ベルリンのカウンターから繋がる人と和とカルチャー

ベルリンのカウンターから繋がる人と和とカルチャー
ベルリンには音楽を感じられる和食レストランがあるのを知っているでしょうか?店内には趣きあるジャズが流れ、クラブのオーナー/DJ/プロデューサー/プロモーターなど音楽を生業としたその道のプロが足繁く通い、箸で食事をし、日本酒を飲みながら団らんする場所が存在するのです。

オープン前から音楽業界内でも話題になっていた『ライフ・ベルリン』はノイケルン地区のマイバッハウーファー通りに本格的な炉端焼き料理が食べれるレストランとして4月末にオープンしました。この通りは川沿いに面しており、豊かな緑に囲まれた美しい景色が広がっています。週末にはフリーマーケットが開催されており、近隣の人からツーリストまで多くの人が訪れる人気スポットでもあります。また、トレンドに敏感な感度の高いベルリナーの間では”話題の店はマイバッハウーファー通りにある”と言われるほど、前衛的でインターナショナルな飲食店が増えており、その一角にあるのが『ライフ・ベルリン』です。

オープンキッチンから伝える日本の食文化

店内に入ってすぐには開放的なバーエリアがあり、暖簾をくぐった先がレストランとなっています。炉端焼きを知らない外国人に日本の本物の食文化を知ってもらえるように中央のオープンキッチンからは串焼きや串揚げの焼き場が見えるようになっています。豚バラ肉で巻いた串焼き、海鮮串、カツの串揚げ、寿司、天ぷら、すき焼き、ベジタリアンメニューの湯葉巻きなど、とにかく豊富なメニューが揃っており、メニューを見ているだけでも楽しめます。さらに、和食でありながら、オリジナルの洋風アレンジが入っており、芸術的な盛り付けや美しい彩りはフレンチ仕込みのシェフならではのアイデアによるものです。それでいて、コースで20ユーロ(日本円にして約2,619円)からと非常に良心的な値段設定となっており、物価の安いベルリンにおいても本格的な日本食レストランとなると敷居が高くなってしまいますが、ここは名の通り”居酒屋プライス”で気軽に楽しむことができるのです。

ライフ・ベルリン外観

”蕾風”と力強く筆書きされた大きな提灯を目印に通りを歩いていると、まず店先に並ぶ美しい花たちが目に入ってきます。

フローリストの畑山聡子さん

フローリストの畑山聡子さん。季節の花を1本からアレンジブーケまで販売しており、すでに顧客がついている人気っぷり。

シェフの横田地健二さん

「可能な限りドイツの食材を使っています。当店は串メニューが売りですが、寿司も人気ですね。盛り付け等にも気を使っていますが、やはり料理は真心が一番大切だと思っています。」 そう語るシェフの横田地健二さんは、高校を卒業したと同時にパリへ渡り、Arpege(アルページュ)をはじめとする数々の三ツ星レストランでフレンチの経験を積み、日本とロンドンでもキャリアを持つ本格派です。

近年の世界的な和食ブームはここベルリンでも同様に起きており、特に昨年から数え切れないほど多くの和食店がオープンしています。カフェ、居酒屋、寿司屋、イベント形式の不定期営業の店などとにかく多く、日本人オーナーや日本人シェフに限らない店舗も含めたら一体いくつあるのでしょう? パリ、ロンドン、ミラノなど他のヨーロッパ都市に比べてまだまだ遅れを取っていると感じるベルリンの和食文化は、今まさにピークが始まったばかりでこれからさらに勢いが増すことでしょう。

オーナーの城戸孝さんが考える ”Tokyo Counter Culture”

同店のオーナー城戸孝さんは東京にヘアサロンとバー、ロンドンにヘアサロン、ベルリンではミッテ地区にticro.deというヘアサロンを経営している実業家であり、熟練のヘアスタイリストという多才な顔を持っています。東京を拠点にしながらヨーロッパの都市にアンテナを張り巡らせ、何店舗も展開出来る秘訣は一体なんなのでしょうか?

横田地健二さんの調理を見守る、オーナー城戸孝さん
左:オーナー城戸孝さん

「実はロンドンで2016年の春まで10年間に渡り、ベルリンと同名『ライフ』のという日本食レストランとバーを営業していたんですよ。でもイギリスではスタッフのビザ取得が非常に困難になってしまい、ベルリンでの出店を考え始めたんです。ロンドンも10年前はまともな日本食レストランが少なかったんですが、ベルリンの今がその時に似ているような気がします。和食と韓国やベトナムといったアジアンフュージョンが多いと思いますが、今の時代はその国が持っている本物を提供する時代だと思っています。ベルリンはヨーロッパの中の首都でもファッションと食に関して成熟しきってない都市ですよね。最初来た時はなんて田舎臭い街なんだろうって思いましたから(笑)でも、来る度にどんどん面白くなっていって、ロンドンの次はやっぱりベルリンだろうと思うようになりました。僕が東京在住なので普段のリアルな体験をそのまま提供したいと思い、メニュー構成から内装に至るまで自分自身で決めました。」

ロンドン時代の「Life」
ロンドン時代の「Life」

店舗のコンセプトには、”Tokyo Counter Culture(トウキョウ・カウンター・カルチャー)”が掲げられています。レストランのカウンターと70年代に起こったカウンターカルチャーというムーブメントを掛け合わせており、カウンターカルチャーの”体制的な文化に対抗する文化”という意味と、食文化に置き換えた時の”外国の日本食レストランは高くて、量が少なくて、寿司と天ぷらと照り焼き。”という偏ったイメージから”東京における本物の日本食文化”を外国人にも和食レストランをやってる人にも知ってもらいたいという意味が込められています。

グランドオープニングの様子
グランドオープニングの様子

1階がレストラン、地下がバー兼クラブという形態だったロンドンの『ライフ』を出来るだけそのままベルリンに持ち込みたいと考え、ベルリンでは同フロアーにレストランとバーが併設されています。音楽と食とファッション全てが結びつくということは、食だけではなく、今のカルチャーを感じられる音楽も絶対に不可欠であるとオーナー城戸さんは考え、DJバーという形態にしたのです。ロンドンのバーでは週末にジャイルス・ピーターソンがレジデントDJとしてプレイしたり、デフェクテッド・レコードによる大物ゲストを招聘した月1のシークレットパーティーが行われていたり、他にもFloating Points(フローティング・ポイント)など錚々たるアーティストたちが”お気に入りの店”として利用していた経緯を持ちます。その時の繋がりがそのままベルリンで繋がっており、オープンニングレセプションには以前から交流の深いジャザノヴァのアレクサンダー・バークがディレクションに携わり、ベルリンの老舗クラブTresor(トレゾア)のオーナー、ディミトリ・ヘーゲマン、ベロシマ(Beroshima)名義でも知られるDJのフランク・ミューラー、さらにはクラフトワークのメンバーまでお祝いに駆け付けていたというのだから驚きです。

ベルリンで魅せる音と食のこだわり

クラブミュージックの重鎮たちに愛される理由に納得ですが、スタッフに音楽好きが多いのも同店の特徴です。

スピーカーはTaguchiのオーダーメイド

「音楽関係者はもちろんですが、ファッションやクリエイター系のお客様も非常に多いです。音楽だけでなく、スピーカーや機材に詳しい方もいらっしゃるんですが、さすがドイツだなと思うオタクレベルの詳しさなんですよね(笑)。僕自身もDJをやっているので聞いていて勉強になりますし、話していて楽しいです。レストランの営業中は店のイメージに合わせてジャズを中心に選曲をしていますが、営業終了後はアンビエント系の少しアップテンポな選曲で空間を演出しています。」

レストランの営業中はジャズを中心に選曲

「当店のスピーカーはTaguchi(http://www.taguchi-craft.jp/)のオーダーメイドになりますが、ロンドンで使用していたものをそのまま使っています。ミニサウンドシステムから流れる上質な音とお酒のハーモニーを是非体感してもらいたいですね。お店のコンセプトでもある” Tokyo Counter Culture”のカウンターから繋がった”人と人”との繋がりを大切にするアットホームな空間作りも心がけています。」

そう語るのはバーの責任者である田口勇吾さん。日本式のバースタイルにこだわりっており、日本酒はもちろん、日本ブランドのウィスキー、コーヒー焼酎やエスプレッソマティーニなど他店ではなかなか飲むことができないオリジナルカクテルを提供しています。また、一番人気のレモンサワーなどは甘党な欧州人にはシュガーを多めにして、スッキリを好む人には少なめにするなどその人の好みに合わせたテイストで作ってくれます。さらには、バーでも唐揚げや枝豆といったまさに”居酒屋メニュー”であるおつまみをオーダーすることができるため、海外に暮らす日本人にとって何より嬉しいサービスとなっています。オーダーしているフードやお客さんの要望を汲み取って、お酒を出すタイミングまでみているという徹底っぷりは、日本人ならではの心遣いであり、ベルリンにいながら日本を感じられる心地よい空間を作り上げているのです。

バーの責任者である田口勇吾さん

田口さんが制服にしているユニークな時計柄のシャツは”Anytime”というメッセージが込められています。”いつでもどんな時でも笑顔で迎え入れてくれる”そんな『ライフ・ベルリン』の温もりに触れてみるのはいかがでしょうか?

SHOP INFORMATION

Life Berlin

住所:Maybachufer 39. 12047 Berlin
電話番号:+49(0)3023561730
営業時間:
ランチタイム12:00~15:00(火~日)
ディナータイム18:00~24:00(火~日)
バータイム18:00~02:00(火~木)
18:00~03:00(金・土)
18:00~24:00(日)
ハッピーアワー18:00~21:00

http://www.ticro.co.uk
https://www.facebook.com/lifeberlinlife/


Photo:日夏 佐紀

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