知られざるワールドミュージックの世界 ~エレキ民族楽器の調べ~

知られざるワールドミュージックの世界 ~エレキ民族楽器の調べ~
言うまでもなく、音楽は電気が発明される随分前から演奏されてきたので、楽器はアコースティックが基本だ。しかし、電気増幅される楽器が本格的に登場したのは意外に古く、1920年代のテルミンやオンド・マルトノ。その後、ハモンド・オルガンやエレキ・ギターが使われるようになり、電気楽器の黄金時代がやってきたのである。

ただ、ここまで電気楽器が広まっているというのに、いわゆる民族音楽は「アコースティックでないといけない」という固定観念を持つ人も多い。そうでないと民族色が薄れるということだとは思うが、実際のところ世界中のどんなローカルなところに行っても、電気増幅された音は親しまれている。

というわけで、今回は「アコースティックな民族楽器を、エレキ化したらどうなるか?」ということをテーマに、世界中のエレキ民族楽器を集めてみた。音色の良し悪しや音楽的な面白さはともかく、電気増幅しても地方色がしっかりと出ることがわかるはずだ。

シタール、ウクレレ、ジェンベ、スティールパン、二胡……こんな楽器までエレキ化してるとは!?

まずは、インドの弦楽器シタールから。インドの古典音楽では定番だし、ラヴィ・シャンカールなどはビートルズに影響を与えたほどシタールの音色はよく知られている。そして、エレクトリック・シタールも、サイケデリック・ロックからフィリー・ソウルまで多くのポピュラー音楽に使用されてきた。とはいえ、ここに登場するエレクトリック・シタールはやりすぎ感満載。インドの古典音楽的なメロディを弾きつつも、リバーブやディストーションを効かせ、速弾きするバカバカしい技には、観客もあっけにとられているのがおかしい。



ハワイの弦楽器ウクレレも、誰もが知っているメジャーな楽器だ。ジェイク・シマブクロの速弾きもよく知られている。だから、エレキ・ウクレレとなってもそれほど違和感はないだろう。この動画では、映画『パルプ・フィクション』で有名になったディック・デイル&デルトーンズの「ミザルー」を演奏している。ご丁寧に弾き方の解説まで入っているが、よくよく考えれば別にエレキ・ギターで弾けばいいのでは、と思ってしまうがどうだろうか。



アフリカの太鼓といえば、パッと思いつくのはジェンベだ。マリなどの西アフリカが起源のようだが、アフロ系のパーカッション奏者は必ずと言っていいほど誰もが演奏するメジャーな楽器。それなりに音量の大きい楽器なだけに、無理にエレキ化する必要はないと思うのだが、この動画ではエフェクトなどを効果的に駆使してスペイシーな世界を作り上げている。ここまでやってしまえばオリジナルのジェンベとはほとんど違う楽器だ。



カリブの島国トリニダード・トバゴで生まれたドラム缶楽器のスティールパン。きらびやかな音色が特徴だが、なんせでかくてうるさいので、家では練習し辛いのがネック。でも、こんなエレキ・スティールパンならとてもコンパクトでいいのでは。音の配列や音色もオリジナルに忠実なだけに、アンプで増幅してもそれほど違和感はない。ソカのリズムに乗ったゴキゲンな演奏で、潮風を感じられるだろう。



フィンランドの民族楽器であるカンテレは、北欧らしい繊細な音色が特徴的な撥弦楽器。チャラランと奏でるだけで、叙情的な雰囲気を作ることができる。それだけに、エレキ化してさらにファンタジックなイメージを作り上げるというのも、大いにありではないだろうか。電気増幅するといっても、単に音を大きくするのではなく、音色に幅をもたせると思えばそれも使いようだ。

「どうしてもエレキ化したい!」 万国共通の欲求をとくと味わおう

さきほどのジェンベとも似ているが、こちらはアフリカではなくアラブ音楽の定番であるダラブッカ。アフリカの太鼓のような動物の皮ではなく、プラスチックのヘッドなのでもともと鋭角的な音色が特徴だ。その音をアンプに通すのだから、さらにアタックの強いリズムを叩き出すことになる。この動画ではなんだか冴えないおじさんが登場するが、バリバリと叩くテクニックはさすが。ただ単にうるさくなったような気もするけれども……。



中国の二胡も、わりとメジャーな楽器といえるだろう。この楽器をアジア美女が弾くのであれば優雅で流麗だと思うのだが、この動画ではハードなロック・サウンドに乗せてガシガシと弾きまくっている。これくらいやってしまうと、二胡でもヴァイオリンでもエレキ・ギターでも構わないような気もするが、どうしてもエレキ化したくなるのは万国共通なのである。二胡のような楽器でもこういった激しい演奏ができるのかという発見だけでも、エレキ化の意義はあるのかもしれない。



最後はエレキ・バグパイプの登場だ。スコットランドの民族衣装とバグパイプの組み合わせは英国の伝統の代名詞だが、この動画に登場するのは、つまみがついた無機質な箱に棒が刺さったような無機質なもの。音色も、いかにも電気で作ったというような人間味の薄いピロピロとしたものだが、聴いているうちにトランス状態になりそうだ。製作者と思しきオヤジさんの自慢気な笑顔がまた憎い。ぜひバッキンガム宮殿前で演奏してもらいたい。



他にも、たくさんのエレキ化された楽器はあり、新たな魅力を発見できるものから、逆に楽器の品格を下げかねないチープなものまで多種多様。ただ、どう変化しようともオリジナルは残るだろうし、逆にエレキ化することが楽器の新たな進化になるかもしれない。「民族楽器はアコースティックじゃなきゃ!」と目くじらを立てずに、電気楽器の面白さも是非、楽しんでいただきたい。


Text:風 奏陽
Illustration:山口 洋佑
Edit:仲田 舞衣