百歌繚乱・五里夢中 第4回「ナイス・イントロ/その他編 10選」

百歌繚乱・五里夢中 第4回 ナイス・イントロ/その他編 10選
こんにちは。前々回からフォーカスしてきた、ナイスなイントロを持つ音楽。「ドキドキ」、「ド派手」とカテゴリーに分けて選んできました。最初に書きましたように、まだ「ワクワク」、「クール」、「しみじみ」など、いろいろあるのですが、こればかりやっているのも何ですので、とりあえず今回で一旦締めることにします。過去2回で取り上げたもの以外で、これは♪と思うナイス・イントロを4種・10曲ご紹介することにしましょう。

古き良きイントロ・クイズ

イントロと言えば、イントロを聴いて早い者勝ちでその曲名を言う、というイントロ・クイズが大流行した時代がありました。それをテレビ番組化した「クイズ・ドレミファドン」が高い視聴率を稼いでいました。今でも年に1度特番があるみたいですが、定期放送は1976年から1988年までですから、40代以上の人じゃないとその人気ぶりは知らないかもですね。
あれで発見したのは、よく知っている曲なら、イントロというか曲の出だしを、ほんの僅か(0.5秒くらい?)聴くだけでも判るということ。その時間ですからフレーズやテンポやリズムとかは分かりません。だけど楽器の音色とか全体の空気感みたいなもので判ってしまう。さらに上級問題で「ウルトラ・イントロクイズ」とか「超ウルトラ・イントロクイズ」なんてのもあって、「超ウルトラ」など出だしの0.02秒だったそうです。それでも判る人がいるんですから人間の聴覚ってすごいですよね。
あれほど隆盛を極めたイントロ・クイズですが、今や見る影もありません。聴いたことあるんだけどなんだっけ?、正解が判って「あー、あの曲ねー」となるから面白い、ってことは誰もが知っているヒット曲がたくさんあることがその前提になるんですね。音楽があまりに数多く、多岐に渡り、人の嗜好も細分化してしまった今の時代では成立しないのだと思います。
もちろんそれは不特定多数を相手にするテレビでの話であって、趣味嗜好を共通にする特定少数の間ではやはり楽しいゲームであることに変わりはありません。70~80年代の洋楽しかかからない、渋谷の「グランドファーザーズ」というロック・バーとかでは、私は今でもよく、仲間とともにイントロ・クイズで盛り上がっていますよ。

ワクワクするイントロ

「ドキドキ」に近いと思われるかもしれませんが、ここでの定義ではあちらは「アンキシャス」。「ワクワク」は「ハッピー」です。

#1:シルヴィ・バルタン Sylvie Vartan「Irrésistiblement (あなたのとりこ)」(シングル:1968年7月発売)
  • フランス語の原題「イレジスティブルマン」の意味は「抑えきれないくらい」。それくらい好きだという歌なんですけど、難しい字面ですよね。フランス人はそう思わないのかなぁ。ともかく大ヒットしましたが、日本では69年1月の日本盤発売当時は売れなかったそうです。しかし70年11月に再発売すると大ヒット。そしてその後キャノンやサントリー、花王などCMに何度も使われ、2001年の映画「ウォーターボーイズ」の挿入歌に使用されると、またオリコンの上位にランクされるなど、息の長いヒット曲となりました。
    4小節の短いイントロですが、華やかに踊るようなブラス系のフレーズが、グングン心のボルテージを上げていきます。このブラスは要所要所に登場して曲全体のイメージを縁取ります。
    歌い出しの「トゥー(Tout)」の前に小さく「ン」が入るのが可愛くて、誰もがシルヴィのとりこになりました。


    #2:Carole King「One Fine Day」(シングル:1980年5月発売)
  • これはセルフ・カバーです。オリジナルは黒人女性グループ”The Chiffons”が1963年5月にリリースして全米5位。キャロル・キングとジェリー・ゴフィンのコンビは当時最強のヒットソング・メイカーでした。
    オリジナルとアレンジはほぼ同じだし、どちらもピアノはキャロル・キングが弾いているのですが、私は微妙にキングのバージョンのほうが好きです。
    イントロはなんと言ってもピアノが印象的ですね。タイトル通り、晴れ渡った空の下でパレードが始まったような陽気さ。そこに「シュビルビルビルビルバッパー」のドゥーワップ・コーラスが絡んで気分は最高。後半のサックス・ソロもゴキゲンで、盛り上がりつつ曲はフェイドアウト、消えていくのが惜しくなります。


    #3:Boston「Something About You」(from 1st アルバム『Boston(幻想飛行)』:1976年8月25日発売)
  • バンドとは名ばかりで、トム・ショルツのワンマン・プロジェクトだった”ボストン”。MITの大学院を卒業したショルツはその知識・知力を活かして、スタジオを作り、アンプやエフェクターを改造し、ボーカルとドラム以外はほぼ全て自分で多重録音、しかもリズムボックスは使わずに何度も何度もやり直して、彼が理想とする完璧な音に創り上げました。その執念が実り、サウンドは当時としては抜群のクオリティでした。もちろん曲そのもののキャッチーさもあって、デビュー・アルバムにしていきなり全米3位、これまでに全世界で2000万枚も売り上げる特大ヒットとなりました。
    この曲は、全体としてはシングル・カットされた「More Than a Feeling」などより地味目ですが、イントロは絶妙です。
    ファルセットのスキャットとアルペジオ・ギターだけの寂しげな10小節が終わったと思ったら、突如何重にも重ねられた分厚いギター・メロの壁が眼前を塗り潰します。気持ちは一気に昂ぶって、もうサウンドの波に流されるままとなるのです。

長い!イントロ

「ドキドキ編」でご紹介した”The Temptations”の「Papa Was A Rolling Stone」が、おそらく”長いイントロ”チャンピオンでしょうが、それ以外の、アレッと思うような長いイントロの曲たち。ただし、ドラマチックな展開“命”なプログレ系についても対象外で。

#4:藤山一郎「丘を越えて」(シングル:1931年12月発売)
  • 古い曲ですが、初めて聴く人は最初の、鐘の音とのどかなホルンの響きに、「サウンド・オブ・ミュージック」?なーんて勘違いするのではないでしょうか。そしてマンドリンの多重奏とマリンバ。やがてリズムは軽快に弾んで、さあ歌か、……と思ったらまだ始まりません。ひとしきりマンドリン演奏があって、あって、、あって、、、1分37秒でやっと歌です。これ全体3分12秒の曲なんで、間奏も入れると歌のパートのほうがずっと短い。
    変わってるなー、と思ったら、実は当初古賀政男さんがマンドリン用の器楽曲として作曲したものなんだそうです。後から島田芳文さんが詞をつけて、藤山一郎さんが唄いました。
    それにしても、歌を足した時点で、やはり普通に考えたらもっと早く歌に入るでしょうね(笑)。でもこの長いイントロ、私は大好きです。


    #5:Santana「Black Magic Woman」(シングル:1970年発売/from 2nd アルバム『Abraxas(天の守護神)』:1970年9月発売)
  • サンタナ初のヒット・シングルにして彼らの代表曲のひとつでもありますが、カバーです。オリジナルはフリートウッド・マック、当時のリーダー格のピーター・グリーン作で1968年シングル発売。この頃のフリートウッド・マックは後の大ブレイク時とは全く違う、ブルース・バンドだったんですね。だからこの曲もブルース調。
    マック版のイントロはとても短いのですが、サンタナはとても長い。例のねちっこいギター・ソロをひとしきりやってからおもむろに歌へ。そこまで約1分25秒です。アルバムでは次の「Gypsy Queen」とメドレーになっているのですが、「Black Magic Woman」自体は3分40秒くらいなので、曲の約40%がイントロ。
    売上はサンタナの圧倒的勝利だったので、すっかりサンタナの曲というイメージになってしまいましたが、このイントロの差が関係あるでしょうか?
    ちなみに、フリートウッド・マックにはこの曲の元ネタみたいな、そっくりな「I Loved Another Woman」という曲があります。音楽って掘れば掘るほど面白いですね。


    #6:New Order「Vanishing Point」(from アルバム『TECHNIQUE』:1989年1月30日発売)
  • 「マンチェスターとリバプール」という歌で同じような町として歌われていますが、この曲が流行る(1968年)前から、ビートルズとそのフォロワーたちによるリバプール・サウンドが一世を風靡したことで、音楽の都として有名だったリバプールに対し、マンチェスターは煤にまみれた工業都市というイメージしかありませんでした。
    そこに「マッドチェスター(Mad+Manchester)」という音楽ムーブメントを起こしたのがこの”New Order”です。彼らに続き、”Happy Mondays”や”The Charlatans”といったバンドが次々と活躍し、1980年代の後半のみという短期間ながら英米日の音楽市場を大いに賑わせました。
    曲が始まって約1分半、いろいろパターンが変わっていくので、おやこれはインストゥルメンタルか?と思い始めた頃、やっとボーカルが現れます。

クセありイントロ

イントロだけ変拍子という変わり種はいかが?

#7:The Allman Brothers Band「Black Hearted Woman」(from 1st アルバム『The Allman Brothers Band』:1969年11月4日発売)
  • ついこないだ、2017年5月にグレッグ・オールマンが亡くなり、その長いバンド史に終止符を打ってしまった”オールマン・ブラザーズ・バンド”。
    彼らはブルースをベースとした、人間くさくアーシーな音楽をやるのですが、なぜかイントロやブリッジに変拍子をさりげなく(でもないか)紛れ込ませるというトリッキーさを好む人たちでもあったのです。その冷静さと演奏自体のフィジカルな熱さとのギャップもこのバンドの魅力のひとつです。
    この曲はいきなり8分の7拍子が8小節続いて、カッコいいので踊ろうとした人たちをヨロけさせます(笑)。で、何事もなかったように4分の4にすり替わります。8分の7は間奏後のブリッジにもスッと再登場し、一度全体を引き締めてから、派手なエンディングに突入するのです。素晴らしいアレンジ構成です。


    #8:Jeff Beck Group「Situation」(from アルバム『Rough and Ready』:1971年10月25日発売)
    • Situation/Jeff Beck Group

      シングル

      205

      Situation
      Jeff Beck Group
  • ジェフ・ベックはバンドを作るのが好きなんだけど、名前を考えるのと長続きさせるのが苦手なようです。1967年から1974年にかけて、3つのバンドを作っては壊しますが、先の2つは両方とも単に”ジェフ・ベック・グループ”。しょうがないから周りが”第一期”、”第二期”とつけて区別しなければなりません。3つ目は”Beck, Bogert & Appice”で、メンバーの名前を並べただけ。少しくらい考えろよ!と言いたくなります(笑)。そして、3つともそれぞれ2枚、アルバムを出すと解散、という短命さです。飽きっぽいのか、人づき合いが下手なのか?
    ともかく、この曲は第二期のジェフ・ベック・グループです。イントロは凝ってまして、まず、8分の7拍子が2小節に4分の4拍子が2小節、そこまでを4回繰り返した後に次のパートに移ります。ギターとドラムの一体感がすばらしい。ドラマーはこの後いろんなロック・バンドで活躍するコージー・パウエル。リズム・イン後は普通に4分の4、そしてギターの間奏とエレピの間奏の間で、アクセントにまた8分の7のパートです。

お見事なイントロ

最後に、イントロ界の横綱と言ってもいいこの2曲を。

#9:Chuck Berry「Johnny B. Goode」(シングル:1958 年3月31日発売)
  • おそらくロック史上、世界で最も有名なイントロと言えば、これではないでしょうか?ロックン・ロールの創始者と言われる人は何人かいますが、チャック・ベリーはその代表格。そして、ロックン・ロールの象徴とも言えるギター・リフや、このイントロのギター・フレーズは全てベリーが発明したものです。この曲だけでなく、このイントロは微妙に細部を変えつつ、「Roll Over Beethoven」、「Carol」、「Back in the U.S.A.」などにも使われています。使おうと思えばロックン・ロール曲全てに使える”万能イントロ”なのです。
    レッド・ツェッペリンにズバリ「Rock and Roll」という曲があります。これのイントロは、小節頭が判りにくいドラムだけで始まりますが、「Johnny B. Goode」のイントロをドラムで表現したものなんですね。つまり3拍目の裏から始まっているのです。


    #10:Derek and the Dominos「Layla(いとしのレイラ)」(シングル:1971年発売/from アルバム『Layla and Other Assorted Love Songs(いとしのレイラ)』:1970年11月9日発売)
  • “Cream”解散後、”Blind Faith”に参加したエリック・クラプトン、このバンドも全米ツアー後解散してしまいましたが、クラプトンは米国に留まり、ツアーで前座を務めた”Delaney & Bonnie and Friends”と活動をともにします。やがてそのメンバーたちとともに結成したのが”Derek and the Dominos”。2作目制作中にクラプトンがドラムのジム・ゴードンと喧嘩別れして、アルバム1作しか残っていないのですが、これが”The Allman Brothers Band”のデュエイン・オールマンも参加した2枚組の大作。
    あのギター・フレーズがあまりにも有名なイントロですが、歌に入る時に半音下に転調する(コードはCからC#mに変わるのでフワッと上がる感じになる)ところが、実にカッコいいですよね。ちなみにあの印象的なギター・フレーズはクラプトンのオリジナルではなく、アルバート・キングの「As the Years Go Passing By」の歌メロディの借用です。
  • さて、3回に渡ってご紹介したナイス・イントロたち、いかがでしたか?
    まぁここで取り上げたのはたかが30曲。「あれが入ってないよ!」、「こんなのもあるよ!」という声が聞こえてきそうですね。私が好きなイントロもまだまだあります。
    ただ昨今の曲に、印象的なイントロや凝ったイントロが少ないのではないか、と思うのは私だけでしょうか?
    今、音楽を作っているみなさん、ちょっとイントロに力入れてみませんか?

    いやぁ、それにしても、音楽ってちっとも飽きないですね。


    Text:福岡 智彦

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