マニアが集う“注文の多すぎる料理店”~洋楽カラオケ編~

マニアが集う“注文の多すぎる料理店”~洋楽カラオケ編~
音楽マニアたちが集う、ユニークな飲食店を紹介する本コーナー。今回お邪魔するのは、六本木にある「フィエスタ」。ここは洋楽マニアから外国人観光客まで、幅広いお客さんたちが訪れる、都内でも指折りの洋楽専門カラオケ店だ。
場所は駅近くの雑居ビルの地下。1階はケバブ屋で、中東出身と思われるスタッフがお客さんを待ち構えている。まさに異国人の街、六本木らしいロケーションだ。

カラオケで洋楽を歌いたいのにカッコつけてると思われて満足に歌えない……。そんな洋楽好きの聖地はココだ!

エレベーターが開くと、目の前には、バーカウンターが。

「あ、どうも。お待ちしてました!」

店長の山川祐樹さんが出迎えてくれた

出迎えてくれたのは店長の山川祐樹さん。飲食店のマスターというよりはビジネスマンのような佇まい。一見、ちょっと怖そうだが、ソフトな口調で声をかけてくれた。

─えーと、こちらは洋楽専門のカラオケ店と聞いてきたんですが……。

「そうです。洋楽しかかかりません。日本語曲はナシですね。」

黒を基調した店内はボックス席が3つとカウンター。しっかりしたサウンドシステムと大きなモニターが2台。奥には一段高いステージがある。なんだかスナック……、いや小さなライブハウスのような雰囲気だ。

店内の様子

早速、山川さんに話を伺ってみた。

「90年代はじめ、六本木にはキーツって洋楽カラオケ店があったんです。バブルだったこともあって連日賑わっている上、ボビー・ブラウンスパイス・ガールズみたいな来日ミュージシャンもよく来ててね。僕も遊びにいってたんですけど、楽しくて。で、じゃあ僕らもやってみようかってそのキーツのお客さんと1997年に立ち上げたのがこのお店。キーツはもうなくなって、僕らが跡を継ぐみたいな形でやってますね。」

お客さんは今もなお外国人観光客がメイン。「日本に来たらカラオケに行ってみたい!」という多くが立ち寄るそうだ。時には来日ミュージシャン、俳優やスポーツ選手が訪れることも。

盛り上がる客

「ウチに来たのはジョン・レジェンド、映画『ロード・オブ・ザ・リング』に出た俳優のドミニク・モナハン、NFLの選手、マイケル・ベネットとか……。色々来ているみたいだけど、自己紹介されるわけじゃないから、わからなくて(笑)。そういえば、マックルモアって、グラミーで賞を獲ったラッパーは来ましたよ。彼のファンがたまたま店にいたんで教えてくれたんだけど、ちゃんと自分の曲を歌ってくれました(笑)。」

盛り上がる外国人客

お客さんは外国人ばかりではない、洋楽好きの日本人客も多い。

盛り上げる日本人客

「洋楽を歌いたいんだけど、会社の人たちと一緒だと浮いちゃうらしくて。カッコつけてるって思われたり。ウチは洋楽オンリーだから気兼ねなく歌えるってことで、来られますね。」

フィエスタがユニークなのは、カラオケ曲を山川さんが一曲毎に手動で出すことだ。カラオケボックスのように、歌いたいお客がデンモクを操作するのではない。お客はカウンターの上にあるパソコンで楽曲を検索し、それをカードに書いて提出する。

曲名が書かれたカード
CDグラフィックを手に取る山川さん
カラオケソフトを操作する山川さん

「手動なのは、カラオケソフトに海外から輸入したレーザーディスクとCDグラフィックを使ってるから。洋楽の通信カラオケ『DAM』もあるんですけど、往年の名曲を揃えるとなるとそれだけじゃ、どうしても足りなくて。あとレーザーディスクは演奏や音質も、通信よりかなりいいですしね。曲は合計約3万曲あります。」

山川さんが手動で操作することで、店内の雰囲気を変えることも可能に。音楽を通じ雰囲気を作る、いわゆるDJ的な役割を担う。

「ちょっと盛り上げたいなと思ったら、もらったリクエストの順序を入れ替えたり、あとリクエストにない有名曲を勝手に入れてみたりとかします。一曲がきっかけで、盛り上がり出すことはよくあります。もちろん入れたはいいけど、シーンとしちゃって、落ち込む時もありますけどね。例えば『ランバダ』って、普段は鉄板なんだけど、ダメだった時はかなり切なかったな~(笑)。」



頻繁にリクエストされる曲はビートルズ、クイーンなどのほか、

エルビス・プレスリー「好きにならずにいられない」

  • ニール・ダイアモンドの「スイート・キャロライン」

  • フランク・シナトラの「ニューヨークニューヨーク」
  • など。意外にもオールディーズの人気は高い。

    店内に飾られたビートルズのピクチャー盤
    店内にはビートルズのピクチャー盤が。これがキッカケで会話が弾む!

    「外国人は、古い曲だから聞かないって感覚はないんですよね。その辺は日本人と違います。みんな知ってるし、かなり盛り上がりますね。」

    また日本人には思いも寄らない意外な盛り上がりに驚くことも。

    「ビリー・ジョエルの『ピアノ・マン』で大合唱したりすると驚きますよね。どちらかというと落ち着いた曲じゃないですか。やっぱり外国人の琴線に触れるんでしょうね。大合唱といえば、以前、貸し切りの時、『どうしても日本語の曲で歌いたい』と言われて仕方なく『マツケンサンバ』をかけたんです。そうしたら、それがめちゃくちゃウケちゃって。ああいうのも不思議ですよね(笑)。」
  • CDグラフィックにおけるビリージョエル『ピアノマン』のカラオケ画面。洋楽カラオケには歌詞だけのものも多い。これで大盛り上がりするって……すごい!

    レーザーカラオケにおけるキャロル・キング『ユーヴ・ガッタ・フレンド』のカラオケ画面。これは海外制作のもので、日本制作以上に歌詞に準じた丁寧なストーリー仕立て。

    そろそろ、ここで飲食の話も。フィエスタはドリンクだけでフードはなし。持ち込み自由なので各自で用意するか、お腹の減った人は1階のケバブ屋、6階にある居酒屋に頼んで用意してもらうこともできる。ということで、ここではカクテル2杯を。

    お店で飲めるカクテル
    カクテルB-52とスプリングボックス

    「どちらもお客さんに教えてもらいました。B-52と、スプリングボックスってカクテルです。B-52はカルーア、ベイリーズ、コアントロー。スプリングボックスはベイリーズとミントです。お酒を作りながら、曲出しをやってるんで、対応しづらい時もありますけど、言ってくれれば可能な限り、お好みでお酒は作りますよ。」

    密室の中で歌うカラオケボックスと違い、初対面のお客さん同士が一堂に会するフィエスタ。実際、ここで意気投合し、普段から一緒に来るようになるお客さんも多いとか。しかし、英語が苦手で行ってみたいけど……と躊躇する人も多いはず。

    「いや、きっと大丈夫ですよ。ぼくも英語は喋れませんから。」

    え!? にわかには信じ難い言葉。であれば接客はどうしているのだろう?

    「お客さんがお店に入る時、説明できないんで、こういうシートを用意しています(笑)。よほど難しい場合は、常連のお客さんで英語を喋れる人に間に入ってもらいますし。」

    外国人客が入店時に渡されるシート
    シンプル イズ ベストな入場システム!

    店内に貼られたマイクの持ち方についての注意書き

    「でも、本当に大丈夫ですよ。好きな洋楽の歌があって、それを歌いたいって気持ちがあれば、きっとどんな国の人とも通じ合うはず。だから長年、このお店をやってこれたんだと思うし。やっぱり、歌には言葉を超えたコミュニケーションの力があると思うんですよね。」

    お店にあるギター型のクッションを手にする山川さん
    お店の備品のギター……のクッションを手に微笑む山川さん。意外とお茶目です。

    店内にあるステージ

    ●六本木フィエスタ
    住所:東京都港区六本木6-2-35 六本木662ビル B1F
    電話:03-5410-3008
    営業時間:19:00~2:00(月~木)、19:00~3:00(金~土)
    定休日:日曜日
    料金:入場料 ¥3500(3ドリンク付き)※歌い放題

    Text:大野 智己
    Photo:渡邉 眞朗

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