MURO×PUSHIM 今改めて語る、「和物」と「カバー」の持つ奥深き魅力!

MURO×PUSHIM 今改めて語る、「和物」と「カバー」の持つ奥深き魅力!
昭和の時代の楽曲を、クラブミュージックの文脈を通して捉え直したリリースが注目を集めるTOKYO RECORDS。渡辺音楽出版の持つ膨大なアーカイブライブラリーを持つ同レーベルより、キャリアでも初となる、日本の旧譜のカバーアルバム『和音 ~produced by MURO~』をプロデュースしたMURO。そして、同作に収録された「SEXY WOMAN」でボーカルを務めたPUSHIMは本人名義としても昨年、2枚目となる昭和歌謡、ポップスのカバーアルバム『THE ノスタルジックス』をリリースしている。くしくもクラブカルチャーにベースを置く二大アーティストが、「和物」と呼ばれるかつての日本の音楽に魅了され、それぞれの形でカバーアルバムを製作し、その魅力を我々リスナーの耳に届けてくれているのだ。そこで今回はお二人に、時代を超え、今も尚輝きを放つ「和物」の持つ魅力、そして「カバー」の奥深さについて語って頂きました。

PUSHIM”日本の音楽が洋楽のスタイルをもろに受けていた、あの時代の歌を歌いたいなって”

 MURO×PUSHIMの2人

─5月にリリースされた、MUROさんのプロデュースによるカバーアルバム『和音 ~produced by MURO~』に収録された、「SEXY WOMAN」のMVも先日公開となりました。また、9月中には7インチのリリースも控えているとか。お二人の音楽的な出会いは何の作品なのでしょうか?


MV撮影の様子(1)

MV撮影の様子(2)
MV撮影のワンシーン。終始和やかな雰囲気ながら、モニターチェック時は真剣なMURO氏。

MURO:いつになるんですかね?

PUSHIM:レコーディングを一緒にしたのは、「7 DAYZ」とかですかね?

MURO:そうでしたね。DJ HAZIMEくんの楽曲で。04年ですね。それまでも、お声がけしたかったんですけど、なかなかタイミングが合わなくて。最初がHAZIMEくんの作品だったんで、ちょっと悔しくてリミックスを作らせてもらいましたね。


PUSHIM:それまでもMUROくんは自分のなかで、ずっと近くに居てくれる気がしていたんですけどね。いつもMUROくんのオケを聞くと、すぐにメロディーが浮かぶんです。本当にすぐなんですよ(笑)。トラックにドラマがあるんですぐにメロディーが出てくるんですよね。昨年リリースしたアルバム『F』に収録している、「Feel It」っていうMUROくんにプロデュースしてもらった曲があるんですけど、そのときも早かったですね。MUROくんに誘導されているみたいな感じで、メロディーが出来上がるんです。

  • MURO:こないだ沖縄にDJの営業で行ったとき、お客さんたちが「Feel It」を待ってくれている様な感じがあって。あまり自分の楽曲がDJのピークタイムに来ることってあまりなかったんで嬉しかったですね。

    ─MUROさんは、PUSHIMさんが歌う楽曲を手がける際に、特別意識するようなことはあったりしますか?

    MURO:
    特別意識っていうのとはちょっと違うんですけど、良いループができて、この上でPUSHIMに歌ってもらったら最高だなーみたいに思うことはありますね。絵面がすぐに浮かんでくるというか。しかも、毎回それを上回ったものが帰って来てくれるので。どうやってミックスして返そうかなっていう、良いプレッシャーがあります(笑)。

    PUSHIM:プロデュースする側も歌う側も、お互いを喜ばせたいっていう気持ちはすごいありますよね。MUROくんなんて本当に沢山の方のプロデュースをされているんで、そのなかでも良いものの一つにして欲しいと思うので、気持ちもワクワクしながら曲作りしますね。

    ─今回お二人は、大上留利子さんが77年に発表した「SEXY WOMAN」のカバーをされた訳ですが、PUSHIMさんは元々この曲をご存知でしたか?

    PUSHIM:
    原曲は知らなかったですね。大上さんは大阪の方なんですよね? 音楽をよく知っている大阪のミュージシャンの人とかは知ってましたね。オリジナルもめっちゃ良いですよね! 時代を全然感じさせないというか。日本てこういう格好良い曲が昔あったんだなって思わせるような曲でしたね。

  • インタビューを受けるMURO

    ─MUROさんのなかでは、この曲をPUSHIMさんに歌ってもらおうという考えは、以前からあったんですか?

    MURO:
    実は、かなり前から考えていたんですよね。この曲のことは、20年近く前に西新宿にウィナーズっていうレコード屋さんに行ったときに、 聴きますか? みたいな感じで5、6枚渡されたなかに入っていて、偶然知ったんですよ。聞いたら、凄いなコレ! って驚いたんですよね。プレーヤーの方とかも皆有名な人たちだし、凄い音も良いし。で、今回カバーに使用できる音源のカタログに「SEXY WOMAN」が入っていて。やっとこれでお声がけができるタイミングが来たなと思いましたね。

    ─PUSHIMさんは、今回のカバーの楽曲を歌われる際に、どういうところに留意されましたか?

    PUSHIM:
    歌うときは、結構大上さんの真似をしたいなって思いながら歌ってました(笑)。あの声のトーンがすごい気持ち良い歌なので、抜ける感じで。ちょっと彼女になりきりたいなみたいな、そんな気持ちで歌いましたね。もちろん、自分を通すから自分なんですけど、これがPUSHIMです! というのよりも、大上さんになりたいみたいな気持ちでレコーディングした気がします。それが自分でも凄い心地良くて。

    インタビューを受けるPUSHIM

    ─そういう取り組み方は、昨年リリースされた、PUSHIMさんのキャリアでも2枚目のカバーアルバムとなる『THE ノスタルジックス』のレコーディングの際にもありましたか?

    PUSHIM:
    ありました。越路吹雪さんの「ラストダンスは私に」とかもそうでした。どういう風に歌おうかなとか、どういう声色で歌おうかなと考えるのも、歌い手としては楽しいんですけど、ちょっと真似入ると落ち着いて聞こえるんですよ。真似っていっても、100%真似するっていう訳じゃなくて、少しなりきるみたいな感じで。越路吹雪さんみたいな声のヴィブラートを入れつつ歌うとか。やっぱりちょっと真似入るとしっくり来て面白かったですね。

  • MURO:あー、わかる気がするなー。カバーをするときのサウンドプロダクションでもそういうのがあるんですよ。ちょっとドラムを当時のものに鳴りとかを近づけたりすることで、しっくりくるようになることが。カバーのとき、楽曲のアレンジはどういう風に進められるんですか? 例えばちょっとラテンぽい感じで歌いたいとか、バンドの方にリクエストをされるんですか?

    PUSHIM:こっちからリクエストすることもありますけど、お願いしているバンドの人たちって、バックバンドとしてやっている人たちじゃなくて、HOME GROWNとか、韻シストBANDとか、Little Tempoとか、一つのアーティストとして活動している方々なので、カバーに関してはほとんどお任せで、どんな風に返ってくるかをワクワクしながら待っているっていう感じですね。例えば、Little Tempoに「虹の彼方に(Over The Rainbow)」っていう、美空ひばりさんが日本語で歌ってたJazzの曲をアレンジしてもらってるんですけど、それはLittle Tempoが、8、9年前に出たイベントのときに、これをPushimに歌って欲しいって呼ばれたやつで、そのときにライブで披露したことがあったんです。で、『THE ノスタルジックス』のテーマ的にもぴったりなので、レコーディングもしたいですってお願いしたりして。

    MURO:へー! そうなんですね。Little Tempoも良いですよね。

    PUSHIM:最高ですよね。だから、あれは結構豪華なカバーアルバムになってるんですよ。

    ─当たり前かもしれませんが、カバーアルバムとオリジナルアルバムでは製作の際のスタンスって変わって来るものですか?

    PUSHIM:
    そうですね。私はただただ楽しいだけですよね(笑)。歌詞書かなくて良いし、メロディーも既にあるものに対して、どういう風に乗っけるて歌うかだけなので本当に楽しいですね。

    インタビュー中に笑顔を見せるMUROとPUSHIMの2人

    ─PUSHIMさんにとって、1枚目のカバーアルバムである『The Great Songs』は12年にリリースされましたが、そもそもカバーアルバムに取り組まれたきっかけは?

    PUSHIM:
    1枚目のカバーアルバムをだした頃って、皆がカバーアルバムを出していた時期だったこともあって、初めはお話を頂いても懐疑的だったんですよ。でも、自分なりに好きな曲を選んで、渋々やり出したところ、結構勉強になるなって気付いたんです。自分にないメロディーとか、自分にない譜割りで、自分にない言葉。それを歌うっていうことが、どんどん勉強になるなって楽しくなって来て。なので、2枚目のお話を貰ったときはもう躊躇はなかったですね。歌う曲に関しては、昭和の時代の自分の好きやった曲とか、自分の生まれる前の時代の、それこそ大上留利子さんの曲もそうなんですけど、日本の音楽がもっと洋楽っぽかったとき。洋楽のスタイルをもろに受けてる、ミュージシャン、プロデューサーがいる、あの時代の歌を歌いたいなって思ってチョイスしました。

    ─MUROさんが和物の魅力に引き込まれたのは、どのようなきっかけだったのでしょう?

    MURO:
    HIP HOPからサンプリング文化を通って、海外に行き始めて、海外のレコード屋さんで日本のレコードが高い値段で売られているのを見たりすることがあったんですよ。自分の国のものだし、これはちょっと自分でも掘らないと悔しいなって思って掘り返して始めて、今に至ります。同じ白黒が好きでも、いろんな色を見て、白黒が好きになったみたいな感じというか。海外に行くことで、逆に見えるものっていうのは凄く多かったですね。学ぶものが沢山ありました。

    ─和物をディグるということを改めて認識されたんですね。

    MURO:
    元々、子供の頃もソノシートとか集めてたんですよ。絵本に付いてるおまけのレコードとか。そこから中学生とかになると洋楽を、ビルボードのチャートとかを参考にしながら聞くようになって。ディスコの時代の曲とか。でも、並行して日本の曲もちょこちょこ買ってはいたんですけどね。CMと映画の音楽が好きだったんで(笑)。

    ─昔の日本の曲で、特に好きだったものは?

    MURO:
    やっぱり、さっきも言った、映画音楽ですかね。子供のころ映画館で育ってて。実家がガソリンスタンドをやっていて、道挟んで向かい側に川口東映っていう小さな映画館があったんですよ。で、ガソリンスタンドは車がたくさん出入りして危ないから、「ちょっと映画観てきな」って、いつもタダ券を渡されて、朝から晩まで3本だてを観たりしていて。横溝作品の「犬神家の一族」とかを訳も分からずに(笑)繰り返し観たりしていて。結局今好きなのも、大野雄二さんのイージーリスニング的な音だったり、『ルパン三世』の曲だったりとか。だから、「何が好き?」って聞かれたらその辺が真っ先に出てきますね。その頃の衝撃は大きかったと思います。さっきPUSHIMも言ってくれたみたいに、自分の組むループがドラマティックだということはよく言われるんですけど、それって、映画音楽がベースにあって、どこをどうループしたら気持ち良いかみたいなのは分かるんですよね。

  • ─今後MUROさんはTOKYO RECORDSとしてどのような動きを考えていらっしゃいますか?

    MURO:
    まだまだ掘り返したいところがいっぱいありますね。それこそナベプロさんの音源も。ドリフターズの「ヒゲダンス」とかも良いなーと思ってて。子供にヒゲダンスやられたらたまらないですよね(笑)。他にも新たに発見した楽曲はどんどん取り組みたいですね。あと、加山雄三さんも色々取り組まれているじゃないですか、サンプリングだったり、カバーアルバムだったり、Punpeeくんとやったり。加山さんの作品もナベプロの音源だったりするんで、またちょっと違う感じで作ってみたいなと思っています。



    ─では、PUSHIMさんはこの先カバーしてみたい楽曲はありますか?

    PUSHIM:
    ありますね。美空ひばりさんの「りんご追分」は1枚目のカバーアルバムでカバーしてるんですけど、あの曲って、ジャマイカではThe Skatalitesとかが50年代とか60年代とかにカバーしているんです。それは多分映画の影響で、当時のチャンバラ映画とかがジャマイカでも観られたりして、そういうところからカバーされたんだと思うんですよね。ジャマイカってカバー曲が好きなので。アーティストも皆カバーをするし、皆ショーとかでは、自分の曲やくらいの勢いで歌って、お客さんも大盛り上がりするし、面白いんですけど(笑)。やっぱりカバーって皆が知ってるから、そういうところが魅力だなって思いますよね。私のお客さんも、最近だと自分のお母さんやお父さんの世代の人たちも凄い増えてきてたりしていて、そういう人たちにも喜んでもらえるし。そして、何よりも、自分にないものを高らかに歌えるっていうのは、凄い気持ち良いんですよ。表現の幅が拡がるし。
    • Ringo/The Skatalites

      シングル

      257

      Ringo
      The Skatalites

  • ─自身のオリジナル作品への良いフィードバックにもなるんですね、

    PUSHIM:
    なりますね。メロディーだけとかじゃなくて、言葉だとか。昔の曲ってそんなに言葉が詰まってなくて、行間で他人に想像させるんですよ。そういうのも表現力があってこそ伝わるものだと思うので、そういうところを自分のものにしたいなって思います。次は何歌いましょうかね? またMUROくんに教えてもらいます(笑)。

    MURO:もちろんです。またやりたいですねー!

    目線を合わせるMUROとPUSHIMの2人

  • ■OFFICIAL WEB/SNS

    MURO
    https://twitter.com/djmuro

    TOKYO RECORDS
    http://www.tokyorecords.com/

    PUSHIM
    http://pushim.com/


    Photo:Great The Kabukicho
    Text:Maruro Yamashita
    Edit:仲田 舞衣


    撮影協力:
    NOS ORG http://org.nos-tokyo.com
    RICO STUDIO http://ricost-h.com

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