THE NOVEMBERS・ケンゴマツモトが制作。お酒をラッパ飲みしている時、無性に聴きたくなるプレイリスト

THE NOVEMBERSのギタリスト、ケンゴマツモトです。普段は飲酒に力を入れています。飲酒に力を入れてるが故にラッパ飲みをしてしまう夜がある。そんな夜に無性に聞きたくなる曲を雑な文章と共に時系列で並べてみました。やけっぱちな夜に是非お試しあれ。

#1. The Velvet Underground/Nico – Heroin

19時、ヴィオラのドローンにだるい歌声、酩酊してる様に急に上がりまた急に下がるBPM、二つしかないコード、美しいメロディ。執拗に歌われる”And I guess I just don’t know(俺はなにも分かっちゃいないんだ)”という言葉。ビールをラッパしながら全くその通りだと頷く。俺は本当になにも分かっちゃいない。

 

Heroin
The Velvet Underground/Nico

 

#2. Tom Waits – Tom Traubert's Blues(Four Sheets To The Wind In Copenhagen)

21時、酔いどれ詩人トムウェイツの名曲中の名曲。しわがれた声が詩的に、哀愁を伴い、優しく包み込む。ウィスキーをラッパしながら泣いてしまう。心も体もボロボロになり、それでも放浪する事を辞めない男。それはある日の夜の俺なのかもしれない。生きているって事は本当にどうしようもない。サビで幾度も歌われる”Waltzing Matilda(踊ろう、マチルダ)”なんてこった。こんなロマンチックな言葉を他に俺は知らない。踊ろうぜマチルダ。踊ろう。マチルダ。

 

Tom Traubert's Blues (Four Sheets To The Wind In Copenhagen)
Tom Waits

 

#3. Astor Piazzolla – Libertango

22時、まだ軽やかに腰が動く。音楽を聞くと腰から動いてしまう。タンゴの革命児。ピアソラの名曲。激しいアンサンブルに哀愁のあるメロディ。バンドネオンが悲鳴を上げてベースとドラムが激しく刻み、バイオリンが軋む。かと思いきや、死ぬ程ゆったりとした甘い戦慄がやってくる。ピアソラは多分全てをぶっ壊したかったんだと思う。俺もそうだ。忘れてた俺もそうだ全部ぶっ壊したかったんだ。そうだ、これがタンゴだ。ここで死ね。と思いながらジンをラッパ飲みしてしまう。

 

Libertango
Astor Piazzolla

 

#4. Strokes – Someday

23時、俺の青春ストロークスの1st。思えば暗い青春だったよな。酒ばっかり飲んで世界を呪って。自分と自分の周りに居てくれる人だけがまともだと考えて、あとは全部狂ってると思っていた。でもそんな青春の中にも一瞬光り輝く瞬間というものがあったよな。その瞬間が今の俺を形作ってくれてるんだよな。という事を思い出す。”When we was young, oh man did we have fun Always Always /Promises they break before they're made sometime sometime(俺達若い頃は散々楽しんだっけな、約束なんて果たす前にぶっ壊れてしまう。)”本当にその通りだと思う。1回ビールに戻る。もちろんハイネケンの瓶をラッパする。

 

Someday
The Strokes

 

#5. Paco de Lucia – Entre Dos Aguas

24時、なんでこんなにギターが上手いんだ。なんでこんなに髪の分け目がおかしいんだ。なんで首にスカーフを巻いているんだ。あらゆる事がおかしくて、あらゆる事が素晴らしく感じる。ここはまるで天国だ。まだビールをラッパしてる。夜がこっちを見ている。じっと見ている。


Someday
The Strokes

 

#6. THEE MICHELLE GUN ELEPHANT – ドロップ

24時半、じりじりと夜になる。じりじりと夜を行く。その時俺はじりじりとゴッドファーザーを飲んでいる。もうこの世界に居ない、かつて鬼と呼ばれたギタリストを想いながら。

 

Entre Dos Aguas
Paco De Lucia

 

#7. BLANKEY JET CITY – 不良の森

24時45分、“不良は空を見ない/麻薬をやり続ける”そこを“ケンゴは空を見ない、ビールを飲み続ける”に変えて歌う。“いつかはみんなが好きになる 好きになる 好きになる”そうだと良いよな。みんなが好きになりたいよな。嬉しさをくれるから。ハードラックという俺が考案したカクテルをがぶ飲みする。

 

不良の森
BLANKEY JET CITY

 

#8. ラヴ・イズ・オーヴァー – 欧陽菲菲

深夜1時、スルメを食いながらいいちこをラッパ飲みしてしまう。意識が濁ってきて、愛した事がある女を古い方から数え始める。“お酒なんかでごまかさないで/本当の自分をじっと見つめて”ここで泣く。お酒なんかでごまかしながら、本当の自分から目をそらしながら。

 

ラヴ・イズ・オーヴァー
欧陽菲菲

 

#9. 松田聖子 – SWEET MEMORIES

深夜2時、もう意識が混濁してきている。誰を愛して、誰を憎んでるかが明確で無くなっている。全員を愛していて全員を憎んでる気さえしてくる。“失った夢だけが/美しく見えるのは何故かしら”なあ、何故なんだ。過ぎさった夢だけが美しく見えるのは。誰か俺に教えてくれよ。やり切れねえ。この夜を超らえれねえ。なあ、やり切れねえよ。本音を言うとね、美人に優しくされたい。と嘯き日本酒を徳利でラッパしてしまう。

 

SWEET MEMORIES
松田聖子

 

#10. The Birthday – KAMINARI TODAY

深夜3時 混濁しきった意識、濁りきった目。まだ僅かに残ってる飲酒欲求を満たすためコンビニの前でレモンサワーの缶をラッパ。耳に突っ込んだイヤホンからは“忘れたか あの時を ぶっ潰しにいったじゃんか/吐く息が白いから 生きてるって思ったよな”。一瞬で消えてしまうけど、同時に永遠に残るもの。俺は音楽という腐れた絆で、緩く、でも同時にしっかりと結びつけられているような気がしてならない。あらゆるものと。あらゆる人と。あらゆる場所と。音楽は旅だ。そんな事は誰もが言ってるし、使い古された言葉だけど、俺も懲りずにそう言おうと思う。音楽は旅だって。この夜を超えるための。だから、カミナリを鳴らしにゆこうぜ。って。千鳥足で。俺は思う。筈だ。

 

KAMINARI TODAY
The Birthday

 

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