101年目のジャズ vol.3 ~ライブ音源で楽しむギター・サウンド編~

101年目のジャズ vol.3 ~ライブ音源で楽しむギター・サウンド編~
ラジオ番組のナビゲーター気分でお届している『101回目のジャズ』、3回目がやってきました。初回はビッグバンド、前回は女性ボーカルを特集して、さあ、次はどうしようかと考えたんですが、そうだ、ギタリストがリーダーのライブ音源にスポットを当てようと思い付きました。というのも、学生さんの中にはこの春から音楽サークルに入って青春を謳歌したいと考えている人もいるでしょうし、入部をきっかけにギターを始めたいと思っている人が、他の楽器に比べて多いように感じているからです。ただし、そのほとんどがロックやポップスのギター・ヒーローをイメージしているのかもしれません。少なくとも、私の学生時代はそうでした。でもね、ある程度ギターが弾けるようになると、いつかはジャズも演奏したいとチャレンジ精神が沸いてくるみたいで、実際、そういう(かつての)ギター小僧を何人も知っています。ということで、今回は「ライブ音源で楽しむギター・サウンド」をお届けします。ギターを弾く、弾かないは関係なく、イカしたトラックをご紹介しますよ。

#1. Wes Montgomery - Come Rain or Come Shine

1曲目は1923年生まれ、45才で他界してしまったウェス・モンゴメリーの演奏です。突然の心臓麻痺でミュージシャン人生に幕を下ろしてしまった彼は、ピックを使わない親指奏法やオクターブ奏法など、自身を象徴するスタイルを確立し、今なお多くのギタリストにリスペクトされています。ジャズ・ギタリストを志した人で彼の名前を知らない人は100%いないでしょう。では、ウェスが残したライブ音源の中からスタンダード・ソング「カム・レイン・オア・カム・シャイン」(1962年録音)をお聴きください。リズム・セクションは当時、マイルス・デイヴィスのグループで活躍中だったウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds)です。そこにジョニー・グリフィン(ts)も加わったライブの模様はアルバム『フル・ハウス』に収められています。

#2. 渡辺香津美 - MILESTONES

お次は、渡辺香津美さんのアルバム『KYLYN LIVE』から1曲選んでみました。1979年4月にアルバム『KYLYN』をレコーディングし、6月には“ロッピ”こと六本木ピットインでライブ収録。それが『KYLYN LIVE』です。ロッピといえば1977年にオープンしたフュージョンの聖地ともいえるスポットで2004年に閉店した時は流石に淋しさを隠しきれませんでした。自分が行っていた店はなぜかいつまでもあると思ってしまうんですよね……。話を戻します。アルバム『KYLYN LIVE』に参加しているミュージシャンをまず頭に入れていただきたい。渡辺香津美(g)、坂本龍一(key)、矢野顕子(key、vo)、小原礼(b)、村上“ポンタ”秀一(ds)、ペッカー(perc)、向井滋春(tb)、清水靖晃(ts)、本多俊之(as、ss)。どうです、敬称略と添えたくなるこの顔ぶれ! 香津美さんを含め、現在、大御所といわれているミュージシャンがこれでもかと勢揃いしています。そんな彼等の若かりし日の音が楽しめるアルバム『KYLYN LIVE』からマイルス・デイヴィス作曲の「マイルストーンズ」をどうぞ。

#3. Jim Hall - CONCIERTO de ARANJUEZ

空気を一転させてジム・ホールの演奏です。彼は前回の女性ボーカル特集でご紹介したエラ・フェッツジェラルドのアルバム『エラ・イン・ベルリン』にも参加していたジャズ・ギタリストです。素晴らしいデュオ・アルバムも数々残した彼。たとえば、ジャケットも印象的なビル・エヴァンス(p)との作品『アンダーカレント』やロン・カーター(b)との共作『アローン・トゥゲザー』などを聴くと、楽器で会話するという意味がわかります。超人気ギタリストのパット・メセニーと録音したタイトルもずばり『ジム・ホール&パット・メセニー』も是非チェックしてほしい1枚。またもや前置きが長くなってしまいました。では、ジム・ホールのライブ音源にまいります。1976年、来日コンサートで披露された「アランフェス協奏曲」、じっくりお聴きください。

#4. Larry Carlton - The B.P. Blues

正直に言うと、私がラリー・カールトンの名前を知ったのは1980年にリリースされたサザンオールスターズのアルバム『タイニイ・バブルス』の収録ナンバー「私はピアノ」を聴いた時でした。メンバーの原由子さんが歌う歌詞の中に“ふたりして聴くわ ラリー・カールトン♪”という一節があり、ラリー・カールトンって誰? と思ったわけです。ちなみに、この曲は高田みづえさんがカバーして大ヒットしました。そんなふうに、B’zの松本孝弘さんとの共作アルバム『テイク・ユア・ピック』をきっかけにラリー・カールトンの名前を知ったJ-POPファンもいるはず。なんせ、この作品は第53回グラミー賞最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバム賞を受賞し、日本のメディアでも大きく取り上げていましたから。では、ラリー・カールトンのライブ音源です。1986年にロサンゼルスにあるジャズクラブ“ベイクドポテト”での演奏で「B.P.ブルース」。ジェリー・ヘイ(tp)を中心にしたご機嫌なホーン・セクションはライブ・レコーディング後にオーバー・ダビング。うん、管楽器が入って私は大正解だと思います。

#5. Kenny Burrel - Then Along Came You

ブルースとかブルージーってとにかく好きなんです。血が騒ぎ出すというか、魂を持って行かれるというか。そこにブルースを感じるだけで痺れちゃう。だから、ケニー・バレルもラブなんですよね。1931年生まれの彼は1956年にブルーノート・レーベルからアルバム・デビューし、以降、多くの作品を発表。ブルージーではあるけれどソフィスティケイトされているのも魅力なんですよね~。ケニー・バレル、イェイです! さあ、今回は、あえてこの音源にしてみました。1993年にニューヨークの老舗ジャズクラブ“ヴィレッジ・ヴァンガード”で披露された本人作曲の「ゼン・アロング・ケイム・ユー」。シンプルながらもムーディーなギター・バラード、良かったら一緒にメロメロになりません? なんでしたらリピートしてもいいですし。

#6. George Benson - On Broadway

続いては、ジョージ・ベンソンの演奏です。1943年生まれの彼がアルバム・デビューしたのは東京オリンピックが開催された1964年でした。その12年後に録音したアルバム『ブリージン』が爆発的ヒットとなります。収録したカバー曲、レオン・ラッセルの「マスカレード」はジョージ・ベンソンが卓越したギタリストであると同時に素晴らしいボーカリストであることを伝え、ブラック・コンテンポラリー・アーティストとしての名声も得ました。さて、彼の歌とギターを一度に堪能出来るライブ・トラックといえばアルバム『Weekend in L.A.』の「オン・ブロードウェイ」です。ボブ・フォッシー監督の映画『オール・ザット・ジャズ』で使われたポップでリズミカルなナンバーのライブ・バージョンを聴くとつい踊り出したくなるのは私だけ? ギター・ソロに合わせたユニゾン・スキャットは必聴です!

#7. The John Scofield Band - Georgia on My Mind

ラスト・ナンバーは“ジョンスコ”ことジョン・スコフィールドの演奏にしました。来日回数も多いフェイバリット・ギタリストのライブを初めて観た時は、本当にギターを弾くのが好きなんだなあと痛感し、演奏だけでなくその姿勢にも感銘を受けました。そのジョン・スコフィールドのライブ盤『ビック・ヒッツ・ライブ』にはテイストの違う演奏がたっぷりと収められています。今回はアンコールにひとりでプレイした「ジョージア・オン・マイ・マインド」で締め括りますね。1987年、昭和女子大・人見記念講堂での演奏です。

  • ギター・サウンドをテーマに様々なライブ音源をご紹介しましたが“ちょっと待って、○○や○○が入っていないじゃん”と突っ込まれた方もいるのではないでしょうか。ですよね、私だったら声に出しています。ただ、挙げていったらキリがないんですよ。ですから、後ろ髪を引かれる思いではありますが、来月最終金曜日、4月27日にまたお会いしましょう。

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