新・改造してギターを良くする研Q所 【改ギ研Q】 第5話


研究所の朝……もとい、研Q所の朝は早い。もちろん挨拶はいつだって「オハヨーゴザイマス」だ。私たち研Q員は今日もまた、どこかに埋もれた“磨けば光るギター”を探しだし、そして……「改造」をする。すなわち当コンテンツは、DIY心満載の「ギター改造コーナー」なのでR!

第5話 「電撃バップ大作戦」の巻

 

改ギ研Q、心得

1、安きギターを手に入れるべし
1、お金かけずに手間かけるべし
1、ギターを知り、ギターを愛すべし
1、ダメ、ゼッタイ、不良改造
1、安全第一、改造大好きなのじゃ


皆さん、あらためまして「改造してギターをよくする研Q所」、略して「改ギ研Q」であります。

本日のQは
「初号機Q-4 すみやかに配線せよ!」


さてわれらは集まった。前回から引き続き、関東平野の端っこ。「栃木県で改造してギターを良くする研Q所」略して「栃ギ研Q所」に来ている。前回、早朝から改造をすすめ木工作業はほぼ終了。時はすでにお昼になろうとしているのであった、が、しかし、研Q員たちのあいさつはいつだって、これだ……オハヨーゴザイマス!

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オハヨーゴザイマス! 栃木の空気は旨い!

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オハヨーゴザイマス!

 

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しかし、あれだな。うん。いいとこだな。あー、目の前、田んぼの中を電車通ってるじゃん。なに? 単線なの、あれ? へー、両毛線っていうんだあ。ふむふむ。(と、なぜか穏やかな所長)

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都会の喧騒を忘れて、たまにはいいですね。地方に来るのも。

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あっ、そうだ。K井。帰りに佐野ラーメン食っていく? 美味しいとこある? M本〜。あっ、お土産はあれか、サービスエリアでいいかあ。レモン牛乳買ってこ! なっ!

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……所長?

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うん?

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なんか、終わった気になってませんか?

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なってるよ。だって終わりだろ? ギターの形になったじゃん。

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何言ってるんですか。まだまだですよ。中身中身! これエレキギターなんですから。ピックアップつけたり、スイッチつけたり、配線したり。このままじゃ鳴りませんよ!

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えっ、まじ? まだ終わりじゃないの?

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当たり前でしょ?

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そ、そ、そうか。えっ? でも、そもそもエレキギターってどうやって音出るんだ? 中身なんて考えたこともなかったぞ。確かにスイッチとかいっぱい付いてるしな。ややこしいな。俺、文系なんだよ。わかんねえよ、そういうの。文学部文学科だもん。浪人してるし、留年してるし。あっ、あれか。フレミングとか右手のナンチャラとか、電流とか電圧か。電気はやべえぞ。感電しちゃうぞ。あわわわわわ…

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いやいや、パニクらないでくださいよ(笑)! 基本的なギターの配線はシンプルなんですよ。そもそも弦の振動をピックアップで拾うわけです。そしてそのピックアップから出る+と-の線を、スイッチ、ボリューム(トーン)を経てジャックに繋ぐだけですから。

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あー。つまりピックアップってマイクみたいなものってことですか?

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そうです、そうです。仕組みは簡単でしょ?

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でもさ、配線はいいとして。それじゃスイッチ類は、またボディに穴を開けたりするの? 加工して? そんなのすぐに決められないよ、スイッチの場所、どこがいいとかさ。まだまだ時間かかるじゃーん! 佐野ラーメン食いに行けないじゃん!

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いえ。そこで考えたんですよ、今回。スイッチ類とか、ぜんぶ、電気系統はブリキ缶とかに収めちゃって。ボディにポン付しちゃえばいいかな、って。とりあえず今回は音が出る状態にして。今後、時間ができたらゆっくり桶に穴を開けてヴォリューム・トーン、スイッチを仕込んでもいいし……って。

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おおー! いいね! そういうの! おっ、それじゃブリキ缶が必要なんだな。! 缶、缶…と。おい! K井。なんかないか、ちょうどいいやつ。

 

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よーし! オッケー! M本! この空いた缶を使ってくれぇい! (テカテカ ピカピカの中年男二人組)

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あっ、大丈夫です。百円ショップであらかじめブリキ箱、用意しておきました。どんな素材(ボディ)が来ても時短ポン付けできるようにと思って。

 

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じゃあ、さっそく、作業に取り掛かりましょう。簡単に……とは言え、そこは見た目とかも大事ですし。配線も間違ったら音は出ません。ハンダゴテ使ったりもしますから、ここは丁寧にやっていきましょう!

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よし、作業にかかれ!

 

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ちなみに箱は、プラスチックや木よりも、通電する箱がいいです。それはノイズ防止の関係なんです。エレキギターはノイズを防止するのにキャビティ内に導電塗料を塗ったりしてアースを落としたりする人もいますね。

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しかし、ブリキ缶はいいアイデアですね。簡単で。

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(笑)。ブリキ箱アイデアは、20歳の頃自作エフェクター(ファズ)にハマっていまして。そこから思いつきました。今後ですけど、電池が入るアンプやエフェクターを貼り付けていくのもアリですよね。実際にそうした商品もあります。もっとスマートですけど(笑)。

 

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約30年前のM本作アルミ弁当箱ファズ


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なるほどー。いいですねえ。

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それじゃ、コントロールボックスの場所を決めていきましょう。そちなみに、K井さん。僕がこういう作業でもっとも重要視しているものがあります。なんだと思います?

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えっ? なんですか?

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じつは……両面テープです!

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両面テープ?

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両面テープは色々使えるんですよ。なんにしても両面テープです。とりあえず、仮止めして、何度でも剥がせるし。ちなみに、両面テープには「紙ベース(基材)」「樹脂(ポリプロピレン)ベース」などがあって。私は加工の時は樹脂ベースを使ってます。剥がしやすいから。紙ベースだと、剥がす時ベタベタに残っちゃうんですよね。で、今回ブリキ缶をボディに付けるには、厚手の「ゴムベース」のものが適していると思います。
そうそう、車の外装も両面テープって知ってました? 車なんて、100キロ以上出すのに両面テープ使っているんですよ。

 

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左:仮止め用の樹脂ベース。右:配線ボックスを取り付けた強粘着のゴムベース。このように用途によって両面テープを使い分けよう!

 

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両面テープかぁ! 確かに、便利ですね。作業中、物もごちゃごちゃにならないし。

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ええ。あとね。これはギターをバラす時にも組み立てる時にも大切なんですけど。いや、ギターだけじゃないな。あらゆる作業時に最重要なポイント。これ覚えといてください。

「ネジはなくなりやすい!」

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えっ?

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ですから、ネジは常にカップに入れておけ(笑)。作業机の上はできるだけシンプルに! 磁石付きのネジを入れておくカップなんてのもあるんですよ。車屋さんとかは、車を直したりする時、下に潜って貼り付けて使ったりもしてるんですよ。

 

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おおー。勉強になりますねえ。……ねえ、所長。あれ静かだな? 所長??

 

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なに、飽きちゃってるんですかっ!
みんゴルやってるし!

 

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う、う、うるさい! ウンチクはもういい! 早く作業しろ! ファーーーーーーーーー! 

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つづいて、ハンダゴテの注意点も。
「熱いので気をつけて」(笑)。

 

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そりゃそうです。

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以前、作業が終わって片付けるとき、コンセントを抜いたもんだと勘違いしてギンギンに熱いハンダゴテを握ってしまい、ジューっと焼き肉屋の匂いがしました。モランボンのタレが欲しくなりましたよ(笑)。

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……。モランボン? タレ? はあ? それはあれか。生姜焼きの方か? それともニンニクたっぷりの方か。ポン酢はダメなのか!!! 俺は塩が好きだ!! どうなんだっ!

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いや、そこ膨らまさなくていいです、所長。

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ハンダや配線材、コンデンサーなどで、音は変わるんですよね。探求するのも一興です。私は、パーツの音を比較するための実験機を自作して遊んだりもします。

 

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………とかなんとか言ってるうちに、はい。完成しましたよ。

 

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おーーーーー! じゃあ。音が出るのか? ついに! 

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ええ。そのはずです!

果たして次回は、完成お披露目。音は出るのか? そしてどんな音になるのか? さらに…………。試奏のため研Q所には、試奏するためだけの恐るべき「メカ」が存在していた。その全容は??


つづく。


【今回の豆Q知識 by M本研究員】

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20歳の頃、部屋に“音楽に全く興味の無い友達”が来た時の事。
私のギターを見て、色々な質問をしているうちに

「どうしてピックアップが2つあるのだ?」

と聞いてきたのです。そこで、部屋にあったミニアンプに繋ぎ、

「これがリアの音。シャラララーン♫ これがフロントの音。モコモコーン♪」

と弾いたのですが、彼の答えは「全く違いが分からない」という衝撃的なものでした。

あまりの衝撃に、もう30年近く昔なのに、その日の事を克明に思い出せます。たぶん、死ぬまで覚えています。

ちなみにそのギターは、テレキャスターのシンラインリアはテレキャス・シングルフロントは元々シングルでしたが、ハムバッカーに改造してありました。リアとフロントの音は、かなり違うはずです。
ハンダや配線材やコンデンサ―、ギターの木材、アンプの種類等…。厳密には、何かを変えると音は変わる、と言われていて、私も体験する事が多々あります。
しかしその差を感じるには、耳というか、音楽の経験値を上げる必要があると、その、20歳の頃の衝撃を顧みて思うのです。

例えば色は光の波で、昆虫などは人間とは違う色に見えているとか。ならば音は空気の波。達人たちは、私には聞こえない音を聴いているのかもしれない!
もしかするとね!
ただ、リアとフロント程の差はねーと思うけど! などなど……これまた奥が深くて楽しいのでした。

みなさんも楽しい改造ライフを!


<次回、8月2日(金)更新予定!>

第4話を見る

 


 

【研Q所メンバー紹介】

V山

V山所長
ギターの知識はあやふやだが、ギター改造へのあくなき探究心は誰にも負けない中年。

 

M本 

M本研Q員(助手)
栃木県在住。ギターへの異常な愛情と、マニアックすぎる知識を持つ中年。

 

K井

K井事務員
ギターへの興味は人並みだが、絵を描くこととお芝居が得意。昨年は朝ドラに出演していたことでも話題の中年。

 

【栃ギ研Q支部】

田園風景広がるのどかな場所に、それはある。普段は、ギター工房として使われている木材加工、塗装、電気関係、すべてが揃っている完璧なラボである。佐野ラーメンの美味しいお店も近所にあるっぺよ!

 


 

Text:ヴィンセント秋山
Illustration:河井克夫 (https://twitter.com/osuwari
監修:ギター工房「ビータギタラーズ」(http://vita-guitala-s.com/

 

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