日々是鍛錬 ~私の練習遍歴:skillkills編~

ミュージシャンの練習遍歴  ~skillkills編~
ミュージシャンが確固たるスタイルを編み出すために、楽器練習は欠かせない要素のひとつ。このコーナーは、実力のあるミュージシャンたちに“楽器練習”というテーマで語ってもらう連載企画だ。
第一回は、問答無用のアンダーグラウンド・レーベル=BLACK SMOKERに発掘され、インディペンデントな活動を続けるskillkills。ヒップホップのサンプリングの揺れを抽出して濃縮したかのような、プログレッシブなリズムとラップで唯一無二の世界を築いている。ここでは同バンドの変則的なグルーヴを生み出すバンド・リーダーでありベーシストのスグルスキル aka GURU CONNECTとドラムのビートさとしを迎え、skillkillsにとっての楽器演奏のスキル(テクニック)について聞いた。

友達の家にアンプもドラムセットもあったから そこで練習するって感じでした

─おふたりが楽器をはじめた頃、どんな練習をしていましたか?

スグルスキル:
中学2年のときにギターを始めたのですが、指が痛くてすぐに辞めて、中学3年にベースを弾くようになりました。そのときはコピバンをやっていたので、最初は「バンドやろうぜ」的な雑誌を買って、そこに載っている曲のタブ譜を見ながら弾いてました。最初はビートルズで、そのあとはX JAPANGLAYのコピーをしていました。

ビートさとし:スグルがベースをはじめた頃は、まだ何もやっていなかったですね。僕もベースから始めたのですが、先輩がドラムを叩く姿を見て”こっちのほうがいいな”と思って、ドラムをやるようになったのが、ちょうど高校一年くらいのとき。先輩に“ドラムは習った方がいい”って言われたので、すぐに習いに行きました。コピバンをやる前から基礎練習をやっていたという、ちょっと珍しいタイプでしたね。

スグルスキル:僕らの世代とか少し上の先輩とかは、中2くらいでグレるとバンドやるっていう流れがありました(笑)。

─楽器の練習はどういうことをやっていましたか?

スグル:
コピーした曲をCDに合わせて弾くのと、クリック練習もやっていました。それと低いポジションから上にあがって、下がっていくという運指練習は今でもたまにやってます。あとはオクターブなどの弦跳びとか……これは今はやっていないけど。

さとし:僕は週末はドラムを習っていて、平日も数時間はテンポ=60で正しいフォームで何時間も叩き続ける練習をしていました。最初は4分音符を叩き続けろと言われていたので、彼女が家に遊びに来たときはイヤフォンでテレビを観ててもらって、ドラムの練習してました(笑)。

友達の家にアンプもドラムセットもあったから そこで練習するって感じでした(1)

─練習をしていたときは環境はどんなものでしたか?

スグル:
実家は山口の田舎だったから音を出せたし、小さいアンプにつないで弾いてましたね。さとしも部屋にドラムセットがあったし。

さとし:そう、夜10時まではドラムを叩いてもOKでした。親父がサッシ屋さんだったから部屋を二重窓にしてもらって、1日5時間くらいは叩いてました。

スグル:音はガンガン漏れてましたけどね(笑)。スタジオはなかったけど、自分の家だけじゃなくて、友達の家にもアンプ、ドラムセットがあったから、そこでも練習するって感じでしたね。

─若い頃にテクニカルなプレイヤーに憧れたりは?

スグル:
しましたね。Mr.BIGのビリー・シーンがやりたくて、今言った友達の山本達久と一緒にやってましたね。あとはチョッパーもやりたかったから、X JAPANのTAIJIさんがチョッパーやる「Xclamation」とか、あとはレッチリの「ストーン・コールド・ブッシュ」や、「エアロプレイン」なんかのコピーもやってました。

さとし:ドラムの先生が、小泉今日子クリスタルキングのサポートをしていたフュージョン畑の方だったので、その影響もあり、最初からテクニック志向でした。ドラムって英単語を覚えるみたいな叩く手順(ルーディメンツ)があるんですけど、それを延々と身体にたたき込んでましたね。そう言いながらも好きだったドラマーは、THE BLUE HEARTSの梶原徹也さんでした。

友達の家にアンプもドラムセットもあったから そこで練習するって感じでした(2)

フレーズはゆっくりでもアタマのなかはフル回転

─ふたりでバンドをやりはじめた経緯は?

スグル:
東京に来るまでは一緒に演奏したことはなかったんですよ。僕が先に上京して、その2年後にさとしが来たんですが、僕が専門学校に通っているときに組んだバンドのドラムが抜けるってことになって、“叩いてよ”ってお願いしたのが最初ですね。

さとし:でも、それからずっと一緒にやってますね。

─skillkillsで聴ける、複雑なビートはどうやって生まれたのですか?

スグル:
skillkillsは僕が全部打ち込んで作ったものをバンドで演奏しているんですが、いったん「メンバーが演奏できるかどうかは無視した曲」を作ったらどうなるかって思ってやってみたんです。全員が練習しないと演奏できない曲って面白いなと思ってたんですよね。あと、僕らのトレード・マークでもあるリズムのズレは、リズムマシンを打ちながらテープに録っていたら、思いっきり打ち間違えて普通にズレちゃったんです。それをあとから聴いたら、すげえグルーヴがあるって思って。みんなに聴かせたら“これいいじゃん”ってことになって。2ndアルバム『BLACK MUTANT』くらいからそういう方向性になりました。

─スグルさんが打ち込んで作ったリズムを、さとしさんが譜面に起こして、コピーしていくようですね。

スグル:
はい、でも、最近の作り方はホントにヤバいんですね。グリッドにも合わせず、好き勝手に打ち込んでいるから、6月末にリリースされる『FLASH BACK CONTINUE Vol.6』に入る新曲のビートは、ホントにめちゃくちゃですよ(笑)。

さとし:一聴するとそんな風に複雑には聴こえないんですが、この曲を演奏するときに、僕がガイドにしているクリックを聴いたらビックリすると思いますよ。“え、これ、どこに合わせてんの?”って。

─そういう複雑な音源をライブで演奏するために苦労したりは?

スグル:
ドラムの音符が細かいぶん、ベースはその合間を縫うような感じのがいいから、音符の長さや出音の太さとか、そういう部分を意識しています。でも、ベースはそんなに大変じゃないですね(笑)。あとは機材の進化やレコーディングに対する知識が増えてきたおかげで、できることとできないことも分かってきました。ベースはすっげえ低音を出すんですが、ただ低音を強調していくんじゃなくて、引き算で低音を出していくとか。

さとし:skillkillsのドラムってテクニック的に見るとテンポがすごく速いとか、複雑なフィルがあるという類ではなく、細かい音符を感じられるかどうかに難しさがあるから、基礎に立ち返った練習をするようになりました。

─それはつまり、タイム感とかリズムのとらえ方っていうニュアンスですか?

さとし:
とらえ方もあるんですけど、skillkillsのリズムって全部がキメになっているから、例えば6連リズムのなかの2つ目だけ鳴らすとか、32分音符で捉えたときの5つ目だけを叩くとか……ようは休符が多いんですよね。でも、そこをバッチリ決めないとリズムが成り立たないから、フレーズはゆっくりでもアタマのなかはフル回転というか。マシンに合わせてやっているから、適当に叩いても合わないんですよ。

スグル:そういうめちゃくちゃなリズムだから、やっぱりちゃんとループにしないと成り立たないと思っているんで。その正確さは、さとしに頑張ってもらって………ハハハ(笑)。

さとし:(笑)。最初の頃は演奏しているときはできていると思っても、録音したものをあとで聴くとあんまり成り立っていないと感じることも多くて。それで何がダメなんだろうって、考えることが多かったですね。全然グルーヴしないというか。今となっては考えずに上手くいくようになりましたけど。

スグル:僕は自分でビートを作っているから、自分のノリの感覚を信じてやってますね。まぁ、気持ちでやってますよ(笑)。

─精神論と気持ちの兄と、それを分析する弟っていう関係なんですね(笑)。

さとし:
ハハハ(笑)。スグルが作っているから、こいつがやれば全部正解なんですよ。

スグル:気持ちだけじゃなくて、音の長さはとても意識しています。音はひとつでも、その長さを組み合わせるだけでグルーヴは作れると思っているし。あとはキックとの関係性とかは気をつかっています。

技術が必要じゃなくなるまで慣れるのがテクニック

─今はバンドのリハってどれくらいやっていますか?

スグル:
基本は週に1回で、レコーディングとかがあるときはその前にガツってリハをやりますね。

さとし:普段からクリックに合わせて練習しているから、そのぶんレコーディングは早いですね。ドラム録って、ベースを録っていくって感じですが、録音なら1日で14曲くらい完成します。

─それならレコーディングも安くすみますね。

スグル:
日頃の練習の賜物ですね(笑)。最近はミックスも自分でやるし、あとから細かく編集するのはめんどくさいから、そうしなくていいくらいに良いテイクを録るために、録音の前からイメージトレーニングはしますね。

さとし:僕は完璧に叩けるようにしておいて、あとはどのスネアを使うかとか、皮を張り替えたり。音色選びに時間をかけます。

─個人単位で普段からどれくらい楽器量をこなしていますか?

スグル:
こういうインタビューだから、ここだけは嘘をつきたいんですけど……。

─これまで正直に話しておいて、ここだけ嘘って……(笑)。

スグル:
いやいや(笑)。まあ、本当のことを言うと、skillkillsのベースに関しては普段はほぼ弾かないです。ビートは作るけど、ベースは必要に応じてというか。最近だと国府達矢さんのツアーやっているので、そのための練習はしています。

─では、ビートを作ったときもベースはあとから入れるって感じなんですね。

スグル:
そう、ビートを作るのとベースを弾くのでは使っている脳みそが違いますね。ベースも打ち込んで、あとからスタジオで生楽器に差し替えるっていう。その意味では他のメンバーと同じ気持ちでやってます。“難しいやん、これ”って言いながらやっています。

さとし:僕はリハーサル・スタジオで働いていて、自分が座っている場所にドラムの練習パッドをセットしておいて、ずっと叩いたりしています。それがちゃんとした練習になっているのか、何時間それをやっているかは分からないけど、何かを叩いていないと落ち着かないんで、ずっとやっています。で、仕事が終わったらそのままスタジオ入って1~2時間はドラムセットを叩き、腹が減ったら帰るっていう。

スグル:さとしはいっとき、車に乗っているときのBGMがずっとクリックでしたね(笑)。

─それはヤバいですね。運転中にハンドルを叩いたりして?

さとし:
いや、ただ聴いています。単純なクリックを聴きながら、それがどんな場所でも聴こえるようにしたり、アタマのなかでポリリズムに変換したり。はじめは正確なタイム感を身につけたくてやっていたけど、聴いているうちにクリックが好きになって、BGMみたいに聴こえてきたんです。だからスタジオで働いているときもBGMにボブ・マーリーをかけたりしているけど、自分のデスクのところでは小さめの音量でクリックを鳴らしていて、BGMのボブ・マーリーに引っ張られないようにクリックだけをちゃんと聴けるようにしたり(笑)。自分のなかでは知恵の輪をずっとといているみたいな感じなんですよね。

スグル:狂っとるな(笑)。

技術が必要じゃなくなるまで慣れるのがテクニック(1)

─skillkillsにとってのテクニックとは?

スグル:
手数じゃなくてグルーヴしているかどうかってところですね。ノレるかどうかとか、自分が正解だと思ったことを納得できるように表現できるかどうか、それが自分にとってのテクニックかな。

─確かに。skillkillsって分かりやすいテクニカルさではないけど、特殊な演奏力がないと表現できない音楽ですよね。

さとし:
なんだろう……テクニックが必要じゃなくなるまで慣れるのがテクニックなんですかね。どんな複雑なビートでも8ビートのように叩けるようになるためにテクニックが要るというか。

スグル:クリックがクリックに聴こえなくなるまで、やれと。

さとし:いやいや(笑)。でも、普段からずっとクリックを聴いているから、逆にフリーテンポで叩く練習もしています。最近、クリックにとらわれずぎるという危機感が出てきて、以前にフリージャズ系のドラマーの方に教えてもらった、自分が叩く音に反応して叩いてみるっていうトレーニングもしています。スネアを叩いたら、その音を聴いてシンバルを叩いて……っていう。

─さとしさんは基本的に練習の鬼なのですね(笑)。最後に楽器を演奏する人に向けて、メッセージをお願いします。

スグル:
やっぱり個人練習よりも、ライブ1本やるほうがためになると思いますね。

技術が必要じゃなくなるまで慣れるのがテクニック(2)

さとし:それを言ったら……。

スグル:いや、自分でもこないだ国府さんのライブをやったときにそう思ったんよ。一回、人前でライブやるとプレッシャーからも開放されて、身体のなかに演奏が入ってくるんですよね。だから曲を作って練習したら、人前で演奏するっていうのが一番いいと思います。

さとし:僕はいろんな叩き方をしてみるっていうのがいいと思いますね。スネアでも真ん中を叩いたらこういう音がするけど、リムよりを叩くと違う音がすることを知っておくというか。自分がこの音が欲しいって思ったとき、それがすぐに出せる準備をしておくのが大事だと思います。結局、テクニックって言っても表現することは音楽だから、練習もパッドじゃなくて、ドラムセットを叩くほうがいいですね。


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