燃える!プロレス入場曲カタログ10選(入門編)

燃える!プロレス入場曲カタログ10選(入門編)
©プロレスリング・ノア
プロレスは入場が8割と言っても過言ではない。さまざまなレスラーが己を輝かせる入場曲で会場を温めているが、良い入場曲はいつも何らかの予感に満ちている。それは勝利かもしれないし、悪役なら暴虐の反則攻撃かもしれない。はたまた勝利以上の何かかもしれない。とにかく、何かが起こる予感で試合への期待値を最大にしてくれることが、良い入場曲の条件だ。そこで、歴史を越えて愛されている、今だからこそ改めて聴きたいプロレス入場曲10選をお届けしよう! 是非、通勤のお供に。

パブロフの犬の如く条件反射が起こる偉人の入場曲

プロレス入場曲といえばまずはコレ! “燃える闘魂”アントニオ猪木の入場曲としてあまりに有名な『炎のファイター ~INOKI BOM-BA-YE~』だ。アントニオ猪木は新日本プロレス設立、モハメド・アリとの異種格闘技戦など、日本のプロレス界の歴史を背負うだけでなく、「いつ何時、誰の挑戦でも受ける」「出る前に負けること考えるバカいるかよ!」などの闘魂を刺激される名言でも知られ、当然その入場曲も熱い。「イ・ノ・キ! ボンバイエ!」とイントロが流れてくれば「ファイッ」とファイティングポーズを取らざるをえない。甲子園の応援でもよく演奏されるほか、知名度が高いのでDJイベントやマッシュアップの題材としても最適だ(「スメルズ・ライク・闘魂スピリット」なるニルバーナの有名曲とのマッシュアップはリビドーの扉を全開にする秀逸さ!)。
  • ※甲子園の応援でおなじみのブラスバンドver
  • 1971年から81年まで妻であった倍賞美津子が歌う歌詞付きバージョン『いつも一緒に』も一聴の価値あり。そして、オリジナルのモハメド・アリver.はこちら。


  • パブロフの犬の如く条件反射が起こる偉人の入場曲(1)
    ©FortuneKK
    小橋建太は1990~2000年代を代表するレスラーの1人。腎臓がん、膝の手術など度重なる病気・怪我に悩まされるも、そのたびに復帰してきた不屈の生き様は“鉄人”とも称される。2013年5月に惜しまれつつ現役を引退したが、その人気はいまだ衰えるところを知らず、会場に姿を見せれば割れるような歓声が沸く。彼の入場曲『GRAND SWORD』は、プロレス入場曲を数多く手がける鈴木修氏の作。イントロの期待感、中盤の臨場感ともに凄まじく、打ち鳴らす鍵盤の響きとともに5万の観衆の「コーバーシッ! コーバーシッ!」コールが聴こえる気すらする(幻聴)。2億回聞いても飽きない名曲。現在、小橋建太は大会をプロデュースするほか、大学講師やオリジナルトレーニングで一般向けの指導などにあたっている。著名レスラーとの“トークバトル”も人気だ。
  • ◆小橋建太公式YouTubeより

  • “不沈艦”スタン・ハンセンの入場曲も忘れてはならない。83年に新日本プロレスから全日本プロレスに移籍し、その後90年代後半まで長きにわたり活躍を続けたハンセンは、日本で最も成功した外国人レスラーとも言われる。会場で使われていた音楽はマッシュアップだが、原曲は日本のバンド、スペクトラムの『サンライズ』。イントロのハネるリズムはさながらテキサスの暴れ牛。そこにホーンセクションが畳み掛ければ、思わず椅子に駆け上り「ウィーーー!!」と右手を掲げてしまうだろう。

  • 70年代後半から全日本プロレスで活躍したザ・ファンクスは、兄ドリー・ファンク・ジュニア、弟テリー・ファンクによる兄弟タッグ。外国人ながらエース級選手として活躍し、77年には全日本プロレス5周年を記念した「世界オープンタッグ選手権」で優勝。その決勝の対戦相手はザ・シークとアブドーラ・ザ・ブッチャーという“世界最凶”タッグで、テレビ中継ながら大流血の凄惨な試合となった。兄ドリーは76歳の今も現役として試合を続けている。彼らの入場曲は、竹田和夫を中心としたバンド、クリエイションの『SPINNING TOE-HOLD』。万人に愛されるファンキーな曲調はプロレス界だけに収まらず、バラエティ番組『笑う犬の冒険』では“生きてるってな~ん~だ~ろ~”と口ずさまれ、違う角度から有名になった。ある意味プロレスの間口を広げた功労曲と言えよう。

ヒール(悪役)にピッタリなのはクラシック!?

ヒール(悪役)にピッタリなのはクラシック!?(1)

1972年にデビューしたヒールレスラー藤原喜明は、類まれなるサブミッションテクニックから「関節技の鬼」として知られる。2007年には胃がんで欠場も見事復帰を果たし、68歳となった今も現役(しかも強い)という脅威のプロレスラー。戦慄の脇固めは海外ではフジワラ・アームバーとして名を轟かせているほか、一本足頭突きはリングから遠い格安席まで鈍い音が聞こえるガチ痛な技だ。現在は俳優としても活動する傍ら、一般向けのサブミッションセミナーも好評。そんな藤原喜明の入場曲はワーグナーの『ワルキューレの騎行』。映画『地獄の黙示録』でも恐怖を煽った名曲。ただ、あれは映画だがこちらはむしろ本物の藤原喜明だ。茫漠とした不安を煽るオーボエとクラリネット、性急なヴァイオリン、そして爆発するようなトランペットの調べに乗せて入場する185cm、108kgのスキンヘッドの男は、対戦相手にとってさぞ巨大に見えることだろう。クラシックの名曲だけあり、さまざまなバージョンがある。ぜひ聴き比べて欲しい。

  • クラシックを入場曲に使うレスラーは他にもおり、新日本プロレスで1985年に結成されたヒールユニット「ブロンド・アウトローズ」も『はげ山の一夜』を使用している。後藤達俊ヒロ斉藤保永昇男によるヒールユニットで、試合では噛み付き、急所攻撃、マスク剥ぎとやりたい放題だが、実は実力派の職人集団。後藤はバックドロップ、ヒロ斎藤はセントーン、保永はネックブリーカーと説得力のある技を持ち、だからこそ勝ったベビーフェイスは輝くのである…! さて、入場曲に使用しているのはジャズ・フュージョン界の巨匠ボブ・ジェームスによるアレンジ版。不穏なイントロは反則攻撃の予感に満ち、「おーっと、ゴングを待たずに襲いかかったァァァーッ!」という暴虐の先制攻撃を予感させるヒールにピッタリの曲。

団体を背負う者だけが使うことを許される入場曲

入場曲の中には、団体に紐付けられている曲もある。中でも「UWFプロレス・メインテーマ」は最も有名なもののひとつ。UWFは強さを追求し格闘技色の強いレスリングで熱狂的な“信者”を生んだ団体で、時代により色は違うが、前田日明による第二次(新生)UWFの人気は特に根強い。この曲は山崎一夫の入場曲として知られるほか、リングス・ジャパンの道を選んだ田村潔司がヘンゾ・グレイシーとの対戦の時だけはこの入場曲を使うなど、旧UWF勢もここぞという場面で使ってきた。Uの遺伝子を継ぐ者としての品格も求められる入場曲であると言えよう。軽快なリズムに叙情性もあり曲としても優れているが、何より熱い記憶が音楽により呼び覚まされることを思い知らされる名曲だ。
  • ※落語家・鈴々舎馬るこの出囃子で使用されているお囃子アレンジver

  • 団体を背負う者だけが使うことを許される入場曲(1)
    ©みちのくプロレス
    1990年のデビュー以来、華麗な空中殺法で様々な団体で活躍してきたザ・グレート・サスケは、デビューから27年を経た今もなお現役。現在はヒールユニット「ムーの太陽」の“マスター”として布教活動中。さすがに空中殺法は影を潜めたものの、ラダー(梯子)を使えば自爆し、時には樽状の棺桶を頭から被って場外に飛ぶというアグレッシブなファイトを展開中。その狂気に満ちた攻撃をファンは尊敬を込めて「キ○ガイ」と讃える。レスラーのほか世界初の覆面議員、UFO研究家など様々な顔を持つザ・グレート・サスケの入場曲は、自身が設立した日本初の地方団体「みちのくプロレス」の団体テーマでもある「みちのくプロレスのテーマ」。作曲者はヘヴィメタルバンドANTHEMのベーシスト柴田直人。刹那的なエモさ溢れるこの曲はプロレスファンにとどまらない幅広い人気を誇り、スカ・アレンジなどでのカバーもある。
  • ※スカ・アレンジカバーver

カラオケで見つけたら確実に歌いたい歌詞付き入場曲

カラオケで見つけたら確実に歌いたい歌詞付き入場曲(1)

プロレス入場曲の中には数は少ないが歌詞の入ったものもある。古くはミル・マスカラスの『スカイハイ』、獣神サンダー・ライガーの『怒りの獣神』、鈴木みのるの『風になれ』などがあるが、中でもファンへの訴求力が高いのはウルティモ・ドラゴンの入場曲『セパラードス』ではないだろうか。フェードインのイントロは否が応でも期待感を煽り、テンポは人間工学的に最も感情移入しやすいスピード(当社比)で、客席からは自然と手拍子が起こる。その手拍子が最高潮になったところでイントロが終了し、花道にウルティモ・ドラゴン登場という流れはまさにカタルシス。頬を流れるこの熱いものは涙だろうか…。メキシコの国民的人気歌手ルイス・ミゲルの楽曲で、実は前述のザ・グレート・サスケもかつては同じ曲を入場曲としていたが、この曲の使用権を賭けて両者は対決。見事勝利を納めたウルティモ・ドラゴンが現在もこの名曲を使用している。

  • カラオケで見つけたら確実に歌いたい歌詞付き入場曲(2)

    センダイガールズプロレスリング(仙女)の代表を務めながらもバリバリ現役の“女子プロレス界の横綱”里村明衣子の入場曲『ROCK YOUR LIFE AWAY』も歌詞の入ったものだ。女子プロレス団体ガイアジャパンで当時史上最年少の15歳でデビューし、現在も衰え知らずの壮絶ファイトを炸裂させている里村明衣子。アレンジ違いとはいえ、そのガイアジャパン時代から使い続けている曲だけに、当時を知るファンにとっては入場シーンだけでおひねりを投げ込みたくなる衝動に駆られるのではないだろうか。この団体は若手育成にも長け、現在は“仙女三銃士”と呼ばれる若手が活躍中。日大レスリング部出身者初の女子プロレスラーとなった橋本千紘、男性誌でグラビアも披露する美貌の白姫美叶、そして自称10002歳、デーモン小暮閣下ばりのメイクでリングに上がる悪の化身カサンドラ宮城。仙女の公式YouTubeでは若手の日常もアップされているのでチェックしたいところだ。

    ◆センダイガールズ公式YouTubeより

    以上、ややムリヤリ10本に絞った入場曲をお届けしたが、レスラーがキャリアを、そして人生を重ねて育ててきた入場曲をたったの10本とは忍びなく、書きながら喰いしばった奥歯は折れ、頬を血涙が滴り落ち……たりは別にしなかったが、これをきっかけにそれぞれマイ・ベストを作成いただき、仲間と激論を交わしていただきたい。プロレス談義は熱くなりがちなので、「1回の発言は1人2分まで」「相手の話はさえぎらない」などのルール設定をした上で楽しむことをオススメする。ただしカウント4までなら反則も許されるのでご安心を。


    Text:明知 真理子

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