妄想系アルバム鑑賞法「利きジャケ」のすゝめ 第6回

妄想系アルバム鑑賞法「利きジャケ」のすゝめ 第6回
「利きジャケ」へようこそ。
古今東西の名盤を紹介する当コーナーは、いわゆるアルバムレビューではない。
ならば何をするのか? ……「利く」のだ。「聴く」ではなく、「利く」のだ。一枚のジャケットをじっと凝視し、アルバムの“顏”から名盤を味わい尽くす。流浪の妄想コーナー、それが「利きジャケ」だ。

「キングとボスを、我、見間違いながら利く」

mysound読者の皆さん。こんにちは。ヴィンセント秋山です。あらためて最初に言っておきましょう。このコーナー、相当くだらないですよ。あのー、念のために繰り返しますが役に立つ情報は、ひとつもないと思ってください。ひとつもありませんよ? いいですか? いいんですか? あっ……でも、ひとつだけあるとすれば。それはいまや、風前のともし火の「アルバムジャケット」というカルチャーに光を当てるという目的だけなのであります。
さて! 私はもう、かれこれ10年以上、様々な媒体を通じひとつの“遊び”に取り憑かれている。一枚のジャケットを凝視し、ジャケットのアートワークだけから妄想を広げそのアルバムを味わい尽くす遊び。音楽的要素はあえて封印。それが「利き酒」ならぬ「利きジャケ」だ。

ということで今回はロックンロールの王道を利く。
この人無しにはロックンロールは産まれなかったかもしれない創始者、「キング」エルヴィス・プレスリーと、アメリカを代表するロックンローラー、「ボス」ブルース・スプリングスティーンを利く。
なお、当コーナーではアルバム名を「銘柄」、アーティスト名を「蔵元」と表記する。ではいざ利く前に、利きジャケ唯一のルールもお伝えしておこう。音楽的要素は一切ない利きジャケであるが、音楽を愛するものとしての唯一のルールがある。それは…………

「利いたからには、聴かねばならない」

「キエェェェェェェ!」

「キエェェェェェェ!」(1)
銘柄:On Stage
蔵元:エルヴィス・プレスリー


キングだ。キング・オブ・ロックンロールだ。
ロックンロールを創始した偉大な男。その後の多くのアーティストに影響を与え、
「信者」ともいうべきファンも多いグレートな存在。

さて、すこし話変わってそもそもこの「利きジャケ」なんですけども、何度も繰り返しますが「音楽的要素」は一切なしで挑むのがルール。様々なアーティストを「ご無礼承知」で利いていく行為なんですが、相手が「偉大」であればあるほど問題なんですよ。だって、ほらリスペクトの度合いが半端ないから。各所から怒られる可能性も大きくなってしまうということなんですよ。
だからね。いくら「ジャケの絵」情報だけで妄想していくとは言え、そこはそれ、なるべく利き間違いのないように丁寧にやっていかなければならないのですよ。
ということで!
王道を、丁寧に間違えないように利いていきましょう!

「キエェェェェェェ!」(2)

極限まで魂をこめた表情で右手のひらを振り上げ、今にも降り下ろさんとするエルヴィス・プレスリーの姿。これはいったい何をしているのか。
答えは、ひとつ。それは……

空手チョップである。

当然である。それ以外考えられないのである。
ゴッドハンドの異名を持つエルヴィスが、自分に向かって突進する猛牛の眉間に一撃必殺の空手チョップをお見舞いするシーンだ。
伝説の「牛殺し」の偉業が今まさに達成せんとするその瞬間を………………ん?
いや。
あれ?

違うな。

「キエェェェェェェ!」(3)
……マイクが邪魔だ。

いやはや我ながら言うに事欠いて邪魔も何もないのだが、ともかく完全に見間違っていた。見誤っていた。見過ごしていた。これは歌っているシーンだ! まずいぞ。いきなり間違えた。

エルヴィスは歌っている!

いや、わかっていますよ。エルヴィスが歌手なことぐらい。歌っていて当たり前。でもね、私は言いたいんですよ。これは「利きジャケ」。
とてつもなく「くだらない」コーナー。だから、これを歌っているという「そのまま」の見立てじゃダメなんです。じゃあどうするの?

「キエェェェェェェ!」(4)
うーーーーむ。
これ、

マイクないってことにしない?

いや、言い訳になってることは重々承知。
でもさ。
そもそもこの写真自体、マイク、ぜんぜん目立たなくない?
マイク小さいし……。
モノクロの画像ということもあるでしょうけどマイク自体もさ、
洋服や装飾品にとけ込んで見えなくなってしまわない?
ちょっと、良く見てくださいよ………いや、良く見ちゃダメ。さらっと見てくださいよ。できたら目を細めて。ほら、マイクなんてないじゃん!

「キエェェェェェェ!」(4)
本来マイクとは、「歌っている」ということを表す強力なアイコンである。
仮にそのマイクが、この位置に無いとするならば……。歌っていないことになるならば……。それは、やはり空手チョップ以外考えられないのである。

だめ? 納得いかない?

あっ、だったら。いちど試しに、これをエルヴィスだと思わず
「ON STAGE」の文字を消してみていただきたい。
もしこの写真だけを見れば、わりと多くの人々が、「あ、空手チョップしてる」と見間違えるのではないだろうか。エルヴィスを知らない、ちいさなお子様のいる方はぜひ聞いてみてほしい。「このおじさん、ナーーーニやってるか??」って。
十中八九
「空手チョップーーーーーー!」っていうに違いない。

「キエェェェェェェ!」(5)
……それでもだめ? どうしてもマイクが目に入ってしまう?
じゃあ、そういう人は、最後の手段。
自分の人さし指でマイクを隠して。

「キエェェェェェェ!」(6)
さあ、指を立てて。その指をマイクの上にちょいとのせて。

「キエェェェェェェ!」(7)
ほら、そこまですればもう、空手チョップ以外の何ものでもない絵になるでしょ?
「キエエエエーーーー!」根性の入った雄叫びまで聞こえてきそうな雄姿。さらに問題の「ON STAGE」の文字のかわりに、梶原一騎原作・つのだじろう画によるあの名作のタイトルを置いてみれば。 すなわち、これ……

「キエェェェェェェ!」(8)
「空手バカ一代」

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あぁ、寸止めを主体とする日本の伝統的空手界から「邪道」と罵られたガチンコ空手の創始者・大山倍達の半生をラスベガスできらびやかにミュージカル化!
主演は、キング・オブ・ロックンロール、ロックンロールの創始者エルヴィス・プレスリーに決定!
もちろんショービジネスの街ラスベガスでの公演には、いくらキングが主演と言えども多少の演出が必要。
好奇の目で見る観客の度肝を抜くために、とりあずオープニングで瓦割りを実演。牛をも一撃で倒す拳の威力を見せつける。さすがに、衣装は道着だとちょっと地味なんで、おそらくフリンジ付きのジャケット、そしてピカピカの指輪やネックレスで……。今夜も、エルヴィスの絶叫が眠らない街ラスベガスに響き渡るのだった。

「キエェェェェェェ!」(9)
「キエエエエーーーー!」

あぁ、それは世界で一番、豪華で素敵な瓦割りでもあった。
以上、キングを力づくで利きました。押忍!

利いたからには、聴かねばなるまい!!
    • On Stage/Elvis Presley

      アルバム

      1,600

      On Stage
      Elvis Presley
  • では、つづいて。
    こちらの銘柄を。

「うれしはずかし、はじめてのおヒゲ」

「うれしはずかし、はじめてのおヒゲ」(1)
銘柄:The Wild, the Innocent, & The E Street Shuffle
蔵元:ブルース・スプリングスティーン


さて、こちら、
多くのファンに「ボス」の愛称でリスペクトされる、ロックンローラー、
ブルース・スプリングスティーン。
「The Wild, the Innocent, & The E Street Shuffle」日本では「青春の叫び」で知られるボスの2枚目のアルバムだ。
ということで早速、

↓↓↓ ここから 妄想スタートです ↓↓↓

人間は、初体験の連続で形成される。
はじめてのおつかいしかり、はじめての恋、しかり……。
しかし中年期ともなるとさすがに、「はじめて」に出くわすことが少なくなる。
男は求めていた。心躍る初体験の、あのドキドキした感覚を。
役所勤め15年になる男は、安定した毎日にそれなりに満足してはいたが、深刻な退屈に陥ってもいた。初体験なら、なんでもいい、なんでもないようなことでいい。なんでもないようなことで幸せだったと思うから……。
かくして男は思いついた。生活のなかでひそやかにできる初体験。
それは、おヒゲをはやしてみることだった。

「うれしはずかし、はじめてのおヒゲ」(2)
これは、はじめてのおヒゲで職場に来た朝のショットなのである。

気になる。周囲の視線が気になるんだよ。

「なんか、みんなに見られてる気がする」
「課長、気づいたかな?」
「同僚の女の子はどう思ってんだろ?」
「そもそもほんとに似合ってんのか?」


わかる、わかるよ、その小さなドキドキ。
性別に関わらず、おヒゲが濃い方はお分かりと思う。はじめてのおヒゲの日は、過度な自意識過剰になるものだ。でも、似合うかどうか、イケてるのかイケてないのかについてはいまひとつ自信を持てない。
だから人は、よく「ためらいヒゲ」となるのである。
だから人は、中途半端に、のばしたり剃ったりを繰り返すのである。
これって、逆におヒゲを今までのばしていた人が、急に全部剃ったりしても同じドキドキを味わうんですよね。うん、わかる、わかる。
そうか、この男もきっとこれまで何度も、おヒゲって存在に対して、ためらい、そして抗い続けてきたのだな……。

とも思ったのだが……おい、ちょっと待て、我が妄想、ちょっとストップだ。

間違えた!!!!!

「うれしはずかし、はじめてのおヒゲ」(3)
ヒゲは急にはのびないぞ?

「よし、明日はじめてのおヒゲをやろう」と思っても瞬時にヒゲは育たないぞ。
ということは、なんだ? え? ええ?
えーーーーーーーー! うっそーーー!!

「うれしはずかし、はじめてのおヒゲ」(4)
これ、つけヒゲなのーーーーーー!?

ぜんぜんわかんなかった!!!
いやはや……。
自分の妄想のなかでこんなにビックリしたのは初めてだ。

「うれしはずかし、はじめてのおヒゲ」(5)
これは、つけヒゲを装着しているところ

そうだったのかあー。
なるほどねえ、そうとしか考えられませんよね。
いや、すっかり間違えていました。失礼!

いかがだったろう? くだらなかった?
そうですよぉ。だってくだらないコーナーなんですものぉ。
どうぞ、ご容赦くださいませ。
そして、くだらなかったとしても、これが、エルヴィスもブルースも知らない方が
この偉大なロックンロールに触れるちいさなキッカケになったならば、
ただただ幸せなのである。

さて、ここからはちょっとだけ蛇足の情報。
そもそもエルヴィス・プレスリーに憧れてギターをはじめたブルース・スプリングスティーンだそうですよ。
はじめて買ったレコードはエルヴィスの「監獄ロック」だったブルース・スプリングスティーンだそうです。



もしも無人島に持っていくならこのレコード、という一枚にエルヴィスの「ハウンドドッグ」をあげたブルース・スプリングスティーンだそうです。
ああ、まさに、エルヴィスの信者ともいうべき存在。

今回の空手バカ一代の利きに、
怒らなければいいんだけど………ブルース。
私、キングもボスも大好きですよ!!

利いたからには……聴かねばなるまい!

今回の逸品

    • On Stage/Elvis Presley

      アルバム

      1,600

      On Stage
      Elvis Presley
  • そして今回も、快くジャケの使用を許してくれた太っ腹なレーベルに感謝。ありがとう。


    Text:ヴィンセント秋山

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