知られざるワールドミュージックの世界 ~寒い国から来たレゲエ~

知られざるワールドミュージックの世界 ~寒い国から来たレゲエ~
真夏を過ぎ暦の上では秋が到来しても、まだまだ残暑厳しい季節に聴きたい音楽といえば、やっぱりレゲエ! ズンッ、チャッ、ズンッ、チャッ、というあの独特の裏打ちリズムは、熱を持った潮風や、まぶしい日差し、そしてカリブの碧い海が似合う。ジャマイカ生まれの音楽だから当然だけど、汗をかいてビール飲みながら聴くのに最高の音楽ではないだろうか。

カナダ、アイスランド、スウェーデン……北国でも愛されるレゲエ!

と思いきや、意外にもレゲエは北から南まで様々なエリアで発展し、人気のある音楽なのも事実だ。有名なところでは、UKレゲエなんていうのもジャンルとして確立されている。カリブ系移民の多い英国からは、マキシ・プリーストUB40などのスターもたくさん輩出したし、ラヴァーズ・ロックなんていうメロウなサウンドも発明された。

  • 英国以外にも、アフリカや南米にもレゲエ・アーティストはたくさんいるし、日本でも“ジャパレゲ”なんていわれて、大きなマーケットのひとつになっているのはご存知の通り。だから、灼熱の太陽の国じゃなくても、レゲエが人気を呼ぶのは特に珍しいわけではない。

    たとえば、北米カナダも知られざるレゲエ大国のひとつ。カナダも移民が多い国だし、実際この国最大の都市トロントにはジャマイカ人居住地もあるほど。少し前には、レゲエを取り入れたボップ・バンド、MAGIC!が世界的に大ブレイクしたのも記憶に新しいだろう。
    • Rude/MAGIC!

      シングル

      205

      Rude
      MAGIC!

  • ロックやポップスなどと融合するのもレゲエの持ち味。こういったレゲエ・ミクスチャーを含めれば、カナダにも膨大な数のレゲエ・アーティストが存在するらしい。このメッセンジャーというシンガーもカナダのレゲエ・シーンで活躍しているが、見た目と違って本格的なダンスホール・レゲエを披露してくれる。


    大西洋を渡り島国アイスランドに行くと、ここでも頻繁にレゲエのリズムを聴くことができる。オジバ・ラスタというバンドは、ホーン・セクションも入ったルーツ・レゲエやダブを演奏するバンド。バンドのアンサンブルは本場ジャマイカにもいそうな感じなのに、どこかひんやりとした印象はやはりアイスランド産レゲエだからか。ボーカルが繊細で内省的なところも独特だ。


    同じくアイスランドのダンスホール・レゲエも聴いてみよう。アマバダマは男女のボーカリストが複数いて、ボーカルのアンサンブルも非常に凝っている。一見陽気でゴキゲンなイメージもあるが、実は緻密に作られているところが、やはりヨーロッパ的、アイスランド流といえるのかもしれない。


    北欧というとエレクトロやギター・ポップを連想しがちだが、そこから地続きでレゲエにつながっていることも多い。ノルウェーを代表するアコースティック・デュオ、キングス・オブ・コンビニエンスのメンバーでもあるアーランド・オイエも、レゲエ・アルバムを制作している。リズムよりも美しいメロディが引き立っているので、あまりレゲエの濃厚さはないが、実はアイスランドの名門バンド、ヒャルマルが全面的にバックアップしていたりする。


    スウェーデンもスウェディッシュ・ポップのイメージが強いが、このルートヴァルタのようなクラシックなルーツ・レゲエ・サウンドのバンドがしっかりと存在している。とはいえ、ボーカルはやっぱりポップな雰囲気なのが、ABBAを生んだ国スウェーデンっぽい。


    同じ北欧でも、フィンランドのラーパナは、これまた面白い。この曲はゆるいビートこそレゲエだが、エコー処理やボーカルのレイジーな感じは、いわゆるレゲエのダブとはまた違う。キラキラとしたシンセも入っていたりしてどこにもないオリジナルのレゲエ・サウンドを作り出している。

レゲエの極北! ロシア、ヒマラヤにも鳴り響くゴキゲン・サウンド

さらにロシアに足を踏み入れると、ますますディープで不思議なレゲエの世界へといざなってくれる。このスカンカファカは、バックトラックは本場ジャマイカっぽいが、やはり歌が不思議度満点。どこか閉塞感があって殺伐としているのもロシア風味といえるかもしれない。


そして、ロシアからもう一曲。ブラーヴォはロシアの音楽シーンの重鎮で、まだソビエト連邦だった時代から活躍している重鎮。ロカビリーやロックンロールといったオールディーズ風味が特徴だが、しっかりとレゲエも取り入れている。ただ、ここまで来たら、太陽と海とはほぼ無縁の演歌的な世界になっている。まさにレゲエの極北だ。


では、最後にヒマラヤ山脈のお膝元であるアジアの内陸国ネパールからも一曲。日本人メンバーを含むこの民族色豊かなナマステ・バンドは、「もっとも標高の高いところ(標高5500m)でライヴを行ったバンド」としてのギネス記録を持っている。ということは、もっとも標高の高い場所で奏でられたバンド・サウンドがレゲエだということ。そう、レゲエは高山にも似合う音楽なのである。


というわけで、ジャマイカの熱いレゲエもいいけれど、寒い国のクールなレゲエもぜひ楽しんでもらいたい。きっと本格的な秋の到来までの間を、少しはひんやりと過ごせるはずだ。


Text:栗本 斉
Illustration:山口 洋佑
Edit:仲田 舞衣

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