101年目のジャズ vol.2 ~ライブ演奏で楽しむ女性ボーカル編~

101年目のジャズ vol.2 ~ライブ演奏で楽しむ女性ボーカル編~
ラジオのナビゲーター気分でお届している『101年目のジャズ』、1ヶ月ぶり、2回目となる今回は女性ボーカルのライブ・トラックをフィーチャーしていきます。ところで、アナタは“女性ジャズ・ボーカリストといえば?”と訊かれたら、まず誰を思い出しますか? ビリー・ホリディヘレン・メリルノラ・ジョーンズサラ・ヴォーン? 中には今年1月末に発表された第60回グラミー賞<最優秀ジャズ・ボーカル・アルバム>の受賞者、セシル・マクロリン・サルヴァントの名前を挙げる方もいるかもしれません。頭に浮かんだボーカリストはそれぞれだと思いますが、エラ・フィッツジェラルドと答えた方も少なくないはず。

#1. Ella Fitzgerald - Mack The Knife

“ファースト・レディ・オブ・ソング”ことエラ・フィッツジェラルドは1917年生まれですから、ジャズというネーミングで初めて商業用レコードを録音したとされる年に産声を上げました。まるでジャズを歌うためにこの世に生を受けたかのようなタイミング。それが単なる偶然だったにせよ、その後、エラは歌を通して多くの人たちを幸せにしました。おっと、過去形にしてはいけませんね。1996年に他界した後も彼女のファンは今日もまたひとり、ふたりと増え続けているのですから。とはいえ、今までエラの歌声に触れる機会がなかった方ももちろんいるでしょう。そんなアナタ、アルバム『エラ・イン・ベルリン』収録ナンバー、「マック・ザ・ナイフ」を聞いてみて。彼女の虜になると信じてる!

#2. Ella Fitzgerald - How High The Moon

1960年2月のライブ音源「マック・ザ・ナイフ」を改めて聞いていたら、アルバム『ライブ・アット・ザルディーズ』もご紹介したくなりました。この作品は、ハリウッドのナイト・クラブで行なわれたライブ作品で1956年2月の録音です。けれども、陽の目を浴びたのはなんと昨年12月。つまり、50年以上もの間、お蔵入りとなっていたわけです。でも、時を経て今、こうして聞けるのですからなんとも有り難い話。えっ? もしや、まだノー・チェック? では、アルバム『ライブ・アット・ザルディーズ』から「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」を是非!エラの“サンキュー”の声もチャーミングだし、スキャットも凄いですよっ!

#3. Dee Dee Bridgewater - What A Little Moonlight Can Do

エラ・フィッツジェラルドをリスペクトしているボーカリストは本当にたくさんいます。例えば、パティ・オースティンは、昨年12月、ブルーノート東京でエラの生誕100年を記念したトリビュート・ライブを行ないました。彼女への愛情がダイレクトに伝わり、感動で涙が止まらなかった。今、思い返してもゾクゾクします。ライブ録音があればこちらで紹介したかったのですが、それは今、叶わぬ願い。だったら、気持ちを入れ替えて、日本でも大人気歌手でエラのトリビュート・アルバムもリリースしたことのあるディー・ディー・ブリッジウォーターの作品『ライブ・アット・ヨシズ』から「ホワット・ア・リトル・ムーンライト」なんていかがでしょう? 演奏も最高だからお願い、聞いて!

#4. Dee Dee Bridgewater - Try A Little Tenderness

ディー・ディー・ブリッジウォーターのライブを観る度、パワフルで圧倒的な歌唱力にノックアウトされるのですが、そんな彼女に2009年、インタビューをしました。その時、「死んでしまいたくなるぐらい辛い時期もあったけれど、ある日、天から授かったこの声が人々を繋ぐ場所を生み出していると気が付いたの。そこには私の歌を聞きに来てくれるオーディエンスがいて、私自身も歌で再生している。それを実感できたからこれまで生きてこられたのよね」と言っていました。そして、ディー・ディーの歌で明日を夢見るリスナーがいる。今更ではありますが、ミュージシャンと聞き手は互いを支え合っている存在なんだなあとシミジミ。
ところで、ディー・ディーは、昨年、ニュー・アルバム『メンフィス』をリリースしています。これがなんと彼女が10代の頃、ラジオで聴いていた、エルヴィス・プレスリーグラディス・ナイト&ザ・ピップスB.B.キングなどの楽曲を取り上げた内容で、いわゆるジャズ・アルバムではないですし、ライブ盤でもありませんが、今の彼女の歌声も是非チェックして欲しいので、オーティス・レディングのバージョンでお馴染み「トライ・ア・リトル・テンダネス」に耳を傾けてください。

#5. Diana Krall - Fly Me To The Moon

続いては、ダイアナ・クラールの歌声にまいりましょう。1964年生まれ、カナダ出身、ピアノを奏でながら歌う彼女は、ファースト・アルバム『ステッピング・アウト』を1993年に発表しました。以降、人気は急上昇。今ではジャズ・ボーカル界を語る上で欠かせないひとりです。ちなみにダーリンは、ロンドン出身で多くのヒット曲を持つミュージシャン、エルヴィス・コステロです。では、ダイアナ・クラールが2002年にリリースしたアルバム『ライブ・イン・パリ』から「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」をどうぞ。スウィンギンなトラックは世知辛い日常を一瞬忘れさせてくれますよ。

#6. Diana Krall - L-O-V-E

ダイアナ・クラールも昨年、ニュー・アルバムをリリースしています。タイトルは『ターン・アップ・ザ・クワイエット』。この作品は、音楽シーンに多大なる功績を残し、2017年3月に次の世界へと旅立ってしまったトミー・リピューマのラスト・プロデュース・アルバムと言われています。彼に見出されたダイアナにとって他の作品とは別の意味合いを持つ1枚といえるでしょう。こちらもライブ音源ではありませんが彼女の歌う「ラブ」を聞いて欲しいです。
    • L-O-V-E/Diana Krall

      シングル

      257

      L-O-V-E
      Diana Krall

#7. Betty Carter - I Could Write A Book

ラストは、1998年に他界した1929年生まれのベティ・カーターが歌った「アイ・クッド・ライト・ア・ブック」を2バージョン続けて聞いていただきましょう。最初は1979年のライブ音源から、続いては1950年代半ばにスタジオでレコーディングしたトラックです。本当に同じ曲なの!?と何回か確認したくなるくらいアプローチが違います。これもジャズの面白さのひとつですし、こんな風に聴き比べるのも楽しいでしょ?

  • 『101年目のジャズ』、2回目は女性ジャズ・ボーカルにスポットを当ててお届しました。もちろん、他にもたくさんお勧めしたいライブ・トラックやボーカリストがいます。いずれまた特集出来るといいなあ。でも、その前にご自身でもサイト内を検索してみてください。好みの音源を発見すると単純に嬉しいですし、なぜか自尊心もくすぐられるんですよね。では、次回、3月最終金曜日にまたお会いしましょう。

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