人は極悪どころか超が付くナイスガイであり、その誠実で真面目な人柄と揺るぎない信念には、大いに心を揺さぶられる。だからこそタイトルに“極悪”なんて付けてほしくなかったなあ……と思う次第であります。

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『ザ・デクライン Part 2〜メタル・イヤーズ』 (1988年)


前回のパンク編でも取り上げたトリロジー(三部作構成)によるアメリカ西海岸ロックドキュメンタリー映画のパート2。時代性を反映させるべく、前作のパンクムーブメントとは正反対のLAメタルのドキュメントとなっており、同ジャンルを多角的に捉えた希少な作品。構成はパンク編と同じでありながら、ヘヴィー(重厚)なのに尻軽な歌詞の絶妙なバランスと、華やかなステージやパフォーマンスの裏に隠された悲喜こもごもなメンバー事情の暴露は、結構ショッキング。いやはやメタルも大変である……。

出演バンドはMEGADETH、LAZZY BORDEN、FASTER PUSSY CAT他、証言メンバーはジーン・シモンズ&ポール・スタンレー(KISS)、オジー・オズボーン、アリス・クーパー、そして我らがレミー! などなど‘88年当時の超一流メンツが集合し、ディスコサウンドに成り果てたパンクロックをディスり、メタル最強説をブチ上げる……という、良くも悪くもバブル感溢れるメタル・ドキュメンタリーの傑作だ。特にこのジャンルの本質を答えるレミーの一言が最高すぎるので、ご紹介しよう。

——メタルとは何でしょうか?
「それは、親に嫌われることだ」


ここだけでも観る価値があると、おススメする次第。

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『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』 (2009年)


1980年代初めにカナダで結成されたメタルバンド、ANVILのオリジナルメンバー2人に密着したロック・ドキュメンタリー映画の隠れた超傑作。結成以来大人気となり、‘84年にはBON JOVIやWHITE SNAKEと共に来日公演まで果たしたが、その後は鳴かず飛ばずでジリジリと失速。オリジナルメンバーであり、バンマスでもあるリップスは給食のおじさん(『漂流教室』風)、ドラマーのロブは日雇い建築労働者として生きる日々。バンドはなんとか続けられていたものの、ハッキリ言って趣味の領域レベルだったのが、あるキッカケから彼らに再起のチャンスが訪れる……。と、字面にすると何だか残酷そうな現実を突きつけられるような内容だが、さにあらず。本作は年老いたメタルのおっさんが、再び重金属の輝きを取り戻す感動のロードムービーに仕上がっているのだ。

次から次へと舞い込むトラブル(自ら招いたものも多し)に、ドタバタ続きのリバイバルツアー、しかしバンドが最後に辿り着いた約束の地は、かつて熱狂に包んでくれた日本だった! 月並みな表現で恐縮だが、事実は小説より奇なり、だからこそ人生は面白辛いといえる。メタルファンのみならず、多くの観客(特に日本人)に観てほしい作品と、おっさん臭い息を吐きながら断言したい。

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『MEGADETH 狂気の旋律』(2001年)


METALLICA、SLAYER、ANTHRAXと並ぶ、スラッシュメタル四天王と呼ばれたMEGADETHの歴史に迫ったこれまた金属感溢れるメタル・ドキュメンタリー。主人公はもちろん、バンマスのデイブ・ムスティンである。古参メタルファンの間では"ムッちゃん"と呼ばれているので、敢えてここでもリスペクトを込めてムッちゃんと表記したい。つい先日にも来日を果たし、「世界の山ちゃん」で手羽先を食してあまりの旨さに感動したツイートを投稿。



局地的に話題となったムッちゃんだが、その半生は壮絶だ。METALLICAのオリジナルメンバーであり、技巧的かつワイルドなギターソロで注目を集めていたものの、ワイルド……即ち素行の悪さが災いしてバンドを解雇され、長年それがトラウマになっていたムッちゃん。それは解雇した側のMETALLICAにとっても同じであり、両者が和解するまでに30年近くかかったのも、むべなるかな。

とかく日本では、MEGADETHといえば、タレントとして活躍する“マーティ・フリードマンがかつて在籍していたバンド”としての認知度の方が高く、バンドの軌跡自体は、ファン以外には正直あまり知られていない感がある。そもそもメタルバンド単体にスポットを当てたドキュメンタリー映画の類いは非常に少ない上に、それが80年代スラッシュメタルを代表するMEGADETHともなれば、本当に貴重なのである。『デクライン Part 2』と併せて観賞をお勧めしたい。ムッちゃん、アンタやっぱり最高だよ!

『METALLICA : CLIFF'EM ALL』(1987年)


ロック・ドキュメンタリー映画メタル編の最後を飾るのは、やはりMETALLICA。今や大御所中の大御所バンドとなり、現役第一線で活躍する彼らにも、当然ながら駆け出しの時代があった。そんな彼らを追ったドキュメンタリー映画といえば『メタリカ〜真実の瞬間 Some kind of Monster』(‘05年)が有名だが、筆者的には、日本でのMETALLICA人気がピークに達していた80年代中頃にリリースされた本作を推したい。

タイトルにある通り、これは二代目ベーシストにして天才と呼ばれながら、ツアー中に交通事故死してしまった孤高の漢、クリフ・バートンの追悼作品である。ムスティンもといムッちゃんがMETALLICA在籍時代に喧嘩して辞めてしまった初代ベーシスト(ロン・マクガヴニー)に代わり加入したクリフは、爽やかな80年代ファッションとは程遠い、長髪&Gジャン&ベルボトムジーンズという出で立ちで一種異様なオーラを醸し出していた。クリフの演奏は凄まじくアグレッシブであり、初期METALLICAは、ムっちゃんの存在はさほど重要でなくとも、クリフの存在抜きには絶対に語れない。そんなクリフの在りし日の姿を、当時の流行だったブートレグビデオ風に仕上げ、あくまでもプライベートビデオの流出というスタンスで制作されているのが本作の特徴だ。

ゆえに、インタビューシーンや周囲の関係者の証言などは、ほとんど登場しない(テレビ出演時のショートインタビューは収録)。それが逆にリアルにクリフの存在を引き立てている。クリフを知らずして、METALLICAを語るなかれ。本作のMETALLICAは、黎明期にして完成された素晴らしきスラッシュメタルバンドの、最も輝かしい瞬間が記録されているのである。


ちなみにパッケージアートはPUSHEAD画伯の筆による作品。是非ともパッケージ付きで押さえておきたいメタル映像の逸品なのだ。

以上、筆者が極私的にセレクトしたメタル編である。メタルというジャンルに関しては、あくまで筆者の見方であり感想であり印象に過ぎないので、それは違う! というツッコミは多々あるかもしれないが、個人のイメージということでご勘弁頂きたい。また、今回取り上げた5本の中でも『極悪レミー』と『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』は、ヒューマンドラマとしても非常に完成度が高いので、メタルに興味がない人にもオススメできる。

パンク編からメタル編とくれば、次回は、ソウル/ファンク編しかないでしょう! ブラックミュージックの歴史を紐解くことで知ることのできる近代史の真実とは何か? 刮目してお待ちくださいませ!

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  • Text:マスク・ド・UH/Mask de UH

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