リペアマン直伝!もう一度弾きたい!自宅でできるエレキギターメンテ法

リペアマン直伝!もう一度弾きたい!自宅でできるエレキギターメンテ法(1)
押し入れの奥やタンスの上、ベッドの下、物置など、長年閉まったままのギター。
“もう一度弾きたい!”――そんな思いで引っ張り出してきて、ケースから出してみたものの、とても弾ける状態ではなかった…なんてことは全然あり得ます。
そんなときは、できる限り自分の手で、とりあえず弾ける状態まで持っていこうじゃありませんか。
レクチャーしていただくのは、プロミュージシャンや楽器店から厚い信頼を受ける、インフィニティー・プロダクツの代表兼リペアマン、木庭啓惟さんです。
ちなみに近年では“ジャパンヴィンテージ”なんて言葉も生まれているので、もしかすると眠っていたあなたのギターにも実はプレミアムがついていたりして…!
症状によっては自力で直せない場合もあるので、そのときは楽器店またはリペアショップに持って行きましょう。
なお、作業はくれぐれも自己責任でお願いいたします。

まずはギターの健康診断

自分のギターの状態を把握しよう

ギターを引っ張り出してきたら、まずは健康診断ですね。今回触れている項目は以下の通りです。作業は無理のない範囲で行いましょう。
1.ネック反り
2.弦高
3.ガリ・ノイズ
4.ピックアップの高さ
5.トレモロユニット
6.クリーニング

まずはギターの健康診断

揃えておきたい工具

プロ御用達の専用工具から、100円ショップで買えるお手頃なものも!

今回はこちらのアイテムを使います。各部を拭くときは、クロスではなく、ウエス(汚れを拭き取るための布)を使ってください。ポリッシュやコンパウンドを使ってゴシゴシ磨いたりするので、クロスを使うのはもったいないです(笑)。着古したTシャツでもOKです。ライターオイルは、指板の汚れを落とすときに使います。
レモンオイルとかオレンジオイルというのは、保湿・保護用ですね。指板の手入れの仕上げに使います。汚れを落とす効果もあるんですけど、効果が弱いので僕はあまり使いません。
ちなみに主成分はミネラルオイルなので、ジョンソン ベビーオイルでも代用できます(笑)。ただ、レモンオイルやオレンジオイルには香料やUVカットの成分も入っているので、それがいいという方はそちらを使ってください。

メンテナンスに必要な工具類!
揃えておきたい工具
▲多くの家庭にあるものから、ぜひ揃えておきたい工具。100円ショップで手に入るものもあれば、楽器店やホームセンターに行かないと買えないようなものもあります。
(1)「金属製スケール(ステンレス製など)」。歪みのない金属性のものがおすすめで、しかも端が0ミリになっているものを選ぶというのもポイントです。
(2)ビニールなどでシールドされた配線用ワイヤーの被膜を除去(皮むき)するための「ワイヤーストリッパー」
(3)「ラジオペンチ」
(4)「ニッパー」
(5)ペグを素早く回すための「ストリングワインダー」
(6)「プラスドライバー」×2本
(7)「マイナスドライバー」×2本
(8)「六角レンチ」一式。ギターのメーカーによってミリサイズとインチサイズがあるので注意! 主にUSA製はインチです。
(9)「ハンダごて」「こて台」
(10)トラスロッド調整をヘッド側で行うタイプのギターに使用する「ドライバー付きパイプレンチ」×2本
(11)ネックの反りを検証する際やボルトオンジョイントのネックを外す際にも便利な「カポタスト」(本来は演奏に使用)
(12)六角ナットを締める際に使用する「ボックスレンチ」×2本
(13)金属パーツを磨くための「コンパウンド」(2点)
(14)指板などの保湿・保護に用いる「レモンオイル」
(15)指板の汚れを落とすために使用する「ライターオイル」
(16)汚れを落とすために使用する「タオル」「ウエス」。ボディの汚れを拭き取るためのクロスやセーム皮とは使い分けたほうが良いです。着古したTシャツでもOK。

1.ネックの状態をチェック

チェック⇒調整⇒チューニング⇒チェックを繰り返す

ネック調整自体は簡単で、反りの状態を知ることが重要です。最初はネックの状態を見るために、チューニングを合わせた状態で1フレットにカポをして、最終フレットを押さえます。そのとき、8~9フレットあたりでフレットの上面と弦の間に、どれくらいの間隔があるかを確認します。0.5ミリほどあればOKです。

ネック反りの概念とチェック方法
ネックの状態をチェック(1)
▲弦の張力に引っ張られて、ネックが起き上がってきた状態が「順反り」。その反対が「逆反り」。特にエレキの場合、弦高を張ってチューニングを合わせたときに、ネックがベストな状態になるよう調整されていると仮定するなら、しばらく弾かないからということで弦を緩めて保管していた場合、ネックは逆反りになってしまいます。
チューニングを合わせた状態で、1フレットにカポをして最終フレットを右手で押さえ、8~9フレットあたりで確認。
フレットの上面と弦の間隔が0.5ミリほどあればOK。隙間がない場合は逆反り、1ミリの隙間がある場合はやや順反り。2ミリ以上の隙間がある場合は、すぐに調整を!
隙間がない場合は逆反りの状態なので、弦を緩めてからトラスロッドを反時計回りに30度ほど回して、トラスロッドを緩めます。
逆に、1ミリ以上の隙間がある場合は、やや順反りの状態です。そのままでも特に問題ない場合もありますので、気になる場合は時間を置いてから再チェックしてみましょう。2ミリ以上の隙間がある場合は、やはり弦を緩めてからトラスロッドを時計回りに30度ほど回して、トラスロッドを締めます。一度に回し過ぎないように注意してください。約30度回したらチューニングを合わせて様子を見て…という手順です。
ヘッド側あるいはボディエンド側から、視線を指板と平行にしてチェックする方法がありますが、その方法は経験を積んだプロじゃないと診断し切れなかったりするので、先に紹介した方法で診断するのがおすすめです。
長い間、弦を緩めた状態で保管していると、ネックは弦の張力ありきでバランスが取れていたわけですから、逆反りになってしまうことが多いですね。ひどいと一度フレットを抜いて指板を擦り合わせて…という作業になってしまうので、エレキギターで弦を緩めておきたい場合は、一音とか二音下げくらいでいいと思います。弦をユルユルにしたい場合は、トラスロッドも緩めて保管したほうがいいですね。

トラスロッドの回し方
ネックの状態をチェック(2)
▲ネック反りの修正は、「トラスロッド」というネックに仕込まれた金属棒を回して行います。弦を緩めてからトラスロッドを約30度回し、チューニングを合わせて様子を見るという手順の繰り返し。
順反りを修正する場合は、トラスロッドを時計回りに30度ほど回して締め込む。
逆反りを修正する場合は、トラスロッドを反時計回りに30度ほど回して緩めます。一度に回し過ぎないよう注意!

ギターによってロッドの位置が異なる
ネックの状態をチェック(3)
▲トラスロッドを調整する位置は、主にギブソン系などでセットネックの場合、ヘッド側(写真左)。トラスロッドカバーを外してパイプレンチで調整します(カバーがない場合も)。
主にフェンダー系などでボルトオンジョイントのネックの場合、ネックを外してドライバーで調整しますが(右)、トラスロッドの先端がヘッド側に出ていて、六角レンチで調整するモデルも。

2.弦高を調整

弦高は低ければ良いわけではない

弦高のチェックは、1フレットを押さえた状態で、12フレットの弦高を見ます。工場出荷時の弦高は、1弦で大体1.5ミリぐらい。低いものだと1.2ミリぐらい。6弦は1.5~2ミリぐらいになります。
上達しないのをギターのせいにして、弦高をもっと低くしたいというお客様もいらっしゃるんですけど、何ミリにしたいか聞くと「できるだけ…」とかで、基準値や低限を知らない方も多いんです。基準値より低いギターは工場から出荷されないわけですから、それは知っておいていただきたいですね。

弦高は弾きやすさに直結
弦高を調整(1)
▲弦高は弾きやすさに直結する項目ですが、ネックの調整ができていない状態で弦高を修正するのは無理があるので、必ず先にネックの状態をチェック&調整しましょう。
弦高が低いと弾きやすくなる分ビビりやすくなったり、チョーキングしたときに音詰まりしやすくなります。なお、ストラトキャスターに搭載されているような、ブリッジサドルにイモネジが2箇所ついているタイプは、六角レンチで回して調整(テレキャスターなどの固定式ブリッジの場合も同様)。このタイプは弦ごとに調整できますが、指板のアール(カーブ)よりも少し小さめの弧を描くようにしましょう。ブリッジサドルは2本のスタッドで支えられているため、なるべく水平になるようセットします。極端に傾いて片方のスタッドが浮いていたりすると、その弦のみ振動がボディにしっかりと伝達されないので注意!
レスポールに代表されるチューン-O-マチックの場合、各弦での調整は不可能で、両端のサムナットを回してブリッジ全体の高さを調整します。

3.ガリやノイズを解消

アンプに接続してチェックしよう

生音で弾いてみてネックや弦高をチェックしたら、次にアンプで鳴らしましょう。まずアウトプットジャックは、角度によってザクザク言ったり音が出ないポイントがある場合は、ジャックの交換が必要ですね。
ジャックとプラグにも相性があって、接触が良くない場合もあります。スイッチクラフトとかの海外製ジャックと国産のプラグなど、形状の違いによって接触する部分が面ではなく点になってしまうというのが原因ですね。なので接触が悪い場合は、そのあたりをチェックしてみるのもいいと思います。
ちなみに、ドライバーなどにサンドペーパーを巻いてジャックの内側を掃除するのは、ほぼ無意味です(笑)。交換したほうが早いので。

ジャックとプラグの相性診断
ガリやノイズを解消(1)
▲ギターのジャックと、シールドケーブルのプラグの相性によっては、接触が悪いことも。相性がいいと左のように面接触(=接触面積が大きい)するが、相性が悪いと右のように点接触(=接触面積が小さい)になります。少しマニアックな話ですが、ついでにチェックしてみると良いでしょう。

あとは、ジャックの六角ワッシャーが緩んでいる場合もあります。内歯型の菊座金(菊座ワッシャー)が挟まれていないために、緩みやすくなっている場合もありますね。ワッシャーを締めるときはジャック本体を固定しておかないと配線が切れてしまうこともあるので、そこも注意してください。

菊座金(菊座ワッシャー)をつけるとジャックが緩みにくくなる
ガリやノイズを解消(2)
▲ケーブルの抜き差しをするアウトプットジャック。どうしても緩んでしまう部分ではありますが、ジャックと六角ワッシャーの間に、写真のような菊座ワッシャーを挟むことで、緩みが防止されます。もちろん、最初から挟んであるモデルも。また、外歯型のワッシャーも比較的緩みやすい。ワッシャーは100円程度で購入できるので、ついていない場合は自前ではめ込んでも良いでしょう。ただし、規格を間違えないよう注意。
ジャックを締めるときは、アウトプットジャックのプレートをボディから外して、内側を手で固定した状態で六角ワッシャーを締めないと、ジャック本体が空回りして配線が切れてしまうので注意。工具はボックスレンチを使うと便利!

ジャックを戻すときは、接点の向きに注意しましょう。レスポールの場合、ジャックが入っている穴の位置が偏っている場合もあるので、ジャックを固定する位置をプラグが差さりやすいところに調整してください。
電装部分で言うと、交換することが多いのはアウトプットジャック、ボリュームポット、スイッチ、トーン類という順です。
ボリュームやトーンは、回したときにガリが出るポイントがあった場合、洗浄という対処法は有効です。ただ、特に国産のポットは古くなると膠着して動かなくなることもあるので、そうした場合は交換するしかないですね。
ピックアップセレクターは、自動コイルタップなどの配線をしている場合、ピックアップの特性によっては切り替えると多少パチパチ言ったりするものもあります。それはトラブルではないんですけど、ちょっと触ったときとか切り替えたときに音が途切れたりするのは接触不良なので、その場合は十中八九が交換になりますね。
ジャックの不良に関しては、ブーンという中周波くらいの大きなノイズが出る場合は、グラウンド(アース線)が切れています。ウンともスンとも音が出ない場合は、ホット側が切れています。そういった場合はハンダで修正してあげればいいんですけど、音が出たり出なかったりする場合、ハンダ不良以外は配線が切れかけているのが原因というのはあまりないですね。パーツ自体の交換になることが多いです。

プラグの位置に注意
ガリやノイズを解消(3)
▲ジャックを戻すときは、接点を下側にして固定。左がストラト、右がレスポール。レスポールの場合は、ジャックが入っている穴の位置が偏っている場合もあるため、ジャックを固定する位置はプラグが差さりやすいところ(ジャック側の接点がボディ内部に当たらない位置)に調整して固定を。

4.ピックアップの高さ調整

久しぶりに弾くときにはピックアップの高さも確認を

音色という点においては、ピックアップと弦の間隔が近いと電流値が増え、音量が増すのと同時に高音と低音が出てきます。
まずはリアピックアップの高さを決めるということが重要ですね。ギブソンの古いカタログを見ると、最終フレットを押さえてピックアップと弦の間隔を測ったときに、リアピックアップを基準にして1.6ミリくらい空けてくださいと書いてあります。ストラトの場合、ポールピースがそのままマグネットになっていて、弦を引き寄せる磁力が強いので、同じくリアピックアップが2ミリくらいとか、少し下げ目にしてもらっていいと思います。それで音量のバランスを取ると、通常は1弦側よりも6弦側のほうが高くなります。
そしてセンターやフロントピックアップは、リアと同じ音量になるように合わせていきます。そうすると、フロントのほうが低くなるはずです。弦の振幅は、中点に近いほうが大きくなるので、リアよりもフロントのほうが弦の振幅が大きくなって、音も大きくなるという理屈ですね。あとフロントやセンターピックアップが弦に近すぎると、弦を引き寄せる磁力が強いために、ビビったような音になってしまうことがあるんです。そういう場合も、下げ目にセッティングしたほうがいいですね。

ピックアップの高さの測り方
ピックアップの高さ調整(1)
▲最終フレットを押さえた状態で、リアピックアップ(ポールピースの上面)と弦(下面)の間隔を測る。
「揃えておきたい工具」のスケールのところで“端が0ミリのもの”と書いたのは、こういった場合のため。
ピックアップの横のネジをドライバーで回すことで、高さを調整できる。

5.トレモロユニットの調整

トレモロユニットのスプリング交換

トレモロユニットを搭載しているモデルの多くは、ボディ裏でスプリングの張り具合の調整をする場合もあります。スプリングが掛かっているハンガーが、ボディにネジ2本で留めてあるんですけど、そのネジを締め込んで張り具合を調整するのが基本。チューニングとスプリングの張力とのバランスを取りつつ、ユニットを適正な位置にセットするという作業なので、結構大変だと思います。
スプリングの張力が弱くなってしまって、この方法だとトレモロユニットが適正な位置にセットできない場合は、スプリング交換ですね。5本掛けられるのでスプリングの本数を増やすという方法もありますけど、本来は3本でバランスが取れるはずなので、弱くなってしまったスプリングは交換したほうがいいと思います。

スプリングハンガー
トレモロユニットの調整(1)
▲スプリングをボディに固定しているパーツがスプリングハンガーで、2本の太いネジによってボディに固定されている。これを締めたり緩めたりすることで、スプリングの張力が調整できる。
トレモロブリッジは、弦を引っ張るためのスプリング(バネ)で張力のバランスを保っているが、経年変化でバネの張力が弱まってしまうことがあります。交換の際は弦を外して、必要に応じてスプリングハンガーに取り付けられたビスを緩めて、新しいものに交換して再びビスで固定。スプリングは3本が一般的ですが、最大5本装着可能。バネの数を変えるとサウンドキャラクターも変わります。

6.クリーニングでギターをピカピカに!

キレイなギターで楽しいギターライフを

さすがにカビだらけのギターをそのまま弾くのは、手や服に付いちゃったりして衛生的にも良くないので(笑)、カビとか汚れ、ホコリなんかも落として弾いたほうがいいですね。クロスではなくウエスを使って、ポリッシュやコンパウンドを使ってゴシゴシ磨いてください。コンパウンドを使うのは、主に金属パーツですね。ラッカー塗装で酸化膜ができているギターにコンパウンドを使うと、ひどいことになります。一発で真っ白になってしまうので注意してください。
フレットが錆びていることも結構あるので、その場合もコンパウンドですね。フレットを磨いていないと、チョーキングができないぐらいガサガサになってしまったりもするので。磨く際は、指板が黒くなってしまわないようにマスキングをしたほうがいいでしょう。特にメイプル指板の場合は黒い汚れが付きやすいですね。

コンパウンドで金属パーツをピカピカに!
クリーニングでギターをピカピカに!(1)
▲フレットなどの金属パーツには、ピカールなどのコンパウンドを使いましょう。ただしその他金属パーツの金メッキなどは剥がれてしまうので要注意!
指板に汚れが付いてしまう恐れがあるので(特にメイプル指板)、このようにマスキングをしておくと良いでしょう。
ウエスで手を覆って、2~3枚重ねたところで指が突起するように持ち、コンパウンドを数滴出して馴染ませます。1フレットずつ、横方向に磨き上げます。

指板の汚れには、ライターオイルを使います。揮発も早いので、汚れを落とすのにはちょうどいいんです。ウエスやティッシュペーパーに付けて、手垢やホコリを拭き取ります。そして、レモンオイルやオレンジオイルで仕上げます。

仕上げはレモンオイルで!
クリーニングでギターをピカピカに!(2)
▲ライターオイルで汚れを落としたら、レモンオイル(またはオレンジオイル)をウエスやティッシュに含ませて塗布し仕上げます。フレットのすぐ横に汚れが溜まりやすいので、そのあたりは特に入念に!


クリーニングでギターをピカピカに!(3)

木庭啓惟
こばけい/1971年、神奈川県出身。楽器店勤務を経てカスタムギター製作の傍ら、リペアを行う。独立後は米国ギターメーカーのデザイナーおよびアーティストリレーションを行い、現在は(株)インフィニティー・プロダクツの代表取締役兼リペアマンとして活躍。趣味が高じて、ポルシェ空冷エンジンの製作やパーツの開発販売、オリジナル腕時計の製作販売も行っている。
http://infinityproducts.co.jp

著書
『あなたのエレキ・ギターが劇的に弾きやすくなる
メンテナンス・ブック 40のポイント』
小社刊
1,600円+税
http://www.ymm.co.jp/p/detail.php?code=GTL01089308

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