ホセ・ジェイムズが語る、世界トップ・レベルのプレイヤー達と作り上げた『リーン・オン・ミー』の制作風景

ホセ・ジェイムズが語る、世界トップ・レベルのプレイヤー達と作り上げた『リーン・オン・ミー』の制作風景(1)
名門〈ブルーノート〉に所属し、ロバート・グラスパー(Robert Glasper)らとともに新世代ジャズ・シーンの最前線で活躍するシンガー、ホセ・ジェイムズ(Jose James)。彼が最新アルバム『リーン・オン・ミー』を完成させました。

このアルバムは、1970年代から80年代にかけて活躍した伝説的なシンガー、ビル・ウィザース(Bill Withers)の生誕80年を記念したトリビュート・アルバム。これまでもビリー・ホリデイ(Billie Holiday)のトリビュート作品をリリースするなど、過去の音楽への敬意を作品で表現してきたホセ・ジェイムズは、今回初めて、存命のリビング・レジェンドをテーマに作品を制作しています。

レコーディングに参加したのはネイト・ スミス(Dr)、ピノ・パラディーノ(B)、クリス・バワーズ(Key)、ブラッド・アレン・ウィリアムス(G)、黒田卓也&コーリー・キング(Tp)、そして「ラヴリー・デイ」にゲスト・ボーカルとして参加したレイラ・ハサウェイ(LALAH HATHAWAY)といった世界トップ・レベルのプレイヤー/シンガー達。その制作風景について聞きました。

ホセ・ジェイムズが語る、世界トップ・レベルのプレイヤー達と作り上げた『リーン・オン・ミー』の制作風景(2)

INTERVIEW

─そもそも、あなたがビル・ウィザースを知ったきっかけはどんなものだったんですか?

たぶん、今回のトリビュート盤のタイトルにもなっている「リーン・オン・ミー」を聴いたのが最初だったと思う。この曲は(モーガン・フリーマンが主演した)映画『ワイルド・チェンジ』(原題:『LEAN ON ME』)のタイトルにもなっていて、その劇中でクラブ・ヌーヴォー(Club Nouveau)を筆頭に様々な人たちのカバー・バージョンが流れるよね。ビル・ウィザースの音楽は時代ごとに新たな解釈が加えられて、いつも僕らの近くにあったものだと思うよ。ザ・ルーツ(THE ROOTS)のクエストラブもビルの大ファンで、彼はずっと「あなたのアルバムをプロデュースしたい」と言っているんだけど、ビルは「わざわざそんなことしてくれなくてもいいよ」と言っていて。国宝級に素晴らしい人にも関わらずすごく謙虚な人でもある。どこか日本人のスピリットにも似てるような気がするよ。師範のような人でも、腰が低かったりするようなね。

─ジャズ、ファンク、ロック、ソウルなど、色んなジャンルを横断していくような雰囲気は、あなたとも似ているかもしれませんね。この辺りはどうでしょう?

ああ、確かにそうかもね。「だからビル・ウィザースに惹かれたんだ」って言ったら、頭がよく聞こえるかな(笑)。でも、僕がビル・ウィザースに感じる魅力を正確に説明するのは難しい。「君の好きな色は何?」「赤かな」「じゃあその理由は?」「赤が好きだから」という話と同じで、理由は分からないけど、なぜかすごく惹かれてしまうんだ。そもそも、彼の音楽はアメリカのどんな時代、どんな場所でもそこにあった音楽で、みんなが彼の音楽を知っている。でも、みんな彼の曲を知ってはいるんだけど、必ずしも彼自身を知っているわけではない。たとえば、移動中にタクシーに乗ったときに、運転手に「君はミュージシャンだよね。今は何をしているの?」と聞かれて、「ビル・ウィザースのトリビュート・アルバムを作ってる」と言うと、「それ誰?」と言われたんだけど、曲名を挙げると「ああ、その曲は大好きだよ!」ってことになったりする。だから、今まで音楽は広く知られていたけれども、作った本人にはなかなかスポットが当たることがなかった彼のことを、多くの人に改めて知ってほしいと思ったんだ。

─そして膨大な楽曲の中から収録曲を選んでいったそうですが、レコーディング期間にバンドやゲスト・ミュージシャンとのやりとりの中で印象的だったものというと?

今回のレコーディングは、まるでキャデラックを運転しているような感じだったよ。そこに乗り込んだら、「居心地がいいな」と思っているうちにすべてが終わっていた(笑)。今回、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)の「スリラー」にもアシスタントで参加していたエンジニアのエド・シャーニーが関わってるんだけど、その仕事も素晴らしかった。ドン・ウォズ(Don Was)も、ピノ・パラディーノ(Pino Palladino)ももちろんね。実は今回のレコーディングは、ほとんどすべての曲が一発録りで終わったんだ。

─へええ、そうだったんですか。

最初にリハーサルもしないまま「ユーズ・ミー」をレコーディングしたんだけど、それが一発でいいものになって、そこからどんどんレコーディングが進んでいった。素晴らしい体験だったよ。みんな同じ部屋にいて、すべてライブで録音して。「まずは「ユーズ・ミー」だ」「よし、出来た」「次はこの曲にしよう」「よし、出来た」って(笑)。ある意味、かつての古き良き時代のレコーディングのような感じだったと思う。関わってくれたミュージシャンがみんな素晴らしかったというのが大きな理由だと思うけど、こんなにいいレコーディングを経験してしまうと、これからが大変な気がするよ(笑)。

─他にもレコーディング中の思い出を教えてもらえますか?

今回は録った後のテイクを一切聴かなかったんだ。たとえば、すごい俳優の人でも、演じたら自分ではそのチェックをしない人っているよね。それと同じで、今回は自分のフィーリングとドン・ウォズの感覚を信じていた。その瞬間に自分が信じた通りに歌って、その感覚とドンの耳を信じたんだ。そういう意味でも、忘れられないレコーディングになったよ。好きに絵を描いている画家のような感覚だったよ。何かすごく横柄に聞こえるかもしれないけど(笑)。

─いえいえ、全然大丈夫だと思いますよ。「ラヴリー・デイ」でのレイラ・ハサウェイとの作業はどうでしたか? 打ち合わせなしの一発録りということは、完成版に収められている彼女のアドリブはその日のフィーリングで生まれたものだったということですか?

そうなんだ。彼女の作業は僕よりも早かったと思う。(指を鳴らして)「パチン! はい、出来たわね。さぁ次の曲をやろう」って(笑)。彼女のアドリブパートも、そのときの雰囲気で急に出てきたものだったんだ。彼女とは、マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)のトリビュートライブで一緒のステージに立ったことはあったんだけど、改めて素晴らしいシンガーだと思ったよ。

─今回の作品では、ホセ・ジェイムズの代名詞とも言える、夜の都会を思わせるようなセクシーな雰囲気が感じられるのも印象的でした。

あははは、自分の場合はどうしたってそうなってしまうんだ・・・(笑)。スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)とかもそうかもしれないけど、確かにビル・ウィザースの音楽は、セクシーというよりスピリチュアルなイメージがあるかもしれない。でも、その音楽の中にも、セクシーな瞬間はあると思うんだよね。それを僕なりに表現してみたんだよ。今回バンドに言ったのは、「僕らは彼の曲をカバーするんじゃない。解釈をしたいんだ」ということだった。音楽は紙の中に書かれるものではないし、実際にレコードとしてモノになっていたとしても、そこに何を求めて人が音楽を聴くかというと、そこに込められた誰かの人生のある一瞬だったり、誰かの想いだったりする。自分が作品を作るのであれば、僕自身のそういう気持ちを残したいという気持ちがあったんだと思う。ビル・ウィザースだって、「ラヴリー・デイ」を作ったときは、何かすごくいいことがあって、それに触発されて曲を書いたかもしれない。だとしたら、それを聴いた誰かがまた「俺も最高の気分だ」と思ってまた新しい曲を作ることにも意味はあると思うんだ。レコーディング前に直接会ったときに、ビルも僕に言ってくれたことなんだけど、音楽って、そうやってどんどんシェアされていくものだと思うんだよね。

─今回ビル・ウィザースの曲に向き合ってみて、新しく気づいたことはありましたか?

それはたくさんあるよ。このアルバムを作りはじめる前から僕は彼の大ファンを自称していたけど、そんな自分でも彼の作品の中にはいくつかまだ聴いたことがないものも含まれていた。今回初めて知った曲もあったんだ。でも一番印象的だったのは、彼がキャリアの中で徐々にその音楽性を変化させていったということだと思う。彼がヒットを出しはじめた1971年から、音楽業界を離れる1985年までの間というのは、ある意味音楽が一番進化した時代だったかもしれないよね。その中で、彼のソングライティングも進化していったことを改めて感じたよ。1枚目のアルバムから最後のアルバムまでに、彼自身もどんどん進化していったんだ。もちろん、彼の声と、楽曲の良さはずっと変わらなかったかもしれないけれど、その時代ごとにずっと「今であり続けた」ということが、とても素晴らしいと思う。


Interview&Text:杉山仁
Photo:Kohichi Ogasahara



NEW RELEASE
ホセ・ジェイムズ『リーン・オン・ミー』
2018.09.28(金)Release
    • Lean On Me/Jose James

      ハイレゾアルバム

      4,400

      Lean On Me
      Jose James


  • LIVE INFORMATION
    ホセ・ジェイムズ celebrates Bill Withers

    ビルボードライブ大阪
    日程:2018年10月31日(水)
    時間:1st Stage OPEN 17:30 START 18:30/2nd Stage OPEN 20:30 START 21:30
    料金:Service Area ¥8,900/Casual Area ¥7,900

    ビルボードライブ東京
    日程:2018年11月1日(木)、2日(金)
    時間:
    11月1日(木)1st Stage OPEN 17:30 START 19:00/2nd Stage OPEN 20:45 START 21:30
    11月2日(金)1st Stage OPEN 17:30 START 19:00/2nd Stage OPEN 20:45 START 21:30
    料金:Service Area ¥8,900/Casual Area ¥7,900

    <メンバー>
    ホセ・ジェイムズ(vo)
    大林武司(p、key)
    ベン・ウィリアムス(b)
    ネイト・スミス(ds)
    ブラッド・アレン・ウィリアムス(g)

    http://billboard-live.com/

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