【ドラム対談 第2弾】DATS/yahyel・大井一彌とTempalay・藤本夏樹の対極的な演奏スタイルから探る、自分の個性を確立する方法

【ドラム対談 第2弾】大井一彌と藤本夏樹の対極的な演奏スタイルから探る、自分の個性を確立する方法(1)
DATS/yahyelの大井一彌とTempalayの藤本夏樹によるドラム対談が、好評につき早くも第二弾を迎えた。前回は、ドラムを始めたきっかけや練習方法、彼らがもっとも影響を受けたドラマーであるリンゴ・スターの話や互いの印象、人力ドラマーのテクノロジーに対する向き合い方などから、ドラムの魅力に迫る内容だった。そして今回は、二人の個性の違いをさらに掘り下げることで、また新たに興味深い話が繰り広げられた有意義な時間に。ポイントは、二人のある意味対極とも言える演奏スタイルにあった。

【ドラム対談 第2弾】大井一彌と藤本夏樹の対極的な演奏スタイルから探る、自分の個性を確立する方法(2)

DATSとTempalayの違いから掘り下げる“”カッコ良さ““

―まずは、お二人それぞれのドラムの特徴について、前回よりさらに具体的な部分に迫っていきたいと思います。Tempalayは、その変則的で不思議な曲の展開において、どういうプレイを心掛けているのですか?

藤本夏樹:
曲に展開が多い分、それをドラムで説明するというか、グルーヴのブロックによって、奇妙でカッコ良い雰囲気をより引き立たせるようなイメージです。基本的に、フィルはそんなに入れないんですけど、セクションが移るときはちょっと「ん?」って違和感がありつつも、そこがイケてる、みたいな。

―そもそもなぜ、1曲のなかであれほどのめくるめく展開になるんですか?

藤本:
綾斗(小原綾斗/Gt&Vo)の作曲方法が、”AはA””BはB”って、それぞれ別々に作ってきたグルーヴの違うものを繋ぎ合わせるパターンが多いんです。だからデモの段階ではもっとカオスな状態で、それらをベースとドラムでどうやって繋げるかを試行錯誤してます。

―接着剤をスマートに使うときもあれば、ぐちゃぐちゃに無理矢理くっつけちゃうときもある。

藤本:
まさにそういう感じですね。どこからサビかとか、曖昧なときもあるし、そういうところはぐちゃぐちゃじゃないですけど、ベースはイーブンなのにドラムは跳ねてるとか、同じグルーヴに向かう必要がないんです。とくに今回のアルバム『from JAPAN 2』は、僕自身、以前より曲への理解度が深まったこともあって、そういう部分が増えました。

大井一彌:パートの移り変わりを接着剤でぐちゃぐちゃにするっていうのは、Tempalayらしさを表してるなって、思います。というのも、それは小節数に関わってくるとことで、僕がいるDATSやyahyelの曲は、”4拍×8小節”というタームを維持して進むところに気持ち良さがあるんですけど、Tempalayの場合は一つ少なかったりはみ出てたりすることが多いよね。

藤本:うん、そうだね。

大井:そこで、どんなフィルを入れるかとか、どうやって急に途切れた感じを出せるかとか、普通だと考え付かないような、独特のセンスで曲をコントロールしてる。だから、Tempalayのドラムは他の人でも機械でもなく、夏樹じゃなきゃいけない。

―そこが大井さんの場合はどういう意識になるんですか?

大井:
DATSで言うと、4つ打ちベースのダンス・ミュージックというフォーマットが基本にあるんで、そこでわかりやすく気持ち良いグルーヴを維持するには、8小節という正確な枠組みが大切になってきます。完全にスクエアな形をしているパートの移り変わりをビルドアップしていくようなイメージです。そこに、Tempalayのように小節数でアプローチしちゃうと、おかしなことになる。だから接着剤はいらないし、言ってしまえば、練習すれば誰でもできる。

藤本:個性がわかりやすく感じ取れるのは僕かもしれないけど、ミニマルで少しずつハットの開き具合とかが変化していったり、そこがDATSのカッコ良さだよね。

―そのDATSの“カッコ良さ”について、もう少し詳しく訊きたいです。

大井:
僕の場合、自分のスタイルを確立するうえでの興味の方向は、ガジェット的なもの、エレクトロニックなトリガーだったり、パッドだったり、同期演奏だったり、そっちに向いています。

―例えば、そういったガジェットを使って、どんなことをするんですか?

大井:
均一なビートを出すために1回だけ叩いて、あとはディレイのフィードバックで補ったり、同期のシーケンスにもビートを入れておいて、その隙間に自分が入ってグルーヴを調整したり、機械と仲良くするんです。

藤本:シーケンスにリズムがあって、そこに入っていくのはおもしろそうだね。

大井:ハイハットがシーケンスで8分の裏にだけ流れていて、8分の頭と16分音符はそれと同じ音を人力で叩くんです。機械の隙間を自分でコントロールするんで、ちょっと揺れ感が出るんですよね。Jojo Mayerっていうドラムンベースを人力で叩く人のプレイを参考にしたんですけど。

藤本:DATSの曲は均等だからこそ、そういうことで遊べるよね。まだまだ一彌ならではのやり方が生まれそう。

大井:4つ打ちのダンス・ミュージックはビートが徐々に変化していくことで飽きがこなくなる。夏樹のような、サイケの摩訶不思議感じゃなくて、均一な拍をダダ流ししているようで微量な変化があって、そこを潜在的に感じ取って踊るみたいな。感動へのプロセスが違うんだと思います。

―では、お二人以外で、それぞれが今注目しているドラマーとなると誰ですか?

藤本:
そうですね・・・、パッと出てこないです・・・。

大井:最近おもしろいのは、誰だっけな。というのも、めちゃくちゃいるんです、Instagramに。簡単なフレーズが1分以内でおさまっていて、スローで再生したものや譜面が出てることもありますし、そこからリファレンスを得ている人は多いと思います。名前も知らない、Instagram以外では何やってるかもわからない海外のドラマーがアップした動画を見まくってトレースする。でもそれは、未体験の技や知識が簡単なディスクにまとまってるものをインストールして、あとは自分の空き容量と処理速度次第みたいな感覚で、ちょっと無機質ですよね。以前は、レコ屋で掘った作品を聴いて、さらにライナーノーツに載ってる別のアーティストの作品を探すみたいな、シーンの繋がりとか文脈を意識しながら、自分なりに解釈してドラムに活かしていたように思います。

―そこはどうなんですかね?情緒的には変わるんでしょうか?

藤本:
僕はそもそも何もしてない(笑)。

大井:夏樹は周りに漂ってる情報をシャットアウトできる。「興味がないからいいや」って。それでいい。自分の個性を守れるから。

藤本:一彌のやり方は、聞こえとしては情緒がないかもしれないけど、今っぽくっていいんじゃない?

―ビートそのものに感じる時代の流れはどうですか?

藤本:
日本でもヒップホップのビートが流行ってますよね。ちょっとスネアが前にある感じ。そういうのは似非でやってみたりします。Tempalayは決まった型がないし、僕自身も何でも気軽に取り込める性格なんです。で、特にまとまりがないっていうのが、個性になったみたいな。

大井:ヒップホップの可能性って無限大だと、最近特に思います。マイメンになって、どんどんフィーチャリングして広がっていくのもそうですよね。だから、まだまだトレンドの上位にいるんじゃないかと思います。

藤本:バンドだとそれを自然にやるのは難しい。でも、そうやって型にはめずに、ヒップホップのおもしろい部分を、取り入れられるところは取り入れていきたいし、習うべきところもたくさんある。でも、時代に迎合するつもりはない。

―ヒップホップやポップの、作家とパフォーマーという分業制における自由度の高さは大きな武器ですよね。そういった音楽を吸収することで、演奏パートが決まった”バンドでいなきゃいけない”ということが窮屈にはなりませんか?

藤本:
そこは考えなくもないですけど、あまり考えてないというか。なんだろう、ギターってカッコ良いんですよ。

大井:そう、ギターってカッコ良い。

―ドラム対談の締めが“ギターってカッコ良い”。

藤本:
ジャーンってね。みんなで一緒に演奏することが一番だって、僕は思ってるからバンドやってるんです。優れた作曲家が制限なく自由に音を抜き差しすることに、クリエイティブでは勝てないという見方もわかります。でも、バンドをやることやライブの良さは、僕なんかが口で説明しなくても、わかってる人はわかってると思うんで、心配はしてないです。

大井:そうだね。カッコ良いって直感的に感じたことが前提にあって、いろいろ分析して話が広がってく。で、まだまだ広がるんで、第三弾もありますよね?さらにゲストも呼びたいなとか、想像してたんですけど(笑)。

―では、第三弾もあることを願って、ありがとうございました。

DATSとTempalayの違いから掘り下げる“”カッコ良さ““(1)

ダンス・ミュージックにあるミニマルな曲展開に、ロックのダイナミズムやポップの華やかさを盛り込みながら、ほぼ全編打ち込みで制作されたDATSの音源に対し、論理的な思考と独自の感覚を以て、テクノロジーとプリミティブな生音の魅力を擦り合わせ、ライブの現場で示す大井。サイケデリック・ロックやフォーク、ソウルやディスコなど、年代も出自もさまざまな音楽的背景を奔放にブレンドすることで、変則的な流れを持ったTempalayの曲にあるポテンシャルをより引き出すために、教科書のないところから自由にフレーズを探る藤本。ドラムを叩く最初のアプローチから異なるスタイルでありながら、互いをリスペクトし、惹かれ合う二人の対話だからこそ見えたバンドの魅力への興味は尽きない。そして、まだまだ話したりないという二人。今後の活動にも期待!

DATSとTempalayの違いから掘り下げる“”カッコ良さ““(2)


Text:TAISHI IWAMI
Photo:Kohichi Ogasahara

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