「Arduino(アルデュイーノ)」で電子楽器作りにチャレンジ 第3回

MIDIコントローラとしてセッティングする


新しい音を作り出し、操るため、「Arduino(アルデュイーノ)」を使った電子楽器作りの連載も3回目を迎えました。

前回は、Arduinoに接続した可変抵抗器でLEDの明るさをコントロールできることを学びました。今回はこの可変抵抗器をフィジカルなMIDIコントローラとして使えるようにしましょう。

鍵盤型、パッド型、ミキサー型などなど、MIDIコントローラには様々なものがありますよね。今回作りあげるArduino×可変抵抗器のMIDIコントローラは、ツマミ(この連載で扱っている可変抵抗器と同じものが使われている)やフェーダー(スライドボリュームという、形状を変えた可変抵抗器)がならんだミキサー型MIDIコントローラと近しいものになります。

製品として販売されているミキサー型MIDIコントローラには、いくつものツマミ&フェーダーがあります。この記事では1つの可変抵抗器を使ったMIDIコントローラを作り上げていきますが、この知識と経験があれば、複数の可変抵抗器を使ったMIDIコントローラも作れるようになりますよ。

 

プログラムをダウンロードする


プログラムをダウンロードする


「mysound_controller」をダウンロード。前回までの連載をご覧頂いている方にはおなじみになってきた「Arduino IDE」を起動して「mysound_controller」を読み込み、USBで接続しているArduinoに書き込みます。

「mysound_controller」は下記よりダウンロードいただけます。
ZIPファイルダウンロード
※この記事で使用するファイルがすべて入ったZIPファイルがダウンロードされます。

 

Pure Dataをインストール


Arduinoのプログラムを作るためのツールの1つが「Pure Data」です。主にシンセサイザー開発や音響合成用に使われています。ビジュアルプログラミング言語の一種で、命令文を並べていくものではなく、ブロック(オブジェクト)をつないで動作させます。


Pure Dataをインストール(1)


パソコンでhttps://puredata.info/downloads/pure-dataにアクセスします。Macの場合はGet Pure Data for Mac OS X(下部に“Intel/64bit”と書かれたもの) を、Windowsを使っているならば、 Get Pure Data for Windows(下部に“Windows Installer”と書かれたもの)をクリックしてダウンロードします。


Pure Dataをインストール(2)


「Pure Data」をパソコンにインストールしたら起動します。この「Pd」というウィンドウが表示されたら、「Help」→「Find externals」をクリックします。


Pure Dataをインストール(3)


別のウィンドウが開きます。上部にある文字入力欄に、「comport」と入力。「Search」ボタンをクリックします。検索結果が表示されたら、一番上にある「comport_v1.1.1」(原稿執筆時の最新版)をクリックします。


Pure Dataをインストール(4)


インストールしてもいいかどうかを尋ねるダイアログボックスが表示されるので、「Yes」をクリックします。すると必要なファイルをダウンロードして、自動でインストールします。


Pure Dataをインストール(5)


同様に、文字入力欄に「cyclone」と入力。「Search」ボタンをクリック。一番上にある「cyclone-v0.3bate1」(原稿執筆時の最新版)をクリック。ダイアログボックスの「Yes」をクリックしてインストールします。


Pure Dataをインストール(5)


「Pure Data」のウィンドウに戻り、「Pd」→「Preferrences」→「Startup」をクリックします。


Pure Dataをインストール(6)


「Pd libraries to load on startup」ウィンドウが表示されたら、「New」ボタンをクリックします。「Add new library」という細長いウィンドウが表示されたら「comport」と入力して、「OK」をクリックします。


Pure Dataをインストール(7)

Pure Dataをインストール(7)


「Pd libraries to load on startup」ウィンドウに「comport」という文字が表示されました。


Pure Dataをインストール(8)

 

同じ手順で「cyclone」も登録します。作業後はいったん、「Pure Data」のウィンドウをすべて閉じて終了させます。

 

デバイスの設定を行う

デバイスの設定を行う(1)


あらためて「Pure Data」を起動します。冒頭でダウンロードしたZIPファイル(を解凍したフォルダ)内にある「mysound1.pd」を、Pure Dataで読み込みます。そして「devices」というボックス(メッセージボックス)をクリックします。別のウィンドウに、接続できるデバイスが表示されます。


デバイスの設定を行う(2)


「Arduino IDE」を起動します。「ツール」→「シリアルポート」をクリックして、Arduinoの接続状況を確認します。プルダウンメニュー内に表示されている「/dev/~」と書かれている文字列を覚えておいてください。忘れてしまいそうだという方は、パソコン画面のスクリーンショットを撮ったり、スマートフォンで画面を撮影するといいでしょう。


デバイスの設定を行う(3)

デバイスの設定を行う(4)


「Pure Data」のウィンドウを見て、表示されている文字列が同じであれば問題ありません。その上で文字列の前にある数字(ここでは“2”)を覚えておいてください。
 


デバイスの設定を行う(5)


「Pure Data」の「mysound1.pd」のウィンドウをクリック。一番上にあるボックス(ナンバーボックス)をクリックして、さきほどのウィンドウに表示されていた文字を入力してEnterキーを押します。

この状態で、Auduinoにつなげている可変抵抗器を動かしてみてください。どうでしょうか。音が鳴ったでしょうか。もしならなかった場合は作業ミスがないか、確認してください。

 

MIDI対応機器として認識させる(Mac)

MIDI対応機器として認識させる(Mac)(1)


Finderからアプリケーションフォルダを開きます。続いてユーティリティフォルダを開き、「Audio MIDI設定」アイコンをダブルクリックして起動します。

もしくはCommand+Shift+Uでユーティリティフォルダを開き、「Audio MIDI設定」アイコンをダブルクリックして起動します。

続いてAudio MIDI設定を起動後、「ウィンドウ」→「MIDIスタジオを表示」をクリックしましょう。


MIDI対応機器として認識させる(Mac)(2)


MIDIスタジオ画面が表示されるので、「IACDriver」をダブルクリックします。


MIDI対応機器として認識させる(Mac)(3)


IACDriverのプロパティが表示されます。「装置はオンライン」をクリックしてチェックを入れて、「適用」をクリックします。

なお「装置名」に日本語が含まれている場合は、半角英字の「IAC Driver」に書き換えてください。

 

MIDI対応機器として認識させる(Windows)


Windowsは標準状態でMIDI機器を使うことができません。そのため、仮想MIDIケーブルソフトである「loopMIDI」などを使う必要があります。

loopMIDIのダウンロードサイトはhttp://www.tobias-erichsen.de/software/loopmidi.htmlです。アクセスしたら「download loopMIDIをクリック。ダウンロード後、ZIPファイルを解凍して「loopMIDISetup.exe」をダブルクリックしてインストーラーを起動。「I agree~」をクリックしてチェックを入れ、「Install」をクリックします。インストール後、loopMIDIを起動します。


MIDI対応機器として認識させる(Windows)

 

loopMIDIの画面が表示されたら、左下にある「+」ボタンをクリック。「loopMIDI Port」と表示されたら設定完了です。

 

DAWソフト側のセッティング


パソコン上で作曲を行うDAWソフトには様々なものがありますが、この記事ではAbletonの「Live」というソフトを使った設定方法を紹介していきます。


DAWソフト側のセッティング(1)


「Live」を起動したら「Live」→「環境設定」をクリック。環境設定ウィンドウの左側にある「Link MIDI」タブをクリックします。

Input欄に 「IAC Driver(またはloopMIDI Port)」と表示されているのを確認して、「トラック」と「リモート」をクリック。オン状態(黄色)に変更します。


DAWソフト側のセッティング(2)


メイン画面に戻り、いずれかのMIDIトラックの「MIDI From」をクリック。プルダウンメニュー内の「IAC Driver(またはloopMIDI Port)」をクリックして選択。次にMIDIトラック最下部にあるアームボタンをクリックしてMIDI入力を有効化(赤)します。そして登録されている音源リストから、好みの音色を設定します。


Pure Dataで設定を行う


ここでつかうプログラムは「mysound2.pd」です。冒頭でダウンロードしたZIPファイル内にあります。


Pure Dataで設定を行う(1)


Pure Dataを起動したら、mysound2.pdを読み込んでください。


Pure Dataで設定を行う(2)


Pure Dataの「Media」→「MIDI Setting」をクリック。設定画面を表示させます。


Pure Dataで設定を行う(4)


「Output Devices」の「none」をクリックして、プルダウンメニューの「IAC Driver(またはloopMIDI Port)」をクリック。「OK」をクリックします。

なお「IAC Driver(またはloopMIDI Port)」が表示されないときは、「IACDriverのプロパティ」で、ドライバ名を変更する必要があります。

 

実際に音をだして動作確認する


実際に音をだして動作確認する(1)


前回の記事を参照してArduinoにサンプルプログラムを書き込み、パソコンとArduinoの接続設定を行います。


実際に音をだして動作確認する(2)


Ableton Liveの画面右上にあるインジケーターを見ながら、Arduinoに接続した可変抵抗器を回します。黄色く点滅するとともにAbleton Liveで設定した音源の音がなったら成功です。もし音が鳴らず、インジケーターも点滅しないのであれば、Ableton Liveの設定を確認してください。

 

各種パラメータを変更できるモードにする

各種パラメータを変更できるモードにする(1)


音色を鳴らすのではなく、エフェクトなどの状態を変えるために使いたいときは、Pure Dataの画面に表示されたサンプルプログラムの「×」ボタンをクリックします。


各種パラメータを変更できるモードにする(2)


次にAbleton Liveウィンドウの右上にあるMIDIマップモードスイッチをクリック。


各種パラメータを変更できるモードにする(3)


Ableton Liveのパラメータをクリックした後、Arduinoに接続されたツマミを回します(ここではトラックのボリュームに設定しました)。再度MIDIマップモードスイッチをクリックすると設定完了。可変抵抗器を回すことで、設定したパラメータの値を変更できます。
 


各種パラメータを変更できるモードにする(4)


いかがでしたでしょうか。1つの可変抵抗器といっても、設定を変更することで、様々なパラメータが自由にコントロールできるということがわかりましたよね。

ここはあくまでスタートラインです。可変抵抗器につけるツマミの材質や色を変えたり、スライドボリュームを使ってみたり、タッチセンサーを活用してみたりと、手で触れるユーザーインターフェースの部分をカスタムしてもいいですし、前述したように複数の可変抵抗器を並べたコントローラにするのもいいでしょう。作曲をするときと同様に、自由な発想で電子楽器やMIDIコントローラを作れるようになりますよ。

 

中西宣人さんより皆さんへ

中西宣人さんより皆さんへ

 

今回はDAWソフトウェアとPure DataやArduinoを連携させて電子楽器、MIDIコントローラを制作しました。

本記事(連載)で取り上げたソフトウェアやハードウェアは、少しプログラムを書いて工夫すれば、単独で電子楽器やMIDIコントローラを作ることも可能です。例えば、Pure Dataを小型PCのRaspberryPiに組み込んだり、Arduinoから直接音を出したりと、もっと自由に自分ならではの楽器やコントローラをつくり出すことができます。電子的に音を作らなくても、ソレノイドで楽器を叩くなど、表現方法は無限大です。

様々な技術と音楽が組み合わせれば、さらに自由な発想で楽器づくりができるようになり、先日のフジロックへの出演も記憶に新しいBjörkの楽曲に使用されているこうした電子楽器にも発展させていくことができるのです。
 


電子工作ビギナーの方には少し難しい部分もあったかもしれませんが、今回の制作が、皆さんの未来の制作物の基礎となればと願っています!


監修:中西 宣人 yoshihito-nakanishi.com
Text:武者 良太
Video:Tea Kato
Photo:Great The Kabukicho
Edit:仲田 舞衣