百歌繚乱・五里夢中 第2回「ナイス・イントロ/ドキドキ編 10選」


第2回です。初回は私が大好きな楽器であるギターについて語ってみましたが、気持ちとしては前夜祭。今回から本気出します(?)。本格スタートということで、やはり音楽の入り口からいくのがよろしかろうと、イントロダクション、ふつうはイントロと呼んでいる曲の前奏部分について取り上げてみたいと思います。よろしくおつきあいのほどを。

イントロがポップスを制す?

世の中には浜辺の砂の数ほども音楽があって、さらに日々生み出されて、それらが雑然とラジオや有線やネットで、生活圏に垂れ流されているので、なんらか人の注意を惹かないと、認識もされないまま埋もれてしまいます。
言うまでもなく音楽とは時間軸に沿って流れていくものでありますから、人はまずそのイントロを耳にするわけです。まぁ昨今の試聴データなんてものは必ずしも頭からではないけれど、それは置いといて。
イントロがよいと、人はそのあとも積極的に聴きます。イントロがよくないと、たとえいくらサビがよくても、サビまでは人の意識に届いていません。サビでおっ?となってもすぐにフェイドアウトしていったりして、そのまま忘れ去られるのです。
だからイントロは極めてだいじ。「イントロがポップスを制す!」なのです(たぶん)。私も音楽ディレクターだったころは、イントロにとても気を使ったものです。自分がアレンジするわけじゃありませんから、アレンジャーに横からブツブツ言うだけですが。
なのでかっこいいイントロの曲に出会うと、そのかっこよさに感激するだけでなく、それを生み出すに至った制作者たちの思いにもとても興味が湧きます。

というわけで、私がよいイントロだなぁと思う作品をいろいろご紹介したいのですが、ちょっと考えても100曲くらいはありそうなので、いくつかのカテゴリーに分けてみます。相当個人的主観も入りますが(てか、主観のみ?)、「ドキドキ」、「ワクワク」、「ド派手」、「クール」、「しみじみ」……なんてキーワードでくくってみることにします。今回は、「ドキドキするイントロ」にフォーカスしましょうか。

ドキドキするイントロ10選

「ドキドキする」ってことは、緊張感が高まるってことですね。ジェットコースターが人々を恐怖に陥れるための大きな初速を得るべく、カラカラと頂上に登りつめていく、あのときのようなスリルを聴く者に与え、一気にその曲の世界に引きずり込んでいく、そんなイントロ。歌が始まるときには全身が蝸牛管となって身構えている、という寸法です。

#1:The Jimi Hendrix Experience「Purple Haze(紫のけむり)」(シングル:1967年3月発売)
    • Purple Haze/The Jimi Hendrix Experience

      シングル

      205

      Purple Haze
      The Jimi Hendrix Experience
  • あのジェフ・ベックがデビュー直後の彼のギターを聴いて廃業を考えたと語った、ギターの革命児:ジミ・ヘンドリックスが2nd シングルとしてリリース、全英3位のヒットとなりました。1st アルバム『Are You Experienced?』(1967年8月発売)にも収録されています。
    ザクザクと切り裂くようなカッティングのあと、唸りを上げるフレーズはシンプルかつ強烈。E-E-G-Aと進むコードの内、EはE7(#9)で、ヘンドリックスが使って有名になり、「ジミヘン・コード」と呼ばれています。この曲の魅力の半分はイントロにあると言っても過言ではないと思います。


    #2:Led Zeppelin「Immigrant Song(移民の歌)」(from 3rd アルバム『III』:1970年10月発売)
  • レッド・ツェッペリンはかっこいいアレンジの宝庫。すばらしいイントロもたくさんあります。「ドキドキ」という点では、「Whole Lotta Love」も捨て難いですが、やはりこの曲かなと。
    高校時代、深夜一人起きて、ラジオを聞きながら勉強(?)している時、この曲か、ポップ・トップスの「マミー・ブルー」が流れてくると、なんだか背筋がゾクゾクしたものです。冒頭のクレシェンドしてくる速い動悸のようなSEでもう息が苦しくなる。地獄から来た戦車軍団のような独特のリフ(ジミー・ペイジは本当にリフの天才ですね)、それに乗った悪魔の雄叫びのようなロバート・プラントの声……いやぁ怖いですねぇ。


    #3:King Crimson「21st Century Schizoid Man」(from 1st アルバム『In the Court Of the Crimson King(クリムゾン・キングの宮殿)』:1969年10月12日発売)
    ※現在取り扱いがございません。
  • プログレッシヴ・ロック自体が珍しかった当時は、デビュー・アルバムの1曲目でこれが出てきたらさぞ驚いたでしょうね。その前にジャケットで充分驚いてるでしょうけど。
    不穏な環境音が途切れたかと思うと、一瞬後吠えるようなギターとアルト・サックスのユニゾン・フレーズ。グイグイと怪しい宮殿に引きずり込んでいかれるようです。
    元は「21世紀の精神異常者」という、らしい邦題だったのに、ある時点からレコ倫が「21世紀のスキッツォイド・マン」と変えてしまった。そんな邦題なら必要ないよね。


    #4:Yes「Roundabout」(from 4th アルバム『Fragile(こわれもの)』:1971年11月26日発売)
  • 2013年、つまり40年もあとになって、テレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」のエンディング・テーマに使用されたこともあり、”Yes”の中では最も有名なのがこの曲でしょうか。
    プログレは凝ったサウンドが身上ですから、イントロにも相当手間ヒマかかってますね。
    曲の大部分はロックン・ロール的な速いビートですが、イントロは静か。無音から、空気に少し色をつけたような感じで音が始まり、その色が次第に濃くなっていき、最大点でギターのハーモニクスがはじける。はじけるまではそのハーモニクスを逆に再生してこの効果を出しているんですね。そしてギタリストのスティーヴ・ハウお得意のアルペジオ・フレーズからロックン・ロール・リフになだれ込む。このイントロ・パターンは曲の後半にも再び登場して、曲をドラマチックに盛り立てます。ま、それは前曲「21st Century Schizoid Man」でも同様、アレンジの定石だけど。


    #5:一風堂「すみれSeptember Love」(シングル:1982年7月21日発売)
  • 土屋昌巳最大のヒット。カネボウ化粧品のイメージソングだったこともあり、いかにも売れそうなポップ・ソングですが、イントロは案外(?)カッコいい。速いパッセージのシークエンス・シンセにギター・カッティングが絡み始め、ドラムがズドンと入ってくるところなど、とてもスリリングです。土屋さんのロック・スピリットがイントロに叩き込まれている気がします。
    ちなみに、”一風堂”はラーメン屋からとったのではなく、渋谷のディスカウント・ストア「一風堂」が元祖。その後、ラーメン屋の創業者がバンドの”一風堂”のファンだったので、店の名前を「博多一風堂」にしたらしいです。


    #6:PSY・S「Wondering up and down〜水のマージナル〜」(シングル:1989年12月1日発売)
  • 松浦雅也が生み出すネオ・アコースティックなサウンドと、チャカの真っ直ぐに力強く伸びるボーカルが、清々しい叙情を奏でてくれたPSY・S(サイズ)(1985〜1996年)。
    Aメロとサビが同じコード進行なので後半、その2つのメロディが重なっていくという印象的な構成のこの曲ですが、イントロは、静寂の中、ギターとシンセの鋭角な音がはじけるところから始まります。このギターは元バービー・ボーイズのいまみちともたか。で、この曲はAメロのリピート回の頭までイントロだと思いたい(^^)。そこでドラム、そしてベースがガツン!と飛び込んできます。心臓がドキンとします。


    #7:The Temptations「Papa Was A Rolling Stone」(シングル:1972年9月28日発売)
  • 60年代中頃は「My Girl」などダンサブルなラヴソングを得意としていた”テンプテーションズ”ですが、70年代にはファンク色を強め、サイケデリック・ソウルと呼ばれるジャンルに挑戦していきます。その仕掛け人はモータウンのプロデューサー:ノーマン・ホイットフィールドNorman Whitfield。そして1972年には「Papa Was A Rolling Stone」が全米1位に。
    この曲、なんと12分もあるのです。シングル・バージョンでも約7分。イントロだけで3分53秒、並のポップス1曲分以上です!それでいて最初から最後まで、登場するコードは「B♭m」ひとつだけ!相当に過激なサウンドです。これで1位をとってしまうのですからすごいですね。ホイットフィールドのサウンドにかける執念は凄まじく、私は彼をソウル界のブライアン・ウィルソンと呼んでいます。
    まずはベースのリフとハイハット16分の刻みで始まり、それはずーっと繰り返します。なんと言うか、呪術的。そこにワウをかませたギターのカッティング(=通称「チャカポコ・ギター」)や、ストリングス、トランペット、ウーリッツァーという独特の音色を持つエレピ、裏打ちのハンドクラップなど、様々な楽器がそれぞれに不穏なフレーズを発し、また消えたりして、張り詰めた音の空間を構築していきます。真夜中の犯罪都市をさまよっているような気分。ようやく歌が入ってきたときはちょっとホッとするくらいです。


    #8:The Cars「Just What I Needed(燃える欲望)」(シングル:1978年5月29日発売)
  • UKっぽいけどUS/ボストン発のバンド、”カーズ”。これがデビュー曲です。デモテープの段階でこの曲が地元のラジオ局でヘビー・ローテーションとなり、それによってElektra Recordsと契約することができました。
    8ビートの典型とも言える8分刻みのギター(低音の単音)のみで静かに始まり、4拍目にギターのコードとスネアドラムとキーボードが強いアクセントで入る。いきなり引っぱたかれたような衝撃です。それが4小節、その後はアクセントが8分で2発になって、もう4小節。とてもシンプルなイントロですが、キャッチーかつドキドキです。


    #9:U2「New Year’s Day」(シングル:1983 年1月1日発売)
  • 3rd アルバム『WAR(闘)』からのリード・シングル。これも含めデビューからの3アルバムは、荒涼とした景色が似合う(思い込み?)アイルランドのバンドだからか、プロデューサーのスティーブ・リリィホワイト(Steve Lilywhite)のせいか、なぜか寒さを感じさせる音でありました。
    特にこの曲は「元日」という季節感もあり、とても寒い。ベースのリフが雪道を行く重い歩みだとしたら、ディレイが効いたギターは吹きすさぶ寒風、深いエコーをまぶしたピアノは舞い散る雪のようではないですか。24小節も続く長いイントロのあと、ボーカルが唐突に入ってくるように感じるのは、私が寒さで固まっていたから?

    #10:Eagles「One Of These Days(呪われた夜)」(1975年5月19日)
  • イーグルス、4作目のアルバムのタイトル曲。シングルは彼らにとって2枚目の全米1位、アルバムは初の全米1位と、彼らの出世作となりました。カントリー主体からロック寄りに大きく舵をとった作品でもあり、この曲の日本人にも馴染みやすい泣きメロは、次の大ヒット「Hotel California」へとつながっていきます。
    「呪われた夜」という邦題から、なんとも不気味な、狼男が突然現れでもしそうな寂れた通りを想像し、イントロ9小節目から出現するギターの多重ハーモニーにビクッとしたりしてしまいますが、原題は単に「こんな夜」。歌詞も「こんな夜にはオレ好みの、悪魔と天使が同居しているようなかわいい女に出会えるかもしれない」なんて、妄想男の話に過ぎないのだけど。
  • 以上、「ドキドキするイントロ」の曲を10曲、選んでみましたが、いかがでしたか?
    「ドキドキし過ぎて心臓に悪いかも」とご心配のあなた、だいじょうぶです。これくらいの刺激は心臓にとっても必要です。むしろ元気になるでしょう。
    「特にドキドキしませんでした」とのたまうクールなあなた、もっと大きな音で聴いて、その気になりましょう。
    ヒット曲ばかりになってしまいましたが、前段で述べた通り、よいイントロはヒットに結びつくことの証明ではないでしょうか。

    いやぁ、それにしても、音楽って飽きないですね。

    Text:福岡 智彦

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