101年目のジャズ vol.7 ~ライブ音源で旅気分~

101年目のジャズ vol.7 ~ライブ音源で旅気分~
ラジオ番組のナビゲーター気分でお届けしている「101年目のジャズ」、1ヵ月ぶりですね。いろんな意味でキビシイ夏ですが、バテバテになっていませんか。カラダの声を聞いて時には休む、そう言い聞かせながらの今日この頃です。さて、サマー・ホリディを利用した日常脱出的な思い出作りを予定している人や、すでに楽しまれた方、いらっしゃると思います。今年はそんな余裕ありませんって人も結構多そう。どちらにしても、今居る場所からちょっとでも移動してリフレッシュした~い! と心で呟いている、そんなアナタのために、今回はジャズの“ライブ音源で旅気分”していただきたいと楽曲をあれこれセレクトしました。現実逃避のお手伝いになるといいのですが。

#1. MEL TORME - Get Your Kicks on Route 66

オープニングは、今すぐドアを開けて家を飛び出したくなるような勢いのある「ルート66」です。ナット・キング・コールのバージョンも必聴ですが、今回はメル・トーメの歌声でお楽しみいただきます。アル・ポーシノ率いるオーケストラのゴージャスな演奏をリードするかのように、シャバダバとご機嫌なスキャット&有名なスタンダード曲のフレーズを織り交ぜたパフォーマンス。1974年9月にニューヨークのセント・レジス・ホテル“メゾネット・ルーム”で行なわれたステージからのトラックをどうぞ!

#2. JIMMY SMITH - A Night In Tunisia

続いては、メル・トーメと同じ1925年生まれのオルガン奏者、ジミー・スミスがリーダーの演奏です。ルー・ドナルドソン(as)、ティナ・ブルックス(ts)、エディ・マクファーデン(g)、アート・ブレイキー(ds)らと約17分にわたる熱気に満ちた「チュニジアの夜」を聴いていたら、ルー・ドナルドソンにインタビューした時のことを思い出しました。「僕は昔からハモンド・オルガンの音色が気に入っているんだ。あの楽器はビッグバンドのような迫力あるサウンドを出してくれるからね。でも、大事なのは楽器じゃない。誰と一緒に演奏するかってことなんだよ」と言っていたのは2006年。お届けする音源は今から60年前に行なわれたライブの模様です。

#3. JULIE LONDON ‐ I Love Paris

お次は、ハスキー・ボイスが非常に魅惑的なシンガー、ジュリー・ロンドンのライブ音源です。「ルート66」の作詞・作曲者、ボビー・トゥループの奥さまでもあり、女優としても活躍した彼女の歌でパリの風景を想像してみて。曲は、1953年にブロードウェイで初上演したミュージカル「カンカン」のために、コール・ポーターが書き下ろし、以降、多くの歌手がカバーしている作品です。キンキンに冷えたシャンパンを飲みながら聴けば、それこそ、パリのカフェにいるような気分になれるはず。ポジティブな思い込みって案外、大事。

#4. DONALD BYRD - Dear Old Stockholm

1958年10月、パリのオランピア劇場でジャズのライブが行なわれました。エディット・ピアフ、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、デヴィッド・ボウイ、マドンナなど、ジャンルを問わず、多くのトップ・ミュージシャンが出演しているミュージック・ホールのステージで、デトロイト出身のトランペット奏者、ドナルド・バードがリーダーのクインテットによる演奏が繰り広げられたのです。メンバーは、ボビー・ジャスパー(ts)、ウォルター・デイヴィス・ジュニア(p)、ダグ・ワトキンス(b)、アート・テイラー(ds)という当時、売れっ子のジャズメン。その日の演奏から選んだ曲は哀愁を帯びた美メロの「ディア・オールド・ストックホルム」です。スウェーデンの風景が脳裏に浮かぶのか、それともフランスの映像が見えてくるのか、アナタはどっち?

#5. ROSEMARY CLOONEY - Sentimental Journey

1951年に「家へおいでよ」が爆発的ヒットとなったアメリカを代表する歌手、ローズマリー・クルーニーは多彩な活動を経て2002年、74歳で人生の幕を閉じました。その1年前に開催したコンサートの収録アルバムから今回は「センチメンタル・ジャーニー」を聴いてください。この曲は1945年にドリス・デイがヒットさせ、戦後の日本でも大流行。様々なボーカリストがカバーしていますが、晩年のローズマリー・クルーニーが歌ったバージョンは、起伏に富んだ人生を送った女性ならではの深みを感じます。

#6. TONY BENNETT and BILLY JOEL - New York State of Mind

1923年生まれ、今年92歳のトニー・ベネットは、アメリカ・ショー・ビジネス界のシンボルともいえる歌手であり、誰もが認める超レジェンドです。多くの名盤を残し続けていますが、ジャンルの壁を越えたスター・ミュージシャンがニューヨークの“ラジオシティ・ミュージック・ホール”に集結して御大の90歳を祝ったライブ盤も絶品中の絶品です。レディー・ガガ、アンドレア・ボチェッリ、スティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョンほか多くのミュージシャンが彼に捧げた歌を披露。トニー・ベネット自身のボーカルも勿論楽しめます。その中から彼の代表曲「アイ・レフト・マイ・ハート・イン・サンフランシスコ」を聴いてもらおうと思ったのですが、いやいや、今回はビリー・ジョエルとデュエットした「ニューヨークの想い」にしようと決心。だって、大歓声もホントにホントに凄いんですっ!

#7. LIZA MINNELLI - New York, New York

ラストもニューヨークを舞台にしたナンバーです。タイトルもずばり「ニューヨーク、ニューヨーク」。この曲は、1977年に公開された映画のタイトル・チューンで、主演のライザ・ミネリが劇中で歌いました。今回、お届けするのは2002年、ニューヨークのビーコン・シアターで行なわれたコンサートの歌声です。実は2000年に腰の不調で入院、翌年には大病を患い、会話をするのも歩くのも無理と診断されたライザがリハビリに励み、努力に努力を重ねた結果、奇跡的に回復を遂げ、愛する舞台にカムバック! だから、こんなにも喜びに満ちた「ニューヨーク、ニューヨーク」なんだと胸が熱くなります。ライザが歌を求め、歌がライザを求めていた、そんな気がしてくるこのトラックをぜひ聴いてみてください。

  • 今回は“ライブ音源で旅気分”を味わっていただこうと、地名のついた楽曲を中心にセレクトしました。ところで、音楽というのは不思議なもので、同じ曲でも聴く場所によって印象が変わったりしますよね。自宅で聴いた時と車の中で耳にした時ではなぜか感じる部分が違ったりして。今月ご紹介した曲をアナタはどこで楽しむのでしょう? そして、どんなふうに受け止めるのでしょうか。 では、来月最終金曜日、8月31日にまたお会いしましょう。

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