百歌繚乱・五里夢中 第9回「ナイス♪ ロック・トリオ 10選」

百歌繚乱・五里夢中 第9回「ナイス♪ ロック・トリオ 10選」

ロック・バンドとメンバー数

いきなりだけど、ロック・バンドは何人で組むのがいちばんいいのでしょう?
まず前提として、あまり多くないほうがいいと思います。少ないに越したことはない。なぜならそれぞれの感性を突き合わせてモノを作るのですから、人が多いとまとまりっこありません。その点では”1人”がベストなのですが、これがフォークならアコギを持ってハーモニカをホルダーに挟めばそれで成立できるけれど、ロックではやはり最低限、ドラム、ベース、ギター(あるいは鍵盤などコード演奏楽器)とヴォーカルの4要素が必要なので、都合”4人”が妥当ということになります。「ひとりだけどオレはロックしてるぜっ!」というそこの熱い人、精神論だけではやっていけないぜっ!
またメンバーのうちの1人が完全に主導権を持ち、すべてを決めるという形なら、人数が多くてもかまわないでしょうが、それはロック・バンドと言うよりはソロ・アーティストとバック・バンドなんだなー。
さて、4人は妥当ではあるけど、”最少催行人数“ではないですよね。もちろん同時にドラムとベース、あるいはベースとギターを兼ねるなんてことは不可能ですが、ヴォーカルと楽器であれば兼任が可能です。楽器奏者の誰かが唄えるならば、3人でもロック・バンドは成立するのです。
以上を踏まえると、”あたま数は少ない方がいい”と、”3種以上の楽器+ヴォーカル”という反比例する方程式の交点=理想のロック・バンド・メンバー数は”3”という答えが出てまいります。
そう、科学的に考えると(?)、理想のロック・バンドは3人組だということになるのです。
また、情緒的に考えても、私は”ロック・トリオ”という形が好きなんですよ。そりゃ4人バンドである”Led Zeppelin”ももちろん好きなのですが、もしもツェッペリンが3人バンドだったら、多分もっと好きなのです。
4より3のほうがなんというか鋭角的だし、スッキリしていて。凸凹の地面では4本足だとグラつくけど3点支持なら安定するじゃないですか(関係ないか)。特にライブでの、たった3人なのに会場全体を音の坩堝に巻き込んでいくときの、フルスペックな躍動感、張り詰めたテンションがたまらなくカッコいいのです。

ナイスなロック・トリオ

ということで、ナイスだと思うロック・トリオを思い起こし、書き出してみると、なんとあっという間に15個以上も出てきちまった。「えいやっ」と無理やり10に絞りました。それぞれのフェイバリット・ソングを挙げながら、順不同でご紹介していきます。
  • #1:Cream「Crossroads」(シングル:1969年1月発売/from 3rd アルバム『Wheels of Fire(クリームの素晴らしき世界)』:1968年8月発売)
  • 人が少ないほうがまとまりやすいことをトリオの強みとして挙げておきながら、この”クリーム”は結成からわずか2年半後の1968年11月には解散してしまうのですが、結成前から、ジンジャー・ベイカー(dr)とジャック・ブルース(b)は不仲だったそうなのでしかたありません。ベイカーから誘われたエリック・クラプトン(g)が、それと知らずにブルース加入を条件としたんですって。
    しかしたった2年半で、クリームはポップ・ミュージック史に巨大な足跡を残しました。彼らはおそらく世界初のロック・トリオです。それ以前のバンドにはたいてい2人以上のギタリストがいました。そうじゃないとサウンドが成り立たなかったんでしょうね。アンプやPAの発達という状況もありますが、彼らは高い演奏力と巧みなアンサンブルによって、3人だけで十二分な音空間を作り出し、それはロックンロールやブルースをハード・ロックへ進化させたのです。
    ライブ録音であるこの「Crossroads」は、聴く度に会場の興奮が復元されます。すごい演奏です。シングル曲がライブ・バージョンしかないというのも珍しいですね。


    #2:Grand Funk Railroad「Heartbreaker」(from アルバム『Live Album』:1970年11月16日発売)
  • マーク・ファーナー (Mark Farner, vo & g)、ドン・ブリューワー (Don Brewer, ds)、メル・サッチャー (Mel Schacher, b)の3人から成る、クリームに比べると上手いとは言えませんが、激しく熱いパフォーマンスが評判だったバンドです。72年以降は4人編成となりますが、この曲は彼らのトリオ時代の代表曲。井上陽水がそれを使って「傘がない」を作ったことで有名な循環コード進行(Bm→A→G→F#)が泣かせる、とてもドラマチックな曲です。
    デビュー・アルバム『On Time』(1969)に収録されシングル・カットもされていますが、パフォーマンスはこちらのライブのほうが2倍くらいよいと思います。
    なんせスタジオ録音バージョンは、8分の6拍子から8ビートに移る手前の、他がブレイクしてギターがソロになるところ、だいじな見せ場の3連の駆け上がりフレーズを1カ所ミスっちゃってるんです(ToT)。スタジオ盤なのに直しもせずにそのまま出してしまうなんて、いい加減というか微笑ましいというか……。ここまで言うと逆に聴きたくなる?(聴きたい方はこちらをクリック


    #3:The Jimi Hendrix Experience「Little Wing」(from アルバム『Hendrix in the West』:1972年1月発売)
  • このバンドは、名前からしても、ジミ・ヘンドリックスのために作ったものなので、”理想的”なロック・トリオとは言えないし、私個人的にもミッチ・ミッチェル (Mitch Mitchell)のドラムは、フィルインが、それもたいして面白くないヤツが、多過ぎてうるさいので好きではないのですが、でもライブでの、爆走するジミヘンのギターにどこまでもついていきますーって姿勢から生まれる一体感は、バンド魂を充分に感じさせてくれるものなので、よしとしましょう。
    さて名曲「Little Wing」、これもまたライブ盤です。スタジオ盤もあるのですが、これはねー、えらく目立つチャイムのような音が各小節の頭に”チーン”と鳴るのがとても気になる、というか嫌いなのです。なんのためにこんなものを入れたのかさっぱり解りません。それ以外の演奏は何の問題もないのに、このチャイムがぶち壊しなんです。
    だからライブ・バージョンをお奨めするのですが、実は元の盤に入っていた「Little Wing」が権利の問題で使えなくなり、今出回っている盤や配信では、違うテイクが使われています。これがちょっとテンポが遅過ぎるのが惜しい。ほんとは元のテイクを聴いてほしいです。私はそれが欲しくて、昔のLPを探して買いました。


    #4:Emerson, Lake & Palmer「Tarkus」(from 2nd アルバム『Tarcus(タルカス)』:1971年6月14日発売)
  • 今度はキーボードとドラム、ベースの編成です。順にキース・エマーソン (Keith Emerson)、カール・パーマー (Carl Palmer)、グレッグ・レイク (Greg Lake)。ギターのようには派手なパフォーマンスがしづらいであろうキーボードなのに、鍵盤にナイフを立てるなどの”際ものプレイ”ぶりが”売り”だったエマーソンですが、当時彼が使用していたMoogシンセサイザーはモジュラー・タイプで、音色を変えるのにケーブルを繋ぎを替える必要があって、ライブの映像を観ると、狂ったように弾きながら、ケーブルの抜き差しを、しっかり冷めた眼でやっているのがちょっと笑えます。
    いわゆる”構築美”を競い、必然的に音数も多かったプログレッシブ・ロックに、たった3人で挑んだのは、鑿(ノミ)と鉋(カンナ)と金槌だけで五重の塔を建てるようなものでしょうか。もちろん見事な塔が建ちました。
    アルバム・タイトル曲の「Tarcus」はLPのA面すべてを占める約20分の組曲です。ジャケットのアルマジロ戦車のイラストと相俟って、ひと時の幻想トリップへ連れていってくれます。


    #5:Beck, Bogert & Appice「Superstition(迷信)」(from 1st アルバム『Beck, Bogert & Appice』:1973年3月26日発売)
  • このコラムでも何度か言及しておりますが、ジェフ・ベックが”Vanilla Fudge”にいたティム・ボガート(Tim Bogert, b)とカーマイン・アピス(Carmine Appice, dr)の強力リズム隊にラヴコールを送り、新バンドを結成しようとした矢先、ベックが交通事故にあって頓挫。ボガート&アピスは”Cactus”を作ってこれは私が大好きなバンド、3年後の1972年に改めて仕切り直し、晴れて3人でバンド結成となるわけです。ところがそんなに相思相愛だったはずなのにたった2年であえなく解散。どういうこっちゃ?と思いますが、ベックさん、バンドは2年しか続かない人で、しかもバンド名を考えることもしない。”第1期ジェフ・ベック・グループ”、”第2期ジェフ・ベック・グループ”、そしてこの、名字を並べただけの”Beck, Bogert & Appice”。ひどいもんです。
    それはともかく、実は3人だけでやるつもりはなかったみたいで、事故前はロッド・スチュワートを誘うが断られ、仕切り直しの時も、第2期JBGのボブ・テンチを呼んだり、ポール・ロジャースに声掛けたりしたのですがうまくいかず、仕方なくまあまあ唄えるアピスを中心にヴォーカルも含めて3人だけでやることになったのです。この「Superstition」はボガートがリード・ヴォーカルですけどね。
    さてこの曲、単にスティーヴィー・ワンダーのヒット曲をカヴァーした、みたいになってますけど、ほんとはスティーヴィーがベックのために書いたそうです。でも(いい曲なんで?)スティーヴィーのマネージャーが反対して、先に本人がリリースすることになったと。申し訳なかった、とそのお詫びに改めてプレゼントしたのが、ベックの『Blow by Blow』(1975)に収録されている「Cause We’ve Ended As Lovers(悲しみの恋人達)」でした。


    #6:ZZ TOP「Gimme All Your Lovin'」(シングル:1983年4月発売/from 8th アルバム『Eliminator』:1983年3月23日発売)
  • 同じようにハットを被りサングラスをして長ーいアゴ髭を生やしたギターとベースは、絶対兄弟か従兄弟同士だと思っていましたが、まったくの他人なんですね。ギターはビリー・ギボンズ(Billy Gibbons)、ベースはダスティ・ヒル(Dusty Hill)、そしてドラムのフランク・ベアード(Frank Beard)を入れて3人。結成は思いの外古く1969年、77年にしばらく活動停止し、その間に髭が伸びたのだとか。ただし申し合わせてではなく偶然2人とも伸ばしていて、再会した時お互いにビックリしたそうです(^^)。
    80年代以降、そのルックスとシーケンサーを取り入れたキャッチーなサウンドで大ブレイクする彼らの、典型的なサウンドがこの「Gimme All Your Lovin'」の感じ。コミカルなミュージック・ビデオでも見せている、左右の足で交互にステップを踏みながらビートに合わせてギター&ベースのネックを約90度の角度で左右に振るコレオグラフィーは、当時ちょいブームで、同じようにやってるミュージシャンが多かったです。


    #7:くじら「たまご(live 1987)」(from アルバム『ライブ』:2016年3月1日発売)
  • ロック・トリオ好きな私なので、ソニー・ミュージックの音楽ディレクターだった間に、3人バンドを2つ担当しました。”くじら”と”Convex Level”。
    後者のConvex Levelは大阪のバンドで、『3 Young Men Original Soundtrack』(1993)、『Universe Is a Frog As Itself』(1996)とインディーズからアルバムを2枚出し、洗練された音楽センスと抜群の演奏力で、「凄いバンドがいる」という噂になっていました。私はソニーから2枚のEPを出しただけです。その後しばらく活動を停止していましたが、2008年以降はまたコンスタントに音源を制作し、ライブもやっているようです。”XTC”と”Television”と”The Police”を足して3で割って、かき混ぜて、一晩寝かせてからオーブンで焼き上げたような(!?)音楽です。
    で、くじら。こちらは生ギター&リード・ヴォーカルの杉林くんに、ドラムの楠くん、ベースのキオトくんがコーラスをあふれんばかりに重ねるという、唄中心のトリオでした。轟音で空間を埋め尽くす、といったタイプとは正反対の、特に初期はあえてマイクを使わない地声に楽器のレベルを合わせ、「静かに耳を澄ます」ことを求めるという、前代未聞のユニークな存在でした。1985年にデビュー。89年には4人編成になり、一時は9人という大所帯になったりしながら、今は杉林くん一人でもやるし、誰かと2人でも、もちろんバンドでもやるという変幻自在型になっております。
    この音源「たまご」は1987年のライブですが、当時のエンジニアが記録用にカセットで録っていた音を2016年にCD化したものなので、音質はよくないですが、演奏のよさは想像できると思います。サックスはゲスト参加の清水靖晃さんです。


    #8:Ben Folds Five「Philosophy」(from 1st アルバム『Ben Folds Five』:1995年8月8日発売)
  • 「ピアノ・ロック」の回でも取り上げた“Ben Folds Five”ですが、彼らの音を聴いて、「ああ、ピアノでもこんなにロックできるんだ」と目を開かされた人も多かったはず。エルトン・ジョン御大も「Crocodile Rock」でがんばってピアノでロックをやってましたが、BFFに比べたらソフトなもんです。
    そしてやはり、アルペジオなどになるとギターなんかよりずっと華やかなピアノの響きが開花します。この「Philosophy」はそんな華麗なピアノで始まったかと思うと、いきなり轟音に豹変したり、多彩なリズム変化で疾走したり、止まったり、跳ねたりのダイナミックな展開。まるでディズニーランドのよくできたアトラクションを体験しているかのように楽しくて飽きません。ソロに逃げる(?)わけでもなく、3人だけで4分半、これだけの世界を構築できるのは見事だと思います。


    #9:Yellow Magic Orchestra「Behind the Mask」(from 2nd アルバム『SOLID STATE SURVIVOR』:1979年9月25日発売)
  • ライブでは少なくともプログラマーの松武秀樹さんが不可欠だったので、”正しいロック・トリオ"からはちょっとはずれるのですが、音楽だけでなく”文化”の領域全般に大きな影響力を与えたビッグネーム、日本の3人バンドと言えば真っ先に名前が挙がるのがこの”YMO”でしょうから、取り上げないわけにはいきません。
    だけど当初は横尾忠則さんを加える構想があったとか?記者会見用のタキシードも用意してあったが、締切間際の仕事があったので現れず、そのままになったという。細野さんのジョークでしょうね。
    とにかく、世界に誇れる画期的な音楽性で、名前も黄色人種を掛けた「黄色魔術」、テクノカットと人民服のアジアンテイスト・ファッション。アルファ・レコードの村井邦彦さんの熱い思いも大きかったですが、ワールド・ツアーを2度もおこなって。日本のポップ・ミュージック史上、これほど大きなスケールで活動を展開したアーティストはYMO以外にはありません。
    そしてこの「Behind the Mask」は、音楽輸入大国=日本においては珍しい、海外からカヴァーされた曲。それもマイケル・ジャクソンとエリック・クラプトン!なのに、マイケルの時は、「歌詞も変えアレンジもし直すので、ライセンス料は通常の50%にして」と言われ、誇り高き坂本教授は拒否したそうです。アルバムはなんとあの『Thriller』。勢いで言ってみたものの、さすがに後で後悔したとか。クラプトンのはアルバム『August』(1986)に収録されています。マイケルのも死後にリリースされた未発表曲集『MICHAEL』(2010)に収録されました。


    #10:The Police「Roxanne」(1st シングル:1978年4月7日/from 1st アルバム『Outlandos d'Amour』:1978年11月20日発売)
    • Roxanne/The Police

      シングル

      257

      Roxanne
      The Police
  • 3人バンドは当然全員が楽器を奏し、誰かが唄っているわけですが、こうして並べてみるとそのヴォーカル力は、やはり世のトップクラスのシンガーのレベルには届きません。しかし、ポリスのスティングだけは別格。この人の声、歌唱はそれだけで充分に魅力的です。プラス、いい曲作るし、ベースもうまい。さらにアンディ・サマーズとスチュワート・コープランドという実力も個性も飛び抜けた人たちが脇を固めているのですから、まさに史上最強のロック・トリオと言ってしかるべきでしょう。
    3人の力が最もストレートに表れているのが、1st アルバムの『Outlandos d'Amour』ではないでしょうか。お金がないからコープランドの兄貴に£1,500(約60万円)を借り、スタジオの近くに待機して、空きが出たらすぐさま駆けつけて録音するというような貧乏レコーディング。飾りっ気のない原石サウンドです。「Roxanne」も音はスカスカ。それを不足と思わせないのはスティングの強力なヴォーカルと、3人の気迫に満ちた演奏ですね。ロック・トリオの魅力がここに凝縮されています。


    以上、ロック・トリオ10選、いかがだったでしょうか。ご参考までにここから漏れた5バンドを告白しておきますと、”Crowded House”、”PINK CLOUD”、”andymori”、”Kitty, Daisy & Lewis”、”SHISHAMO”です。
    やはり70年代あたりは、腕自慢が集まり、ソロを弾き倒すというタイプが多かったですが、今は、”SHISHAMO”なんかも、ギター・ソロなんてやらないですね。サウンドの変化も転調があるくらい。つまり完全に唄中心になっています。たまには、ギターとベースがソロ合戦を繰り広げるような若いロック・トリオがいてもいいとは思いますけどね。

    いやぁ、それにしても、音楽ってちっとも飽きないですねー♪


    Text:福岡 智彦

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