2017年の日本のミュージックシーンに風を吹き込んだアーティスト10選

2017年の日本のミュージックシーンに風を吹き込んだアーティスト10選
2017年の国内のミュージシャンの中から、確かな存在感を示したニューカマーを10組セレクトしました。少し前まで日本の前の世代のロックバンドしか参照していなかったと言われる、いわゆる“ガラパゴス化”から、90年代生まれのミレニアルズはその音楽がどこの国のどの時代のものであれ、いいと思ったものを吸収してオリジナルに消化する傾向が今年、具体的なバンド、アーティストとして表舞台に浮上してきた印象です。コアな音楽ファンから、今やお茶の間にも浸透しそうなCHAIの音楽とパーソナリティの破壊力、フリースタイルバトル以降でもあり、綿々と続く日本語ラップが普遍的なジャンルであり、それを更新してきたPUNPEEなど、これまでも潜在的に人気と実力を誇っていたアーティストが、狭い範囲のリスナーを超えてオーディエンスを拡大した年だったとも言えるのではないでしょうか。

#1. CHAI – N.E.O.

2017年、「照れずにハッピーでポジティブはかっこいい」を証明したCHAI。こと日本のバンドシーンにおいては“CHAI以前・CHAI以降”という認識が生まれそうなほどフレッシュな刺激を与えてくれました。スキルとセンスを両立したガールズバンドといえば、どこか音楽偏差値高めでクールな印象でしたが、CHAIはとにかく笑顔。肝心の音楽性もネオ・ファンクやポストパンクという、隙間が多い分だけ演奏スキルを要するものだし、コンプレックスを明るく笑い飛ばすリリックも、意味に重きがあまりないのに空虚でもないという絶妙のバランス。アルバム『PINK』は全曲ナイスですが、名刺がわりの1曲ということで「N.E.O.」をチョイスしました。
    • N.E.O./CHAI

      シングル

      257

      N.E.O.
      CHAI

#2. ドミコ – こんなのおかしくない?

バンドの必要最低限である2ピースで、しかもギターとドラムしか鳴っていないにも関わらず、単なる初期衝動的なガレージパンク風ではないところに衝撃を受けてから早3年。2017年のドミコは、さらにニューアルバム『hey hey , my my?』で、音数を整理し、より一つ一つの音の強度や意味合いを深めた印象です。とはいえ、何が何だかわからないけどかっこいい、うまく説明がつかないけどグッとくるというのも正直なところ。一つ言えるのは、昔から洋楽のボーカルを真似ても日本人には出せない不思議なムードを、さかしたひかる(Vo、Gt)の声とメロディは出せるってことです。特にこの曲のサビは中毒性で言えば最高レベル。

#3. DATS – Mobile

シューゲイザー寄りのギターバンドから、グッとエレクトロ、インディR&Bやハウス寄りのアプローチに舵を切った今年のDATS。初のフルアルバムもタイトルからして『Application』と、彼らミレニアルズが良くも悪しくも支配されている世界観を曲ごとに表現して、トータルな作品性を磨き上げたのもお見事。それでいてライブは全身全霊、フィジカルにエモーションを乗せてくる感じも今だな、と。初出演した<FUJI ROCK FESTIVA‘17>のステージも高い緊張感と巻き込み力に溢れていました。そこで変化の兆しをいち早く表明し、今のDATSのキラーチューンになった「Mobile」を。生音とエレクトロニクスの融合はもはや常道ですが、メロディに必殺のラインがあるのは強みでしょう。
    • Mobile/DATS

      シングル

      257

      Mobile
      DATS

#4. 雨のパレード – Change your mind

登場当時からいわゆる邦ロックシーンとは一線を画し、現行の海外の音楽シーンとリンクを見せていた雨のパレード。すでに一定の人気を得ているバンドですが、今年のライブで、メンバー全員のフィジカルの強さを実感、ボーカル福永浩平のフロントを張るパフォーマーとしての意識の高さに進化を感じました。サカナクション一強な印象のある先鋭的なステージングに迫る勢いや、The xxなど、洋楽リスナーにもリーチしうる楽曲のテイストなど、音楽としていいかどうかで判断するリスナーがさらに増えそうなこれからを鑑みるに、相当、ポテンシャルが高いバンドだと言えるでしょう。バンドの意思が詰まった曲を選んでみました。

#5. MONO NO AWARE – イワンコッチャナイ

ポストロックもはっぴいえんどもファンクもシューゲイザーもある。しかもそれらを単に引用元としてではなく、愛しつつ距離を置き、自分たちのフィルターを通す、みたいな完成形が、とかくアーバンでクールなバンドが続々登場した2017年にあっては非常にユニークでした。音楽以外にも文学にも興味のある玉置周啓(Vo、Gt)、そしてともに八丈島出身の加藤成順(Gt)、この二人の独特のタイム感や物事への視点が、MONO NO AWAREをユニークなバンドとして存在させている気がしてなりません。アルバム『人生、山おり谷おり』から、昭和感さえあるメロディなのに、ポストパンクとファンクが出会ってしまったようなこの曲の奇跡をぜひ一度。

#6. PAELLAS – Shooting Star

彼らの場合、去年12月リリースのアルバム『Pressure』リリース時にもっとバズが起こってもおかしくなかったと感じているんですが、同作から今年の『D.R.E.A.M.』は基本的にサウンドスケープの組み立ては似ているのかな、と。ただ、より生楽器メインでありながら、インディR&Bに近いセンシュアルで隙間を漂う空気感も吸い込めるような奥行きが増した印象もあります。それにしてもMATTONのR&Bボーカリストに引けを取らないシルキーなボーカル、Ananの研ぎ澄まされたギターの一音、フレージングに託された審美眼は20代ミュージシャンの中でも突出しているのでは。都会の夜のスタンダードと言えそうなこの曲から、まずどうぞ。

#7. ニトロデイ – 青年ナイフ

彼らの「青年ナイフ」の動画を初めて見た時の、あどけなさも残るメンバーがニルヴァーナやナンバーガール直系のオルタナティヴな演奏を展開している事実にまず驚きました。いい意味で今風に洗練、消化しているわけでもなく、ただ鳴らしたい音を時に力づく、時に息を殺して間合いを図りながら。あらゆるバンドの音楽や情報が溢れる中で、10代の彼らがそのバンドアンサンブルを実現していることが凄まじく輝いて見えたのです。個人的に特に注目しているのは、ギターのやぎひろみと、ベースの松島早紀の女性陣。ニトロデイの不穏なムードを実際に作り出しているのは彼女たちなのでは?とライブを見て、実感しました。

#8. PUNPEE – タイムマシーンにのって

もう随分長いキャリアを誇るラッパー、トラックメーカーのPUNPEEですが、視界に入ってきてしかも無二の存在であることを認識したのは、今年の<FUJI ROCK FESTIVAL 2017>のホワイトステージにビニールの雨ガッパで登場したとき。音楽じゃないのかよ!というツッコミが入りそうですが、描かれている世界は日常的なのに、ヒップホップのヒストリーをちゃんと知ってる人という、ヒップホッププロパー以外を引き込む存在が魅力的だったわけです。40年後の自分が昔語りをするというこの待望の自身名義のアルバム。単曲聴きだと伝わらないですが、まずメロディもキャッチーなこの曲からいかがでしょう。

#9. DAOKO×米津玄師 – 打上花火

DAOKOへの注目度の高さは今に始まったことではないけれど、高校生デビュー以来の蓄積が、今年の一連のコラボレーションで一気に開花した印象です。この米津玄師との「打上花火」は、従来以上にボーカリストとしてクローズアップされた印象で、続く岡村靖幸との「ステップアップLOVE」は楽曲の岡村ちゃん節に見事にハマった上に、ミュージックビデオでのキレッキレのダンスに瞠目したものです。そしてトドメに日本人アーティストとして初めてBECKの「UP ALL NIGHT」にフィーチャー。歌唱力のあるソウルフルな女性コーラスやラップではなく、チアフルなこの曲に一抹の儚さを添えたあたり、“声自体がアイコン”という印象です。

#10. ゆるふわギャング – Escape To The Paradise

そもそもは去年、タトゥーだらけでグリーンの髪をしたイケてる二人とその一瞬「え?」というリアクションしか取れないユニット名に惹かれて「Fuckin’ Car」のMVを見たのが最初の記憶。RyugoはヒップホップよりブルーハーツやGOING STEADYに歌詞面で影響を受けているといい、たった今の感覚をつぶやくようにラップするし、Sophieeとの会話のやり取りのように成り立っている(肯定してるという意味じゃなく)あたりも新鮮。ダルいし、パッと聴きドラッギーな印象もあるのは、彼らが本気でしんどい子達を包み込んであげたいからなのかも、と思うのです。SophieeはNENE名義のソロもリリースし、’18年の動向も楽しみしかないです。

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