妄想系アルバム鑑賞法「利きジャケ」のすゝめ 第3回

妄想系アルバム鑑賞法「利きジャケ」のすゝめ 第3回
「利きジャケ」へようこそ。
古今東西の名盤を紹介する当コーナーは、いわゆるアルバムレビューではない。
ならば何をするのか? ……「利く」のだ。「聴く」ではなく、「利く」のだ。一枚のジャケットをじっと凝視し、アルバムの“顏”から名盤を味わい尽くす。流浪の妄想コーナー、それが「利きジャケ」だ。

アメリカ産 どストレート・ハードロックを利く

mysound読者の皆さん。こんにちは。ヴィンセント秋山です。私はもう、かれこれ10年以上、様々な媒体を通じひとつの“遊び”に取り憑かれている。それが利きジャケだ。ただただ一枚のジャケットを凝視する。音楽的要素はあえて封印し、ジャケットのアートワークだけから妄想を広げそのアルバムを味わい尽くす。それが「利き酒」ならぬ「利きジャケ」だ。……写真でボケて? 大喜利? それは断然違う! アルバムジャケットというアート作品を純粋に楽しむという、これは崇高な遊びなのだ。

今回はアメリカ産、誰もが知っているどストレートに熱い逸品2枚を利く。ハードでロックな利きを堪能していただきたい。
なお、当コーナーではアルバム名を「銘柄」、アーティスト名を「蔵元」と表記する。ではいざ利く前に、利きジャケ唯一のルールもお伝えしておこう。音楽的要素は一切ない利きジャケであるが、音楽を愛するものとしての唯一のルールがある。それは……

「利いたからには、聴かねばならない」

「ファンタジーからの挑戦」

「ファンタジーからの挑戦」(1)

さて、今回で3回目となる利きジャケだが前回前々回の連載を踏まえ、この崇高なる遊びの何たるかをご理解いただけたと思う。いやしかし、じつは今回はこれまでの「利きジャケ」とは少々方向性が異なる手ごわい相手なのだ。今までの利きは初級編の利き。ここからが応用編である。
そんな今回がこちら……
1枚目、The Hottest Band in the World、ロック史上もっとも影響力のあるバンドのひとつ……「キッス」。そしてもう1枚はハードロック/ヘヴィーメタルの先駆者。言わずと知れた「ヴァン・ヘイレン」だ。

ではこの2枚への本格的な「利き」を行う前に、いままで利いた4枚を思い出してみよう。
前回前々回でとりあげた4枚の名盤。
そのアルバムに登場した者たち……

「耳元でささやく人」(ローリングストーンズ)
「女装のおじさん」(フリートウッド・マック)
「握りこぶしの男」(ゲイリー・ムーア)
「棒を抱えたお兄さん」(コージー・パウエル)

いずれも『現実に存在する者たち』だった。
だが一方、今回とりあげるアルバムに写る者たちは……

「ファンタジーからの挑戦」(2)

「悪魔」
「目からビーム出す愛の戦士」
「宇宙人」
「猫怪人」(以上、キッスのペルソナ(キャラクター設定)より)。
そしてヴァン・ヘイレンのアルバムを見れば、
「天使」(タバコ吸ってる)。

……どうだろう。お気づきいただけただろうか。
この2枚はなんと! 「現実」ではなく「ファンタジー」世界の住人たちなのだ!
……えっ? 何を言ってるかよくわかんない??
だって、「悪魔がスーツ着て記念写真撮ってる」とか、「タバコ吸ってる赤ちゃん天使」って、これ完全に「ファンタジー」でしょ。
「利きジャケ」とはアルバムジャケットから妄想を広げる行為。こちらが妄想する前に、すでにそこにファンタジーがあったりしたら、
それはやはりあなた、自由すぎてやりにくいとは想いません?
果たして自由すぎる利きはただの『写真でボケて系大喜利』だ。
我らはあえて、これを「現実として妄想する」ことをしなくてはならない。
コレは悪魔でもない、天使でもないのだ!

……となれば。
今回のこの2枚の「利きジャケポイント」(以下KJポイント)は明らかとなる。利きジャケは確実なKJポイントを探し当てることが、まずは大切。
すなわち、今回のKJポイントは、

「現実世界でのワンシーンと設定せよ」

銘柄:Dressd To Kill(「地獄への接吻」)
蔵元:KISS


「ファンタジーからの挑戦」(3)

「たった4人の成人式」

それは、とある小さな村での出来事だった。
1月の第2月曜日。大人の仲間入りをした青年を祝福する式典が、村役場に隣接する古い公会堂で執り行われようとしていた。
成人となった者の人数…………4名。
少ない。確かに少ない。だが、大切な子供たちがこんなに大きくなったことを、人々は心からうれしく思っていた。村人は全員、純朴だ。祝ってもらう4人も含めて、すべからく村民は純粋な心の持ち主だ。
しかしその純朴さは、この青年たちにある大きな勘違いをもたらしていた……。

「ファンタジーからの挑戦」(4)
式前日の4人、青年A~Dの会話なのである。

A「あのさ、最近はさ、荒れるのが新しいんだって」
B「荒れるって何がさ」
C「そりゃおめえ、成人式に決まってるさ」
D「…………流行か?」
A「流行だ」
C「偉い人の話、聞かねえんだってよ」
A「式の最中に紙飛行機を飛ばすって聞いたぞ」
B「はあ~」
C「あと、みんな化粧するんだってよ」
D「化粧……大人だな」
A「ヤマンバみてぇに厚く塗るらしいぞ」
B「最先端か?」
C「最先端だ」
D「…………やるか?」
A「おぅ! きっと村長よろこぶぞ~」

「ファンタジーからの挑戦」(4)
これが当日の青年たちの姿だ。

村長は、4人の化粧には何か訳があるのだと思っていた。いつだってこの子たちは村の行事を明るく盛り上げてくれたのだ、これにもきっと理由があるのだ、と。
成人式がはじまった。
やがて村長は、はなむけの言葉を話しはじめる。
青年たちがここぞとばかりにそっぽを向く。私語を始める。電波が届かない村なのにスマホをいじるふりをしてみせる。
村長は、それでも話をやめなかった。
そしてついにクライマックス。4つの紙飛行機が一斉に宙を舞った……。
青年たちは清々しい笑顔でバンザイ三唱。

A「村長っ! 立派に荒れましたね!」
B「流行の大荒れ成人式でした!」
C「ついにこの村も最先端! ニュースに出たりして!」
D「……ん? あれ? 村長……どうして泣いてるんですか?」

全てを理解した村長は、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら4人を抱きしめた。
「お前たちはいい子だ! 馬鹿だけど!!」
その後、村長は公会堂の前で愛する4人の馬鹿を自慢のカメラに収めた。

「ファンタジーからの挑戦」(5)
これが、その時撮った記念写真なのである。

果たしてこちらのアルバムは、キッスのキャリアを通じて象徴ともいえる代表的ナンバー「ロックンロール オールナイト」を収録しているのだが……と、失敬。またまた音楽的情報をこれ見よがしに語ってしまった。

いやはやあらためて妄想世界に、いまいちど戻る。
公会堂の前で愛する4人の馬鹿を自慢のカメラに収めた村長と青年たち。彼らはこのあと村長と夢を語りあう。
彼らの将来の夢を……。

「いつかみんなでオリンピックに出てみてぇ」「アイドルに会って握手してもらう!」「映画とか出てぇ」「結婚して、子供ができたら手料理を食べさせてやるんだ」「絵が好きだから、いつか個展を開いてみたい! それも南の島で」「戦車に乗ってデート」「お金持ちになって、困ってる若い奴がいたら助けてやるんだ! 若い奴を助けてやるんだ!」
などなど。
いやはや。突拍子も無いものから、ありふれた夢まで。みな、口々に語る。いつまでもいつまでも、ロックンロールな夢を一晩中語り明かしたのだ。

村長に語った彼らの夢が、じつは、やがてすべて叶うことになるのだが……それはそれで、また別のお話。

「ファンタジーからの挑戦」(6)
夢をいだく若者たちよ。さあ、大志をいだけ!

すなわちこれは純朴な村の青年たちの、ありふれた成人式の一コマなのであった。
以上、キッス「地獄への接吻」。現実的に利かせていただきました。
そしてもちろん
利いたからには、聴かねばなるまい!!

「天才子役・笠原さん(48)」

銘柄:1984
蔵元:ヴァン・ヘイレン


「天才子役・笠原さん(48)」(1)

「この人に☆訊け!」

様々な業界で活躍中のキラリと光るヒトに聞く「この人に☆訊け!」
今回のゲストは、子役一筋45年。プロ子役・ケンちゃんこと笠原健一さん(48歳)だ。
みなさんも、1度は必ず見ているはずの超売れっ子プロ子役。あのオムツのコマーシャルも、あのドラマに出ていた子どもも、有名子育てマガジンの表紙も、すべてじつは笠原さんなんだとか。
ハードスケジュールの中、今回はとあるドラマの撮影合間に楽屋で一息つく笠原さんにお話をうかがった。
子どもであり続けることの難しさ、夢を叶えるための苦労など、キラリと光る話を訊いていく。

「天才子役・笠原さん(48)」(2)
ケン「13歳くらいまではそのままでいけたんですよ。特に何もしなくてもね。でもほら、その頃になるといろいろ体にも変化が現れるでしょ?」

─ああ、はい。そうですよね。

ケン「そう、まずは体毛。これがやっかいでね。最初はとにかく抜いてたんだけど。
追いつかなくて永久脱毛しました。でもね、医学的処理っていうのかな、そういうのは他には一切やってないんですよ。成長ホルモン云々とか、……変な噂も流れちゃいるけど。身長だって168センチですから」

─えっ? そんなにあるんですか?

ケン「嘘だと思ったら、近くに来て並んでみてくださいよ、……ほら、ね?」

─驚きました。なぜ私たちの目には子供の身長に見えてしまうんでしょうか?

ケン「やっぱり、演技力ですね。心から子供を演じる。……いや、もう演じるとかを超えて“子供になってしまう”。それがきっと見ている人たちに魔法をかけるんでしょう」

─すごい役作りですね。

ケン「しかし気が抜けないですよ。実生活でも気が抜けない。僕の場合、人生がすべて役作りの為にあるようなものですから。……あっ、でも最近ちょっと困っていることもあってね。ほら、家に帰れば僕も2児の父じゃないですか。

「天才子役・笠原さん(48)」(3)
時々、妻が僕に間違えて授乳するんですよ」

─は、はあ。健康面もかなり気を使っていられるんですか?

ケン「ええ。できるだけ動かずに筋肉をつけないようにしたり、毎日コラーゲンをたっぷり摂るとか、12時間以上寝るようにしたり……と。体型を維持するのも大変です。

「天才子役・笠原さん(48)」(4)
本当はコレもだめなんだけどね。やめられなくて(笑)」

と、タバコを片手に悪戯っぽく笑うケンちゃん。じつはかなりのヘビースモーカーなんだとか。

─45年間、子役一筋でこれた秘訣みたいなものってあるんでしょうか?

ケン「うーん。やっぱり、使い勝手じゃないですかね?」

─使い勝手?

ケン「ええ。一応、こう見えて大人だからね。業界のしきたりは当然わかってるし。監督さんやキャメラマンが何を求めているか、そりゃわかるわけじゃないですか。
これがホンモノの子役だとそうはいかないでしょ。それに多少ぞんざいに扱っても大丈夫だからね、僕の場合。なにせもうすぐ50のオヤジですから……ガハハハ」

と、豪快に笑うケンちゃん。そのほんの束の間、彼の本当の姿が見えたような気がした。それはどこにでもいる中年男のまぶしい笑顔だった。

─ところで今回のドラマの役どころは?

「天才子役・笠原さん(48)」(4)
ケン「鳥人間コンテストに出場する小学生の役ですよ。

これからセットのプールに飛び込むんです。まったく、人使いの荒いスタッフですよ、ここのスタッフは(笑)」

─大変ですね(笑)。じゃあ最後に、読者の皆さんにメッセージを。

ケン「夢を諦めないでください。僕も昔は悩んだんですよ。でもね、そこで諦めず続けたからこそ、今日の成功があると思っています。じつは、悩んでいた時に人生の恩人とも言えるような人に出会いましてね。その恩人って言うのが……」

と、そこで
「笠原さーん、ぼちぼち本番よろしくお願いしまーす」というADの声が楽屋に響いた。
「あらら、時間だ。ごめんよ。この話の続きは………またこんど」と、ケンちゃんはタバコをもみ消し「よっこいしょ」と腰を上げた。

「天才子役・笠原さん(48)」(5)
「じゃあ、行ってくるね! インタビューのおじちゃんバイバイ!」

瞬時にして役に入り無邪気にステップしていく笠原さん。
まだまだお訊きしたかった笠原さんの波乱万丈な人生ではあったが、
売れっ子ならではの多忙ゆえ仕方がない。
笠原健一(48)。職業 プロ子役。
50歳を目前にして、彼は今年、極めて困難な役柄を演じる予定だと言う……それは

分娩台の新生児。

果たして、どんな魔法をかけてくれるのか。これからのケンちゃんにも目が離せない☆
おしまい。

…………いかがだったろう。この「現実的な」利きは?
ちなみにヴァン・ヘイレンのデビューアルバム「炎の導火線」。そのアルバム裏面に「Special Thanks」「Gene Simmons」の名があるのをご存知だろうか?
アマチュア時代の彼らをジーン・シモンズは、デモテープ製作費等の面でバックアップしたというのだ。お金持ちになってから、困ってる若い奴を助けたジーン・シモンズ。
若きヴァン・ヘイレンの恩人ジーン・シモンズ。なんて素敵なエピソード!……おっと、音楽的要素は利きジャケには禁止だったっけ。失敬失敬。

あれ? でもなんだか私は今、妄想と現実の狭間に漂っているみたいな気がしてきたぞ? もしかして、あの純朴な村の青年が、悩める子役に「プロ」の道を切り開いた? ケンちゃんの恩人があの青年?
なんだかわからなくなってきた。
果たして、この言葉を述べて今回の妄想の旅を終えるとしよう。

以上、ヴァン・ヘイレン「1984」存分に利かせていただきました。
利いたからには……聴かねばなるまい!
    • 1984/Van Halen

      アルバム

      1,543

      1984
      Van Halen

今回の逸品

    • 1984/Van Halen

      アルバム

      1,543

      1984
      Van Halen
  • そして今回も、快くジャケの使用を許してくれた太っ腹なユニバーサルと、ワーナーに感謝。ありがとう。


    Text:ヴィンセント秋山

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