ライブ・機材・ルーツ ~全米チャート1位プレイヤー BIGYUKIの今~

ライブ・機材・ルーツ ~全米チャート1位プレイヤー BIGYUKIの今~
ア・トライブ・コールド・クエストの『ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア・サンキュー・フォー・ユアー・サービス』、J・コールの『4・ユア・アイズ・オンリー』という2枚のアルバムは、ともに全米アルバムチャート一位を獲得。日本人の参加ミュージシャンとして史上初の快挙を成し遂げたキーボーディストBIGYUKI。昨年、モントルー・ジャズ・フェスティバル2017のために来日した鬼才にセッションの魅力、シンセベースの奏法などを聞いた。また、その来日の際撮影された衝撃のMVもついに公開された。日米で話題沸騰中のBIGYUKIの今をお届けする。

“海外で活躍する日本人プレイヤー”は多数いるが、BIGYUKIは別格だ。

BIGYUKIはNYを拠点に活動する日本人ピアニスト/キーボード奏者。その注目度は来日したR&Bやヒップホップ方面のミュージシャンにインタビューをすると、必ずと言っていいほど彼の名前が上がるところからも明らかだ。昨年参加したア・トライブ・コールド・クエストの『ウィ・ゴット・イット・フロム・ヒア・サンキュー・フォー・ユアー・サービス』、J・コールの『4・ユア・アイズ・オンリー』という2枚のアルバムは、ともに全米アルバムチャート一位を獲得。日本人の参加ミュージシャンとして史上初の快挙を成し遂げた。(ちなみに全米アルバムチャート一位獲得者でいえば、オノ・ヨーコから二人目?)“海外で活躍する日本人プレイヤー”は多数いるが、BIGYUKIは別格なのだ。
  • そんなBIGYUKIが帰国の際にコラボレーションを熱望したのが、お笑いコンビ‘野性爆弾’のくっきー。楽曲のイメージから自由に作ってもらったというこのMVについて、本人も「自分もそれぞれ違う音楽スタイルの要素をもってしてBIGYUKIの世界観で音楽を再構築するのを信条としていて、今回そのイメージがくっきーのエグ可愛いキャラでビジュアライズされていると思います。最高です!!」と、大満足。まずはこちらからチェックしてもらいたい。


    今回は、新作『リーチング・フォー・ケイローン』発売後初となる日本でのライブ、モントルー・ジャズ・フェスティバル2017(http://www.montreuxjazz.jp/)の為に来日した彼に終演後の楽屋で話をきいた。当日のライブでは、直前に急遽ドラマーが変更になるというトラブルもありながら、抜群の演奏を見せてくれた。自分で「僕はベーシストだから」と語るように、左手で奏でるベースラインはコードを押さえる右手と別人格のように動き回り、音楽をヒートアップさせていく。新作『リーチング・フォー・ケイローン』でみせたようなプロデューサー的なスタンスとは一転して、弾きまくるプレイヤーとしての顔をみせたり、それでいてバンド全体を冷静にコントロールするような場面があったりと、ステージ上でその両面が交錯していく。MCでは陽気なキャラクターながら、飛び抜けたストイックさも感じた。
  • “海外で活躍する日本人プレイヤー”は多数いるが、BIGYUKIは別格だ。(2)

    せっかくのライブ取材なので機材の写真もとらせて欲しい旨を伝えると、「YAMAHAのメディアなんですよね?僕、MOTIF大好きなんですよ!今日は使ってないけど(笑)」と気さくにOKをくれた。今回は彼の<ライブ>な一面に焦点をあて、当日のライブでの話だけでなく、日本でクラシックピアノを弾いていた幼少期の話、アメリカの現場で戦う現在まで、幅広い話を聞くことが出来た。

    “海外で活躍する日本人プレイヤー”は多数いるが、BIGYUKIは別格だ。(4)
    左上から、KORG SB-100、MOOG Little Phatty StageⅡ、NORD Stage 2EX、Dave Smith Insturments Prophet-6 SEQUWNTAL、Dave Smith Insturments Prophet’08、Strymon blueSky Reverb

    “海外で活躍する日本人プレイヤー”は多数いるが、BIGYUKIは別格だ。(5)
    “海外で活躍する日本人プレイヤー”は多数いるが、BIGYUKIは別格だ。(6)
    KORG SB-100に繋がれたエフェクター。PitchblackはSB-100のチューニング用。「70年代のシンセだけど、ステージの最初にチューニングをすればライブ中にずれる事はない」そう。また、BOSS EV-5はProphetのボリューム調節用として接続されており、これでボリューム奏法をみせる場面も。

「作り込んだ音を生演奏の熱量を持って再構築する」

─今回のライブは自身のキーボードにギタリスト、ドラマーというトリオの編成でした。トリオで演奏するようになった理由はどんなところですか?

トリオが好きなんですよね。三人で三人以上の音が出せるのがカッコイイなと思って。(着ていたTシャツを見せながら)例えばニルヴァーナとかね。

「作り込んだ音を生演奏の熱量を持って再構築する」(1)

─なるほど(笑)。この編成だとジャズのオルガン・トリオが浮かびます。

もともとオルガン・トリオが好きだったんですよ。スウィングのものからレアグルーヴ的なものまで。ラリー・ゴールディングスとか大好きで。だけどそういうサウンドにはしたくないなとは思っています。やっぱりギターが入るとオルガン・トリオっぽく、例えばSouliveっぽいサウンドになっちゃうんですけど。そこから抜ける方法を模索中です。

─オルガン・トリオっぽくないほうが良いと。

そう。キーボードがベースを弾いてギターがメロディとソロをとって、というありがちなものにはしたくない。もっとプロダクションでがっつり作り込んだ音を、生演奏の熱量を持って再構築するみたいな。

─その時に何がキーワードになりますか?

”再構築”ですね。もともと僕は音楽を作る上でも、色んな好きな音楽があるなかから好きなエレメントを持ってきて自分のものとして再構築する、リミックスみたいな感覚なんです。

「作り込んだ音を生演奏の熱量を持って再構築する」(2)

─ライブではそれを人力でやると。

人力再構築ですね。どこまで人力にこだわるのかなっていうのはまだわからないですけど。やっぱりこれから演奏する場がどんどん大きくなった時に、やっている側としては人力のほうが楽しいしやりがいはあるけれど、聴いている側としては人力でやっているからという部分にどれだけ意味があるのかな、というのは最近考えているところですね。例えばトラックを作ってしまってそれを流しながらやるっていう方法もあるんですけど。みんなでクリックを聴きながらリズムシークエンス的なものを使うとか、Abletonを使ったりしてもいいし。そういう方法も別にありなのかなって。

─へぇー! それは意外です。

ミュージシャンとしては生で出せないような音を生でやっているのが面白いんですけど、音楽として聴いた時にどれだけ意味があるのかなっていう疑問はあります。でもやっぱりチャレンジ出来る限りは人力でチャレンジしたいなと。

メンバーは「リズムを感じる楕円の振り方が同じ人」

─今回のバンドメンバーを紹介していただけますか?

今日のドラマーはバークリーの時にルームメイトだったんですよ。すごい一緒にジャムったりとかもしてて好きな音楽も同じで。
僕がメンバーを選ぶ時に大事にしているのは、自分がやっていて気持ちいいリズムの感じ方ですね。タイムが良いとかは当たり前の話なんですけど、そうじゃなくてフィールの感じ方。リズムを感じる楕円の振り方が同じ人がいいですね。自分が気持ち良いと思うところと同じ、あるいは近いところで感じている人じゃないと。俺はベースを弾いているから、そこが噛み合わないとやり辛いというかやれない。

メンバーは「リズムを感じる楕円の振り方が同じ人」(2)

─なるほど。

それ以上の音楽の表現の幅っていうのは、それぞれのプレイヤーで違いますし。彼の場合はそのフィールが良い事にプラスして、音楽の表現の幅が広いから。それはやっぱりジャズの演奏力になるのかなと思うんですけど。その場で演奏を聴いてスポンティニアスに出力出来るっていう。

─セッション的な要素ですね。

あとは楽器の上手さ。俺は楽器の上手さが一番出るのは、すごい音量が小さい時、小さい音で弾いたりとか叩いたりとかした時に、ちゃんと楽器の音が鳴っている人だと思うんです。例えばブライアン・ブレイドとか。音量が小さい中でも表現の幅がすごく広い。ヒップホップしか演奏しないドラマーだと、そこの表現の幅・音量の幅が狭まっちゃうんですよね。音量が小さい中でも何層にも表現の幅、レベルがある人が好きですね。これはジャズ・ミュージシャンと言うか、聴いている音楽の幅が出るんじゃないかな。

─ギタリストもかなり特徴的なプレイでした。

あいつはみんなの財産です。一番好き。

メンバーは「リズムを感じる楕円の振り方が同じ人」(4)

─どこで出会ったんですか?

バークリーです。タイガー大越さんのアンサンブルの授業を一緒にとっていたんですよね。昔は髪がめっちゃ長くて、プレイも超フュージョンだったんですよ。複雑なコード進行の上で早いフレーズをガンガン弾くような。その時にこいつやべえなと思って。メロディに嘘がないっていうか、常に歌っていて。それからどんどんシンプルになっていってますね。色々なものが削ぎ落とされていって。

─ギタリストだけどサンプラーも使っていましたね。

だから今の段階での、スタジオで作り込んだ音を生で演奏するためにサンプラーを使うっていうのが、今の時点での俺の答えというか方法ですね。けど来年とかは……いや、これはまだ言わないでおこう(笑)。

「アルバムを作り込むような気持ちでライブを作り込みたい」

─今日のライブを見ていて、どこまでが決まっているフォームなのかなと疑問に思いました。

自分は基本的に面倒くさがりなので譜面とかも作らないし。メロディとか、キメとか、キューを出したらここに行く、みたいにある程度の外枠は決めるんですけど、その中の細かいところは即興ですね。リハーサルでも実際に演奏して<ここはこうで>って口で伝えていく。ドラムとかも<ここはハイハットにしてくれ>みたいに細かいところで指示を出すことはあるけど。
でもまだまだライブ用に作り込む時間が必要ですね。アルバムが出来た次の日からずーっとツアーに行きっぱなしだったんですよ。ライブメンバーとガッチリ作り込んだサウンドはまた次の機会ですね。来年にツアーをやろうかって話も出ていて。

─それは楽しみです!

アルバムを作り込むような気持ちでライブを作り込みたいですね。完璧に全部を作り込みたいってわけではないんですけど。決めるところは本当に緻密に決め込んで、逆に決めないところは決めないで。そうしたらその対比がもっと面白くなるじゃないですか?本当にタイトに作って、そこから自由になっていくから。

─「ライブをアルバムみたいに作り込む」というのは面白いですね。

アルバムを作る時は作っている最中、スタジオに人を呼んで演奏してもらっている時に楽曲がどんどん有機的に変化していくような感覚なんです。でもそのスピードは演奏している時と同じぐらいのスピードで。<こういうのが欲しい>って言われた時のスピード感ですね。その後でミキシングの時に<この音色はこう>とか<このハイハットの音色はもっとこうしたい>、<バランスはこうしたい>っていうちょっとしたところの調整を時間の許す限りやりました。

─アルバムの制作でもゲスト・ミュージシャンは即興的ということですか?

もちろん最初にイメージがある時と無い時があります。ある時は伝えるけれど、例えばビラルとやる時はすべて任せたりしましたし。今日も演奏した”NUNU”とかは、<こういうフィールが欲しい>とか<こういう音が欲しい>っていう俺のイメージは全部伝えました。その上でプレイヤーが演奏して、そこで突発的に起きるハプニング的な部分に面白いところがあったら<それもう一回やってよ>って言う。そういう意味で、その場でどんどん変化していく中で作り変えていくんです。モーフィングっていうか。その都度その都度<それいいね!>っていうふうに。
その場で起きたことを尊重するって感覚ではなくて、<大体こういう演奏とかアプローチをするだろうな>っていうのがわかった上でゲストを呼んでいて、それでもマジックが起こるから面白いんです。

─じゃあライブをしていく上でも変わっていくと。

もちろん。ライブの中で出てきたもので<それいいね!>ってところがあれば、どんどん変化しますね。

「これの中にはゴーストがいる気がします」

「これの中にはゴーストがいる気がします」(1)

─今日のライブでもいくつもの音色を使い分けていましたけど、好きな音の基準って何かありますか?

インスパイアを受ける音。あとは自分の中でイメージがあるものもありますね。こういう音が好きだなと思って、それを似せようと思って作った音にどれだけ説得力があるかですね。

好きな音だと、例えばジョー・ザビヌルの音とか。ジョージ・デュークも最高だし、スティーヴィー・ワンダーはヤバいですよね。あと冨田勲さんの音は大好きです。何かで読んだんですけど、冨田さんは作った音色一つ一つに名前をつけていたとか。ある曲の主旋律で使った音を、別の曲の副旋律で使ったりとかしていて。そのシステムって手塚治虫の漫画のスター方式?みたいだなって思って。作品をまたいで同じキャラクターが出てくるみたいなね。それはつまり、それだけ音色に愛着が湧いているってことですから。

─自分でも名前をつけたり?

つけてる……事もありますね。いや、つまんない名前ですよ(笑)。

─ツアーで世界をまわる時は機材はどうしているんですか。

現実的に持っていけるものに限りがあるので、現地で借りることが多いですね。でもKORGのベースシンセはどこでも持っていきます。自分のサウンドの核だと思っているので。

「これの中にはゴーストがいる気がします」(3)

─これはどんなきっかけで使い始めたんですか。

オルガンに一回ハマって、最初はオルガンでベースを弾いていたんですよね。ファンクとか、ストレート・アヘッドなジャズとか。そこからネオ・クラシカル・フュージョン・メタルみたいなわけわかんないバンドをやったときに、オルガンのベースだと物足りなくなって。その時に同じバンドのメンバーの父親がスタジオを持っていて、たまたまあれをくれたんです。これが人生初のシンセですね。

─そこからずっと使うようになったのは何故ですか? どう気に入ったというか。

このシンセは、めちゃくちゃシンプルなんです、フィルターも一つでオシレーターも一つしかないし。これに出来ることって限られているから別のにしようかな〜と思ったこともあったけど、これを弾いた時の部屋に空気が満ちるような感じっていうのはデジタルシンセだと出ないんですよね。別に俺はアナログ信者ではないんだけど、なんかやっぱりこれの中にはゴーストがいる気がします。僕よりも年寄りですからね。

─今日はステージにベースアンプもありましたね。

KORGとMOOGだけアンプから出していました。

「これの中にはゴーストがいる気がします」(4)

─じゃあやっぱりすごい威力ですね。

これにすごく頼ってます。これが無くなっちゃったらどうしようって思いますもん。すごい珍しいとか高価なやつってわけでは無いんですけど、eBayでも全然売ってるの見ないですね。

─へぇー。

ライブでもこれは欠かせないですね。アルバムではMOOGとかRolandのJupiterも使っているんですけど。これとピアノと、プロフェット2台の今のセットが、自分の中で<とりあえず何でも出来るだろうな>っていう組み合わせですね。

「低音の無い人生なんて」

─世界でツアーを回る時は、どんなライブハウスで演奏することが多いんですか?

はじめはジャズ・クラブが多かったかな。バキバキに音が出るところで出来ることもあるし、いわゆる<ジャズ箱>みたいなところでやることもあります。そういうところでやると、ウーファーが無かったりとか音量のリミットがあったりするんだけど。俺の友達は<ベニューに合わせて演奏しろ>って言うんです。ベニューの響きも演奏して音を作っていく上での大事な要素だから、例えばジャズ箱でバキバキの演奏を無理やりやろうとしたら音が汚くなってしまうし、そういう調整は自分で出来る限りはやりたいですね。

─その時は演奏する内容も変わりますか?

内容というかアプローチの仕方ですね。小さいライブハウスだとさっき言った音量の低いところでの演奏の幅の広さになっていったり、逆に大きいライブハウスだと緻密に作り込んだディティールとかが伝わりにくかったりするのかなとも思うし。そういう意識の違いですね。

─日本だと、どのライブハウスでやりたいとかあります?

恵比寿リキッドルームとかでやりたいですね。バンドメンバーのレニー(・リース)がDJプレミアのツアーで日本に来た時にリキッドルームに行ったらしくて、<あそこはヤバい>って。それから<リキッドルームでやるべきだよ>ってずっと言っていて。

サンダーキャットやアンダーソン・パックもリキッドでやっていましたね。

あ! アンダーソン・パックはバンドリーダーとして超憧れてます。彼はキャラクターもあるし、バンドメンバーも初期からほとんど変わっていないんじゃないかな?バンドの音楽のタイトさとか暖かさとか、すべて人間性から出てきているものだと思うので。


─やっぱりライブをする場所で重要なのは低音ですか?

低音が出るところが良いですね。低音のない人生なんて……って感じ! じゃない(笑)? 女性はよく子宮に響くって言うけど、たぶん体の一番奥に響くのって低音じゃないですか。隣の住人が音楽かけてて<うるさいな>って思うのもベースでしょ?

「ショパンの<革命>の左手のオスティナートがスタートかもしれない」

スタートは「ショパンの<革命>の左手のオスティナートがスタートかもしれない」(1)

─確かに(笑)。ベーシストとやるよりも、自分で弾いたほうが良いっていう考えなんですか?

もちろん大好きなベーシストもいます。自分が表現していて、他の人に一番伝わる、一番魅力的に聴こえるのがベースなのかなって。色んなことをやってきて、自分の中で<これは自分のスペシャルなものなのかな>って思っているところの一つです。

─ライブを見ていても、左手と右手が別人格みたいに見えました。

左手がラテン系で、右手は…ニートみたいな感じですね(笑)。
俺は右利きだし、左手が達者なわけではないんだけれど、だからこそ左手に無茶させて右手でなんとかするみたいな。

─それはピアノを弾いていた時に気づいたんですか?

例えばショパンの<革命>の左手のオスティナート(※ある種の音楽的パターンを何度も執拗に繰り返すこと)がスタートなのかなとも思うし。
ベーシストってすごい忙しいから、バークリー時代は自分でよく弾いていてそれがスタートかもしれないですね。俺はクラシック上がりだからつい低音を<ボーン>と弾いちゃったりしたんですけど、ジャズピアノでそれをやるとベーシストがいる時に音が濁っちゃうってよく怒られてました。

─なるほど。

本当はもっと有機的に両手をリンクさせたいんですよね。そういう意味でも演奏の幅を拡げたい。俺は楽器が下手くそだから。クラシックやっていた時よりも全然ピアノ下手くそだし。ツアーに出ていると楽器に触れないんですよね。

─やっぱり学生時代は物凄く練習したんですか?

もともと小さいときも練習しない子だったらしいんですよ。嫌いだったし。けど集中力は小さい頃からすごくあったって。俺は譜面を読むのが嫌だったから、先生が演奏しているものを必死で聴いて耳で覚えようとしていたんですよ。

スタートは「ショパンの<革命>の左手のオスティナートがスタートかもしれない」(6)

─へぇー!

俺は先生にすごく恵まれていたと思うんです。テクニカルなところよりも音楽的な表現のところに重きを置く先生たちに巡り会えたので。

あとはやっぱり譜面から入ると耳で曲を聴く力があんまり育たないのかなって。曲の速さだったり、構成を認識するスピードは耳で覚えたほうが早いんですよね。それはアメリカでもすごく感じました。特に黒人音楽。例えばチャーチとかで演奏している人、クラシックの教育を受けていない人達は、全部年上のお兄ちゃんたちがやっているものを間近で見て聴いて、見よう見まねでそれをやってっていう具合にやっていますからね。そういう瞬発力にすごく憧れもありましたし。

─現場主義というか。

けど、人によって学び方なんて色々じゃないですか。本から学ぶ人もいれば、譜面から学ぶ人もいるし、実体験で学ぶ人も、耳から学ぶ人もいる。けど僕はあくまで、実際に飛び込んでぐちゃぐちゃになって、恥かきながらやりました。アメリカはそれをやる絶好の機会だったので。だから今日みたいにドラマーが急遽変更っていうシチュエーションでも、<なんとかなるだろうな>と思える。舐めてるわけじゃないんですけど、そうやって積み重ねてきた自分の自信があるから。

─最後に、新譜に関して一言いただいてもいいですか?

スタートは「ショパンの<革命>の左手のオスティナートがスタートかもしれない」(7)

作っていた時点で自分がカッコイイと思えるものを妥協せずに作れたので、俺はもう満足。<あそこをああしたかったな>っていうのは全然ない。けど、早く新しいやつを作りたい!


<プロフィール>

■BIGYUKI
https://twitter.com/bigyukimusic
https://www.instagram.com/bigyuki/

http://www.universal-music.co.jp/bigyuki/

■BIGYUKI 配信楽曲一覧
  • Photo:Great the kabukicho
    Text:花木 洸
    Edit:仲田 舞衣

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